デューが初めてアズムールに謁見します。
褒美を受け取ることになります。褒美で剣といえば・・・・・・です。
この設定はスタートから考えており、ゲームでもシグルドがティルフィングを取得したタイミングでデューに渡していました。
アルヴィスとエスニャがアズムールに結婚の報告をしてから1か月が過ぎた。これまでにシグルドとエーディン、アゼルとティルテュ、アルヴィスとエスニャと立て続けに結婚が決まり、非常に慌ただしくなっている。
(ふうむ。結婚式はどこも決まっておらんようだな。特にシアルフィ家とユングヴィ家がヴェルトマー家の動向に警戒を強めておるようだな)
アズムールは冷静に分析する。それもそのはずで中立の立場を取っていたヴェルトマー家が揃って反王子派の1つであるフリージ家の姉妹と結婚したのだ。実績で他家を圧倒しているヴェルトマー家が反王子派と密接に繋がったのは警戒を強めるのに十分だった。
(クルトも驚きを隠せなんだようだな。何かと理由をつけてヴェルトマー家へ行っておるようだが、居留守をつかわれておるな。バイロンも同様か)
アズムールはクルトにシギュンが亡くなったこと、娘がいることはまだ伝えていない。現状では下手な火種を作りかねないと懸念しているからだ。
(リングは娘とクルトの縁談を断ってきよったか。理由は教育をきちんとしていないことか・・・・。ワシとしてはそちらの方が良かったのだがな。)
リングの娘ブリギッドとクルトの縁談はアズムールが主に動いていた。実際、クルトがブリギッドを見初めていたこともあったが、それ以上に
(あの気の強い娘であれば、クルトの素行も力で抑えられると踏んだのだが、まあ仕方ないな)
アズムールはクルトがシギュン以外の女性にも手を出していることを知っている。しかも証拠を残さないようにしているため、表だって出てくることがなくなり、非常にたちが悪いものになっていた。今回の縁談を断られたクルトがすんなり諦めてくればいいが・・・・・・
(アルヴィスは気づいておるじゃろうな。ワシも気づくのが遅かったわ。ふう・・・・・。どうしたものかの。あのリングの娘に対してクルトが直接行動に出ないとも限らん)
今度ばかりはそのようなことになれば、ユングヴィ家はもちろんシアルフィ家も黙ってはいないだろう。何よりもヴェルトマー家が両家の取り込みにかかる可能性もある。
(もう、あんなことをさせるわけにはいかん。やはり相談せねばならん。そういえば最近やけにリングの娘がヴェルトマー家に通っておるな。そのあたりも含めて聞いてみるか)
アズムールは考えを整理すると相談相手に会う準備を始めた。
アルヴィスはデューを伴い、バーハラ家に来ていた。目的は2つ。1つはマンフロイを捕らえたことによる褒美の授与、もう1つは捕らえたマンフロイを利用した流言工作の提案だ。
2人は現在エスニャと結婚の報告をおこなった客間にてアズムールを待っていた。
「デュー、そんなに緊張しなくてもいいよ。今回の褒美は君が主役だからね」
アルヴィスは多少緊張気味のデューに声をかける。
「正直、ここは落ち着かないね。何で無駄に広いの?」
デューは当然の疑問を口にする。
「権威を示すためかな。ここは他国の重鎮も来られるところだ。それなりのところにしなければ舐められる」
アルヴィスは正直な回答をして続ける。
「本来であれば謁見の場で大々的にするが、今回は表立って出来ないからね。それでここで行うことになった。陛下も君に会いたがっていたからね」
「おいらは怖いよ。おいらの言動一つでアルヴィスを困らせるのが・・・・」
デューの緊張の理由は不敬により自分が罰せられることよりも、アルヴィスに迷惑をかけることを何よりも恐れていた。
「ははは。デュー、そんな度量の狭いお方に私は忠誠を誓ったりしないよ。陛下より君が希望していた剣以外に1つお願い事をしてもよいことになっている。それくらい君のしたことは大きい」
アルヴィスそう言ってデューに笑顔を向けた。
(確かにデューがいなかったら、マンフロイを捕らえることは難しかった。彼には出来うることをしてあげたい。アンドレイからの報告通りブリギッド殿がデューに頻繁に会いに来てくれている。デューも最近ブリギッド殿に対して警戒心をほぼ解いている。心を許している証拠だ。上手くいってくれるといいが)
アルヴィスはデューとブリギッドの関係がより深くなってほしいと願っている。とはいっても自分とエスニャとは逆の意味で年齢差があり、お互い色恋には不慣れだ。暖かく見守りたいと思っている。
「うん、わかった。アルヴィス、ありがとう」
デューは年相応の可愛らしい笑顔を向けた。
視点変更(デュー)
(アルヴィスが忠誠を誓っている王様ってどんな人だろう。かなりのおじいちゃんって聞いているけど)
デューはアルヴィスが忠誠を誓っている王に大変興味を持っていた。本来ならば会えるはずもなく、今回は褒美まで直接渡したいと要望されている。
(おいらの素性は知っているのに会いたがっているって相当変わっている人だよな)
デューがこれから会う王のイメージを膨らませていると・・・
ドアが開いて、護衛の兵とともに王族の衣装に身を包んだ王が姿を現した。
隣のアルヴィスが席を立ち臣下の礼をとると、それを真似る形でデューも臣下の礼をとった。
「陛下、ご機嫌麗しゅうございます」
アルヴィスは挨拶を行なう。デューは頭をより深く下げた。
(アルヴィスからは黙っていいって言われたけどいいのかな?)
「よいよい、楽にせよ。」
アズムールは声をかけると席に腰をかけた。
「それでは陛下、失礼いたします」
そう言ってアルヴィスは席に腰を掛けると隣のデューの肩を触る。デューもそれを合図に席に座った。そして正面を向く・・・・・・
(この人が王様・・・・優しいそうな感じだけど、目線は鋭い。それに何だろう?圧倒される・・)
デューは言葉がでない。
「お主がデューか?アルヴィスより話は聞いておる。若いのによくアルヴィスを助けてくれているそうじゃな」
アズムールがデューに話しかけた。
「ありがとうございます。この度はおいら、いや私のお願いを聞いて頂き感謝の念に堪えません」
デューはたどたどしく言葉を紡ぐ。
「ふふふ、アルヴィスよ。とんでもない逸材を取り込みよったな。この状況においてこの者には全くスキがないわ。さらに護衛として周りの警戒を怠っておらん」
アズムールは上機嫌に話す。
「!!!!!!!!!!!!」
デューは言葉を失い驚愕する。
(しまった。緊張のあまりいつものスタンスで王様にのぞんじゃった。)
「デューよ。「しまった」などど思う必要はない。それが正しいあり方よ。たとえどんな状況においてもお主の役目はそこの朴念仁を守ることだ」
アズムールはデューの勘違いを諭す。
(うん、この人は凄い。アルヴィスが認めるわけだ。どうしてこんなすごい王様なのに息子はあんななのかな?)
デューのアズムールへの警戒心はなくなり、尊敬のまなざしが入ってくる。
「陛下、その「朴念仁」はやめていただけないでしょうか?」
今まで事の成り行きを見守っていたアルヴィスがアズムールに軽くかみつく。
「おっと本音が出てしまった、すまんのアルヴィスよ。次からは気を付けるとする」
そう言っておどけた仕草をみせるアズムール。
それを見たデューの表情がほころぶ。
「こうしてみるとデューも年相応の子供じゃの。これではリングの息子も油断するわけじゃな」
アズムールはデューの表情の変化を見て感想を述べた。
(アンドレイを瞬殺したことを知っているのか。そういったことも細かく把握しているんだな)
デューは妙なところで感心する。
「さてデューよ、この度は大儀であった。ロプト教団の司教を捕らえた功績により褒美を授ける」
アズムールは高らかに宣言し、護衛の兵士を促す。
王の命を受けた護衛がアルヴィスのそばに駆け寄る。護衛はアルヴィスに一振りの剣を恭しく手渡した。
アルヴィスはその剣を丁重に受け取るとデューに向き直る。デューは素早くアルヴィスの前に片膝をついた。
「デュー、陛下よりご褒美を賜った。これからも精一杯尽くしてほしい」
アルヴィスはそう言うと両手で剣をデューに手渡す。デューはそれを恭しく丁寧に受け取った。
「陛下、ありがたく頂戴いたします。そしてアルヴィス様、これからもヴェルトマー家のために全力で尽くすことをお誓い致します」
デューは力強い言葉で答えた。
(これは!!!銀の剣だ。凄く軽い。今のおいらなら使いこなすことができる。これで今以上にアルヴィスの役に立つことができる!!)
デューは元盗賊の知識をフル動員して褒美として賜った剣を認識する。そして喜びの表情が出る。
「ふふふ。余程気に入ったようじゃの。ワシも選んだかいがあったわ」
アズムールはデューの表情を見て、笑みがこぼれた。
「過分なご褒美を頂戴いただき私からも感謝申し上げます」
そう言ってアルヴィスも深々と頭を下げた。
最後までお読みいただきありがとうございました。
クルト王子のくだんは創作です。賛否はあると思いますが、このあたりは徹底的にいこうと思います。
アズムールとしてはブリギッドのような気の強い女性の方がクルトを抑え込めると考えました。
謁見の流れはデューの不慣れをアルヴィスがサポートする形をとりました。細かいところですが、実際はこんな感じになるのかなといったイメージです。
ゲームでのシグルド恩賞をデューに致しました。「今」のデューは使えます。