かつてそれは、反逆の象徴とも、平和の象徴ともされた戦士である
ただ、それがもつ悲しみを知る者は数少ない
ガンダムは、いつも孤独であった
あるパイロットは、ガンダムによる戦いをこう形容した
「負け続ける戦い」
ガンダムは負け続けた
「勝者になってはいけない」
と言う者もいた
しかし、今回の戦いは
絶対に負けられない
ガンダムたちはMO-Xに帰還した。
格納庫では、自立型作業用ロボットが整備作業をしている。
が、アルトロンだけは、五飛自らが整備を行っていた。
やはり五飛の機体愛は他のパイロットに比べてとても強いものなのである。
「あ〜疲れた疲れた。ひとっ風呂浴びたい気分だぜ。」
一番乗りでMO-X生活区間の大部屋にやってきたデュオは、歩いてきた勢いのまま回転式のイスに深くもたれる。
「見慣れた容姿と見慣れた攻撃だったのが幸いだったな。」
両手に栄養ドリンクを持ってトロワが部屋に入ってきた。
「逆にそれがちょっと怖かったりするんだけどね。」
トロワに続いてカトルも入ってきた。
デュオはトロワから受け取った栄養ドリンクを飲むと、こんどはソファーに飛び移った。
「俺は少し寝るぜ。おやすみ…」
ソファーからは三つ編みが無防備に垂れている。
カトルがそんな光景を少し笑っていると、後ろから走ってくる足音がした。
「大変よ! レイが倒れたわ!」
飛び込んできたのはサリィだった。
「なんだって!?」
「念のため見にいこう、アンノウンからの影響かもしれない。」
カトルとトロワは、サリィに付いて部屋を出た。
デュオはすっかり眠りに落ちている。
MO-Xの救護室にデュオと五飛以外のメンバーが集まった。
「大丈夫、疲れただけです。プテリュクスは他のガンダムに比べて、パイロットへの負担が大きいので。」
ミデンはベッドで眠るレイの額を撫でながら語る。
「ゼロシステムかい?」
「ゼロシステムも搭載してますけど、基本的には封印されてます。多分、PXシステムの感度を上げ過ぎたんだと思います。」
「PXシステム?」
カトルが聞きなれない単語に首を傾げる。
「パイロットの脳、主に反射を司る部分と接続して、機体の瞬発力や運動性を高めるシステムだな。」
トロワが腕を組みながら説明した。
「実戦は初めてだから、程度が分からなかったというわけね。」
ミデンは少し俯いた。
「安静にしてれば大丈夫だから、みなさん休んでてください。」
「じゃあ、レイはミデンに任せるよ。」
「私は戦闘データを解析してアンノウンについて調べてみるわ。」
3人は救護室から出て、それぞれの仕事に向かった。
仕事といっても自主的なものなのだが。
ガンダムの整備はあらかた完了した。
ガンダムの武装は、各機体右隣の武器庫に格納された。
が、プテリュクスは特殊だった。
プテリュクスのバスターライフルはその大きさ故に、専用ラックに収められている。
このバスターライフルは、ウイングやウイングゼロの物とはだいぶ形が異なっていた。
3つの筒が束ねられ、上からみてちょうど真ん中の1つが伸びている。
このバスターライフルは通称"プテリュクスバスターライフル"と呼ばれ、バスターモード・ガトリングモード・スナイパーモードの3つのモードに切り替え可能である。
エネルギーは基本的には内蔵バッテリーからの供給ではあるが、ジェネレーターからの供給も可能である。
出力切替とモード切替を組み合わせ、高い汎用性を発揮する。
MO-X開発武器の最高傑作の一つである。
アンノウンとの初コンタクトから3日間が過ぎた。
相変わらず攻めてくる様子はなかったが、MO-Xには常に緊張が走っている。
『こちらゴールド。MO-Xへの着艦許可を願う。』
アンノウン解析中のサリィのもとに通信が入った。
MO-Xへと進路を向ける小型シャトルからである。
「こちらMO-X。着艦を許可する。上部ハッチからはいってちょうだい。」
『了解した。』
資源衛星にしては綺麗な球型をしているMO-Xの上部ハッチが開き、そこからシャトルが着艦した。
ミデンは、客人を出迎えた。
「私はMO-Xの指揮官、ミデン・アナズィです。」
ミデンは、シャトルから降りてきた5人に挨拶した。
「私はレディ・アンだ。よろしく頼む。」
レディ・アンの後ろに、3人の青年と1人の少女がいた。
ミデンはレディたちを大部屋に案内した。
そこでは五飛は読書、トロワとカトルはチェスをしていて、デュオは相変わらず寝ていた。
「やっぱりここにいた。」
レディ連れてきた少女がつぶやき、デュオに歩み寄った。
カトルとトロワは、その少女に見覚えがあり、少し苦笑いした。
「ちょっとデュオ、起きなさいってばっ!!」
言い終わると同時にデュオの脇腹に手刀が振り下ろされた。
「--------‼︎?!!!?」
デュオの言葉にならない叫びが響いた。
「あぁ〜なるほどね。どうりで、心配そうな顔してたわけだ。」
青年の1人が笑いながら言った。
デュオは飛び起きた。
「ひ、ヒルデじゃねぇか!? なんだってお前、こんな所に!?」
「なんでじゃないでしょうが!! 急に家を飛び出したかと思えば、直後に緊急事態宣言と避難勧告がだされて! それで……ど、どんだけ心配したと思ってるの!‼︎」
ヒルデは涙目だった。
デュオの顔面に拳が炸裂した。
「ちょ、ヒルでふっ!」
もう一発。
「悪かったって。」
「…デュオのバカ!」
ヒルデの説教はこの後も続くのであった。
ヒルデの説教続く中、レディはMO-X戦力と話を始めた。
「久しぶりだな、ガンダムのパイロット。まず、かつて君たちの敵として、数々の苦しみを与えたことを謝りたい。」
「お互い平和を望んで戦ってたんです。ただその理想像がまだ違っていただけで…」
「許されることではないな。」
カトルの言葉を遮って、五飛が棘を刺した。
「…だが、俺たちも同罪だ。俺たちも多くの人間を殺した。多くの人間に悲しみや憎しみを与えた。」
「五飛の言うとおりだな。」
「今はお互い力を合わせて、目の前の脅威と戦いましょう。」
「…ありがとう。」
レディはガンダムパイロットたちと握手を交わした。
「紹介が遅れたな。この子たちは、私が集めたパイロットだ。」
レディの後ろには3人の青年がいた。
兄弟と思われる2人と金髪の1人。
「俺の名前はアディン・バーネット! よろしくね。で、こっちが俺の兄のオデル・バーネット。」
「よろしく。」
「私の名はロッシェ・ナトゥーノ。よろしく頼む。」
この3人は、AC195年に裏で活躍したMSパイロットである。
ミデンもよく知った人物である。
ヒルデ説教を受けていたデュオが後ろから会話に入ってきた。
「ちょっと待て、ヒルデもお前さんが選んだパイロットだってのか!?」
「いや、彼女は自分の意志でついてきた。」
「はぁ?」
「私だって元OZの兵士よ! MSの操縦くらいできるわよ。」
ヒルデはデュオをソファに押し付けながら得意げに言った。
「えっと、とりあえず、機体割り振りましょうか。」
ミデンが残りの機体のパイロットを考える。
残っているのは、ウイングゼロ、エピオン、グリープ、アスクレプオス、アクエリアスである。
「オデルさんとアディンさんはとりあえずアスクレプオスとグリープで、ロッシェさんとヒルデさんは----」
ミデンの言葉を遮るように警報が鳴った。
アンノウンが再び動き出したのである。
「すみません、まだ色々話したいんですが、出撃してください!」
ミデンが言い終わる頃にはパイロットたちは機体のもとへ向かっていた。
ミデンはレイの事を気にしつつ、グランのもとへ向かった。
「レディ、私たちは管制室でアンノウンの解析とアシストをするわよ!」
「了解した。MDシステムの管理は任せろ。」
「OK!」
2人も自分の持ち場へ向かった。
「おい! その機体は君には危険すぎる!!」
格納庫でロッシェの声が響いた。
「君より私の方が腕が立つに決まっている!」
ロッシェはウイングゼロに乗り込もうとしているヒルデを引き止める。
が、ヒルデは聞く耳を持たずといった感じだった。
「だから私が乗るのよ!!」
「!?」
「私はデュオより弱いから…だから機体性能に頼るのよ!」
「だ、だが‼︎」
「私が乗るって言ってんの!!!」
ヒルデそう言い残すとコックピットを閉じた。
ロッシェは仕方なく、アクエリアスに乗り込んだ。
エピオンという強力な選択肢もあったが、ロッシェはアクエリアスに引き込まれるような気がした。
どちらかと言うと、エピオンに拒まれたと言った方が正しいだろうか。
ガンダムは次々と出撃した。
戦力は前回から4機増えMDも運用可能になったため、レイを含めて11機全機が出撃する予定だった。
しかし、想定外のことは起きるものだった。
「おかしい…」
レディはエピオンを起動させようとしていが、何度やっても起動しなかった。
「起動しない…?」
「あぁ、システムに問題はないのだが…」
この後、エピオンが起動しない原因はすぐに判明した。
ガンダムたちはアンノウンと交戦していた。
アンノウンの戦闘には連携や陣形というものがなく、集団がただ闇雲に攻撃してくるだけである。
だが、不思議なことに同士討ちはなかった。
「これがアンノウンか…ッ」
アスクレプオスを駆るオデルが、操縦桿を激しく動かして、接近戦モードでアンノウンを叩き潰していく。
「予想以上の量だがっ!!」
ロッシェのアクエリアスはドーパーガンを連射して正確にアンノウンを撃ち落としていく。
「歴史上、こんな数のガンダムが集まった事なんてないんだ。きっと勝てるよ!」
アディンは、勇敢にアンノウンの群に斬り込む。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
ヒルデはゼロに屈せず戦っていた。
「パイロットと…しての腕は…デュオより…劣るけ…ど……精神力なら…!!」
バスターライフルの圧倒的な火力でアンノウンを墜としていくが、ゼロは容赦なくヒルデに流れ込む。
「機械なんかに…負けるかぁ!!」
ヒルデは、ウイングゼロにビームサーベル構えさせ、アンノウンに斬りかかった。
最初は順調にアンノウンを倒していっていたのだが、徐々に数で押され始めた。
これはヒルデに限らずである。
どのガンダムも、押されていっていた。
レーダーなど見ている余裕はなかった。
味方の位置を気にする暇などなかった。
それほど、切羽詰まっていた。
それ故に、誰も気づかなかった。
風の到来に。
どうも星々です!
徐々にオールスター感が出てきましたw
中にはキャラが違ったりする人がいるかもですが、そこはご了承ください
キャラ設定やMSVなども上げていくつもりなんで、この作品をご愛読いただいている方はお楽しみにw