平和なグランベルの日々を目指す   作:ロサド

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アルヴィスとレックスの会話が続きます。

タイトル通りアルヴィスとレックスの怒りです。

ケンカをするのではなく、それぞれの感情が噴き出します。

アルヴィスが今回打つ仕掛けですが、いつの間にかこんな感じでキャラが勝手に動きます。(笑)こんな予定は当初なかったのですが・・・・・・(笑)


28.怒り

「だが私はロプト教団がマンフロイを救出する動きを見せるとは思わないがね」

 

アルヴィスは最後そのように締めくくった。

 

「待ってくれ、アルヴィス。マンフロイがそれなりの地位にいることは話の流れからわかるが、トップの可能性もある根拠は何だ。付け加えるならもしそのような地位にいるのなら、奪還に動かないわけがないだろう」

 

レックスが疑問を口にする。

 

(アルヴィスは明らかにマンフロイがロプト教団のリーダーであることを確信している。それはまあいい。しかしなぜ助けにこないことも分かるんだ。普通はありえないだろう)

 

レックスはアルヴィスの考えが読めない。

 

「そうだね、レックス。普通は助けに来るだろう。しかしヴェルトマー家にロプト教団の幹部が捕らえられていること自体おかしい」

 

アルヴィスはレックスの疑問に対して答えると続ける。

 

「そしてそんな情報が入ってくること自体もおかしいんだよ」

 

(そうか!!!!アルヴィスの狙いはロプト教団の疑心暗鬼か!!)

 

レックスはアルヴィスの狙いをようやく理解した。

 

 

 

視点変更(アルヴィス)

 

 

 

(まあ、正直上手くいくかは半信半疑だけど、ロプト教団の現状が自分の読み通りなら、ある程度こちらでコントロールは可能だ)

 

マンフロイがアルヴィスの懐柔にヴェルトマー家に入り込んでいることはロプト教団も知っているだろう。そして現在音信不通の状態だ。

 

ロプト教団側とすればマンフロイが失敗し、殺された可能性を考える。

 

そんな状況でマンフロイがヴェルトマー家に捕らえられている情報が入ってきたとしたらどうだろうか。いきなり奪還には動きにくいだろう。

 

当然情報の真偽を確かめるための動きを見せてくる可能性が高い。

 

アルヴィスはその動きが入れば、グランベル内部の人間のあぶり出しが可能と読んでいた。

 

(ロプト教団は当然グランベルにも入り込んでいる。内部にも情報網を張り巡らしているからね。そこから切り崩していく)

 

「レックス、マンフロイがリーダーなのは間違いないよ。私に接触してきたのが何よりの証拠だ。暗黒神ロプトウス復活には私が絶対に必要だ。確実にこちらの味方に引き入れなければならないしね」

 

アルヴィスはレックスのもう1つの疑問に答える。

 

マンフロイがリーダーなのはゲームで知っているが、それを答えるわけにはいかないので、上手く取り繕う。

 

「・・・・・・アルヴィス、何でそんな回りくどいことをする必要があるんだ」

 

レックスはさらなる質問を重ねる。

 

「簡単な話だ。グランベル内部のロプト教団の監視体制の切り崩しが必要だからだよ」

 

(レックス、さてこの言葉の意味をどうとらえる)

 

「・・・・つまりグランベルの中枢にも、ロプト教団が入り込んでいるってことなのか」

 

(レックスは冷静だな。ただ目は怒っている)

 

「ああ、間違いないよ。悲しい話だがね」

 

アルヴィスはレックスの冷静な対応に内心ホッとしながら返した。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

レックスは言葉を失う。

 

「ちなみにこの話は君以外にはデューにしかしていない。バイロン卿あたりが聞いたら、私は気が狂ったと思われるからね」

 

アルヴィスはそう言うと肩とすくめる

 

「俺の兄貴が聞いても同じだよ」

 

レックスは呆れた声で答える。

 

「でもこれが現実だ。グランベルだけではない。他の国でも暗躍している。まだグランベルは表立っての動きは見せていない分マシだがね」

 

アルヴィスの表情は和らいでいる。

 

「マシって話かよ!!!」

 

レックスは声を荒らげた。

 

「アルヴィス!!!どうしてマンフロイを生かしておくんだ!!今の話であれば殺しても問題ないだろう!!」

 

レックスの怒りは収まらない。

 

(レックス、相当怒り心頭だな)

 

アルヴィスはレックスの怒りの大きさを認識する。

 

「レックス、殺すのはいつでもできる。彼には生きておいてもらう方が何かと都合がいいんだ」

 

アルヴィスは冷静に返す。

 

「どういうことだ?」

 

レックスはアルヴィスの冷静な返しに落ち着きを取り戻し、首を傾げる。

 

「マンフロイを処刑してしまうと、ロプト教団自体が闇に潜み始めてしまい、尻尾をつかみ損ねる可能性がある。それは避けたいところなんだ」

 

アルヴィスは続ける。

 

「マンフロイが生きている可能性を残しておけば、その命令は継続される。極端に言えば私と妹が生きていれば誰でも実行が可能だからだ」

 

アルヴィスはそう締めくくった。

 

(この辺りも想像や期待でしかないが、レックスは納得してくれるだろうか)

 

アルヴィスはグランベルの中枢にもロプト教団が食い込んでいるというのはあくまで想像の域だが、確信に近い情報は得ている。だが事は内部のため派手に動くことはできないし、早い段階でアズムールにも言うわけにはいかなかった。

 

「アルヴィス、つまり最初はグランベル内部から手を付けていかないといけないってことか」

 

レックスはアルヴィスに訊ねる。

 

「そうだね。他国の動きには目を光らせておく必要はあるが、内部が瓦解しては話にならない」

 

アルヴィスは答えた。

 

「しかも内密に進めていく必要があるからこれは大変だな」

 

レックスは思わず両手を挙げた。

 

「陛下には近いうちにこのことはお伝えするつもりだ。流石に動くとなると大騒動に発展しかねないからね」

 

「まあ、そうだろうな。全く、世も末だな。ここまで酷い状況になっているとは思わなかった」

 

さきほどまで怒りを見せていたレックスもその状況に呆れ気味だ。

 

(レックスも少しは落ち着いたようだ。怒る気持ちも分かるがこれが現実だ。私もここまでロプト教団が浸透しているとは想像がつかなかった)

 

アルヴィスは今回のロプト教団の計画の周到性を甘く見積もってはいなかった。

 

実際ゲーム上において、イザークのダーナ襲撃、ヴェルダンの侵攻、アグストリア王の急死、シレジアの内乱には全てロプト教団がからんでいる。そしてアルヴィスもマンフロイの計略に乗せられた1人だ。

 

(ここまでの計画を練ったのが、マンフロイ1人であれば相当な戦略家であり謀略家だ。早めに捕らえておいて正解だった。仮に別の者が引き継ぐにしても混乱は避けられないだろう)

 

「アルヴィス、グランベルの中枢にいる共犯者についてはアタリをつけているのか?」

 

レックスが訊ねる。

 

「ああそうだね。だが証拠がない。下手に動けばこちらがやられかねないし、慎重に動きたいところだ」

 

アルヴィスは答える。

 

「そいつらが動くとすれば、そのマンフロイの情報が大きな意味を持つってことか」

 

レックスは納得といった表情を見せる。

 

「その通りだ。計画の首謀者がヴェルトマー家にいるとなれば、共犯者も危ない状況に追い込まれるからね。落ち着いてはいられないだろう。」

 

アルヴィスはそう言うと笑みを浮かべた。

 

 

 

 

アルヴィスの表情を見たレックスは・・・・

 

(コイツを敵に回したらエグイ。本当に味方でよかったわ。共犯者を真綿で締め上げる気満々だな)

 

レックスは改めてアルヴィスに恐怖を覚えた。

 

(しかし・・・・アルヴィスがここまで国のために尽くしているのに、何で出て行かないといけないんだ)

 

「アルヴィス、やっぱりグランベルに残る気はないのか?」

 

「レックス、さっきも言ったが、まだ迷っている。だが妹のことが関わる以上去るのがいいと思っている」

 

(迷っているのか。やっぱりエスニャのことを気にしているんだな。)

 

「逆にどうすればグランベルに残ってくれるんだ」

 

レックスは質問を変える。

 

「うん?」

 

問われたアルヴィスは少し驚く。

 

「殿下のことが許せない気持ちは分かる。両親を奪ったんだ。殺したいぐらいじゃないのか。でもお前はマンフロイを利用して、国を乗っ取る選択肢を取っていない。ここまでのお膳立てがあれば、成功する可能性は高いと俺は思っている」

 

レックスは一息入れると続ける。

 

「でもお前はグランベルを出ていく選択をした。そして迷っているとも言った。まだ選択の余地はないのか」

 

レックスは真剣な表情で問いかけた。

 

(俺をここまで認めてくれた人を見捨てるなんてできない。オヤジのこともそうだ。この人はグランベルにいなきゃいけない)

 

 

 

 

レックスの真剣な表情を見たアルヴィスは・・・

 

(ふう、まいったな。どうしたものか)

 

アルヴィスは困った表情を見せる。

 

(レックスもここまで言ってくれた以上こちらも本音で話すとしよう)

 

「レックス、私がなぜここまでグランベルのために尽くしてきたと思う。理由は簡単だ。アズムール国王陛下のためだ」

 

アルヴィスは真剣な表情で話し始める。

 

「陛下は殿下の所業に対して私に謝罪し、わずか7歳で当主となった私を助けて下さった。そのご恩をお返しするために今まで頑張ってきたのだ」

 

アルヴィスの表情が険しくなっていく。

 

「7歳の子供が大人相手に何ができる。失敗の連続だ。当主不適格の烙印を押されたのは1度や2度ではない。そんなときでも陛下は私をかばい、当主のままでいさせてくれたのだ」

 

そこまで話すとアルヴィスの表情がゆがむ

 

「それに引きかえ殿下は何事もなかったかのように私に接してきた。1度たりとも謝罪を受けたことはない。それどころか美談にすり替えてしまわれた」

 

ゆがんでいたアルヴィスの表情に笑みが浮かぶ。

 

「陛下以外誰も殿下を責める人はいなかった。それをいいことに反省どころか、今度は裏で似たような所業を繰り返していた。本当にめでたいやつだよ。ここまでくると怒りを通り越して呆れてくる」

 

不敬の言葉を交えつつ最後は言い切る。

 

「クルトに忠誠は誓えない。本当に殺してしまいそうだ。だから出ていきたいんだよ。でもこんな馬鹿でも大恩ある陛下のご子息だ。悲しませることはできない」

 




最後までお読みいただきありがとうございました。

マンフロイについて持ち上げていますが、あれだけの混乱状況を作り上げたのですから悪人ではありますが、そうとう能力は高い人物です。

そして当然グランベル内部にロプト教団は入り込んでいるとみるべきでしょう。

そうでなければヴェルダンの侵攻があれほど簡単にいくとは思えません。

そして転生者の立場からすればクルトは絶対に許すことはできません。そのスタンスです。

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