少女は焦る
少女は気付く
決意と覚悟と愛を背負い、戦士たちは戦う
コロニー標準時00:30。
皆が部屋で眠りに着き始めている時、ミデン、カトル、サリィ、ノインの4人は、大部屋に残って作戦を考えていた。
「打って出ると言っても、敵が多すぎて闇雲に攻めても返り討ちにされるだけですね。」
カトルが、簡単な戦陣図を描いた。
と言っても、そこに描かれているのは、アンノウン母隊、MO-X、そして地球だけである。
「これまでの戦いから、アンノウンは陣形を取っているとは考えられません。」
ミデンは、4人分のコーヒーを淹れた。
「ミデンの言うとおり、アンノウンの布陣密度は常に一定で、墜としても墜としてもそこを補うように集まってくるから、突破するには一気に行かなきゃ蜂の巣にされるわ。」
「サリィさん、アンノウンについて何か分かったことはありませんか? 少しでも情報が欲しいです。」
カトルは戦略や、情報処理能力に長けている。
常に大量の情報を持ち、周りも見ながら的確な判断をする。
AC時代、トレーズ・クシュリナーダを代表とする優秀な戦略家は数多存在した。
その中でもカトルは独自の目線を持っていた。
勝つためではなく、生きるための戦略。
ガンダムパイロットの中では最も命を大切に考える。
今回も、その目線は捨てていない。
「どうすれば…」
「一度整理しよう。まず戦力から。ミデン、頼む。」
ミデンはノインの言葉に頷いた。
「こちらの戦力は、MS12機、Gユニット4機、量産型ビット60基です。量産型ビットは、シャリオ以外のGユニットに1機あたり20基で割り振ります。Gユニットはシャリオが他3機の制御権を持っていて、シャリオの制御権はグランが持っています。」
つまり、事実上グランが4機のGユニットと計74基のビットを操れるということである。
単純に考えても、MS二個中隊程度の戦力である。
いや、完璧に統率できる点で見れば、その力は計り知れない。
「あの召喚したエピオンはどうするの? 使い道があるなら活用したいわ。」
「私も色々考えたんですが……恐らく予備パーツとしてしか活用できないかと。」
「十分だ。これである程度の損傷ならすぐ再出撃できる。では、アンノウンについては何か分かったことはあるかサリィ。」
「人型である、学習能力がある、皆同じ形をしている、単独で行動しない…とまぁこんなものね。」
つまり、全くわからないということである。
「相変わらず未知の敵のままということか…」
「こちらから打って出るには情報が不足してますね…」
「でも…! 時間がないんです!!」
ミデンが声を荒げ、周りは驚きの表情を見せる。
テーブルの上にコーヒーがこぼれる。
「時間がないとはどういうことだミデン。」
ノインがミデンの肩に手を優しく起きながら聞いた。
「ガンダムは…私が召喚したガンダムは…あと50時間ほどで消失してしまいます…」
「何ですって!?」
「どういう事だいミデン?」
「ソールトシステムは、この世界の因果を超越したシステムです。なので存在自体がとても不安定で、召喚継続時間が限られているんです。」
辺りを驚きと困惑が支配した。
「だから…2日以内にアンノウンを撃退しないと、地球はもう…」
「そんな…」
未知の敵をあと50時間以内に撃退しなければならない。
大きく、又高い壁である。
「じゃあ、急がなきゃね…」
カトルは、窓から宇宙を覗いた。
そこには相変わらず不気味に輝くアンノウンの群がある。
予想以上に重大な状況に置かれ、脳裏に絶望の二文字がよぎった。
だからと言って諦めるわけにはいかない。
4人が頭を悩ませていると、ドアの方から声がした。
「話は聞かせてもらった。」
悠々とした声に振り返った。
「ゼクス!」
黒いコートを羽織ったゼクスが立っていた。
「急がねばならないようだな。ならば、すぐに準備しよう。」
「え、でも、みんな疲れが…」
「彼らはもうそのつもりらしいがな。」
ゼクスが少し笑って後ろを見た。
そこには、レディ、パイロット全員が集まっていた。
「みんな…」
「ミデン…僕らは地球を守るために集まったんだ。そのためならいくらだって頑張れる。」
レイが右手でミデンの頬に触れた。
「ここにいるヤツら全員、地球が好きだからね。」
アディンが笑顔で言った。
「誇り高きガンダムパイロットとして、全力で戦うだけだ。」
「こんなにも美しい惑星を、私たちの故郷を、そう簡単に渡すわけにはいかない。」
オデル、ロッシェが続く。
「俺たちは正義だ。正義は勝たなければならない。」
「俺たちには帰る場所がある。待っている人がいる。」
「なんにもやらないで逃げるより、何かやって生き延びる方がいいに決まってるぜ!」
五飛、トロワ、デュオも続く。
「私が知っているガンダムは、どんな困難も克服してきた…この言葉も2度目になるが、私は信じる。」
レディがミデンの左肩に手を置いた。
「みなさん…」
ミデンの目には涙が溜まっていた。
MO-Xが一つになった。
彼らは、自らの身体の底から力が湧いてくるような感覚を覚えた。
ミデンの目の前には、覚悟と決意を持った戦士たちが並んでいる。
「今考えると、凄い光景ね。」
ミデンが頬に触れているレイの手に自分の手を重ねた。
「一度だってこんなに多くの伝説が集まったことなんてなかったし、多分これからもないだろうね。」
心強い味方に恵まれたミデンとレイは、覚悟をいっそう固めた。
「さぁミデン、指示を。」
「え…?」
「みんな待ってるよ、ミデンの一言を。」
レイの言葉に、ミデンは前を向いた。
勇ましい立ち居振る舞いのパイロットたち全員と目を合わせて頷いた。
「総員、出撃準備ですっ!!」
『『了解!!』』
どうも星々です!
いよいよ出撃です!
この戦闘が最終決戦になるのか!?
そして、グランの真の力は…!!
若干無理矢理クライマックスに舵をとりましたw
少ない話数で完結するとは思いますが、最後まで一生懸命書きます!
次回もお楽しみに!