平和なグランベルの日々を目指す   作:ロサド

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ブリギッドが二人を言葉で袈裟切りにします(笑)

このあたりの展開は作りやすかったです。

辻褄はあっていると思いますがいかがでしょうか?




25.提案

「父上、よろしければ私がヴェルトマー家の内情を探りましょうか?」

 

ブリギッドは提案を投げかける。

 

(父上もアンドレイも気づいていないね。デューの話を聞いて私は納得したわ。ランゴバルト卿もレプトール卿もヴェルトマー家の秘密を共有している。それに協力することもね)

 

「ブリギッド、どういう意味だ?」

 

リングは訝しげにブリギッドを見た。

 

「私をヴェルトマー家とフリージ家の婚姻のお祝いの使者としてお使いください。父上やアンドレイでは対立しているフリージ家の関係もあり、表立って祝言とはいかないでしょう。その点私であれば、アルヴィス卿に保護いただいた恩もあり、それを前面に出せば問題ないかと」

 

「それであればシグルド殿とエーディンを使者に立てれば良いのでは?」

 

アンドレイはブリギッドに反論する。

 

「ワシもアンドレイの意見に賛成じゃ。お互い新婚同士、話も弾むじゃろうしな」

 

リングも同意する。

 

(多分そう返してくると思った。でもそれはやめたほうがいいね)

 

「それはアルヴィス卿、アゼル殿にとって良くないと思います。特にエーディンはやめたほうがいいでしょう」

 

ブリギッドは素早く返した。

 

「どういうことじゃ?アゼル殿は分かる。エーディンを好いていてくれていたからの。しかしアルヴィス卿がどうかしたのか?」

 

リングは首をかしげる。

 

(ふう、やっぱり気づいていなかったようだね。アルヴィスも困っていただろうね)

 

「父上もアンドレイもアルヴィス卿にエーディンとの縁談をかなり前から持ち掛けていましたね。そしてその度に断られていたと聞いています」

 

「姉上、その話はアルヴィス卿から聞いたのですか?」

 

アンドレイは訊ねる。

 

「そうだよ。なぜ断っていたのかも聞いたよ。」

 

「姉上、アルヴィス卿は何と?」

 

「話してもいいけど、エーディンはもちろんシグルド殿にも言わないでね」

 

ブリギッドはアルヴィスと話した内容を2人に話した。話が終わり2人を見ると

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

2人とも全く言葉を発することが出来なかった。

 

「本当に2人とも何をしてくれているのですか?次は私を縁談に利用しようとしていましたね」

 

ブリギッドは完全に主導権を握っている。

 

(ここまで言えば私の提案を受け入れない理由がないよね)

 

ブリギッドは勝ち誇った表情を見せた

 

「エーディンの件はこちらの教育不行き届きだった。アルヴィス卿が気を悪くしたのも分かった。しかしお前の縁談については相手の候補が。イチイバルを持った凄腕の・・・」

 

リングが苦しい言い訳をしようとすると

 

「ああ!もうこれで3人目だよ。凄腕の狩人で悪かったね。なおのこと敵の巣窟に行くんだから、私より適任者はいないよね。父上、アンドレイ!」

 

聞きたくないとばかりに話を打ち切ろうとする。

 

「・・ブリギッド、わかった。お前に任せよう。」

 

リングは疲れた表情で答えた。

 

「父上!!」

 

アンドレイは驚きの表情を見せる。

 

「しょうがあるまい。こうなってしまっては私もアンドレイも行けないだろう」

 

リングは厳しい表情をする。

 

「父上、ありがとうございます。」

 

(ふふふ、やったわ、これで彼に会う口実ができた)

 

ブリギッドは最高の笑顔を向けた。

 

「姉上、とても嬉しそうですね。遊びではないのでよろしくお願いしますよ」

 

アンドレイは複雑な表情を向けた。

 

「分かっているよ。アルヴィス卿は手ごわいし、簡単にはいかないけどやるだけやってみる」

 

ブリギッドは真剣な表情で答えた。

 

(あいつも手ごわいからね。でも凄腕の狩人として逃がす気はないからね、デュー)

 

 

 

視点変更(リング)

 

 

 

(ブリギッドは今回かなり食い下がってきたのう)

 

目の前で喜んでいるブリギッドにリングは違和感を覚えた。

 

(アルヴィス卿との縁談は軽い気持ちではなかったが、エーディンの件があったせいか誤解を招いてしまったようだ。)

 

リングは心の中で反省する。

 

リングだけでなくブリギッドの立場を危惧する声は多い。次期当主はアンドレイに決定したし、それを覆すことは簡単ではない。しかしイチイバルの継承者であるブリギッドを当主に推す声が全くないわけではないが、そうなればアルヴィス卿は完全にユングヴィ家との関係を絶つだろう。そう本人からも警告されている。

 

(ただでさえエーディンの件があり、これで当主をブリギッドに変えてしまったら流石にアルヴィス卿もわれらを見限るかもしれん)

 

しかしブリギッドに釣り合う人選となるとこれもまた厳しい。縁談はあるのだが、それが今回の悩みの2つ目である。

 

(殿下との縁談が持ち上がった時は腰が抜けそうになったわ!しかしなあ・・・・)

 

この縁談は表には出ておらず、ブリギッドは候補の1人に入っている状況である。本人はもちろん誰にも話していない。そんな困った状況で頭を抱えているにも関わらず、目の前の娘は上機嫌だ。それをみて

 

「ブリギッド、今日は何かいいことがあったのか」

 

リングは思わず声を出してしまった。

 

「え!父上いきなりどうしたのですか?」

 

ブリギッドは笑顔のまま返事をする。

 

「兵からお前がとても上機嫌だったと聞いていてな。少し気になっただけだ」

 

リングが再度訊ねる。

 

「あまりにもアルヴィス卿とエスニャ様が幸せそうだったから、それにあてられたかもしれないです」

 

ブリギッドは楽しそうな表情を見せる。

 

(嘘はついておらんな。よほど2人が眩しく見えたのかの)

 

リングは素直に受け入れた。しかし

 

「それは良かったです、姉上。護衛のデュー殿とのはどのような話をされたのですか?」

 

アンドレイはブリギッドに訊ねた。

 

「ええ!ああ彼とはアルヴィス卿に仕えるきっかけとか、それまで何をしていたかとかそんな話だよ」

 

ブリギッドは素っ気なく返した。

 

 

 

視点変更(アンドレイ)

 

 

 

(姉上は嘘が下手ですね。デュー殿への好意がバレバレです。父上は甘いですね)

 

アンドレイはブリギッドの心境を看破していた。デューへの関心を向かないように素っ気なく下手な演技をしていることはすぐに理解できた。

 

(下手をすると姉上も取り込まれかねないが・・・いっそのこと、この状況を利用させてもらいましょう)

 

アンドレイはブリギッドが異性に関心を示してくれていることを応援するとともに、最大の敵になりかねないデューやその主人であるアルヴィスがどう出るのか見守ることに決めた。

 

(お節介かもしれませんが、アルヴィス卿にはお伝えしておこうか)

 

アンドレイにおけるデューの評価は高い。ただ彼の素性は謎に包まれている。しかし自分より年下の子供であるが、戦闘力は並外れており、アルヴィスが絶大の信頼をおいている。

 

(父上に話したら姉上を謹慎にしそうだし、身分とか、くだらない話になりそうだ)

 

アンドレイが当主であればブリギッドとデューの縁談に積極的に動きたいが、リングは反対するだろう。ブリギッドの立場が微妙なところにあるので、それならばアルヴィス卿とのかかわりが深い彼と添い遂げてもらう方がいいとの考えだ。

 

(まあ、今さら父上が次期当主の座を姉上に変えることはないだろう。万が一そうなったらアルヴィス卿のところに行くだけだ)

 

アンドレイもアルヴィスが自身の次期当主の地位において、強力な後ろ盾になってくれていることを知っている。

 

「申し訳ございません。明日は朝早くから訓練がございますので、これで失礼させていただきます」

 

アンドレイはそう言って会釈すると部屋を出た。

 

 

 

 

(ふう。なんとかうまくごまかせたかな。アンドレイは鋭いね。まあバレずにすんで良かった)

 

ブリギッドは内心ほっとした表情を見せた。

 

「ブリギッド、まだ時間はあるか?」

 

考え込んでいたリングが声をかけた。

 

「はい。父上どうされましたか?」

 

ブリギッドは返事をする。

 

「・・・・実はお前に縁談があってな。どう思うか聞きたい。」

 

(父上の深刻な表情、まさかね・・・・・)

 

ブリギッドはデューの言葉を思い出していた。

 

「父上、あまり気が進まないご様子ですが、縁談のお相手を教えてもらえますか?」

 

「ふうむ、お前に嘘はつけんな。実は殿下との縁談がきておる」

 

(はい?何でなの、このタイミングで・・・・。でも父上はあまり嬉しそうではないわね)

 

「ええ!!!そうなのですか?でもどうして・・・・」

 

ブリギッドは驚きの表情を作って声を上げる。

 

「私も同意見じゃ。なぜブリギッドをとな」

 

リングはため息をつく。

 

(縁談相手としては申し分ないけど、なぜ父上は困っているの?よく分からないわね)

 

ブリギッドは首を傾げつつ

 

「父上なら2つ返事でお受けすると思っておりましたが、何か気になることでもあるのですか?」

 

リングに訊ねた。

 

「ふうむ。ブリギッドはどこまで殿下のことを知っておる」

 

(印象ってことかな。うーん。ここは無難に)

 

「小さい時のことはほとんど覚えておりません。ここに戻ってきて何度かお見掛けし、お話も致しましたがとても立派な方ですね。民からも慕われており次期国王にふさわしいと思います」

 

ブリギッドは無難な回答でお茶を濁す。が

 

「しかし、私は最近まで貴族生活をしておらず、王妃となるべく教育を受けておりませんので、釣り合うとは思えません」

 

ブリギッドはさらに客観的な回答を付け加えた。

 

「その通りだ、よく分かっているな。正直エーディンであれば喜んで受けておったが、ブリギッドでは殿下と上手くいくとは思えんのだ」

 

リングは厳しい表情をむけた。

 

「父上、殿下はなぜ今に至るまで結婚をされなかったのですか?」

 

ブリギッドはリングへ核心をついた。

 

「・・・ブリギッドよ、今から話すことは他言無用じゃ」

 

リングは話し始めた。

 




最後までお読みいただきありがとうございました。

ブリギッドがアルヴィスと話した内容は20話をご参照ください。

アルヴィスがエーディンを嫌っていた詳細があります。

次話はリングがクルト王子の所業を話します。

それを聞いたブリギッドの反応は?

アルヴィスがアンドレイを当主として支持する理由は、言うに及ばず彼がふさわしいからです。今さら当主としての教育を受けていないブリギッドが当主になればアンドレイは納得しないでしょう。当然混乱がおきます。だからこそアルヴィスはリングに次期当主を変えることのないよう念を押しています。

当主に必要なのは聖なるの武器を継承していることではないと私は考えています。

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