今回は残りの公爵家当主初登場です。
なおどこでも親バカは存在します(笑)
レックスが相談役になってから1週間後になります。
ヴェルトマー家アルヴィスの結婚は大きな波紋を広げています。
それぞれの立場と今後について書かせていただきました。
レックスがヴェルトマー家に滞在を始めて1週間がたったある日、ドズル家当主ランゴバルトの自室にて
(レックスはヴェルトマー家と上手くやっているようだ。ふふふ、これでワシも安心じゃな)
ランゴバルトは上機嫌だ。ヴェルトマー家と強固な関係を築けたことは大きいが、それよりもレックスに居場所を作ってやれたことが何よりも嬉しかった。
(まあ、何かとワシの歯向かってきよったが、今となっては懐かしさすら覚えてくるわ)
ランゴバルトとレックスの関係は、はたから見ても非常に悪かった・・・ように見せていた。理由は
(長男のダナンがしっかりしてくれたら、ここまでせんでも良かったがの。今となっては仕方がないな)
正妻の子供であるダナンを早々に跡継ぎに決めたのだが、非常に素行が悪く、数多くの問題を起こしていた。身内からは当主をレックスにすべきとの声すら上がっていたほどだ。そのため、内部での跡目争いがおきぬよう、レックスに厳しい態度を取らざるを得なかったのだ。
(アルヴィス卿にはバレていたので、酒の席で色々話してしまった。しかしレックスを相当信頼しておるな。流石はワシの息子だ)
どこでも親バカは発生する。
(それにしてもレプトールは上手くやりおったな。娘を二人ともヴェルトマー家に嫁がすとは・・)
ランゴバルトはアゼルとティルテュの縁談に驚きはなかったが・・
(まさかエスニャをアルヴィス卿にとは全く考えなんだ)
ランゴバルトはこの縁談における秘密をレプトールから聞いている。そしてそれに協力することの証明としてレックスをヴェルトマー家に送ったのだ。
(アルヴィス卿は殿下を許すことは出来なかったようだな。それも仕方ないか・・・)
ランゴバルトとレプトールはヴェルトマー家前当主ヴィクトルとはいい関係を作っていた。ヴィクトルはアルヴィスのことを自分以上に親バカぶりを発揮して、自慢していたことを覚えている。
(それが・・・・・殿下の軽率な行動で、ヴェルトマー家を破滅に追いやってしまったのだ。ヴィクトルは無念だったであろうな)
この一件後、ランゴバルトとレプトールはクルトから距離を置くことを決めた。そしてアルヴィスも同様にクルト王子との接点を持たないようにしている。
(リングは愚かにも殿下をかばい、バイロンは何も考えておらん。いや、見ないふりをしているだけかもしれんな)
クルト本人はあの行いを反省するどころか、美談にすり替えてしまった。そして・・・・
(アルヴィス卿は殿下を見限ったか・・)
ランゴバルトはアルヴィスが当主として挨拶に来た時、そのたたずまいに本気に養子にしたいと思ったぐらいだ。子供ゆえの過ちや失笑を買う行動もあったが、彼は必死に食らいついてきた。
(あのときの子供が今や立派な当主となり、凄まじい功績を上げておる。そしてその男がグランベルを出奔する・・・)
ランゴバルトとしてはアルヴィスに残ってほしいと思っている。これからのグランベルを支えていくのに彼の力は必要だ。しかし・・・・・・・
(レプトールは止める気はないみたいだな。ヴェルトマー家の後ろ盾になれるからではなく、アルヴィス卿の気持ちを考えてのことか・・)
レプトールは権力欲があるが、今回アルヴィスを止めない理由が損得ではないことを理解している。
(ワシはレプトールのように割り切れん。レックスも同じ気持ちだろうよ。ここはアイツに任せてみよう)
ランゴバルトは自分が最も信頼する息子にアルヴィスのことを託すことに決めた。
同日シアルフィ家バイロンの自室にて
(ようやくあの朴念仁も嫁が出来よった。全く剣や戦術などはワシを超えていきよったが、女に関してはからっきしだったからな。妹のエスリンは早くからいい人がおったから安心したが、アイツも決まってホッとしたわい。それにしてもユングヴィ家の聖女エーディンを射止めるとは流石ワシの息子じゃな)
何度も言うが(笑)、あらゆるところに親バカは存在する。ちなみにシグルドとエーディンの縁談には例の「イチイバルを持った凄腕の狩人」の存在があったことをバイロンは知らない。
(しかしアルヴィス卿が結婚されるとは驚いた。しかも相手がフリージ家のエスニャ嬢とはの)
バイロンはヴェルトマー家とフリージ家の縁談には驚きを隠せなかった。
(元々仲の良かった両家ではあったが、2人とも同時に決まってしまうとは驚きじゃ)
バイロンはアルヴィス卿に浮いた噂が全く無かったため、ヴェルトマー家の動きにはそれほど着目していなかったが、今回のフリージ家との縁談より状況が大きく変わることに危機感を抱いていた。
(何かと反目しよるレプトールとランゴバルトに殿下も手を焼いておるのに、ここにきて切れ者のアルヴィス卿が付いてしまうとなると本当にまずいことになるやもしれん)
現在グランベルを取り巻く環境はいいとはいえないことをバイロンは認識している。アルヴィス卿の父親であるヴィクトルの自殺により、盤石だった基盤が緩みだし、それが目立ってきているのだ。
さらに他国状況も内乱や衝突が起こり出しており、内も外も安穏とは言えない空気を出してきている。
(私は武人だ。他人の色恋ざたに興味は無い。殿下の一件が原因でヴィクトル卿が自殺したとしてもそれは個人的な話で国の中枢に関わることではない)
バイロンはクルトとシギュンが恋に落ち、そのことに絶望したヴィクトルが自殺したことについて、アルヴィスに同情するが、それ以上の感情はない。
自身はグランベルの後継者であるクルトを支え、導いていくことが最もよい選択であると思っている。
(だが、納得できん人間もいるということか。アルヴィス卿の今回の動きでハッキリした)
フリージ家と仲の良いドズル家のランゴバルトは、いち早く両家の祝言に次男レックスを送り、そのまま相談役に収まることになった。
この動きに警戒を強めたユングウィ家のリングは長女のブリギッドを両家の祝言に送っている。
(アルヴィス卿の影響力は大きいな。今まで頼りにしてきたが、ここまで敵に回すと怖い男はいない。さてどうしたものかの)
バイロンは思案するが・・・・
(こういったことを考えるのは苦手だな。やはりあの男には正攻法でいくのがよいかもしれん)
考えることを即時に諦め、決めたことを実行に移すことに決めた。
同日エッダ家クロードは礼拝堂にて
日課のお祈りを終えた後、現在公爵家があわただしくなっている状況にクロードは
(アルヴィス卿が結婚なされましたか、先を越されてしまいましたね)
クロードは素直にアルヴィスの結婚を心より祝う。
(フリージ家のご息女エスニャ殿がお相手と聞いたときはレプトール卿が水面下で動いていると思っていましたが・・・・・・)
クロードはその考えを否定する。
(お二人がそろって挨拶に来られた時、アルヴィス卿のあのような表情は初めて見ました。エスニャ殿と大変仲睦まじく長年連れ添った夫婦と勘違いするぐらいです)
クロードにも縁談が全くないわけではないが、世間ずれしているせいかどうもうまくいかない。
(私もあれを見てしまうと結婚に憧れてしまいますね。そういえばアルヴィス卿が私に良き縁談相手が入れば紹介しますとおっしゃっていましたね。もし機会があれば大事にしたいですね)
クロードは現在エッダ家当主であり、公爵家の義務を果たさなければならないことは理解している。
(少し気になるのが、他の公爵家の動きも活発になっているところです。ドズル家のレックス殿、ユングヴィ家のブリギッド殿がそろってヴェルトマー家に深く入り込みつつある。私としては余計な火種を起こしてほしくはないところですが・・・)
エッダ家の方針としては中立の立場を維持したいのが本音だ。クロード自身が争いごとを好まない性格もある。
(ふう。考えても仕方ないですね。私は私が出来ることを精一杯していきましょう)
クロードは気持ちを落ち着けると再度祈りをささげた。
最後までお読みいただきありがとうございました。
ランゴバルトの印象は頑固なオヤジです。顔もそんな感じですね(笑)
レックスとの関係はそこまで悪くなかったと思っています。
次にバイロンですが、良い印象はありません。登場シーンが少ないのですが、謀略に対して全く対応できていないのでどうかなといった感じです。
クロードの印象は世間ずれした好青年ですか(笑)。今後もそれなり登場させます。伏線は張りましたが、カップリングのお相手は早々に決めており、シルヴィアではありません。とは言ってもここまで来るとある程度絞られてきますね。
楽しみにお待ちください。