担い手と問題児は日記を書くそうです。   作:吉井

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RTS―BF【激動の前半戦】

 一同は攻撃部隊を三つに分け、三方向から攻め入ることにした。

 中央コース『森林地帯』、向かって右のコース『山岳地帯』、『山岳地帯』から流れ出ている川の終わり、左のコース『湖畔地帯』。もちろんコース間も道なき道は存在する。だがそれは、ギフトによって人どころか獣以上の五感を持つ「耀」や、黒ウサギたちがいる以上無視できる。

 つまりこの三本の道を通っていれば、自然と敵の兵に遭遇できるのだ。

 

 もちろん、何と遭遇するかまでは予測できないが――――

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

『湖畔地帯』

 刃、「十六夜」、「黒ウサギ」で構成されたパーティーは、湖畔と川の合流地点あたりで敵と遭遇(エンカウント)した。

 

『「「…………⁉」」』

 

 絶句していた。視界に映ったその光景に。

 それは別に、体が大きいとか姿が異形だとかそういうのではなく、とにかく普通だった。普通――――だが、数が信じられないくらい膨大だったのだ。

 十や二十などではない。ざっと見ただけでも百体以上。軍勢が道を埋め尽くしていた。

 

「これは一体⁉ 数は互角ではなかったのですか⁉」

 

「……いや、おそらくこれは『駒の特性』とかなんかだろ。駒の一種一種に、その駒に応じた能力があるんだろうぜ。そうでなけりゃ、この状況の説明が出来ねぇ!」

 

『拙者も十六夜殿の意見に賛成だ。おそらくこれらは「歩兵」の駒だろう。特性は――――「圧倒的兵力」といったところか』

 

 各々が武器を取り出し構える。黒ウサギはインドラの槍を、刃は造りだした剣を両手に一本ずつ。十六夜は、両の拳を握りしめた。

 

「黒ウサギ、俺たちが前へ出る。お前はできるだけ後ろで、抜けた兵を倒してくれ。索敵も忘れんなよ!」

 

「わかりました!」

 

『ここで駒を削り、優位に立つ。――いくぞ!』

 

 三人は同時に地を蹴り、軍勢へと接近して行く。当然敵側も気づき、迎撃のため向かって来た。

 剣と剣が交わり、兵が飛ぶ。戦いの始まりだった。

 

『歩』×⁇ 『???』×⁇

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

『山岳地帯』

 花音、七夕、『黒ウサギ』で構成されたパーティーも敵と遭遇していて、こちらはすでに戦闘に入っていた。

 七夕は防御チームの予定だったが、式神を憑依させても契約書類に変化がなかったことから、『実体化させなければ問題ない』と判断され攻撃チームとなっていた。

 

 その七夕だが、軍勢のど真ん中――正確には、『歩』の大群の中にポッカリと空いた空間で、声を張り上げていた。

 

『黒ウサギ、状況を!』

 

『すでに全グループが交戦に入りました! 当初の作戦通り、索敵をつづけながら敵陣を目指すようです!』

 

 通信用のギフトから得た情報を七夕へ伝える黒ウサギ。

 

『了解です。……ですが、数が多すぎますね。明らかに「歩」ではない兵もいますし――』

 

 七夕の見た方向には、歩兵の倍近い背丈を持つ巨人が。

 主武器は大型の槍。『歩兵』の主武器が全て刀なのでわかりやすい。そして目立つ。

 

『(「槍」……、あれはおそらく「香車」ですね。「前方にしか進めない」という制約はありますが、その機動力は凄まじい)……二人とも、気をつけてください!』

 

 と、七夕が警告を発した時だった。

『香車』が、動いた。

 

 槍がゆっくり持ち上げられ、そのまま――

 そのまま。

 ドンッ!という、爆発の様な音と共に、『香車』が真っ直ぐ突っ込んできた。――『歩兵』を全く気にすることなく、派手に吹き飛ばしながら。

 

『なっ、何を考えてるですか⁉︎ 味方を躊躇なく……!』

 

 凶行とも取れる『香車』の行動。その裏にあるのは、兵を『駒』としか見ていない、そんな指令だ。

 

 ゲームマスター『小鳥遊孔』

 その手腕と、戦略及び戦術のセンスは時に、兵を『駒』とみなす『愚将』の采配となる。

『勝利を掴む』という、唯一無二の目的のために。

 

『いや……でもこれは、まず――ッ!』

 

『たっくん、はやく避けて!』

 

『……………………くっ』

 

『たっくん⁉︎』

 

 迫る『香車』を真っ直ぐ見つめ、七夕は両手を前に突き出した。

 そのアクションが何を示すかなど明快。なんと七夕は、自分の倍はある槍を受け止めようというのだ。

 七夕はその身に『雷獣』を纏うと、後ろにいる花音に向かって声を張り上げる。

 

『花音、合わせてください』

 

『えっ……、あっ、了解! ――宿れ「超電磁砲」‼』

 

 七夕の意図を組んだ花音は、異なる魂とその身を共感させる。

 宿した魂は、学園都市の頂点レベル5の第三位――――御坂美琴。能力名は『超電磁砲(レールガン)』――『発電能力(エレクトロマスター)』では最高位の力。

 その電撃姫の前髪から、バチバチと火花が散る。

 

『――いくわよ!』

 

『ええ、いつでもどうぞ……!』

 

 美琴の姿となった花音の手に青白い光が生まれる。それが一定のラインを超えた時、花音は思いっきり腕を振った。――――ギュガッ‼ と空気が擦れる嫌な音が響く。

 そしてそれと同時に七夕も動いていた。前に突き出した七夕の手に、こちらはイエローカラーの雷が出現する。七夕は、背後から迫る雷撃の槍に合わせる形でタイミングよくそれを放った。

 先端付近でぶつかる雷。初めは反発していたが、時間とともに次第に絡み合っていき――青と黄の螺旋を描き始める。

 そしてそのまま、『香車』の持つ槍の先端に吸い込まれていった。

 

『どうだ――!』

 

『いえ、まだです!』

 

 幾億ボルトの高圧電流が全身を駆け巡っているはずの『香車』。普通ならば全身がしびれて動けなくなるはず――いや、このクラスの物ならば、皮膚が炭化してもおかしくないのだが。

 だが『香車』の動きに変化はなかった。少しだけスピードが落ちたくらいである。

 

(やはりかなり丈夫にできていますね。神経どころか、身体全ての造りが人工ですか……)

 

 そう推理し七夕は歯噛みする。

 そもそもこの攻撃の目的としては、電撃によって『香車』を感電させ動きを止めようというものだった。だが、神経やらが人工の駒相手では、やはり効果が無かった様で。

 

『……仕方ありませんね。花音、出力を上げますよ!』

 

『了解、いつでもいけるわよ!』

 

 青色の雷光が強くなるのを感じた七夕は、慎重に出力を上げていく。

 単純に電圧が上がったことで、『香車』のスピードがおちる。それでも、止めるには至らない。

 そして、遂に十数メートルまで接近された時――それは起こった。槍の先端がオレンジ色に変色し始めた。

 

(きた……!)

 

 超高圧電流により発熱し、槍が融解し始めているのだ。そしてそれは、どんどん持ち手の方へ進んでいく。先端部はすでに溶け始めていた。

 

(特別製の「香車」がダメでも、持っている槍ならいけると思ってましたが――どうやら、予想通りだったみたいですね)

 

 変化が現れるのが遅く、内心冷や冷やだったが。どうやら、槍に使われている金属も特別製らしい。

 

『よし、これならいけるでしょう。花音! 一気に吹き飛ばしてくださ――』

 

 と、七夕が花音に指示をだし、射線から離れた――その時だった。

 

 遠方の音さえ聞き捉える黒ウサギのウサ耳が。

『雷獣』の憑依により強化された七夕の聴覚が。

 御坂美琴となったことで周囲に展開されたレーダーが。

 

 ――はるか遠方。

 敵陣付近から、七夕目掛け飛来する物体を捉えた。

 

『七夕さん‼』

 

 誰よりも早く気づいたのは黒ウサギ。飛来する物体を知覚した瞬間、七夕に警告する。だが、物体の速度は軽く音速を超えている。それでは間に合わない。

 警告が七夕の耳に届いた時、すでに物体は目と鼻の先で――

 

 ――――後ろに飛びのいた七夕の、鼻先数センチの所を飛来した物体が通過していった。

 

『――――ッ‼⁉』

 

 全身の産毛が逆立つような感覚。

『雷獣』を憑依させていたのが功を奏した。伊達に『雷』の名を冠しているわけではない。そのスピードは、初速ですら軽く音を超える。

 故に、回避が間に合った。

 

『(そっ、狙撃(・・)⁉ どこから⁉ 何故⁉ いや、それよりも……!)花音、こっちは大丈夫です。「香車」を!』

 

『りょ――了解!』

 

 短い返事の後、キンッという澄んだ音が響く。花音がコインを打ち上げた音――そして、能力名ともなっている一撃の事前動作。

 

『吹っ飛べ!』

 

 コインが落下し、花音の指先に触れた瞬間、それはオレンジ色の閃光へと変化した。

 風景を切り裂くその閃光の名は『超電磁砲(レールガン)』。音速の三倍まで物質を加速し放つ破壊の一撃。

 

 打ち出されたコインは、寸分違わず槍を打ち抜き――そのまま、『香車』の片腕と胴体の三分の一を抉っていった。そのまま後方目測十数メートルは吹っ飛んでいく。

 

『……やりましたか?』

 

『黒ウサギ、それはフラグというものですよ』

 

 そう言って七夕は『香車』へと目をやる。

 その視線の先では、身体の大部分を失ったはずの『香車』がもがいていた。普通の人間なら致命傷の傷を意に介した様子もない。流石は人造人形といったところか。

 

『――ほら』

 

 七夕はそれを確認するやいなや、一直線に『香車』へと駆けだしていた。

 憑依していた『雷獣』が一瞬実体化したかと思うと、次の瞬間には、七夕の両手を覆う鋭い爪となっていた。

 これぞ式神の武器化。華蓮の『纏』同様使用者の技量に依存するが、その分威力と汎用性が高いという利点がある。

 

 それで七夕は、躊躇いなく『香車』の胸の中心部を刺し貫くと――雷光の如き速さで首を落とす。

 ――数秒後、完全に動かなくなった『香車』は粒子となり消えた。駒一種撃破、契約書類にも変化が現れる。

 

『――これで良し。心臓と頭部を破壊されれば流石に消えますよね。……さて、「香車」も倒したことですし先に進みましょうか! 二人とも――――…………なぜそんな引きつった顔をしているのでしょう?』

 

『い、いえ別に――ただ、ちょっとだけ……』

 

『たっくんの新たな一面(?)発見……かな』

 

 鮮血こそ飛び散らなかったものの、目の前で解体ショーを披露されたのだ。黒ウサギと花音は、若干引いていた。先ほどより距離があるような気がするが――まぁ気のせいだろう。

 

『? ……それにしても、あの「狙撃」は一体何だったんでしょうか。敵陣営から飛んできましたけど、銃や狙撃に対応した駒はいないはずですし……』

 

『そうですね。後から聞こえた音の調子からしますと、敵陣サークルの端の方で撃ったようです。「湖畔地帯」と「森林地帯」の間辺りでしょうか』

 

『そんなに遠距離から⁉ 十数キロはあるよ!』

 

『いえ、視覚補正と弾丸の誘導がしっかりしている狙撃銃ならば狙撃(・・)自体は可能です。それより問題なのは、誰が狙撃をしたのか、です。

 七夕さんの言う通り、狙撃――銃撃に対応した駒はありませんし。かといって、ゲームマスター本人が撃つとも考えられません。護衛も必要となって駒の無駄ですし』

 

『となると考えられるのは――――』

 

 手元の契約書類に視線を落とし、

 

『ゲームマスターのギフトか、隠されたルールか。……とにかく、気を引き締めていきましょう。何が起きるか、分かりませんから』

 

『歩』×⁇ 『香車』×1(撃破)

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 七夕の予感は的中する。

『森林地帯』

 五月雨、「耀」、八汰鴉で構成されたチームが遭遇したのは、全く予想外の集団だった。

 

「おや、どうしました? ずいぶんと驚いた顔をしてますけどー、珍しいことじゃないですよね。軍士自ら(・・・・)、前線に出張るってのは」

 

 そう言って、ゲームマスター『小鳥遊孔』は三人を見渡した。

 いち早く我に返った五月雨が言葉を返す。

 

『……いや、お前が前線に来ることくらいは予想していたさ。立派な策の一つだしな。――だけどまさか、護衛の一つもつけず(・・・・・・・・・)に来るとは、恐れ入ったよ』

 

 そう、孔は単独で三人の前に姿を見せたのだ。周囲にも護衛はいないようで、完全な丸腰状態。

 だが、だからこそ、どうしても罠を警戒してしまう。

 

「……罠かもしれない。そう思わせること自体が罠なのかもしれない。――そうやって疑心暗鬼にさせることが目的かもしれない。

 だから僕はここまで出(・・・・・・・・・・)てきた(・・・)。僕にしてみれば、『僕』という存在すら一つのピースなんだよ」

 

『それにしたって軽率な行動だな。ここでお前を倒してしまえばこっちの勝ちだぜ? 罠であろうとなかろうと、な』

 

 五月雨はそう言うと、ギフトカードから『絶対の剣』と『真実の剣』を取り出し構えた。続いて耀と八汰鴉も戦闘態勢に入る。

 どう見ても絶体絶命。にも拘らず、孔は冷静にこう切り出した。

 

「本当にそう思いますか?」

 

『なんだと……?』

 

 その時、耀がピクリと肩を震わせた。何かが近づいてくるのを感じ取ったのだ。

 方向は『湖畔地帯』側の森林。数はニ。ものすごい速さ――もうすぐそこまで来ている!

 

「本当に僕が、何も用意せずに現れたと――そう思っているのですか?」

 

『――まさか、お前ッ!』

 

 援軍。その単語が五月雨の脳裏をよぎる。だが数は二人だけだ。――ということは、そいつは余程の実力を兼ね備えているのだろう。

 孔はおもむろに話し出した。

 

「……将棋というものはなかなか面白いですよね。チェスやオセロとは違って――討ち取った兵を(・・・・・・・)自分の駒として使える(・・・・・・・・・・)んですから(・・・・・)!」

 

 三人の間を、得体のしれない感覚が通る。――嫌な予感がした。

 そして。

 そして、援軍は姿を見せた。

 見た瞬間、三人は自分の目を疑った。

 こちらと相対し、獲物を突き付けているその人物に見覚えがあったから。それは、本来味方のはずの――

 

『刃……?』

 

「黒ウサギ⁉」

 

『湖畔地帯』で敵と交戦していたはずの二人は、なぜかこの場所に現れていた。

 目に光を宿さない二人は、まるで操り人形のようで。だからこそ五月雨は、孔に食って掛かった。

 

『違う! 刃と黒ウサギがやられるはずがない。――そいつらは偽物だ!』

 

「偽物、ですか。確かにその可能性もありますよねー。……でも、本物の可能性だってありますよ?

 あなたの思う可能性の割合はだいたいどのくらいでしょうかね? 五十対五十(フィフティフィフティ)? 六十対四十(シックスティオアフォーティ)? それともまさか、九十対十(ナインティオアテン)だったりします? ――まぁどちらにしろ、『本物かもしれない』という可能性は捨てられない。あなた達は、戦えない。

 ――もう分かりましたよね? あなた達には、ここで足止めを食らってもらいます」

 

「っ……そんなの、確認してみれば済むことだよ……! 湖畔地帯(あっち)にいったのは三人。それなら、最低でもまだ十六夜がいるはず!」

 

「そうでしょうかね? この二人が操られているということは、すでにあっちの戦線は瓦解――壊滅しているのではないですか?」

 

「……ッ! うるさい!」

 

 耀は孔に向かって叫ぶと、通信用ギフトに呼びかける。だが、なんの応答もない。ただただ、ノイズだけが走っている。

 ――嫌な予感が膨らむ。孔の仮説が真実味を帯びてくる。

 

「――だめ、つながらない! まさか本当に――」

 

『まだそう決まったわけではありませんよ。通信をジャミングして、演出しているだけかも――』

 

「あーあ、言っちゃったー」

 

 八汰鴉が、耀を落ち着かせるために言った何気ない一言。孔はそれを見逃さない。

 悪意を持って、利用する。

 

「『連絡が取れないのはジャミングのせい? それとも――』

 ――新しい疑惑をありがとー。ま、といってもこれは、壊滅の可能性の補助だけどねー。

 ……さぁ、どうする? これで割合は壊滅――この二人が本物って方に傾いたわけだけど、そんなことより。――――戦線が突破されて、本陣は大丈夫なのかねー?」

 

『『「――――!」』』

 

 三人分の息をのむ音が聞こえた。そうだ、本陣は無事なのか? あとどのくらい時間は残されている? 応援に行った方がいいのでは――

 

「――で、でも防御チームのメンバーならそう簡単には……」

 

『いや、分からないぞ。「湖畔」の方のメンバーには十六夜がいたはずだ。……もし、仮に、あっちの戦線が壊滅していたとする。その場合、敵側には十六夜達を倒すことのできる駒がいるってことになる。――それは考えられる中で最悪の結果だ! あっという間に敗けるぞ!』

 

『それなら、やはり応援に――』

 

「行かせると思う?」

 

 三人の背後――本陣への道を刃が塞いでいた。思わず立ち止まってしまう三人。

 その三人に向けて、孔は告げる。

 現実を。

 

「――さぁさぁ。大事なものを守るため、仲間同士、派手に殺しあっちゃってくださいよー!」 

 

 思いっきり悪趣味に。

 

 

『ERROR』×⁇ 『ERROR』×⁇ 『ERROR』×⁇

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 ドドドドドドドドドド…………

 

「ねぇ十六夜。このゲーム、なんか変じゃない?」

 

 ドドドドドドドドドド…………

 

『あぁ、おかしい。間違いなく何か隠されてるな。それも意図的に』

 

 ドドドドドドドドドド…………

 

「『ゲームマスター側は、プレイヤーと同じ数の兵を所有することが出来る』。――これって、一見公平に見えるけど違うよね? 『所有』するんだから、持ち主がいるはずだよね」 

 

 ドドドドドドドドドド…………

 

『「棋士」の存在だろ? 初めっから分かってたことだろうが。――このゲーム、初期人数から公平じゃ(・・・・・・・・・・)ねぇ(・・)ってことくらいよ。

 ……まぁ、そうなると、やっぱ気になるな』

 

 ドドドドドドドドドド…………

 

「だね。――『王』の価値」

 

 ドドドドドドドドドド…………

 

「こっち側の最重要存在を『王』と呼称したってのに、あっち側はフルネーム。じゃあ、『王』の存在価値は?」

 

 ドドドドドドドドドド…………

 

『考えられるのは、「特性」。――もし、王の特性が「兵の支配」だと仮定するなら、「棋士(兵を所有する者)」と「(兵を支配する者)」は全くの別ってことになるな。だぼショタは間違いなく「棋士」だろうが』

 

 ドドドドドドドドドド…………

 

「じゃあ、『王』を倒せば兵は消えるってこと?」

 

 ドドドドドドドドドド…………

 

『あぁ。少なくとも「歩」くらいは消えるだろ。――ま、仮の話だ』

 

 ドドドドドドドドドド…………

 

「それにしても、戦局はどう動いているのやら。なんか通信状況も最悪だし、なにかあったんじゃないのかな。――応援を送った方がいいんじゃ?」

 

 ドドドドドドドドドド…………

 

『……どこに? 三コース全部(・・・・・・)と通信が取れないってのにか? ――それより防御を固める方が良いに決まってんだろ』

 

 ドドドドドドドドドド…………

 

「やっぱりそうだよねー。――だからこうして頑張ってもらってるわけだし」

 

 ドドドドドドドドドド…………

 

『……なぁ、因みにあとどのくらいやればいいんだ?』

 

 ドドドドドドドドドド…………

 

「ん? そりゃ多いほうがいいから…………敵が来るまで頑張ろうか」

 

 ドドドドドドドドドド…………

 

『マジかよ……』

 

 ドドドドドドドドドド…………

 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド……………………

 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド………………………………

 

 


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