平和なグランベルの日々を目指す   作:ロサド

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プロローグ(アルヴィス25歳)

「ようやくここまでくることができた」

アルヴィスは呟いた。

(それにしてもいい形で関係性を作っていけたな。最初はどうなることかと思ったが・・・)

自身の姿を鏡で見る

(本当にアルヴィスなのだな・・・。事故で死んでしまって転生してからかなり立ったが、まだこの姿を見ると自分ではないようだ)

思ってから首を左右に数回振る。

(何を考えている!私はアルヴィスとして決断したことを実行に移す!!ここで止まれば私を信じてくれた妻とアゼルとティルテュに何と申し開きをすればいい!!)

改めて自身を見つめ、薄く笑った。

「さて、始めようか」

アルヴィスは噛みしめるように言い、それまでのことを思い返していた。


1.転生(幼少期5歳)

(貴族というものは面倒なものだな。しきたりから作法など非常に細かいルールが多い)

 

アルヴィスは自室にて自分の状況を整理しながら考えを巡らせていた。

 

(それにしてもアルヴィスに転生してしまうとは。しかしこちらの世界の知識があり、転生前の記憶が残っているのが唯一の救いか)

 

アルヴィスは転生者である。

 

3歳時のアルヴィスに転生し、現在は5歳。

 

ここは「ファイアーエムブレム聖戦の系譜」の世界。

 

スーパーファミコンで発売されたゲームでアルヴィスは主人公の敵役として登場する。

 

このゲームは2部構成になっていて1部では「シグルド」、2部は息子の「セリス」が主人公である。

 

1部でアルヴィスは「シグルド」をだまし討ちにて殺害し、2部は息子の「セリス」に討たれる。

 

転生前の私はこのゲームをかなりやりこんでいて何回もクリアーしている。

 

理由はこのゲーム特有のカップリングシステムで1部では特定のカップリングによる会話イベントがあり、2部で登場する子供の能力やスキルはそのカップリングによって決まる。子供の代もカップリングによる会話イベントが存在する。

 

私はその会話イベントの完全制覇を狙ってひたすらプレイしまくったのである。

 

(クリアーに60時間以上もかかるし、カップリングに失敗した時の悔しさは今も忘れん。唯一出来なかったカップリングが「エーディン」×「クロード」だったな。

 

「セリス」についても何回「ラナ」とくっつけてしまったか)

 

このゲームは一本道のストーリーのため、これだけやれば知識も豊富になってくるし、細かな部分も覚えていたりする。

 

そのなかでこのアルヴィスというキャラクターは波乱万丈な人生を送る。

 

アルヴィスはグランベル王国6公爵家の1つヴェルトマー家の次期当主。

 

父は現当主ヴィクトル

母はシギュン

 

7歳のとき父親が自殺、母親が失踪。

 

当主を継ぎ結婚して、子供も設けるがその子供に妻を殺されてしまう。

 

(結婚も「マンフロイ」に仕組まれたもので異父兄妹でのものだからな。しかも他人の奥さんを奪ってしまってのものだしね)

 

私はこのアルヴィスに同情の比重が高い。

 

確かに自業自得の部分もあるし、当初は「酷いやつ」との認識もあったが、成人して改めてゲームをしてその気持ちに変化がおきている。

 

冷静に考えてみるとあのアルヴィスを作り出すのに一役買ったキャラクターがいる。

 

「クルト王子」だ。

 

「クルト王子」は大国グランベル王国を取りまとめるバーバラ家の現国王アズムールの息子。順当にいけば次期国王である

 

「クルト王子」はアルヴィスの母シギュンと恋仲になり、そのことを知ったアルヴィスの父ヴィクトルは自殺する。

 

ゲームでこの恋仲は美談として語られているようだが、他人の奥さんを寝取っている。

 

アルヴィスからすれば「クルト王子」の行動で両親を失ったのだ。7歳の子供にとっては親の愛情がまだまだ欲しい年齢だ。

 

今考えるとこの後のアルヴィスの壮大な計画の裏にはクルト王子に対する復讐もあったのではないかと推察する。

 

しかしそれが自身も他人の奥さんを妻としてしまったのは何とも皮肉なものだ。

 

「マンフロイ」が奥さんの記憶を奪っていたから知らなかったので仕方ないが。

 

5歳となり、両親や周りの人間関係もわかってきてこれからの行動を考える。

(父はゲーム上ではいい人物像ではなかったし、アルヴィスも父を憎んでいたようだが、私はそこまで酷い父とは思えないな。母はもともと貴族ではなかったのでその生活に慣れるのが精一杯に見える)

 

父ヴィクトルと母シギュンの関係は思っていたほど悪くはない。ただ他の当主に対する劣等感が強く感情が安定していない。公爵家でなければいい父親になっていたのではないか。

 

(貴族と平民の運命的な出会いから大恋愛後の結婚。聞こえはいいが、その後の生活はうまくいかないことが多い)

 

シギュンは貴族のしきたりや他の貴族との人間関係がうまくいっていないようだった。なにせ絶世の美女なのだ。女性陣からの嫉妬ややっかみは多い。そのあたりについてはヴィクトルもカバーしきれていない。

 

(ただ少し気になることがあって調べてみたが予想通りだったな)

 

この状況は今後悪化していくだろう。その黒幕も把握している。

 

(でも自分は回避に動く気はない。5歳の子供に出来ることは限られている。それに確認しておきたいことがある。それは悲劇が起きなければわからない)

 

その結果によって自身の未来を決めたいと思う。




最後までお読みいただきありがとうございました。
2話以降は文字数を増やしております。
書き溜めておりますが、1週間か2週間に1回ペースで更新を予定しております。

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