レックスは飄々としたイメージがありますが、ティルテュと同じく身内との確執を抱えています。
ゲームにおいてもランゴバルトとの対立は結構表面化しています。
しかし、ランゴバルトの人物像を見てみるとレックスを嫌っていたというより、遠ざけていたように思います。口下手なで不器用な父親にしか見えませんし(笑)
「アルヴィス卿、どうして俺なんだ」
レックスは思わず声に出してしまった。
(声に出しちまった。もうくそっ)
「どうしてヴェルトマー家の秘密を兄貴ではなく、俺に話すことになったんだ」
レックスは厳しい表情を向けて続ける。
「本来であれば次期当主である兄貴と共有するのが普通だろう。どうしてそこまで俺を信じてくれるんだ」
(正直、わからない。オヤジの意図もアルヴィス卿も)
「簡単な話だ。私はレックス殿を信頼しているからだ。君なら秘密を守り、アゼルとティルテュを助けてくれると確信しているからだよ」
アルヴィスは平然と答える。
「!!!!!!!!!!!!!!!!」
あっさりとした回答にレックスは言葉失う。
「君自身も含めて周りの評価など私にはどうでもいいことだ。私は貴方を高く評価している。失礼ながらあなたの兄上ダナン殿は全く信用できない」
アルヴィスは続ける。
「ランゴバルト卿がここへ君に行くように言ったことが、そのままのあなたへの評価だということだ」
(じゃあ、アゼルの言った通りオヤジは兄貴よりも俺を信頼しているってことかよ)
レックスはアルヴィスの言葉に圧倒されている。
「君がここによく来てくれていたとき、アゼルとティルテュに配慮して気をつかっていたことも知っているよ。デューとも仲良くしてくれていた」
「・・・・・・・・それはアイツとは親友だし」
レックスは反論しようとするが・・・・・・
「無論それだけではない。君の評判は色んなところから聞いているし、知っている。色々と誤解を受けているようだが、さっきも言った通り私は自分の目で見たことしか信じないのでね。そういうことだよ」
アルヴィスはそう言って表情を綻ばせた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
(アルヴィス卿はそんな風に俺を見てくれていたのか・・・。オヤジは俺を嫌っていると思ったのに・・・・)
レックスは沈黙したまま下を向いている。
「ランゴバルト卿が君にきつく当たっていた理由は想像がつく」
アルヴィスはレックスの心を読んだかのように話始める。
「アンタには分かるのか。教えてくれ!!」
レックスは声を荒らげる。
「君が優秀だからだろうね。兄上のダナンを喰いかねないぐらい。ランゴバルト卿からすれば兄弟で余計な火種を作りたくなかったんじゃないかな。ランゴバルト卿は不器用な方だからね。君にわざと嫌われるように持っていき、自分から早く離れてほしかったと思う」
アルヴィスは柔らかい口調で話す。
「!!!!!!!!!!!!!!!!!」
レックスはまたも言葉を失った。
「まあ、あくまで私の想像だからね。こればかりはランゴバルト卿じゃないとわからないよ」
アルヴィスはそう言うと肩をすくめた。
(アルヴィス卿はそう言ってくれているが・・・)
レックスは過去の父親とのやりとりを思い出しながら、アルヴィスの言葉を繋げていく。
「レックス殿、今は落ち着かないと思うから、これからの話をしていきたいが構わないだろうか?」
アルヴィスは問いかける。
「そうするぜ。アルヴィス卿の言っていたことを改めて考えてみるぜ。それと・・・」
レックスはじっとアルヴィスを見ると
「過分なご評価を感謝する。そこまで言われちゃあこっちも応えないとな」
力強い言葉で答えた。
「さて、これからのことを話す前にレックス殿、今の段階で聞いておきたいことはないかな?」
アルヴィスは訊ねる。
「レックスで構わないぜ、アルヴィス卿。アゼルとティルテュから聞いたが、本当にグランベルを出ていくのか?」
レックスは質問する。
「私も呼び捨てで構わないよ、レックス。そうだね、正確にはクルト王子が王位を継いでからだ」
アルヴィスはキッパリと答えた。
「アンタは構わないだろうが、エスニャもついて行くんだろ。エスニャは嫌と言わないのは分かっているが、本当に大丈夫なのか?」
レックスが気になるところを突いてくる。
(やっぱり、アルヴィスには残ってほしいよ。卑怯な手段だが、どう出るかな?)
ヴェルトマー家の云々のことを外してもレックスはグランベルに残ってほしいと思っている。そして足かせになりえるエスニャの名前を出して嫌な問いを投げかけた。
「・・・・・・君には嘘はつきたくないので正直に言うが迷っている」
少しの沈黙後アルヴィスは重い口調で答えた。
(やっぱりか。さっきエスニャとのやり取り見ていたが、あんな優しいアルヴィスは初めてだぜ)
レックスは心の中で自分の考えが当たっていたことを納得する。
「今からでも遅くはないと思うぜ。当主の座はアゼルに譲るにしても相談役として残れば問題ないんじゃないのか。理由なんざいくらでも作れるだろう?」
レックスは淡々と話す。
「レックス、君の言う通り残ることは簡単だ。しかし表向きの理由は知っての通り、私の血のことだ。これが少々大きな問題を抱えているんだ」
アルヴィスは困った表情を向けた。
表向きの理由とはアルヴィスがマイラの血を引いていることだ。確かにこれは迫害の対象として忌避されるべきことだ。しかしアズムールやレプトール、ランゴバルトはアルヴィスの真実を知っても味方となっている。
(どういうことだ。マイラの血に関しては最低限にとどめておけば問題ない。ましてや陛下が知っている状況で、何かしでかす奴がいるとも思えない)
レックスはどこに問題があるのか図りかねていた。
レックスの困惑の表情をみたアルヴィスは・・・
(やはり彼には話しておこうか。アゼルの相談役となってくれた恩があるし、秘密を吹聴する人ではない)
「レックス、今から話すことは陛下、エスニャ、デューのみが知っていることだ。そのことを踏まえた上で君の見解を聞きたい。聞いてもらえるだろうか?」
アルヴィスは真剣な表情でレックスを見る。
「・・・・・・早速、相談役のお仕事かい?」
レックスは表情を変えずに質問する。
「そう思ってくれて構わないよ。さっき言った通り、迷っているのは事実だ。身内にも聞けないし、君なら客観的に判断してもらえると思ってね」
アルヴィスは表情を綻ばせる。
視点変更(レックス)
(ふう、参ったな。どんどんヴェルトマー家に取り込まれていきそうで怖いわ。まあ興味はあるし聞くか)
心の中であっさり好奇心が勝ったレックスは
「いいぜ。話してくれるか」
「ありがとう、レックス。少し長い話になる」
そう言うとアルヴィスは話を始めた。
「最近ロプト教団の動きが活発になっていてね」
「私のところにマンフロイという男が・・・・」
「私の母シギュンとクルト王子の間に・・・・」
「私とその子が万が一結ばれた場合は・・・・」
話を聞いていたレックスは・・・・・・・・・
(とんでもない話だなオイ!暗黒神ってスケールがデカすぎる。殿下に娘がいて、それとアルヴィスとの子供が生まれたら・・って兄妹だろそれ)
レックスは混乱しかけたが、アルヴィスが丁寧に説明をしてくれるので、落ち着きを取り戻しつつある。
「そのマンフロイを捕らえて監禁している」
アルヴィスは話を終えると一息をついた。
「・・・・・・・・・・とんでもない話だな。そしておぞましい話だよ」
レックスは感想を述べる。
「そうだね。その通りだよ。私としてはこの件は自分でケリを付けたいと思っているんだ」
「とは言ってもそのマンフロイってやつは簡単に口を割らないと思うぜ」
(イカレた教団の幹部クラスとなれば、拷問や脅迫なんざ効かないし、恐らく監禁していても教団の動きは止まらない)
レックスは冷静に分析する。
「マンフロイには何も期待しない。彼にはロプト教団の野望が、打ち砕かれたことを知る生き証人にでもなってもらうつもりだ」
アルヴィスは淡々と話す。
「え!!!アルヴィス、ロプト教団の動きについてはどこまで掴んでいるんだ」
レックスは多少驚きの表情を見せる。
「いいや、全くわからんよ。今はね・・・・・・。これから少しずつ分かってくるはずだ」
そう言うとアルヴィスは笑みを浮かべた。
(アルヴィスのあの笑みは何か企んでいるな)
「アルヴィス、何を企んでいるんだ」
レックスは質問を投げかけた。
「マンフロイがヴェルトマー家に捕らえられた情報を流す。マンフロイは教団でも1、2を争う地位にいる人物だと予想される。それが捕らえられたとなれば、間違いなく教団は動揺し、混乱が起こるだろう。その間隙をついて情報をつかみ取る」
アルヴィスは答えた。
「おいおい、そんな情報を流したら・・・・」
レックスは慌てたように反論しようとするが・・
「幸いこちらには頼りになる護衛や相談役がいるのでね。マンフロイを奪還しようとするロプト教団側の動きには対応できるはずだ」
アルヴィスは畳みかけるように言う。
(オイオイ、俺とデューが中心になるのかよ)
レックスは心がざわめく。
「だが私はロプト教団がマンフロイを救出する動きを見せるとは思わないがね」
アルヴィスは最後そのように締めくくった。
最後までお読みいただきありがとうございました。
アルヴィスは結局全てを話すことにしました。
このあたりかなり迷いましたが、客観的に物事を見れる人物との判断で今回入れさせていただきました。
まあ、兄のダナンは信用できませんね。イザークでの素行を見れば。
アルヴィス側からロプト教団へ仕掛けを打ちます。効果等については次話以降も続きます。