ノーゲーム・ノーライフ ―神様転生した一般人は気づかぬ間に神話の一部になるそうです―   作:七海香波

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どうもこんにちは、安心院かなみと申します。
最近アニメを見て触発され、全巻揃えて読んで、なんとなく書きたくなったので書いてみました。
出来る限り投稿を続けて行こうと思うので、どうぞよろしくお願いします。


第一章 遥か高みを征く熾天使
第零手 詰まり詰まったプロローグ


 ――神様転生って、君は信じるだろうか?

 

 ほら、所謂アレだ。ネット小説なんかでよく見る、神様がミスで自分を殺しちゃったから二次元転生で勘弁してくれって奴だ。

 剣が振りたければソードアー○・オンライン、魔法が使いたいなら魔法科○校の劣等生、黒歴史全開ならめだか○ックス、メカを触りたいならインフィニット・○トラトス等々の世界にチート付きで飛ばしてくれるという何ともご都合主義な設定の。

 都合が良ければエロい格好をした女神様が主人公に何の前置きもないまま惚れて着いてくるという謎の行動を起こしたりする――そんな馬鹿げた話である。

 読者の皆さんは、突然何故そんなクソどうでも良い当たり前の事を話すのかとでも思っているだろう。それでも、話さずにはいられないのだ。

 なぜなら、織城(おりたち)和真(かずま)童貞十六歳、至って普通の高校生をやっているこの俺にもそんな現実が現在進行形であるのだから。

 俺の目には今、ありきたりな真っ白の部屋に、これまたテンプレな目の前で土下座する美人のお姉さんが映っている。

 さて、一体どうすれば良いのだろうか。とりあえず真っ先にチート的な才能とか求めればいいのだろうか。それとも「いいよいいよ、分かってるよ」みたいな感じで「どうせちょっとしたミスで命の蝋燭消したとか書類にコーヒー吹いたとかですか」とかでも軽く言えば良いのだろうか。一体俺はどうすれば良いのだろう。

 なんとなくそう考えている内に、自然と俺の口からは一つの言葉が紡がれた。

 

「で?謝罪は良いからさっさと転生させて下さいよ」

 

 俺の頭が発したのは、言った本人も即座に後悔するほどの暴言だった。

 そんな俺の言葉に衝撃を受けたのか、神様(仮)は篠ノ乃博士のように幼児性と天災性が交わりあった様な感じで全身で反論を表現する。具体的には口を尖らせて腕をぶんぶんと振っている。

 

「適当な謝罪の受け方をしないでくれるかな!?これでも神様なんだけど!」

「神様だろうがなんだろうが、仕事にミスする奴を俺は神様とは思わねーんだよ。いいからチートを寄越せコラ」

 

 どうせ前言撤回するのも面倒なので、いっそのこのノリのままふと思いついた言葉をそのまま口に出した。俺が伝えたのはもうどうでもいいですよ的な発言。それを聞いた金髪グラマラスというありきたりな姿をした神様は泣きそうな顔をして立ち上がった。立ち上がった衝撃で、大質量のメロンがプルンッと揺れる。そこはご馳走様です。

 

「ううっ、人間が神様相手に偉そうにするなんてあり得ないんだけど……」

「知るか。世界はどうでも良いからこんな場所からさっさと去らせてくれ」

「もう、分かったわよ……。それなら勝手に二次元の世界に飛んで下さい!」

 

 俺の言葉にキレたのか、目の前の女性が呆れた顔で床を一回踏むと、俺は足下に空いた穴で勝手に落ちていった。

 出来るんなら早くそうしてくれってんだよ、心の中でそう呟く。

 チートが貰えなかったのは残念だが、まあいいだろうと俺はそう思考を纏めた。そうでなければ今の状況を受け入れることが出来ない。

 

 とまあそんな訳で、俺はせっかくの神様転生を、最近の『転生とかマジどうでも良いふりしてるけどやっぱりチート欲しいんだぜ的な二次創作主人公』と同じようにフイにしてしまった。という話だ。

 

 ――しかしいざ蓋を開けてみれば、意外にも俺の身体は各主人公のようにチートを兼ね揃えていたのだが。

 

 

 

 

 ――そうして転生が済んで。

 

 親から新たな名前を与えられ、赤ん坊から羞恥プレイを通して一応は新たな二次元人生でチートやり放題出来ないかどうかを楽しんで待っていたのだが、いつまで経っても白○士事件など起きることもなく俺の人生は時を刻んでいった。

 俺の楽しみを返せ。

 

 唯一楽しんでいたことはと言えば、前世の知識を総動員しての義務教育の小中学校での勉強無双ぐらいだ。後運動も。まあ高校の動き知っていれば幼稚園児なんかに負けるわけない。わざと負けるのも同級生が五月蠅いほど自慢してくるので面倒くさく、後の事は考えずにとりあえず徹底的に差を示してみた。

 と言うわけで。

 幼稚園では周囲の赤子を放っておいて読書に勤しみ先生には気味悪がられ、

 小学校では口喧嘩で大人げなく同級生を苗○君のようにロンパしながら保護者の間で要注意人物にされ、

 中学校では図書室に引き籠もり分厚い本を読んでいたりしただけで中二病呼ばわりされていた。

 意外にも理不尽だなこの社会、と感じたのは丁度この頃だった。

 ちなみに当然全てのテストでは九十点以上をキープしていた。ウザイように思えるかも知れないけど、高校生の知識をもったまま小学生から勉強を始めたから、公式などを忘れることもなく学力は右肩上がりだった。不自然なほどに。やっぱりチートなのかと思ったが、数少なかった付き合いのある相手には努力の成果だと言われたので素直にそう思うことにした。

 実際、毎日食べたパンの数を覚えているわけもないし、単語を忘れたりしたこともたまにあったりするし。前世でゲームばかりで成績が低かったことからの後悔から、全力で頑張った結果だとしたい。本当にチートなら全科目百点だろうし。

 

 

 そうして俺は彼女が出来たり海外に行ったりと色々前世より濃い人生を学びつつ、高校入試を難なくこなし地元ではまあまあの公立に進学して、前世と同じ高二に進学した今――

 

 

 

 ――俺はひたすらネトゲに時間を費やすことになった。

 

 なぜなら学校はつまらないし。彼女は……うん、まあ語らないでおくとして。今後の話で語ることもあるだろう。それ以外でも友達は陸に出来ずにぼっちで一般的な青春とかをする機会も余り無かったし。親が入れと言うので仕方無く入った文芸部も人と関わり合いになりたくないから幽霊部員推奨の所だし。

 

 小中学校からの少なからぬ黒い噂もあって完全にクラスで孤立していた俺は、出席日数とテストの点数を稼ぐためだけにだけ登校するという灰色の青春だった。彼女は彼女で二人目が出来たけれども、その唯一の周囲の人間と言える彼女ともつい数週間前に別れたばかりで、本当に独りぼっちだった。

 

 そんな俺の悲嘆に暮れている様子は親元を離れ一人暮らしをしているため親の目に入ることはない。そもそもこれもまた主人公らしいことがあって仮の親なのだが。

 まあ、何はともあれ、主人公に必要な『暗い過去』は結構経験したつもりだと思う。中々に順風満帆な転生ライフだろう。人は自分の人生、主人公はお前だとは言うけれど、そんな脳天気な人々を直接口論で下せるほどには色々な思い出がある。

 

小夜鳴(さよなき) (くろ)、お前はなにか将来の夢とかあるのか?」

 

 小夜鳴黒、それが新たな俺の名前だ。名字からして『緋弾のアリア』の吸血鬼(ブラド)の元に生まれたかと期待してみればそうでもなく親は普通のサラリーマンだったというオチの名前。つーか黒ってなんだよ『黒』って。犬か猫じゃねーんだぞ息子は、と名前を聞かされたときに真っ先にそう思った。

 

「……有りません」

 

 高二の個人面談でそう言ってみれば、

 

「お前明日もここに来い」

 

 と言われた。

 なんでだよ。アンタに俺の将来の何が関係があると叫びたかったが、我慢した。

 今の時代、適当な大学に進んで会社に入れて定年退職出来るってだけで十分高い目標だろうが……。そんな世の中にドップリ浸かった人間に何を言おうと無駄ではないのか。だが、そんな精一杯の俺のイメージは担任に通じなかったらしく、そのまま却下された。何となく去り際に振り返ってみれば、担任は俺の提出した白紙の進路希望調査用紙を丸めてゴミに捨てていたのが鮮明に記憶に残っている。

 こんなものか。

 仕方無いので鞄を持って職員室から出て、すでに暗くなっていた空を見上げながら校舎を出て家に帰る。

 

 歩いて三分の部屋に帰り、鞄を居間に放り出す。

 それからさっそく俺は自分の部屋(というか俺しか住んでいないためそんな部屋はあるのがおかしい)に閉じこもり、机の上に二段に並ぶパソコン八台(・・・・・・)を立ち上げる。

 コレが、学校では問題児(モンスターチャイルド)と痛々しく言われながらも、現実を見ていないと同級生に謳われてながらも、テストでは常に高得点をたたき出す今の俺、――『(クロ)』の現状である。

 

「さてと、今週も始めますかね……。カップ麺準備良し!ペットボトル準備良し!後タオルに湯沸かし器にクーラー等々準備良し!それでは――

 

 ――それは。 

 

――週末三日間ぶっ通しネトゲタイム!!」

 

 二度目の人生において最初は高い理想を掲げて勉強やその他諸々に全力を挙げて頑張りながらも、中三の頃に折れてふとオンラインゲームに手を出してしまった()――否。

 伝説的プロゲーマーの一人、『(くろ)』の実体だった。

 

「あー、真面目に学校行ってるだけあって色々とこっちはハンデ付けてるってのに!容赦ないな他の有力プレイヤー(廃人共)は!」

 

 学校の姿とは一転、彼は制服から着替えることなく椅子に座り込み、三つの画面で別々のゲームを立ち上げ、それらのランキング表を見ていた。

 その全てには共通して、『(くろ)』の名前が載っている。

 

「こっちは最低限は学校行ってるんだぞ!お前らに比べればまだ優良児だってのに!良いよなお前らは昼間もゲームに費やせるんだから!」

 

 

 《ヨツンヘイム・オンライン》今月プレイヤーランキング第二位、『(くろ)』。

 

 《BLADE BLAZE―ブレイド・ブレイズ―》総合ランキング二位、『(くろ)』。

 

 《極・三国志無双大戦》プレイヤーランキング第二位、『(くろ)』。

 

 

 それ以下を寄せ付けない、絶対的な成績を以て第二位にその名が刻まれている。

 

 不動の第二位、『(くろ)』。彼は、画面内の世界(オンラインゲーム)ではそう呼ばれる存在だった。

 世界最強のプレイヤーであり、三〇〇近くのオンラインゲームで頂点に立つ『  (くうはく)』に継ぐ伝説のプレイヤーである。

 その名前のない名前欄(くうはく)を見つめ、黒は呟く。

 

「もうホントに此奴らなんなんだよ……チートじゃねぇのは分かってるんだが」

 

 『  (くうはく)』。彼に敗北の二文字はなく、どのような状況でも勝利を手にする世界最強の存在。

 転生した後に散々努力し、周囲からは目を離されるどころか逆に排除されるほどまでに成長した『(クロ)』が勝利を手にすることの出来ない、唯一無二のプレイヤー。

 

「さて、此奴らは今どこにいるんだ……」

 

 手元に引き寄せた画面と同じ八つのマウスを動かして、『(クロ)』の名で様々なゲームへとログインしてはログアウトを繰り返し現在彼がログインしているゲームを探す。

 

「――お、いたいた。今は何々……四つのアカウントで無双中か。何やってんだか」

 

 やっと見つけたかと思えば、あるゲームで四対二百の対戦をやっていた。……馬鹿か。だが、その馬鹿と同じようなことをやっているこっちも相当馬鹿と言える。そんなことを考えて黒は画面に映る彼らを見つめながら苦笑した。

 

 ちなみに四つのアカウントと言ったが、彼らは皆『  (くうはく)』が操るアカウントだ。見れば分かる、観戦モードで部屋を覗けば全員が常人には有り得ない動きで相手を翻弄しているのが画面に映っている。あれは空白もしくはこちら(クロ)にしか出来ない動きだ。

 

「さて、と。乱入可能の設定だし、俺も乗り込みますかなっと」

 

 装備を調え、『  (くうはく)』に敵対する方へと乱入する準備を整える。

 

「ここからは(クロ)の出番だな。(くろ)は一旦お休みだ、アカウントは……確かこいつとこいつと、こいつだな」

 

 他の画面で三つのアカウントでログインし、その全員の状態を確認する。

 

「問題は無いし、時間制限は後十分。ライフは一。良し、行こう」

 

 足下にマウスの二つを持っていき、靴下を脱いでタオルで拭き足をその上に乗せる。

 

「さて、今日こそその首取ってやるぜ『  (くうはく)』ッ!!」

 

 

 

 ☆ ★ ☆

 

 

 

 同時刻、日本の何処か。

 

 たった数畳の部屋で過ごす二人がいた。

 その内の一人はカップ麺をすすりながら足で二つのマウスを動かして、もう一人は両手でマウスを動かしている。どちらもそれぞれ二つの画面を見つめている。

 その中に映るのはゲームならではの中世風の衣装を纏った計四人のプレイヤー。

 

「おいおい狡いぞ妹よっ!俺は三日も飯食ってねえのに一人で食うなよぉ!」

「……にぃも、食べる?カロリーメイト、あるよ」

「今食ったら死ぬだろ分かってるなら早くお前もしてくれぇ!」

「……しろ、もう眠い。ちょっと寝る」

「俺に四肢で四キャラを動かせと!?何という無茶ぶりをぉぉぉぉおい本当に寝るなよッもう仕方ねぇなああもうわかったよ俺一人でやったらぁっ!」

 

 五月蠅くわめき散らす目元にクマを作った黒髪の男子が、白く長い髪に顔を隠した女の子へとわめく。その声に構わず彼女は近くのゲーム機を枕に寝ようとするが――

 

「っつうぉッ!白、(クロ)の奴が来たぞ!」

 

 男の子の悲鳴のような叫び声で、咄嗟に跳ね起きる。

 

「……ほんと?」

「ホントホントマジだっての!見ろよこのアカウント!全部知ってる奴だろ、(クロ)の持ってる奴!さすがにここに来てアイツの相手は一人じゃ無理なんだ手伝ってはくれまいか愛しき我が妹よォォォォ!」

「ん、分かった。さすがににぃも、今の状態じゃ(くろ)の相手は無理」

 

 兄――(そら)が足下のマウスを妹、白に渡す。すぐに白はそのマウスを取って画面へと集中を傾けていく。

 

「――来た。三時と七時の方から二手に別れてきてる」

「白は三時へ行ってくれ!俺は七時へ行くから!」

 

 『(くろ)』。自分たち『  (くうはく)』の名を脅かそうとする唯一無二のプレイヤー。ほぼ全てのゲームで自分たちの下に張り付き、活動時間は基本平日午後四時から午前六時、休日は丸々というリアルは学生らしきプレイヤー。しかし、その限られた時間での無茶苦茶なプレイで第二位に名を載せてくる自分たちとはまた違うタイプの化け物だ。

 

「だぁぁもうチート使ってくる野郎より面倒な相手だ、んの野郎!」

「にぃ、それは相手にとっても同じ……愚痴言っても、始まらないよ?」

 

 画面の中では、計八人のプレイヤーが他のプレイヤーを置き去りにして想像を超えたゲーム展開を繰り広げている。元々いたプレイヤー達は置いてきぼりにされ、『  』と『■』

だけでゲームが進んでいく。

 

「クロてめぇさっさと死ねぇ!」

「……しぶとい」

 

 「  」に負けの二文字はない。今までも、これからもずっと。

 

 その絶対のルールを課している二人は、今回も負けるわけにはいかなかった。ゲームの中で刻一刻と時間が迫る中、彼らは死にものぐるいで(クロ)を殺しにかかる。

 

「あっ、ちょっとそれはないだろクロ!っち、こっちがちょっとやばくなってきた!白、そっちはどうだ?」

「もうちょっとで終わる……ッ!これで、最後ッ!」

 

 ピロンッ!――白の画面で、ついに(クロ)の二人が倒される。白もHPは既に危険域に入っているが、移動中にそれを回復しつつ兄の元へと向かう。

 

「クソ、白の方が死んだら少し動きが良くなってるぞこいつ!」

「にぃ、耐えて。もうちょっとで着くから」

 

 空の方での四人が互いのHPを凄い速さで減らしていく中、空が操る二人は一旦回避行動に集中し白がくるのを待つ動きに入る。

 それを分かっているらしく、(クロ)の方も急ぎ空の首を狩りに急ぐようになる。

 

「3,2,1,0……とーちゃく、ですっ!」

「よぉっしゃぁぁこれで勝てる!サンキュー白愛してるぜ!」

 

 

 

 空と白、二人の操るプレイヤーが(クロ)を撃破するのは――制限時間が終わる丁度その時だった。

 

 

 

 ☆ ★ ☆

 

 

「あー、また負けたぁ!やっぱ強いなあいつは……」

 

 リザルト画面では、相変わらず無敗の戦績を残す『  (くうはく)』が映っていた。これでチート無しだからホント恐れ入る。

 呆れた顔で画面を見つめる俺の耳に、五つ目のPC画面のアイコンが一つ点灯した証の音が届く。「  (くうはく)」だな、きっと。

 新たなマウスを取ってそのアイコンをクリックすると、一つのウィンドウが開く。

 その正体はただのSkype。コンタクトを取ってきた相手は――予想通りだった。

 

《クロ、あんなタイミングで乱入とかお前は鬼か》

《はっはっは、まあいいじゃないの。あわよくば初勝利をと思ってたんだけどねー》

《死ね。で、今から何処行くよ?》

《うーん、今日は金曜だし、ぶっ通しで全部やってみる?》

《ん、なんだ、もう金曜日か。週が過ぎるのって早いなぁ……》

《お前もしかして前の金曜日から時間の感覚無いのかよ!?ま、いつものことか……》

《丁度いまどっかでイベクエやってるとこあったし、準備運動にそこで一位取ってこいよ。俺はもう限界で、一旦落ちる。ガンバ。三時間したら起こしてくれ》

《りょ-かい。音量最大にしとけ、通知で起こしてやる》

《ああ、頼む。それじゃあな》

 

 それだけのコンタクトで、相手のアイコンがオフラインの灰色に変わる。

 

「さて、それじゃあ準備運動をしますか。確か勝利数がどーのこーのだったしすぐ終わるだろ」

 

 すぐさま空白の呟いたゲームを探し当て、そこにログインする。

 

 ――どうせすぐにアイツに一位もってかれるだろうけど、まあいいか。

 ――孰れは俺が、一位を取り、アイツに勝利してみせる。

 そうして、今宵も、(クロ)としての長い長い夜の幕が上がる。

 

「さあ、ゲームの始まりだ」

 

 

 これは、二人で一人の天才プロゲーマー『  (くうはく)』と、

 

 一人の天才プロゲーマー『(クロ)』、

 

 彼ら三人が繰り広げる、盤上の世界(ディスボード)と呼ばれる異世界の神話――

 

 

 ――その、『言葉に表せない』というような言葉で表せる――プロローグである。

 

 


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