平和なグランベルの日々を目指す   作:ロサド

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レックスを勇者の斧で懐柔(笑)しました。

ここからが本題になります。

視点を変えていきますのでご了承ください。

ここで1番カッコイイのはアゼルと思います。




16.協力者

(しかし完全にやられたな。まさかオヤジまで糸を引いているとは・・・。まあ今さら協力できないって言えないな)

 

レックスは両手を下ろすと持っていた斧を護衛兵に返した。

 

「その斧はレックスの物だからもう持っていてもいいよ。君の護衛の騎士に預けておくね」

 

アゼルはそう言うと護衛兵に指示を出して他の兵にも退室するように伝えた。

 

(ほう。アゼルも結構シャキッとしているな。やはりティルテュの存在が大きいかもな)

 

レックスはアゼルの変わりようにも驚きを隠せない。

 

「じゃあ順を追って話していくから長くなるよ」

 

「全然問題ないぞ!お前がティルテュにどんなプロポーズしたか詳しく聞きたいし!!!」

 

レックスはそう言ってティルテュの方に顔を向ける。

 

ティルテュは一瞬顔が赤くなって下を向こうとするがすぐにレックスの視線を受け止めた。そして満面の笑みを浮かべる。

 

(ティルテュのやつ、幸せ満開の顔をしやがって。こっちが恥ずかしくなってきた)

 

「・・・・レックス、それ以上からかうなら話すのをやめようか?」

 

アゼルは憮然とした表情を向ける

 

「・・・・・・・悪かった。聞きたいです」

 

レックスは観念した。

 

「まず今回の縁談についてだけど・・・」

「それを聞いた僕とエスニャが・・・・」

「兄さんとレプトール卿がね・・・・・」

アゼルは丁寧に順を追ってレックスに説明する。

 

レックスは途中で口を挟むことなく全て聞いていた。

 

「それで兄さんとエスニャは陛下のところに婚約のご報告に行っているよ」

 

最後まで話し終えるとアゼルはフゥと息を吐いた。

 

話を聴き終えたレックスは・・・・・

 

(しかしアゼルとティルテュの縁談がメインでアルヴィス殿の縁談は偶然の産物かよ!と今はそのことではないな。まあアルヴィス殿の生い立ちにそんな秘密があったとは・・・・。確かにそれはヴェルトマー家にとっては弱みになりかねないからアゼルに当主を譲るってのは分かるがね・・・・うーーん・・・)

 

どうも釈然としなかった。

 

(やっぱりおかしいな。でもアゼルは嘘を言っていない。アゼルもティルテュもヴェルトマー家を背負う気概を感じたし。変化の理由はこれに間違いない・・)

 

「・・・・・アゼル。何を隠している」

 

レックスは真剣な表情でアゼルに問いかける。

 

「何のことかな?」

 

アゼルは淡々と返す。

 

「お前は嘘を言っていない。ティルテュも同様に真剣にアルヴィス殿の後釜として、そしてそれを支える奥方としてヴェルトマー家を背負う気概を俺は今までの態度で感じた」

 

「だが俺はアルヴィス殿が当主を譲る理由は別にあるんじゃないかと思っている」

 

レックスは確信めいた口調で攻める。

 

「どうしてそう思うの?」

 

アゼルは表情を変えず淡々と返す。

 

「アルヴィス殿のこれまで功績を見てみろ!!仮にその事実が明るみになったところであの陛下がアルヴィス殿を当主はく奪?追放?あるわけがない!!」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

アゼルは無言で話を聴いている。

 

「生い立ちはきっかけに過ぎないな。アルヴィス殿はヴェルトマー家の当主を辞めたいが先でその理由を見つけたから今回動いたってところかな」

 

「・・・・!!!!!」

 

ティルテュは驚きの表情を見せてしまった。

 

アゼルは表情を全く変えていなかった。

 

(やはりそうか!しかしアゼルは全然表情を変えないな。ティルテュのおかげで助かったぜ)

 

 

 

視点変更(アゼル)

 

 

 

「生い立ちはきっかけに過ぎないな。アルヴィス殿はヴェルトマー家の当主を辞めたいが先でその理由を見つけたから今回動いたってところかな」

 

(!!!!!!レックスは凄いな。僕やティルテュは兄さんのその真意までは読めなかった)

 

アゼルはティルテュの驚きの表情を確認して、観念せざるを得なかった。

 

(ティルテュの表情からレックスは自分の読みを確信している。ここまでかな)

 

「レックス。うん、その通りだよ。兄さんはグランベルを出ていく」

 

「!!!!!!!何!!!!!!!!!」

 

 

 

視点変更(レックス)

 

 

 

「!!!!!!!何!!!!!!!!!」

 

(・・・・!!!!!え!!公爵家を捨てるってことか?どうして?何を考えているんだ)

 

レックスはアゼルの言葉に驚きを隠せなかった。

 

「すぐってわけじゃないよ。僕が1人前になってからの話だけどね」

 

アゼルは淡々と返す。

 

「・・・・・・理由を聞きたいな。何故だ?」

 

レックスは低い声でアゼルに問いかける。

 

「聞いたらもう引き返せないよ、レックス。僕もティルテュもエスニャもその理由を聞いて、このグランベルが思っている以上に良くない状況になっていることがわかったからね」

 

アゼルの表情が非常に冷たくなった。

隣のティルテュも表情が真剣そのものだ

 

(!!!!!!!空気が変わった!!!!アルヴィス殿が二人に話したことは何なんだ)

 

レックスは思案する。アゼルは引き返せないと言った。アルヴィスが国を捨てると公言したのだ。

それを2人は納得しており、ヴェルトマー家当主とそれを支える妻となるべく覚悟を示している。

 

(ふう、俺も覚悟を決めるか。アルヴィス殿が俺を信じてくれているようだしな)

 

 

 

視点変更(アゼル)

 

 

 

(僕が当主になれば兄さんは出ていく。これは間違いない。殿下が王となれば必ずほころびが起こってくる。内乱、もしくは他国からの侵攻もあり得る。兄さんはグランベルの滅びは望んでいないから協力はしてくれると思うけど、それに頼っていたらいけない!!)

 

アゼルはアルヴィスから他国に関する情報も共有している。アズムールが存命の間は安心だが、クルトが王になれば状況が間違いなく変わると予測しているのだ。

 

(レックスがいてくれたら本当に心強い。でも無理強いは出来ない)

 

アゼルはレックスの返事を待つ。

 

「アゼル、当主になるのだから色々大変だろう。頼りになる相談役が必要ならすぐに用意するぜ」

 

レックスはそう言った。

 

「・・・・!!!!!それは助かる。レックス、力を貸してほしい」

 

「当たり前だろ!!俺はお前の親友だぞ」

 

「ありがとう!!レックス!!」

 

アゼルはレックスに駆け寄ると両手を取って頭を下げた。

 

ティルテュはその光景に微笑みを浮かべた。

 

レックスはニヤリと笑うと

 

「では話を聞かせて貰おうか」

 

「わかったよ、レックス。でもあまり聞いていていい話ではないからそれは先に言っておくね」

 

「何を今さらだよ。アゼル」

 

レックスは促した。

 

「実は殿下のことなんだけど・・・」

「父上の自殺に関しては・・・・・」

「兄さんは殿下には仕えたくないってね」

 

アゼルはアルヴィスから聞いた話をそのまま伝えた。ヴィクトルは自分の父でもあり、自身もクルト王子に思うところがないわけではないが、その感情は押し殺している。

 

「・・・・・・・・・・なんだよ。それ」

 

レックスはポツリと呟く。

 

 

 

視点変更(レックス)

 

 

 

「・・・・・・・・・・なんだよ。それ」

 

(次期国王が他人の奥さん寝取って、それを歪曲して美談にしていたなんてな。確かにそれはアルヴィス殿からすれば許せない話だな)

 

「アルヴィス殿が殿下に仕えたくない気持ちが分るわ」

 

レックスはフウと息を吐く。

 

「兄さんが殿下を許せないのは、父上が自殺をしたときに見つけた手紙について嘘をついたことだよ」

 

アゼルは冷たく話す。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

レックスはアゼルの言葉に息をのむ

 

「多分正直に話して謝っていたら兄さんは許していたと思うよ。でも殿下はそれをしなかった。兄さんはその時点で見切りをつけたってところかな」

 

「兄さんはすでにシギュン様と殿下の関係に気づいていた。それに関する不穏な空気もね。しかしその当時は7歳だった。自分にできることはほとんどなかったって言っていたよ」

 

アゼルはそこまで話すと言葉を詰まらせる。

 

それを見たティルテュはそっとアゼルに寄り添う。

 

「僕は何も知らなかった。兄さんの苦しみも殿下の所業も何もかもね。それなのに僕は・・・・・」

 

「アゼル!!!アルヴィス殿は誰にもその感情を見せようとしなかった。特にアゼル、お前には見せないようにしていたと思うぜ」

 

レックスは強く否定して続ける。

 

「お前には憎しみの心を持ってほしくなかったんじゃないのか。自分が抱いたようなものをな」

 

「アゼル、私もそう思う。アルヴィス様はいつもアゼルを大事な弟として可愛がってくれていた。私はそばで見ていたから良く分かるわ」

 

ティルテュも同意する。

 

「うん、そうだね。兄さんはいつも僕たちを見ていてくれていたね。レックス、ティルテュありがとう」

 

アゼルは二人に笑顔を向けた。

 

(アゼルが憎しみに染まっていくところなんざ見たくないしな。そこはアルヴィス殿がきちんと育ててくれたんだな)

 

「しかし、アゼル、お前がヴェルトマー家を継ぐってことは、殿下にお仕えするのか?ティルテュもそれは構わないのか?」

 

レックスはふと疑問に思ったことを口にする。

 

「国が不安定になると困るのは民だから、個人的な感情は抜きにして一生懸命にやっていこうと思っている。兄さんはもう十分に国に尽くしたと思う。当主になって15年だよ。しかも7歳からね」

 

「私はアゼルを支えていくって決めているから、誰に仕えるとか関係ないわ」

 

アゼル、ティルテュともに迷いの表情はなかった。

 

(二人は腹を括っているってことか。これは俺も頑張らないとな。)

 

「レックスはどうなの?この話を聞いて?」

 

「俺はそもそも殿下とかかわりがほとんどないからな。話を聞いて正直驚いたがね。ただ今後より一層距離は取りたくなったな」

 

「無理はしないでいいよ。感情に囚われすぎるとろくなことにならないよ。情愛が過ぎて暴走したどこかの王子さんみたいにね」

 

アゼルは誰を指しているのか丸わかりの不敬を言葉に出した。

 

(アゼルも言うようになったなあ・・・・・・)

 

妙なところでレックスは感心した。

 




最後までお読みいただきありがとうございました。

アゼルにとってもヴィクトルは父親になります。そのあたりの心境も書かせていただきました。彼にとってティルテュの存在は大きい。そのあたりを今後も描いていく予定です。ゲームではシルヴィアとカップルリングさせたりしています。

ティルテュのカップリングであればアゼル、レックス、そしてレヴィンですね。アーサーがスタート面からフォルセティで無双できるから楽なんですよね。追撃無くても強い。

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