ノーゲーム・ノーライフ ―神様転生した一般人は気づかぬ間に神話の一部になるそうです― 作:七海香波
さて、そんなことはともかく。今回からようやく獣人種とのゲームに入ると言うことですが――当然、ただ原作をなぞるだけではつまらないと言うことで、幾つかの要素を追加させて貰いました。
ついでに黒からのジブリールへの愛の告白(?)も……?
色々詰まった第八弾、それではどうぞ。
黒は突然のショックに気を飲まれつつも、すぐに気を取り直して辺り一面を見渡した。
五人の上に広がる無限の蒼穹。その下に生み出された灰色の建造物の密集地。凍り付いた氷河のような静寂。電気信号が交わりあって創られた装飾。――そして、豊かな毛並みの獣耳を付けた人々の画。
……どうやら僅かに眺めただけで判断してしまったのは失敗だったようだ。
冷えた頭の中でもう一度思考を巡らせてみれば、この場所は黒の記憶にある東京の姿とはやはり違っている。一見同じのように見える背景だが、異世界らしく所々のデザインが異なっている。
すなわち、ここは俺たちの知っている“東京”ではなく、あくまでそこに類似しているだけのステージに過ぎないのだろう。
こちら側の最初の地点は何故かトラックの上になっていたようで、ふと気付いて周りを見渡せば、近くには同じように仮想の肉体を得た四人が既にいた。
その二人の足下に残りの二人――則ち、このゲームの
「俺たちもうダメだ。すまん人類種は終わりです」
「ガクガクブルブル」
二人は小さく、それでいて三人に聞こえる声でそう呟いた。
そんな二人の様子を観察してみれば――唯単に、震えていた。突然大気中へと引き上げられた深海魚のように、慣れない世界に置かれたことによる影響からか、その身体が断末魔のように細かい振動を目に見えるほどに刻んでいた。
白は膝を抱えて座り込み、空は何故か土下座の体勢を取りながら、どちらも三人のように目を周囲にやることなくこの現実を直視するのを避けていた。
……さて、どうしようかこの二人。
自業自得でふさぎ込む空白をどう目を覚まさせてやろうと考えた――その時、頭の中に一つの案が閃いた。
「あのマスター?何故そうあくどい笑みを浮かべていらっしゃるので?」
「まあ見ておけジブリール。起きろ
「げふっ!?」
とりあえずどっちかと言えばまだ状況の飲み込みが早いであろう兄の方へ向けて、俺は足を振り抜いた。土下座していた空、その腹に爪先を食い込ませるようにして勢いよく宙へと蹴り飛ばした。
「蹴り飛ばしましたわー!?」
黒の思い切りの良い行動に、そうステファニーが叫ぶ。
空は二メートルの高さまで打ち上げられ、頭から地面に落下する。
最終的に彼はトラックに叩きつけられるようにして屋根に顔面から衝突した。……いくらニートでも、これくらいなら死にはしない。と思う。仮想空間だし、痛みはあっても実害はないだろう。
「オイ、前にも言ったろ。ここはゲーム盤だ。悪いが二人の想像してる日本の首都じゃないぞ。だからさっさと空、現実を見ろ。そして頭を動かせ。んで白ちゃんを説得してくれ」
そう声を掛けた俺に、空は突然面を上げる。
「――マジか」
「大マジだ。別にお前らに対する精神攻撃とかではない……とは言い切れないが、とりあえず、しっかり目を覚ましてもうちょっと注意深く周りを見ろ。それに見た限り、お前らが苦手な他の人間はいないみたいだぞ。それでも上手く飲み込めないんなら――」
ジブリールに天高く投げさせて全体を俯瞰させても良かったのだが。
と、思わせぶりに彼女の方を目で示した。
何を言わんとしているのか分かったのか、空は慌てて顔を真っ青にして「分かった」とコクコク頷く。彼女に任せたら空どころか成層圏、果たしては宇宙まで行くとでも想像したのだろうか。……実際その通りなのだけれども。
と、ここでいのの声のナレーションが入る。
同時に、小さめのスクリーンが黒たちの目の前に映し出された。
『驚かれましたかな?ようこそ、ゲームの中の世界へ』
「驚くどころか約二名瀕死状態に陥ったが」
とはいえこの状態はさすがに自己責任というか自業自得というか……何にしろ空白本人達が悪いとしか言い様がない。
そうとは知らず、いのは黒達に向けて軽く謝罪し頭を下げた。
『それは失礼致しました。――ですが、ゲームの決定権はこちら側にありますので。せっかくのこの機会、未知のゲームを体験して貰おうという趣旨も含んでみました。ちなみにゲームはこの仮想フィールドにて行われます』
その趣旨は、裏を返せばこちらが一切EXP0かつ予備知識すらないゲームだということでしかないのだが?
ステフは当然触れることすら能わず、空白の世界には記憶に寄ればVRは一般的には普及していない。精々DSとPSPが掛け合わさったDSPという媒体が限界だった。黒とジブリールは具象化しりとりにおいて魔力で創られた平行世界を行き来するという似たようなゲームを行った覚えがあるが、それはこの仮想空間とはまた違う。
全く、嫌みなのだろうか。きっとそうに違いない――というか絶対そうだ。口周りの筋肉がピクピクと動いているし。笑いを堪えているな。別にルール違反でも何でもないからこちらは何一つ口を挟むことは出来ないことを、分かってやっている。
ちなみに正直最初からマトモに動けるのは黒だけしかいない。
笑いを抑えた画面向こう側のいのが、側で縮こまっていた空の方へと向けられる。
『ちなみに何故そこまでショックを受けておられるので?何かご不満でも?』
そう問いかけたいのに、空が様子を一変させる。
いのの顔が映し出されるスクリーンに目一杯顔を寄せ、憤怒の表情で白の気持ちも合わせて大声で文句を叫んだ。
「不満オンリーだよこの野郎!なんでわざわざ異世界に来てまでこんなトラウマ一杯のステージでゲームしなけりゃならねーんだよ!もはや精神攻撃の域だよ!それ以上でもそれ以下でもねぇ!俺たちに対する嫌がらせかっ!」
「「「(俺たちって、お前ら(貴方たち・お二人)の中にこちらを含まないでくれ(下さい)……)」」」
別に黒達三人は基本どんなゲーム会場でも不満はない。
流石に、Gばっかのステージとかだったら拒否反応を起こすが。
『……一応皆様の年齢も鑑みて、同年代の若者に人気のある《SFステージ》にしてみたのですが。まあご安心を。ゲームの中と言うことですので、最低限の安全だけは保障されて御座います』
画面内のいのは不思議そうな顔をしながらも、説明を続ける。
どうやら彼にはこの二人の度を超えた対人恐怖症が理解出来なかったらしかった。
確かに、空白を知らない人間からしたらこの二人の現状は理解出来ないだろう。
いのによる一応のステージ選択の根拠を聞いた空は、それなら仕方無いと納得しながら、自分の身体の様子を再度確認する。
「む、そう言えば日の光を浴びても何とも無いな……」
「吸血鬼かお前は」
いのの言葉を受けて真っ先に考えることがそれか……。
黒は余りの空の身体のスペックの低さに、若干の頭痛を覚えた。素で太陽が無理だとは、そもそも生物学的に大問題なのだが。いくらゲーム漬けの日々を送っているとしても有り得ないだろう。
一体彼らの身体はどうなっているのだろうかと疑問を覚えた。
「って、それより白!おい白!」
一通り自分の事を確認し終えた空は、思い出したかのように白の側へと駆け寄る。
体育座りで目が焦点を結んでいない白の肩を掴んで、激しく揺さぶりながら声を掛けた。
「落ち着け、ここは連中が勝手に想像して創りだしたゲームの中だ!」
「……ゲームの、中……?」
空の声で、白は精神を落ち着かせていく。
「考えてみろ、舞台が現代日本とかって設定なら幾らでもあるじゃないか、なあ?」
「む……」
兄にそう言われ、焦点の合っていなかったその赤い瞳が再び明瞭な視界を取り戻す。
そして周囲を軽く見渡した――誰も存在せず、外形だけをそのまま再現したような東京もどき――それを見て、ようやく彼女はその頭で現状を飲み込んだ。
ようやく普段の様子に戻った白を見た空は笑って手を差し出し、白はそれに掴まってゆっくりと腰を上げる。その互いを見つめる黒と赤の瞳が交錯し、自分/相手の心が一体と成る。
次に顔を覗かせた「
「うし……それじゃあ爺さん、話を続けてくれ」
『ゴホン。それでは皆様、足下の四つの箱をご覧下さい』
いののセリフと同時に、五人の足下に銀のアタッシュケースが淡い光のエフェクトを伴って出現する。その形は二通りで、ステフ・空・白には通常スケールのケースが、黒とジブリールには前者よりも横長の形をしたケース。
一体なんだろうかと思いつつ、五人は取っ手の側に付いている二つのロックを開け、開いて中を覗き込んだ。
そこに収められていたのは、たった二種類の、――武器だった。
空白にはシンプルに可愛くデフォルメされた『銃』。
黒には同じく女の子向けにデフォルメされた『剣』。
黒は腰を落として剣の柄を握り、刃を下にしてそっとそれを持ち上げた。
刃先をゆっくりと持ち上げて身を水平に置き、その峰に沿うようにして片腕を添える。……刃渡り55センチと言った所だろうか。流れるように波立つ刃紋といい、僅かに湾曲した刀身といい、楕円形の鍔といい――どことなく日本刀を感じさせる作りになっているな、と黒は思った。
それでもプリキュアなんかに出てくるほどにはデチューンされており、当然刃は潰されているのだが。
一通り配布されたそれらを眺め終わると、いのによる説明が再開される。
『皆様には迫ってくるNPC達を――その銃で撃って頂き、その剣で斬って頂きます』
「撃つのかよっ!?」「斬るのか!?」
突然のいのの言葉には、さすがの黒も横槍を入れる。
いくらこんな剣とはいえ、いきなり相手を斬ると言われては流石に驚く。
『はい。そして、時に爆破し、時に罠に嵌め――メロメロにして頂きます』
「一体どうやったらそんなゲーム内容になるのか検討もつかないぞオイ」
「というか内容がさっぱり想像できないんだが」
黒と空がそれぞれ思った通りのことを口に出す。
『メロメロにされた女の子は皆様に愛の力を託して消えていきます』
「……引くわー」
「なるほどドMか」
「言い方が鬼ですわねっ!もうちょっとなんとかならないんですの!?」
空は何処か気の抜けた表情をし、黒は何故か納得したような顔をした。
そんな黒のセリフに、ステフがいつも通りツッコミを叫ぶ。
『その武器の名は『メロメロ
「……ださい」
「これが剣とは……獣人種の目もついに完全に完璧に腐り果てやがりましたか?」
「というかその銃はどっからどう見てもドライヤーだろ。銃には見えん」
余りに安直な武器のネーミングに、これまで黙っていた白すらも声を上げる。
『ちなみに、皆様方の誰かがいづなから攻撃を受けますと、いづなの愛の奴隷になります』
「……あのさ、そこは寝返るって言おうぜ」
「――(´∀`)」
「ああ、ついにマスターが理解不能の言語を発すまでに!?」
このゲームもうちょっとどうにかならないものか。
『世界中の女の子達が自分に振り向く中、想い人だけは振り向いてくれない!その愛の力を伝えてイチャイチャするのが、このゲームの目的となる!――以上ッ!説明書より!!』
「よーするに、片ッ端から女の子達をフッてフッてフッてまくれってことか……一見可愛らしいゲームだが、なんとも白の情操教育によくねぇゲームだな」
呆れて物も言えない、といった風に首を振る空。
その兄を下から見上げて、半眼で白。
「……今更?」
「グハッ!!そ、それは言わない約束だろう妹よ……」
空は腹を押さえて屋根の上に倒れ伏した。
「お前一体どんなゲームを白ちゃんにやらせてるんだ空……?」
ついでとばかりに黒も半眼で空の背中を見下す。
くいくいと袖を引っ張りながら「――R-18とか……知らない…」と白が言う。次の瞬間、空を見る黒の視線は絶対零度へと至った。
そんな空気にあえて触れず、いのは話し続ける。
『とまあ、これでほとんどのルール説明を終えたわけですが』
その一言に、黒がひとまずこれまでのルールを纏める。
「まあ要するに、向こうはハーレムエンド狙い、こっちはアレの単独狙いってことか?」
『ええ、そうなりますな――ああ最後に一点。そちらの仮想空間では精霊は使用できないよう設定されていますので、
「いや、やりながら確認する……と言いたいところが、一つだけある」
分かりやすいように人差し指を掲げ、黒は画面内のいのに問いかけた。
『なんですかな?』
「このゲーム、それ以上に重要な要素はないのか?ほらあるだろ、ハードの説明にあってソフトにはない超超基本的なシステムとかさ」
『そういう類のものは御座いません。ただ身体を現実と同じように動かせるだけ、となっております』
あっさりそう言い放たれたいののことばに、「ならいいけど」と黒は引き下がった。
「ほら起きろ空、もう一発喰らわせるぞ」
右足を振り下ろす素振りを見せると、空は慌てて起き上がる。
よほど先ほどの黒の蹴りが堪えていたらしい。彼は若干怯えた様子だった。
「お、落ち着け黒。お前またアレやったら次は起きられる自信はないぞ」
「それはやれという解釈でいいのか?」
「よくねぇよ!」
思わせぶりに軽くラブラブ
「そんなことよりいい加減、実際のゲームを体感してみてはいかがでしょう?……どうやら、相手は待ってくれなさそうでございますし?」
既に剣を片手に下げたジブリールがそう言ったところで、残りの四人がトラックの周囲をざっと見渡す。
彼らが乗っているトラックは既に数十人に及ぶ獣耳を持った女の子達に囲まれており、その誰もがこちら側の四人に目を向けていた。
四人は互いに目を合わせ、各々に配られた武器を目の前に構える。
「あ、ああ。ナイス、ジブリール。――さて、いっちょやってみますかねッ!」
空のその一言を掛け声に、彼らは一気にトラックの上から飛び出した。
――今一武器の使い方が分からない、ステファニーを置いて。
☆ ★ ☆
パンッ!――パリィン!
空の右手に握られた銃から閃光が迸り、丁度近寄ってきていた
そして――ザンッ!……パリンッ!
黒の左手を添えた逆手の刀が鋭く大気を走り、額を右手で握り押さえつけられた
彼らは一塊になって移動しながら、実戦でその武器の性能を把握していく。
・メロメロ銃はエネルギー銃で、撃てば撃つほど力を消費していく。
・しかしNPCを撃破することで、ラブパワーを回復することが可能。
・NPCに触れるとラブパワーは減っていき、ゼロになるとNPCは寄りつかなくなる。
・ただし、メロメロ銃を撃つためのエネルギーが無くなり、それで事実上の戦闘不能になる。
・ラブラブ剣はビームサーベルで、柄のスイッチで刀身にラブエネルギーを纏わせることが出来る。その時にメロメロ銃の弾と同じ性能を発揮する。
・当然出している間は銃と同じようにエネルギーが消費されていく。
・しかしNPCを斬れば斬るほどラブパワーは回復していく。
・エネルギーを使い切ると、事実上の戦闘不能になる。その後は銃と同じ。
視界に映る集団を次々と消滅させていった彼らは、一旦ビルの隙間に隠れて身を潜ませた。
黒が隣を見てみれば、軽く動いただけなのに軽く息切れしている空白がいる。走ったのは精々百メートル程度なのに、よく息切れするものだと逆に驚く。黒は当然息一つ乱さずに背をビルの壁に寄りかけていた。
深呼吸をして呼吸を整えながら、未だに視界に映っている画面上のいのに向けて空が質問を発する。
「ちなみに仲間をヤるとどうなんだ爺さん?」
『ええ、ラブパワー切れ及び愛の奴隷状態からの回復が可能です。ただし、一時的に、相手の愛の奴隷に――』
ずぎゅんっ!
いののセリフが終わる前に、何の躊躇もなく――白の弾丸が空の額を撃ち抜いた。
「――え、白ちゃん?」
無表情に銃を前に突きだしたまま佇む彼女は西部劇のガンマンのようなプロの風格を漂わせている――じゃなくて。突然兄を撃つとは……一体何をしているのだろうか彼女は。
訳が分からない黒が不思議そうに、彼女が求めている物を悟ったジブリールが興味深そうに白と倒れた空を見つめる。
求めていた物はすぐに見られた。
空は急に立ち上がったかと思うと、白に千鳥足で近づいていく。
そうして白の正面に立ち、彼女の両肩を手で押さえると、
「ああ、我が妹よ!こんな近くにこんな愛らしく愛おしい女性がいたと今の今まで気付かなかった己の両目を嗚呼!えぐり取ってしまいたいッ!」
――そう口にした。
「……やぁ、にぃ、……ダメ……白達、兄妹……」
空に愛の告白まがいの言葉を告げられた白は、その顔を若干赤らめながらも、嫌そうにはしていない。
そこでようやく、黒は白が何をしたかったのかを理解した。
「……ダメだコイツラ」
「……ふむ、ならば」
「ちょっと待てジブリール。なんだこの俺の背中に押しつけられたモノは――ッ!」
今度は――ザクッ!黒の胸からピンクに塗られた刃が生えた。
黒はギギギ……と錆び付いた機械の様にゆっくりとその首を後ろへと回した。彼の目に映ったのは、興奮に顔を赤らめ、笑みを浮かべたジブリール。黒のセリフが終わる前にジブリールが刃を突き立て、ゼロ距離で黒にラブエネルギーを当てたのだった。
「こ、の、馬鹿天使――っ」
その言葉を最後に、黒の瞳から静かに光が失われていく。そして、その顔が意識を失ったかのように一瞬前にガクンと垂れた。
「ふふふ、これで一時的ながらもマスターが私の物に……さあ、マスター!どうぞ私を抱いてくださいまし!」
ジブリールが声を掛けると、黒は顔を上げ直した。
その目はただジブリールの姿だけを捉えていて、不自然なまでに純粋に濁って腐り果てた上で透明だと言わせる黒曜石のように――歪んでいた。
その余りの異様さに、ジブリールは無意識に黒から離れるかのように一歩後ずさった。
「なぁジブリール。……子供は何人欲しい?」
「……はい?」
突然の黒の言葉に、ジブリールは気の抜けた声を発した。
それと同時に黒がグルリと振り返り、普段では有り得ない行動を取る。ジブリールの真正面へと近づき、その身体を両腕で包み込むように優しく抱きしめた。
いきなりの行動に顔を赤くするジブリールに、黒が彼女の耳元へとそっと口を近づけ――彼女にしか聞こえない程度の小さな声で、呟く。
――黒の心に積もった、深淵より猶深く、そして黒く暗い
「――俺はそうだな、せめて三人欲しいかな。女の子が二人と男の子が一人って所か。名前はどうしようか。ジブリールが決めてくれ。俺は親に似てあんまりネーミングセンスとかないからな。しかし、どっちに似ると思う?俺とジブリールの子供だったら、絶対男子でも女子でも可愛いに決まってるよな。
それで自然に包まれた静かな広い家に住んで、家族で仲良く暮らしたいな。屋敷の設計ぐらいは俺がやるよ。ジブリールは和風派か?それとも洋風派か?俺としてはやはり両者を取り入れた風式が良いと思うんだが。でもジブリールが好きなのがあるならもちろんそれにしよう。俺はそこまでこだわったりしないからさ。なにせこの世で一番俺が愛してるのはジブリールなんだからな。
そう言えばジブリールはどんな生活が好きなんだ?どうしてそんな事を聞くのかって思うかもしれないけど、なに明日から俺がずっとジブリールの世話をすることになるしさ、というより明日から永遠にジブリールの全てを俺がやるんだから、やっぱり好みとかは把握しておきたいんだよ。偏った日々はよくないけれど、でもお前に喜んで欲しいっていう気持ちも本当だし。せめて最初ぐらいは。ジブリールの好きなようにさせてあげたいって思うんだよ。お礼なんて別にいいよ夫が妻を養うなんて当たり前のことなんだからな。でも一つだけ頼みがあるんだ。俺、好きな女性と永遠に側にいられるってのが一つの憧れだったんだ。だからジブリール、一年三百六十五日二十四時間六十分六十秒ずっと俺と一緒にいてくれ。照れて逃げたりはしないでくれよ、そんな事をされたら俺の心は傷つくんだよ。きっと二度と元には戻れないだろうなぁ。ショックでジブリールと無理心中したりして……あくまでたとえ話だけど、な。だってジブリールが逃げるなんて有り得ないんだから、な
それでジブリール、起こらないで聞いて欲しいんだけど俺、中学の時に恋人がいたんだ。ああ、浮気とかじゃあない、ジブリール以外に好きな女の子なんて一人もいないさ。唯単に彼女とはジブリールと出会う前に知り合ったというだけで、それに大したことはなかったんだけどな。今から思えば下らない関係だったな。四六時中互いのことを考えてばかりで碌な事にならなかっただけでも本当に良かったと思うよ。けどやっぱり、そういうことについては一番に言っておかないと誤解を招くかもしれないからな。愛し合う俺たちがちょっとした勘違いで喧嘩になるなんてのは妄想だけでもう十分だ。当然俺たちなら絶対に最後には仲直りできるに決まってるけど。それでも、な。
ジブリールはその点、どうなんだ?今まで好きになった異性とかはいるか?……いや、いるわけないのは分かっているつもりだけれど、でも気になった相手ぐらいはいるだろ?例えば前に話に出た
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