新機動戦記ガンダムW 〜試されしガンダム達〜   作:星々

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情報不足の中で先手を仕掛けるMO-X

不安と恐怖を抱え涙を流す少女
少年は受け止める


これが最後の出撃となるか…


第9話 〜終わりへ向かう始まりの作戦〜

「コロニー標準時0300からここでブリーフィングを行います。それまでに各自出撃準備を進めておいてください。」

パイロットたちは解散し、準備に向かった。

「あ、カトルさんとレディさん、あとサリィさんは、私と一緒に作戦を考えましょう。」

部屋を出て行こうとしたカトルが振り返った。

「えぇ、いいですよ。」

 

 

その後1時間にわたり、作戦会議が行われた。

ミデンは少し休もうと、自分の部屋へ向かった。

目を擦りながら廊下を進んでいると、部屋の前に人影が見えた。

ぼやけた視界がだんだん定まってきて、人物を確認できた。

「ゼクスさん…? 何か用ですか?」

ゼクスは、読んでいた詩集を閉じた。

「ミデン・アナズィ、お前は私と同じだ。」

「…え?」

突然の言葉に、困惑する。

「命を賭して地球を守るのは正しい、私もそのつもりだ。しかし、お前は死ぬな。死ねば全てが終わってしまう。」

「えっと………?」

「私たちには、他に守るべきものがある…」

ゼクスはそう言って、ミデンに背中を向けた。

「言いたいことはこれだけだ。」

ミデンは立ち尽くしていた。

(「私と同じ」って……まさかね…………)

 

ミデンはゼクスが残した言葉を思い返しながらドアを開いた。

そこには、必要最低限の家具のみが置いてある、殺風景な空間が広がっている。

「おかえりミデン。だいぶ疲れてるみたいだね。」

レイはベッドに腰をかけて待っていたようだ。

「…うん。」

ミデンはレイの左側に同じように腰をかけ、レイにもたれかかった。

レイはミデンを優しく受け止め、頭を撫でた。

「今度の出撃は、死ぬかもしれない…」

「そんなこと言わないで…」

レイの弱気な発言に、疲れが混じった声で応えた。

「でも大丈夫、死ぬ気はないから。場合によっては、プテリュクスを解放することになるかもしれないけど。」

「でも、そしたらレイが…」

「あぁ、僕が僕じゃなくなってしまうかもしれない。その時はミデン、君が僕を支えてくれ。」

ミデンを抱く左腕に力が入る。

ミデンの身体は小刻みに震えていた。

「怖いかい…?」

「ううん、大丈夫…」

声は震えていた。

「強がらなくていいんだよ? 僕がいる、ミデンは独りじゃないんだから。」

「…………こわい……」

ミデンの目から涙が流れ出た。

「こわいよぉ…」

ミデンはレイに強く抱きついた。

レイは号泣するミデンを慰めようと、強く、優しく抱きしめる。

「大丈夫、大丈夫だよ。」

しばらくミデンは泣き続けた。

少し落ち着いて抱き合う腕を解いたとき、レイの優しげな瞳が目に入った。

ミデンは魔法にかかったかのように、安心した気持ちになった。

2人は見つめあった。

「レイ、…いい?」

ミデンは少しうつむきながら、目だけレイの方に向けた。

「いいよ…」

数秒の静寂が流れた。

それは心地の良いものだった。

2人は唇を重ねた。

 

 

デュオとトロワは、給湯室でコーヒーを飲んでいた。

「分かっちゃいたが、正直キツイ状況だな。」

「できる限りのことをする。ただそれだけの話だ。」

デュオは近くの棚に軽く寄りかかった。

「こんな時アイツがいればなぁ」

デュオは昔を思い出すように虚空を見つめた。

「そうだな。しかし、アイツを起こしてしまえば、PPPを鎮める手段がなくなる。」

「ま、実際アイツがあのお嬢さんを殺してもPPPが発動しちまうかもしれねぇがな。」

「安らかな死……難しいな。」

「あのお嬢さんは完全平和を実現しない限り、死んでも悔やむだろうな。」

トロワは、コーヒーに映る自分の暗い顔を見た。

数秒の沈黙の後、デュオはコーヒーを一気に飲み干した。

「とにかくだ、アイツとあのお嬢さんが目覚めたときに地球がなくなってたとかいう事態にならないように、今はアンノウンを墜とすだけだぜ!」

デュオとトロワは頷き合い、更衣室へ向かった。

 

 

五飛は、アルトロンを見上げていた。

哪吒(ナタク)…俺はまだ休むわけにはいかないようだ……」

アルトロンの表情は動かない。

しかし、五飛には確かに見えた。

五飛の妻、哪吒、妹蘭(メイラン)の笑う顔が。

「俺の弱さがお前を殺した…あの花畑すら守れなかった……すまない。そして、俺に力を貸してくれ………」

「五飛にも愛する人がいたんだね。」

カトルが格納庫に入ってきた。

声は反響して、吸い込まれるように小さくなっていく。

「フン…悪いか。」

「いいえ、誰だって愛する人がいますから。」

カトルはサンドロック改を見上げた。

「そして、必ず誰かに愛されている…」

五飛は鋭い表情を解いて少し微笑んだ。

「愛されている…か………」

「えぇ、だから僕たちはそれを守るために戦うんです。」

カトルと五飛は目を合わせ、笑みを浮かべた。

「行きましょう。」

2人は更衣室へ向かった。

 

 

アディン、オデル、ロッシェは、シャワーから上がり、大部屋で少し休んでいた。

「アディン、ロッシェ、再び誰かのために戦えることを誇りに思え。」

「当然だよ!」

「フッ、言うまでもない。」

3人には言葉のいらない信頼があった。

目を見れば大体何を言いたいかが分かる。

「あれから5年たって、いろいろ変わったけど、俺たちの地球(いえ)は変わらない。」

「わざわざ呼び出しに応えたのだ、このロッシェ・ナトゥーノが、貢献してみせるさ。」

「お前たち、俺たちは強い。全力で立ち向かえば、負けなどありえない!」

「「あぁ!!」」

3人は更衣室へ向かった。

 

 

ヒルデとノインは、更衣室へ向う廊下を歩いていた。

「ヒルデ…と言ったな。」

「はい、以前OZの兵士として戦っていました、ヒルデ・シュバイカーです。」

元上官であるノインを前にして、少し軍人の雰囲気が出てしまった。

「お前は先の戦闘で、自分は弱いと言った。しかし、私には分かる、お前は強い。」

「え…?」

「私も、いくら頑張ってもゼクスに追いつける気がしない。しかし、私は自分を弱いと思っていない。」

「何故ですか?」

「何故だろうな…ただ、付いて行くと決めた人がいるからかもしれない。一緒にいたいと思う人がいるからかもしれない。」

ノインはゼクスの顔を思い浮かべた。

「私にとってのデュオですね…」

「あぁ。」

「なるほど…分かりました、ノインさんの強さが……私の強さが…!」

2人は更衣室に入った。

 

 

 

パイロットたちはパイロットスーツに着替えた。

黒を基調とし赤いラインが入った、EVE WARSでGチームが使用していたものである。

ブリーフィングが始まった。

前に大きなモニターがあり、それと向かい合うように長テーブルが並んでいる。

「まず最初に、私の無茶な提案に付き合ってくださり、ありがとうございます。」

下げた頭を上げると、そこには力強い目をしたパイロットたちが並んでいた。

「では、作戦説明にはいりますが、1秒たりとも無駄にしたくないので申し訳ありませんが異論は受け付けません。」

モニターに戦略図が表示された。

そこには、Gユニットも含め、2〜4機ずつ5隊の編隊が示されていた。

「まず、目標の索敵能力を図るために、デスサイズヘルがハイパージャマーをかけて先行します。ここでのアンノウンの反応によって、MO-Xから2通りの指示を出します。1つは、それぞれの小隊ごとに広がって、他方向から攻める。これがプランAです。もう1つ、プランBは、デスサイズヘルのところに集結し、一気に突破する。これが1stフェーズです。」

戦略図に2通りの動きが示された。

「攻撃開始後、私とレイで敵母隊の中核を目指します。恐らく、親玉がいると思いますので、それを叩きます。その間、他の小隊は敵母隊へ断続的に攻撃してください。この時、地球へ流れたアンノウンは追撃しなくて結構です。」

地球の防衛を放棄して侵略者を叩く。

一見矛盾しているようだが、現状況ではこれが正しい。

ミデンはこれに賭けた。

「敵の情報が少ない以上、何が起きるか分かりません。なので、何か気付いたことがあれば、順次MO-Xへ通信してください。レディさん、サリィさん、指示お願いします。みなさん、私たちは恐らく…いや絶対、地球圏史上最強のMS部隊です。負けることを考えずに、全力で立ち向かいましょう!!」

ミデンは拳を頭上に掲げた。

それに続き、全員が拳を掲げた。

「これよりMO-X司令官ミデン・アナズィより司令を下す!!! 総員、作戦開始ィ!!!!」

『『了解!!!!』』




どうも星々です!

キャラの過去や外伝作品の設定に少し触れましたが、分からなくても作品は楽しめると思います
でも、「FT」や「敗者たちの栄光」などはとても面白いので是非読んでみてください!
(↑どの立場で言ってるんだろw)

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