saoから”ログアウト”できたプレイヤー   作:土ラグーン

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こんにちは!アズマオウデス!
いや・・なんか最近疲れたな‥w

結構サクサク進んでいるので大丈夫かな?


友との死闘

「ロックァと、ユウコを、僕は殺すっ!!」

 ツバメは俺たちにこう言い放った。そして、ツバメは思いっきり地を蹴って俺に肉薄する。

「くそっ・・!」

 俺は、危うくバックステップで短剣をかわす。ALOでは、他種族ならPKがどこでも可能だ。つまり、シルフの俺と、ケットシーのツバメなら圏内でもHPを削ることができるのだ。

「なんで・・戦う必要があるんだ!」

 俺は、剣を抜かずに叫ぶ。ツバメは、何も表情を変えずに言う。

「決まっているだろう。須郷様のご命令だからだ。ロックァを殺し、リメインライトを回収し、須郷様の偉大な研究に捧げることが僕に命じられた命令だからだ!」

 俺は絶句した。あれほど憎んでいた須郷を"須郷様"とよんでいる上に、俺を須郷の実験に利用するだと?

「ツバメ・・お前、須郷をあれほど憎んでいたじゃないか・・?なのに何でだ?何でおまえは須郷に屈服した!?」

 俺がそういうと、突然ピックが俺の頬をかすめる。

「ふざけるなっ!!僕が須郷様に屈服しただと!?僕は須郷様に忠誠を誓ったのだ!あのおかたが神に成られるまで、私はこの身をもってお仕えするのみ!」

 ツバメは血相を変えて俺に叫ぶ。周りの野次馬どもは、「なになに?ドラマの撮影?」とか、「デュエルじゃね?どっちも頑張れー!」とかいっているが、俺は無視する。

「須郷が、神になる・・?どういう意味だ?」

「須郷様は人の意志をコントロールする技術の研究をなさっている。それが成功すれば、神へとなれるのだ!」

「・・そんな・・ことできるわけが・・」

「おまえたち愚民にはわからないだろうな!須郷様の偉大さは!」

 俺は、怒りにふるえた。ツバメはおそらく洗脳された。須郷の手によって。そんな技術の研究をしているのなら、容易いことだろう。

「・・ツバメ・・お前はだまされている。おまえはあいつの恐ろしさを知らない」

「だまれ!須郷様を汚す奴は、僕が許さない!お前を殺し、須郷様の生け贄にしてやるからな!」

ーー戦うしか、ないみたいだ・・

 俺は武器を抜く。それをみたユウコはかすかに息を詰める。

「ロックァ・・戦うの?」

「ああ・・じゃないとツバメは理解してくれないさ。アインクラッドではそうしてきた」

「・・わかった。取り戻して!」

「任せろ!」

 俺がそういうと、ユウコは俺から離れる。彼女をまた悲しませない。俺は負けるわけにはいけない。

「・・ツバメ。今のおまえでは、俺に勝てない。なぜなら、おまえを動かしていた心が今ないからだ!」

「なら、僕に負けたときに今と同じことがいえるか試してみなよ!」

 ツバメは、俺に飛びかかる。俺はがら空きになった胴を蹴りつける。ツバメは吹っ飛ぶが、宙返りで着地する。

(接近するときに飛び上がる癖は治ってないようだ・・つまり一応ツバメというデータや戦闘スタイルはあるということだ。完全に消え去ったわけではない)

 ツバメは小さく舌を打ち、ピックを投げつける。俺は目線からその軌道を読み、かわす。そして俺は低く身を屈め、地を滑空する。剣の間合いに入ったところで俺は下から剣を叩きつけた。ツバメは、短剣で瞬時にガードし、受け止めるが、どうやら、俺が振り切った勢いで左回転した際に迫ってくる左拳には気づかなかったようだ。果たして俺の拳を顔面に喰らい、のけぞる。その後俺は、胸の防具に向かって、右足で思いっきり蹴りつける。ツバメは尻餅こそは着かなかったが、さらにのけぞる。これで剣の間合いが保てた。俺は、右足を思い切り踏み込んで、ソードスキル《ホリゾンタル》のモーションを放つ。水平に奇跡が描かれるが、それは、途中で短剣に阻まれた。俺は一回後ろに踏み込んでバックステップする。ツバメは好機と見て、俺に迫る。いつも奴は、ピックを投げて牽制し、その隙で一気に接近して討ち取るというスタイルだったが、俺にピックが通用しないと学習したのか、ピックなしで接近した。短剣の間合いに入り、俺の懐めがけて短剣を突き出す。俺はからだをひねり、突きをかわすが、返し刀を喰らう。俺は大したことないと思い、反撃の一撃を開始しようとしたーーーー

 

「がっ・・・!いってぇ・・!?」

 

 突然、俺のアバターに熱感が生じる。チリチリとした感覚が俺を襲ってくる。俺は、反撃しようとした攻撃の手をやめ、斬られたところをおさえる。

「どうだい?ペインアブソーバレベル8の感覚は?」

「はっ・・?何しやがった・・?」

 俺は、迫り来る痛覚に耐えながら口を開く。

「要はね、痛覚を起こす機能さ。通常はレベル10で痛覚はいっさいなくなるけれど、レベルを下げると徐々に痛みが増大するんだ。レベル3以下になると、現実でも悪影響を及ぼすらしいからそこまではやらないけど」

 そういえば、俺との戦闘中にツバメが何か口を開いていたな、と思い出す。そのコマンドを言っていたのだなと気づいたときにはもう遅かった。ツバメの短剣がうなりをあげて俺をとらえる。俺はかわそうと身をひねろうとするが、体が言うことを聞いてくれず、短剣が刺さってしまう。

「ぐわぁっ!!」

 俺に新たな痛覚が襲いかかる。同時に俺を凍らせていく。その後も立て続けに短剣を喰らい、俺はもはや、声すら出せなくなった。

「どうした・・その程度か?」

 ツバメが俺を見下ろす。俺は、遅まじながら気づく。俺は、1年半もの間、痛覚とは無縁の生活を送っていた。もちろん負ければ死んでしまう世界だが、攻撃を受けることによって生まれる痛みなどは一切存在しなかった。当然だ。もし痛みが無制限に生まれたりしたら、誰も戦えない。だから俺は、多少の傷を受けてもやり過ごすという、戦闘の仕方を体で覚えてしまっていた。しかし、痛覚というのが存在すると知ったときは体が凍った。そもそも本来戦いにおいて、痛覚が存在しないなどあり得ないのだ。みんな痛みに耐えて、剣を振るい、銃のトリガーを引き絞る。それがふつうなのだ。しかし、俺は"偽り"の戦いを経験し続けたせいで、それが本当の戦いであると信じ込んでしまったのだ。 痛みは恐怖を生み、恐怖は体を縛る。それを俺は、数々の戦いのなかで唯一知らなかったことだった。

「もう、終わらせよう。じゃあね」

 ツバメは、うつ伏せになっている俺の背中に向かって剣を向けた。俺はただ、せまる切っ先しか見ることができなかった。短剣へと形を変えて襲いかかる殺気が俺の体へと進入しーーーー

 

 

 

「なっ・・!」

 

 

 俺は見つめていた。俺の眼前で、少女が両腕を広げて短剣の前に立ちふさがっているのを。そのまま何の抵抗もなく、少女は短剣に吸い込まれた。

 

 

「うっ・・いったぁ・・!」

 

 うめき声が聞こえた。彼女にも痛覚が適応されているのか?

 

「や、やめようよ!ツバメ・・!もう、こんなの・・!」

 嗚咽が聞こえた。泣いている。おれが・・俺がふがいないせいだ・・!

 

「どけっ・・!早くどけ・・!」

「いや!絶対退かない!もうやめて!」

 俺は、痛覚に耐える。俺は今何よりもいたい痛みを感じた。それは、人の涙だ。人が見せる涙ほど心に傷を付けるものはない。俺はそれに気づき、起きあがろうと、痛覚にあらがう。

 

「なら殺すまでっ!!」

「っ!!」

 ツバメがユウコの体に再び短剣を振りかざす。ユウコは腕を構えた。斬られるその直前ーーーー

 

 

ーーガスっ!

 

 

 いやな音がした。俺の左腕が落ちた音だ。ユウコを、剣の捨てた俺の右腕で飛ばし、俺が傷を受ける。もちろん灼けるような痛覚と熱はあった。だが俺は、もうそれを意識することは許されない。

 

 

「頭を冷やせっっっ!!!ツバメェッッッ!!!!」

 

 

俺は思いきり地を踏み込み、右拳で殴りつけた。うなりをあげる拳は、ツバメの左の頬に刺さった。ツバメは為すすべもなく、数メートル吹っ飛んだ。

「はぁ・・はぁ・・」

 俺は息を荒くした。ツバメはしばらく動かない。やがて頭を少し動かした。やがてその体はゆっくりと持ち上がる。ツバメは頭をかきながら、周りを見渡していた。

 

 

「・・ここは・・どこなんだい?」

 

 

 穏やかな声が聞こえた。目が黒い、優しい少年がいた。

「ツバメ・・戻ったんだな!」

「・・!ロックァ!」

 俺たちは駆け寄り、抱き合った。ユウコもツバメに抱きつく。

「ごめん・・2人とも・・!傷つけてしまったね‥」

 俺は頭を振る。

「いいんだ・・おまえの意志でそうしたわけじゃないだろう?」

「いたかったけど・・よかったぁ・・取り戻せたんだね‥!」

「うん・・そうだよ・・ありがとう二人とも・・!」

 俺たちはずっと抱き合って泣いていた。さっきまでの死闘を忘れるかのように。

 

 

 

「ほんとうにごめんなさい!」

「もうあやまるなよ・・悪いのはツバメじゃない。」

「けど・・」

「もうこの話はおしまいだよっ!ね?」

「・・わかった。もうおしまいにするよ。」

「それでよしだ。」

「・・突然なんだけどさ、僕、今の自我を保っていられるのやっとなんだ。だから手短にはなす。」

 ツバメのきっぱりとした声に俺たちは口をつぐむ。

「僕は、須郷に洗脳された。そして、最初に命令されたのは、君たちを殺し、リメインライトを回収する事だった。おそらくあいつの実験に使うんだろう。」

「まさか・・人体実験なの?」

「ああ・・そうさ」

「ふざけるな・・あのやろう!」

 俺は、地面に拳を叩きつける。

「だけど僕はこんなの絶対に許さない。だから僕は、須郷と差し違えてもあいつを殺す。」

「・・けど奴は、あんなに強いおまえをいとも簡単に洗脳したんだ・・勝てるわけーー」

「それでもやるんだ。・・まあどうせ僕の現実の体は死んでいるみたいだしね。ログアウトできないのもうなずけるよ」

「ば、ばかな・・」

「でも・・死んだらここにいないでしょ‥?」

 俺は意味が分からなかった。死んでいる?でもいまこのゲームにいるじゃないか?

「正確にはね、僕は意識だけ生かされているという感じなんだよ。けど、今度負けたら確実に僕は死ぬと思う。だけど、僕はがんばる」

「・・・・」

 もう、俺もユウコもなにもいえなかった。

「じゃあね・・僕は行く。・・それと2人にこれを渡す。」

「・・?」

 ツバメは、俺たちに青い宝石を渡す。

「これは、僕が持っている最高のアイテムだ。僕が死んだときに使ってくれ。もし死ななくてももう君たちの前には現れることはできない。だから形見として、頼む。」

「そんなのいやだよっ・・!なんで・・なんでいっちゃうの!?」

「ごめんユウコさん・・僕は、やらなきゃいけないんだ。・・ロックァ。ユウコさん。」

 ツバメは涙を流す。今生の別れだと俺は未だに理解していなかった。

 

「いままで・・っ・・ほんとうに・・あり・・がと・・うっ」

 

 ツバメは、泣きじゃくるが、すぐに涙を拭い、気丈になる。

「じゃあいってくるよ・・今までありがとう!」

 

 俺は手を振った。ユウコも涙を拭いて手を振る。今生の別れなもんか。俺たちはまたいつでもあえる。そう信じて、俺たちは、ワープして消えていく少年を見送り続けた。いつものように・・。

 

 

 




次は、再びゲ須郷さんとの戦いです!それとロックァ君が・・!?


毎度毎度感想などお待ちしております!

それと、あだ さんのオリキャラは次出せると思います・・!楽しみにしてください!

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