平和なグランベルの日々を目指す   作:ロサド

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ブリギットとの会合になります。

エーディンに対して厳しいです。

初めてゲームをしたときはエーディンがヒロインと思っていました。

ゲームにおけるアンドレイの裏切りはリングだけでなく、エーディンにも原因があったのではないかと考えています。

それを考えるとブリギッドの行方不明は大きかったと考えざるを得ません。




20.思惑

(あらあら見せつけてくれるわね)

 

ブリギッドの問いに対して、エスニャは幸せ一杯の表情と行動で回答した。

 

(ふうん。正直アルヴィスの婚約について父上やエーディン、アンドレイは政略結婚を示唆していたけど、そんな感じには見えないね)

 

ブリギッドは訝しげに二人を見る。

 

(今日会ったのは偶然だけど・・確認しないとね)

 

ブリギッドはエスニャに対して笑顔で返すと、アルヴィスに向き直る。

 

「アルヴィス、アンタにはもったいないぐらいのいい娘じゃないか」

 

「そうだね。ティルテュのおかげだよ。正直彼女には当分頭が上がらない。エスニャとは、これから関係をゆっくり築いていきたいと思っている」

 

アルヴィスもエスニャと同じように幸せな表情を見せた。

 

(あのアルヴィスがこんな表情を見せるなんてね。エスニャって娘は凄いわね)

 

すでにブリギッドにおけるエスニャの評価は、最高ランクに位置されていた。

 

「こんなところで話も何だから少しゆっくりしていかないかい?」

 

ブリギッドは二人に提案した。アルヴィスはエスニャの方を見ると彼女が頷いたのを確認し了承した。

 

 

 

視点変更(エスニャ)

 

 

 

あのあと少し歩き、ブリギッドが普段使用している来客用の一室に案内された。

 

(そういえばブリギッド様は何であの場所にいたのかしら?)

 

エスニャはブリギッドを待っている間に思案する。

 

「エスニャ、少しいいかな?」

 

隣のアルヴィスが声をかける。

 

「!!!はい。どうかされましたか?」

 

エスニャは慌てて反応した。

 

「恐らくブリギッド殿は私たちの馴れ初めを聞いてくると思う。それについては正直に答えてくれていいよ」

 

「よろしいのですか?」

 

「ああ。嘘をつく理由もないからね。アゼルとティルテュの婚約にこだわった理由について、聞かれても答えなくていいよ。そこは私が対応するからね」

 

「はい。わかりました」

 

「それにブリギッド殿がこだわっている部分はそこではないから、突っ込んで聞いてこないと思うしね」

 

アルヴィスはそう言って優しい表情を向けた。

 

「アルヴィス様、私からも聞いていいですか?」

 

「いいよ。何でも聞いてくれ」

 

「アンドレイ様がその・・・・・」

 

「ああ、そうだね。ブリギット殿を保護した後、アンドレイとリング卿から縁談の話が来たよ」

 

「リング卿もですか!!」

 

エスニャは驚く。

 

「そうだね。二人の思惑は違っていたけどね」

 

「え!!!」

 

「リング卿は前に話をしていた派閥への引き込み、アンドレイは純粋に私を慕ってくれていたから、より密接に繋がりたかったんだろうね」

 

(そういえば6公爵家は王子派と否定派に分かれていたんだったわ。リング卿としてはブリギッド様を保護した恩を返す形で縁談に持ち込み、そのままこちら側に引き込みたかった。アンドレイ様は単純にアルヴィス様を身内にしたかった。そんなところかしら)

 

「元々エーディン殿との縁談については、当主になって数年ごとに打診はあったよ。何かと理由をつけて断っていたけどね」

 

「・・・どうしてお受けにならなかったのですか?」

 

エスニャはやや声を低くしてアルヴィスに聞く。

 

「・・・・・・正直答えにくい質問だね」

 

アルヴィスは痛いところを突かれた表情を見せる。

 

エスニャはアルヴィスが、その縁談を断る理由がないことを知っていて聞いている。

 

(あの当時のアルヴィス様なら縁談を受ければ、ユングウィ家の後ろ盾がつくわ。さらにアンドレイ様の心酔ぶりを見れば、確実に味方になってくれていた。断る理由が見つからないわ)

 

そこまで思案したエスニャはアルヴィスの表情を見て、聞いてしまったことを後悔する。

 

「・・・アルヴィス様。ごめんなさい。」

 

エスニャは泣きそうな表情を見せた。

 

「・・・・エスニャ。実は・・・・・・」

 

アルヴィスが話そうとすると

 

「エスニャ、アルヴィスはエーディンを嫌っていたんだよ」

 

別のところから声がかかった。

 

「ブリギッド様!!!」

「ブリギッド殿!!!」

 

二人は声のした方を向くと、ブリギットがドアの所に立っていた。

 

「内緒話はこんなところでするもんじゃない。丸聞こえだよ。」

 

ブリギッドは呆れた表情を見せた。

 

「ふう。君は気づいていたのか。」

 

アルヴィスは訊ねた。

 

「まあね。同じ顔した私とあの娘との態度を見たらすぐわかったよ。本人はもちろん、他の人も気づいていないみたいだけどね」

 

 

 

視点変更(アルヴィス)

 

 

 

(ふう。ブリギッド殿は侮れんな。やはりこちらの状況を把握するために誘ったのか。まあ、エスニャには話すつもりだったがね)

 

「アルヴィス様、今の話は・・・・・・・・」

 

エスニャは唖然とした表情を見せる。

 

「事実だよ。自由に結婚できる立場ではないにしろ、嫌いな人とは極力したくない」

 

アルヴィスは真っすぐエスニャを見つめる。

 

「アンタには見えているものが違うようだね。私も正直驚いたよ」

 

ブリギッドは淡々と答える。

 

 

 

視点変更(エスニャ)

 

 

 

(エーディン様を嫌っているなんて・・・。何がアルヴィス様には見えているのかしら?)

 

エスニャにとってエーディンは、自愛の心を持った正に聖女の鏡のような人物だ。シスターとして誰に対しても平等に接しており、貴族、平民ともに彼女を慕っておりエスニャも例外ではない。

 

(アゼル様のこと、違うわ、当主になってからだから、かなり前からエーディン様には会っているし・・・・)

 

エスニャはアルヴィスがエーディンを嫌う理由が見つからない。

 

「エスニャ、エーディン殿はシスターとしても人としても立派だと思っている。別に裏の顔を知っているとかそんな理由ではないよ」

 

アルヴィスは苦笑する。

 

「でも、自分を大切に出来ない人を好きになれない。それが理由だよ。だから他人に対していい顔しかできない。自分の気持ちに正直になれないから、トラブルや他人を傷つけていることに気付いていないのは、問題だと思うけどね」

 

アルヴィスは遠慮のない口調で攻めた。

 

「エーディン様が何か問題や相手を傷つけてきたということですか?」

 

エスニャは驚いた表情で返す。

 

「それは聞き捨てならないね、アルヴィス。あの子がそんなことをするとは思えないよ」

 

ブリギットも同様に反論する。

 

 

 

視点変更(ブリギット)

 

 

 

「それは聞き捨てならないね、アルヴィス。あの子がそんなことをするとは思えないよ」

 

(いきなり容赦がないね。でもあの子がそこまで悪く言われることをしているとは思えないね)

 

「では、ブリギット殿にお聞きするが、なぜエーディン殿は次期当主の座を継がなかったのかな?」

 

アルヴィスは厳しい口調で訊ねる。

 

「え!!それは私を探すため、シスターになったからと聞いているけど」

 

ブリギットは慌てて返す。

 

「そうだね。アンドレイは必死に頑張ったと思うよ。でもそれを彼女は支えてはいなかった。君を探すためと言って、当主を押しつけて本来の役割を放棄してね」

 

アルヴィスは容赦ない攻撃を始める。

 

「!!!!!!!」

 

「シグルド殿とのこともそうだよ。彼女は彼のことが好きだった。しかし君を探すためその気持ちを封印して、アゼルを始めとした沢山の人の好意に気付いていながらいい顔をしていた」

 

アルヴィスは突き刺すよう言い放つ。

 

(確かにあの子の結婚が決まったとき、身近な男性陣から嘆きが聞こえたものね。特にミデェールの荒れようといったらなかったわ。女性陣からもお祝いの言葉が少なかったような気がする)

 

ブリギッドはアルヴィスの言葉を聞きながら思案する。

 

「そして、アグストリアとの関係を悪化させかねない、シャガール殿下からの縁談拒否はその最たるものだよ。」

 

「あ・・・・・・・・・・・・・」

 

ブリギッドは思い当たる節があった。

 

(確かにあれはまずかったわね。エーディンはその場で断ってしまったから。あれはアルヴィスも相当頭にきていたのね)

 

「きちんとアンドレイの補佐をしていれば、そういった作法も学べたはずだ。人としては立派な行為をしているが、ユングウィ家としては失格だ」

 

アルヴィスはそう言って話を終えた。

 

ブリギットは反論できる言葉がなかった。

 

(ふう・・・。きちんと見ている人は見ているわね。これは無理だわ。エーディンはもちろん私もね)

 

「やっぱり、アンタと結婚しなくて良かったわ。エスニャ、泣きたくなったら私のところに来ていいからね」

 

ブリギットはそう言ってエスニャを見る。

 

 

 

視点変更(エスニャ)

 

 

 

「きちんとアンドレイの補佐をしていれば、そういった作法も学べたはずだ。人としては立派な行為をしているが、ユングウィ家としては失格だ」

 

アルヴィスはそう言って話を終えた。

 

(アルヴィス様は厳しいわね。でも言っていることに間違いはないわ。特にシャガール殿下とのことは特に)

 

エスニャは納得する。自分であればその場で判断しない。相手は次期国王なのだ。断るにしても一旦持ち帰り、きちんとした理由を添えなければいけない。勝手にその場で断るなど国家の面子を潰した形になる。

 

(でもエーディン様なら言いそうな気がする。誰に対しても毅然とした態度で臨む人だし)

 

エスニャは思案していると

 

「やっぱり、アンタと結婚しなくて良かったわ。エスニャ、泣きたくなったら私のところに来ていいからね」

 

ブリギットはそう言ってエスニャに視線を向ける。

 

「いいえ。いつも笑顔で遊びにいきますのでよろしくお願いしますね」

 

エスニャはブリギッドに笑顔を見せた。

 

「エーディン殿もシグルド殿と結婚して落ち着かれると良いと思う。気を張っていたからこれからは自分を大切にしてほしい。そう伝えてくれ」

 

アルヴィスは幾分表情をやわらげる。

 

「あれだけ言っておいて最後はそれかい。まあ、そうだね。アタシのことも大きかったからね。あの子には幸せになってほしいよ」

 

ブリギッドもホッとした表情をみせた。

 

「ずっと思い続けた人と結ばれることができて良かったです。私からもよろしくお伝えくださいね」

 

エスニャが最後に締めくくった。

 




最後までお読みいただきありがとうございました。

アグストリアにブリギッドの捜索には当然許可が必要になるので、シャガールとの謁見の機会があり、そこでシャガールがエーディンを見初めたといった独自考察を入れています。

今回はシグルドとエーディンを結ばせる選択をしました。やっぱりこの2人はお似合いだと思います。

どう動かしていくかは思案中です。

ブリギッドは生粋の貴族社会に染まっていない面を生かして、積極的に動かしたいと考えています。

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