saoから”ログアウト”できたプレイヤー   作:土ラグーン

22 / 40
こんにちは!アズマオウデス!
 今日は世界樹攻略の話ですね!ちょっと簡潔すぎたかな?


天蓋の向こうへ

俺たちが今挑んでいるのは、ALO史上、最難関のクエストだ。達成条件は至極簡単で、円柱状になっているドームの天蓋を目指せばいい話である。そして、そこにわらわらとわいてくる、3メートルはある守護騎士をくぐり抜けなくてはいけない。

 現在、このクエストをクリアした者はいない。今まで、どんな大軍団を形成しても無数に湧いてくる守護騎士に阻まれて全滅してしまったケースは数知れなかった。要因は2つある。まず1つ目が尋常ならざる守護騎士の出現量だ。ふつうのゲームの数倍近いペースで湧いてくるらしい。2つ目が、1種族のみでしか挑めないということだ。そういった条件はないが、このクエストの報酬としては、妖精王《オベイロン》にあって、高位種族アルフに生まれ変われることだが、先に到達した種族しか、アルフに生まれ変われないらしい。すなわち、多種族混合編成をしても、すべての種族がアルフに生まれ変われるわけではないので、難しいのだ。

 そんな難関クエストを、俺と、ユウコ、そしてALOでできた友達ツバメの3人で挑んでいる。クリアできる確率はほぼ0パーセントだ。ただ、俺は、あきらめない。どれだけ守護騎士がわこうと突破すればいい。そう思って挑んだのだがーー

 

 

「うおらぁ!!」

 俺は迫り来る守護騎士の群を一斉になぎ払う。一気に炎に包まれて消滅するが、まだ次がある。俺はさらに上空へと上がり、道をつくる。ツバメはピックを投げて牽制し、たくさんの敵のタゲを一度にとって、ある程度集まったらユウコの広範囲攻撃で殲滅するという戦法を用いていた。

「ツバメ!ユウコ!スイッチだ!」

「了解!」

 俺はいったん後方に下がり、代わりにツバメが前方にでて守護騎士の殲滅を行い、俺とユウコは支援と援護に回る。ツバメの正確な短剣技が、守護騎士の心臓を貫き、一撃で葬った。

 

 俺たちの作戦はこうだ。パワーが高い俺がまず前衛を一人で受ける。そして、俺が取りこぼした奴を後衛のツバメとユウコで倒す。また、ツバメの情報によると支援ばかりしている後衛もターゲットにされるらしいので、ツバメの得意な投剣スキルで、敵を集めて、ユウコに擦り付けて、魔法属性をあげているユウコが広範囲技で殲滅するというさくせんもどうじにたてた。そして、俺が殲滅し終わったら「スイッチ!(交代!)」といって、俺は後方に回り、ツバメの回復に専念する。ユウコはそのまま魔法攻撃を続け、ツバメが前衛に行く。これを繰り返して徐々に前に進むという仕組みだ。

 

ーーしかし、半分ほど進んだところで異変が起こった。守護騎士がスペルを唱え始めたのだ。見ると、いつのまに弓を携えていてキュウッとしまった音の後、一斉にヒュンヒュンと放たれた。

「ユウコ!シールド頼む!」

「わかった!」

 ユウコもスペルを高速詠唱して、前衛をつとめていたツバメを緑色のバリアが覆う。矢はすべてはじかれるが、ユウコのMPも結構危ない。

「俺がしばらく矢を防ぐ!ツバメ、かわってくれ!」

「え!?でも・・」

「大丈夫だ!早くしろ!」

「・・わかった。任せたよ!」

 ツバメは素早く後方に下がり、ユウコにMPポーションを差し出す。

「早くのんで!せいぜい一回だけだ。」

 ユウコは素早く飲んだ。しかしポーションというのはやっかいなもので、徐々に回復していく。つまり全快するのに時間がかかってしまうのだ。その時間を俺は稼ぐために前衛をかってでたのだ。

 再び、守護騎士の矢が襲いかかる。無数の矢が俺を射抜かんとうなりをあげてくる。俺は、剣をくるくる風車のようにまわしてソードスキル《スピニング・シールド》のモーションを行う。無数の矢は、半透明な円盾に吸い込まれ、むなしく地面へと落ちていく。

「回復完了!」

 ユウコの叫びが聞こえる。

「了解!ツバメ、スイッチだ!」

「わかった!」

 ツバメは俺に親指を立てた。グッジョブ、といいたいらしい。俺も同様の動作をした。

「よし、ユウコ。最終フェイズだ。」

「・・うん!」

 俺たちは、ドームの4分の3の高さまで来ていた。上を見上げると、白黒入り交じった、雲が現れていた。すべて守護騎士だ。出現率がすごすぎる。思わず、身が震える。

ーーだが、俺はユウコにだけ話しておいたのだ。俺たちだけの作戦を。

 

 昨日のことだ。俺は自宅で考えた。

(ネットのスレでみる限り、このクエストは最難関だ。おそらく俺が今までプレイしていたゲームの中で一番だろう。クソゲー認定されてもおかしくはない。すなわち、俺たち3人そろってオベイロンにあうのは不可能だ。)

 俺は、さらにスレをみる。

 

『まずPOP率が異常だろw』

 

『絶対ゲームバランスイカレてるだろ』

 

『つか、抗議文どうなったっけ?』

 

『だめですよ・・当ゲームは、適切なゲームバランスで運営されておりますというおきまりな文章だけでした』

 

『もうね、このゲームの難易度ス○ランカー越えてるwwwww』

 

『俺もクソゲー遊びまくったけどこれ以上難しいゲームないわwww』

 

(・・ならツバメだけを行かせよう。俺たちは捨て身で道を開き、ツバメだけ世界樹のてっぺんに行かせればいい。もとより俺たちはツバメのお供だったんだ。だが・・)

 俺は首を傾げる。

(ツバメはきっと反対するだろう。だが、そうしなければ突破はできない。やるしかないんだ!)

 そうおもい、俺は優子にこのことを電話で伝えた。優子は了承した。そして、今日、俺はこの作戦を実行する。ツバメだけを、世界樹ヘと行かせるために!

 

 

「いくぞ、ユウコ!MP全部使え!俺がタゲをとる!」

「了解!」

 俺は突然前衛へと躍り出た。

「ちょ・・!?僕が前衛だよ!?」

「まあみてろよ」

 俺は、自らにスタン耐性をあげる魔法をかけ、ソードスキル《ヴォーバル・ストライク》のモーションで守護騎士の大群につっこむ。一瞬だけくぼみができたがすぐに、俺を飲み込んでしまう。

「ロックァ!?待ってろ今助けに・・」

 同じく大群につっこもうとするツバメをユウコが掴む。

「ユウコさん!なにを・・」

「だいじょうぶ」

 ユウコの真剣な眼差しに驚いたツバメは、迷っていたがつっこむことをしなかった。

 一方俺は、四方八方守護騎士に埋め尽くされていた。しかし、俺は現時点での最強技のスペルを詠唱していた。たくさんの魔法陣が俺を包み込み俺の周りに竜巻が起こる。それも3つだ。最初は手のひらサイズしかなかった竜巻が次第に大きくなっていく。そして俺の周りを回転し始めた。ゴオオオォと音をたてて回る竜巻の渦に触れた守護騎士は、あっけなく散っていく。だが、まだ俺はスペル詠唱をやめていない。スペル詠唱がすべて終わった後、渦が、爆散した。回りながら広がっていく渦は、守護騎士を飲み込んで、無数の紫の炎を残した。これで天蓋が見えた。隙は一瞬だけだ。

「いけっ!ユウコ!!」

 するとユウコはツバメに向かって、魔法を放つ。ユウコの体から、見えないエネルギーが爆発し、ツバメを上空へとぶっ飛ばす。

「な、なにを・・」

「行って!!ツバメ!」

「え!?」

 ユウコが必死に叫んでいる。

「き、君たちは!?」

「俺たちのことはいいから行け!!おまえだけでも行くんだ!」

 ツバメは困惑した。そしてようやく俺たちの意図を理解したようだった。

(そうか・・ロックァがつっこんで、敵を集めて広範囲魔法で消し去ってユウコさんが僕をとばすという作戦か・・)

「ぐずぐずすんな!!いけっ!」

「・・わかった!ありがとう!」

 ツバメはほほえんだ。そして厳しい表情で天蓋をにらみ、羽をふるわせて飛び立った。

「稼げても30秒だけだ。いけっ!」

 俺は叫び、わらわらとわく守護騎士を片づけた。ユウコも俺の支援を行っている。

「う、おおおおおおおおおおぁあああああああああぁっっっっ!!!!」

 ツバメは絶叫した。まるでどこまでも高みを目指す勇敢な鳥のような感じだった。彼の行く先を封じようと守護騎士が現れるが、短刀でなぎ払う。そして、ゴウッと音を立てながら、飛翔を続けた。やがてその小さな点が、堅く閉ざされた天蓋を抜いた!そして、その点はどこまでもとんで、見えなくなった。

 

「終わったな…」

「終わったね」

 俺たちは、脱出すべく、急降下ダイブを始めた。俺がユウコを抱いて、最高速度で何とか攻撃をくぐり抜けた。途中矢が刺さるが、気にせずに急降下して、何とか光が射す出口へと脱出した。そして俺は、うまく着地できず、うつぶせになった。俺は優子を腕からはなし、俺はそのまま地面に寝転がった。

「私もう、くたくた・・HPもう赤だよ~」

「俺も似たようなもんだ。・・成功だな」

 俺はユウコと腕をあわせた。

「うん・・私一回落ちて休みたい」

「実は俺もだ。・・落ちようぜ」

 俺はウィンドウを操作して苦笑する。もう夕方の6時だ。後少しで夕食だ。俺たちが世界樹に挑んだのは、午後3時だ。3時間以上も戦ったんだなと思う。俺みたいなヘビープレイヤーは耐えられるが、ユウコは耐えられなかっただろう。けどそれをこらえてよくやってくれた。

「お疲れ様…ユウコ」

「うん・・おつかれ」

 2人は同時にログアウトボタンを押した。やりきった顔を浮かべたが、やがて互いの顔が薄れ、意識が消えていった。

 

 

 

 僕は、空中を駆けている。大気圏を突き破るような風切り音と灼熱感が半端じゃない。やがて見えたのは、堅く閉ざされた天蓋だ。開くかと思ったがーー

 

 

ーーガキイイン!!

 

 

 僕はこの音が何だったかわからなかった。甲高い金属音であると知るのに5秒かかってしまった。

「開かない・・!?なんで!?」

 僕は何度も天蓋の扉を短剣で打ち付ける。しかしびくともしなかった。破壊不能なのか?それとも何かクエストを見逃しているのか?必死に頭で考えたが答えが浮かばない。その間にも、守護騎士が僕を取り囲んでいく。僕は担当を握る力が抜けた。落とさなかったが、振れるほどの力は残されていない。守護騎士が動き出そうとしていたそのとき、

 

『システムにログインします』

 

 天蓋に突然紫色のウィンドウが開き、文字が現れる。どうじに守護騎士たちの動きが完全フリーズしていく。

 

『プレミアムアカウントを認証しました。』

 

 そう再び文字が現れたのだった。僕は何がおこったかわからずきょろきょろしていると、僕の足下に青白い円が現れる。

 

『ワープします。お気をつけて』

 

 僕はただただ意識が消えていくのを感じるしかなかった。

 

 

 

 

 

「ククッ!まさか"あいつの息子"がいるとはねぇ・・」

 粘つくような笑いが、研究室の中に響きわたる。真っ白な部屋にたくさんの装置がおかれており、部屋の中央には、脳があった。その脳には電極がつないであり、何かの研究をしているようだ。

「まあ、僕の元にきたとしても、記憶消去はしたし、大丈夫だとは思うがね。駒として仕立て上げるのもいいか・・」

 男は、カツカツとブーツをならしてあるく。

「どれ、"あのゲーム"の様子はっと・・ほほう・・現在は68層か。まだ終わりそうにないな。ただ、経路はすでに完成しているから問題はない。全員さらうのは不可能な話だ。だが、この調子なら300人近くはいける・・。ヒッヒ!」

 不気味な笑いをたてる男は、モニターを開く。

「ツバメ・・くるならきて見たまえ・・僕の操り人形へと変わるんだ・・」

 そういうや、男はパソコンを立ち上げて、キーボードを打つ。

「・・ツバメ。僕の開発したアバターに勝てるかな?このアバターは、君の父さんだけどね‥」

 男はいろいろと情報なりなんなり付け足していく。

「何をつけようかな‥あっ!"あの世界"の"あれ"をつけてみよう!」

 男はウィンドウにある、《SAOデータ:スキル》をクリックしていく。さらにそこから《ユニークスキル》を選択する。そして、10種類あるそのスキルのうちの一つを選んだ。

「完了だ!」

 男は、満面の笑みを浮かべながら中央にある脳に話しかけた。

「雨宮さん・・あんたの息子がどれだけゲーム脳になったか、見せてやりますよ。楽しみにしてください」

 話しかけられた脳は何も言わない。男は、イヒッと笑って、部屋を出た。

 

「さて、部屋でも作っておくかな。ショーが楽しめるくらいの部屋を、ね」

 




・・男さん相変わらずゲスイなあ・・まあ誰だかわかるよね?w

次は、ツバメ君とゲス男の因縁や過去についての話です!どうぞよろしくお願いします!

感想、評価、オリキャラなど募集してますので!お願いします!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。