担い手と問題児は日記を書くそうです。   作:吉井

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不安――門番――不意打ち

 

 あれから二日経ち、今日は決戦の日の朝だ。

 ノーネーム本拠点、正面玄関前にはすでに主力勢が全員そろっていた。

 

 ほとんどの面子はいつも通りの空気を出している。もちろん、適度の緊張感を身にまとっており、士気も高そうだ。

 だが数人、いつもと違う様子の者がいた。少数派のため、集団の中でかなり目立っていた。

 

 一人目――『春日部 耀』

 彼女はその両手で、胸元の《生命の目録(ゲノムツリー)》を握りしめていた。両目は固く閉じられていて、まるで何かを祈っているようだった。

 ……不安なのだろう。数日前の暴走の件が彼女の深層に根付いているのは、もはや誰の目にも明らかだった。

 

 二人目――『五十嵐 五月雨』

 彼は精神的な不安を抱えていた。当然耀のことだ。十六夜たちと話しながらも、チラチラと耀を見てしまう。

 この事件を終わらせようとすれば、ほぼ確実に戦闘となるだろう。そうなれば耀も戦わなければならない――《生命の目録》を使って。

 ……次に暴走した時、自分は彼女を守れるのだろうか。戦場のど真ん中で、周りには敵がいる状況で――下手をすれば、味方も敵になるであろう状況で……。

 悩んでいても仕方のないことくらい、彼自身分かっている。彼女は、止めても譲らないだろうから。……ならば結局、やることは一つ――。

 

 最後に三人目。そして、跳びぬけて目立つ存在――「逆廻 十六夜」

 彼はとにかく青かった。と言っても純色の青ではなく、晴れ渡る空のようにすがすがしいスカイブルー。……彼の右腕は現在、白銀から青へと変化していた。

 ……いやまあ、白銀ならまだ許せる。ほとんど白だから、まだ見慣れている部類だ――許容できる。だが青は人間が身に纏っていい色ではない。なんだそれは、エイリアンか。

 十六夜も不満のようで、昨日義手をつくったあたりからずっとグチグチ愚痴を吐き出している。今も、哀れにも拘束された刃に向かって愚痴っていた。刃も断ればいいのに、その真面目な性格もあってか、時々相槌を打ちながら辛抱強く聞いていた。

 

 

「――……以上三名――特に前の二人が、この戦いでの不安要素となるでしょうね。華蓮、どうします?」

 

 

 レイラからの報告を聞き、華蓮はしばしの間黙り込んだ。華蓮達は今、集団とは少し離れた場所で、レイラと最終確認をしている。

 華蓮の脳内では、味方側の戦力、相手側の戦力、行われるであろうギフトゲームの種類などが、リスクを踏まえたうえで高速で飛び回っていた。不要なリスクを排除するためだ。

 そこにこの報告である。華蓮の心情的には、勘弁してほしいものだった。

 

 

「……五月雨と耀ね……。一番の解決策は、耀が立ち直ることなんだけど――そうすれば、自然と五月雨も元気になるだろうし。でもなぁ……」

 

 

 耀が立ち直るには、戦場に出て、生命の目録を制御し――あの力を自分のものにしなければならないだろう。あの、恐竜の力を呼び起こしたという諸刃の剣を――悪魔じみた、悪夢の力を。

 

 

「でもリスクが大きすぎるんだよなぁ……。でも二人の力は絶対に必要だし……」

 

「おーい! 華蓮、そろそろ行くぞ!」

 

 

 十六夜の声で、思考は強制終了。

 結局、考えのまとまらないまま華蓮は出発した。

 

 

(――深く考えても仕方ない。あとのことは二人に任せた! なるようになーれ!)

 

 

 苦し紛れに出した結論は、信じられないほどの地雷臭をまき散らしていた。

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

『なあ華蓮、その鳴って奴が所属してるコミュニティってのは、魔王と関係あるのか?』

 

 

 道中、十六夜が疑問を投げかける。そういえば、といった様子で周りの視線も集まってきた。

 

 

「うーん、どうなんだろ。私も詳しいことは分かんないけどさ、魔王と繋がりがあるかってことなら、あの人に限ってそれはないと思う。――あの人ってさ、普段はものぐさだけど、娯楽のためならなんだってするんだよね。で、その状態の時の彼女にとって、私たちも魔王も、天軍ですら同価値なんだよ。――私の娯楽を邪魔する奴、って一様に認識されるらしい」

 

『なるほどな。格下と組むメリットは無いだろうし、魔王側も自陣営に天災は抱えたくないからか。――ってことは、だ。そいつは魔王よりも天軍よりも強いってことだな?』

 

 

 瞳をギラギラと光らせ、口元に笑みを浮かべながら十六夜は言った。途端、飛鳥が注意をして止める。十六夜も、『冗談だ』と言って笑っている。

 それに対し華蓮は、小さく一言だけ、「まぁね」と呟いた。意図した通り、誰の耳にも届かなかった。

 

 

「――因みに、コミュニティのリーダーはあの人じゃないからね」

 

「そうなんですか? てっきり、その鳴さんがリーダーなのかと……」

 

「ふふ、そう思うのも仕方ないよ。強いからね、あの人は。――でもだからって、娯楽のために世界を危険にさらす人は、人の上に立てない。リーダーは、メンバーのことを大事にできる人が向いてる。……まあ今回の場合は、『あの人のストッパー』も務めなくちゃいけないから、リーダーの人も強いよ」

 

『ストッパーね……ってことは、鳴って奴よりも強いのか?』

 

「いいや、そんなことはないよ。リーダー単体なら、この場にいる全員が勝てる。ただし、一対一ならね。あの人の本気は、大多数が相手の時にしかでてこないからさ。……まあ、強さにもいろんなベクトルがあるってことだよ」

 

「まあつまり、現在の状況がまさしくソレだから気を引き締めようぜ――ってことだ。……ほら、見えてきたぞ」

 

 

 十六夜の指差した方向を見る。そこには、馬鹿みたいに巨大で真っ赤な鳥居があった。

 刹那、その場にいる全員の背筋がブルリと震えた。何度も見ているはずの華蓮すら、額に汗を浮かべている。

 

 

「何度見ても……慣れないなぁ」

 

『この威圧感……鳥居自体にも何かあるぞ』

 

『……まるで僕たちを試しているみたいですね』

 

 

 各々が感じたことを口に出す。全員が全員、得体のしれない圧力を感じ取っていた。

 

 

『……考えても意味ないな。華蓮、先に進もう。――この先に何か、仕掛けはあるか?』

 

「あるよ。その鳥居の下、そこに入ると上から仁王像が――」

 

『オッケー、任せろ』

「ここは俺たちでやる」

 

 

 話半ばで跳び出したのは十六夜二人。両の拳を握りしめ、鳥居の下まで一直線に向かう。

 そして真下に到着した瞬間、二人を巨大な影が覆った。見上げると、そこには――

 

 ――真っ赤な石材で造られた、巨大な像の足が……

 

 

「よォ――オラァ‼」

『――月下夜焼‼』

 

 

 二つの叫びが響くと同時、辺り一帯に衝撃波がまき散らされた。そして、赤い仁王像は――一瞬で、ただの瓦礫へと変貌を遂げた。

 

 

「……あっけないな」

 

『そうだな、期待外れだ』

 

 

 二人はそう呟き、華蓮の方を向く。そして、これ以上の仕掛けの有無を確認した。

 それに対する華蓮の反応は、苦笑だった。苦笑して、肩をすくめる。

 そして、言葉を発した。

 

 

「いや、もうないと思う。――でもさ、あれでも一応門番なんだよ? それをあんな粉々にしちゃってさ……、私たちがきたこと、もうばれてるよね。まぁ、それが無くても時間の問題だったけどさ――」

 

 

 と、その時。

 鳥居を抜けた先の、道の彼方から、人影が二つこちらに向かって来るのが見えた。

 一つは背が高く、もう一人はその半分ほどの背丈しかない。

 

 

『誰か来るぞ』

 

「みんな、気を付けて」

 

 

 警戒する一同。

 そしてその影が視認できるほど近くに来た時――その姿を意識に入れた……その瞬間。

 

 ――肺を絞られたような、錯覚を覚えた。

 否、錯覚などではない。実際に呼吸が止まった――

 

 

「……ッ⁉ がひゅ……」

『かッ……あぁッ……⁉』

 

 

 酸素を求め、慌てて呼吸を繰り返すが、しかし何一つ取り込めない。まるで体が酸素を拒絶しているような、そんな違和感。

 

 

(や……ッべぇ……! 反応が遅れた……意識が……ッ‼)

 

 

 全員が全員、苦し気に呻きながら膝をつく。耳の奥で血がごうごうとなっているのが分かった。遂には意識が漂白され始め、手足から力が抜けていく。

 ――寸前で、唐突に呼吸が戻った。

 

 

「っ……はあっ‼ はあっ……はあっ……!」

 

『……ッ! なにが……起こった⁉』

 

 

 暗い視界の中、警戒を続ける一同。その胸中は焦りでいっぱいだった。

 異常発生の時にはすでに、あの二人はすぐそこまで接近していた。そして時間はかなり過ぎている。――すでに近くまで接近されている。

 

 その時、一同全員が会話を耳にした。どうやら二人組――間違いなくあの二人だ……近い。

 

 

「む……? まだ意識があるのか――どういうことだ、孔?」

 

「あっれーおっかしいですね。……あ、しまったー。気ぃ失う直前で意識から外れるし、これじゃだめかー」

 

「……孔、お前が自信満々に言うから試したのだぞ。それがこの様とは……評価を改めるべきかな」

 

「おぉっと、でましたねー『評価を改めるべきか』。――でもまぁ、そう口では言っても実際にはシないんですから、なんだかんだで僕の価値を理解してらっしゃる」

 

「……ふん、勝手に思っているがいい。ある日突然自由を奪われても、我は知らんからな。自己責任、自業自得だ」

 

 

 声質から判断するに、一人は年季の入ったおじさんという感じ。声は渋いバリトンボイス。……もう一人は若い。声は高くて女の子っぽいが、幼さの残る感じから考えるに、声変わりの始まっていない男の子のような感じもする。

 

 

(……どちらにせよ、この状況はマズイ。何か話さないと……)

 

 

 意識がハッキリし始め、体に力が戻ってきた華蓮は顔を上げようとして――

 

 ――直後、額が地面に激突した。

 

 

(なっ――⁉)

 

 

 唐突過ぎる状況に混乱するが、すぐに理解した。

 踏みつけられた――いや、踏みつけられている。しかも頭を、土足で。

 

 ――怒りと屈辱で頭の中が真っ白になった。

 一気に青封を二つ解き、全力で頭を上げようとする。だが、足を退けることはできない。あと一歩――あと少しの力が足りていないのだ。

 遂には体のあちこちにラグが発生し始めた。だが華蓮はそれを無視し、抵抗をつづける。

 

 もちろんそんな行為を十六夜が――五月雨たちが黙ってみている訳が無い。華蓮と同じくコンディションが戻った者から順に、その姿めがけて突撃しようとする。

 ……だがその直前、全員が全員呼吸が止まってしまうのだ。呼吸が止まり、膝をついてしまうのだ。

 

 

「足を……退けなさい……‼」

 

「んん……何故だ、これは適切な処置だぞ? 一般の輩が我の姿を視界に収めるという、愚行を阻止するためのな」

 

「な……めんなぁ‼」

 

 

 ゴォッ! と、華蓮の周囲の空気が震える。

 ラグがひどくなる。押さえつけていた足が、少しずつ持ち上げられていく。

 

 

「ふむ、これは……」

 

「どぉ……だッ‼」

 

「意外にやるではないか。これもひとえに我の油断だな。反省、猛省」

 

「ごちゃごちゃとぉ……! 意味わかんないんだよ、あんた‼」

 

 

 遂に、華蓮を押さえつけていた足がどけられた。

 華蓮は即行で跳ね起きると、非常識なおじさんに一撃入れようとして――

 

 

「――うむ、命令(・・)を変えよう」

 

 

 ――その場に崩れ落ちた。

 

 そしてそれと同時、一同を苦しめていた呼吸の異変が解決した。にも拘らず、誰一人動こうとしない――否、動けない。

 華蓮の気絶と、異変の解決によって導き出された結論に、誰一人として顔を上げられなくなっ(・・・・・・・・・・)ていた(・・・)

 

 

「ほう、他の輩はなかなかに賢いではないか。そうだ、それでいい。――我の姿さえ視界に入れなければ、なにも問題はないのだからな」

 

「はぁー、いつ見てもえげつない力ですよねー。流石は《絶対王》といったところでしょうか」

 

「その呼び名で我を呼ぶな。我は王になったつもりはない――そして、なるつもりもない」

 

「はいはい、そーですかそーですか、分かりましたよ凛さん。――で、この人達どうしますか? このままにしておきます?」

 

「は、異なことを言うではないか孔よ。我らのコミュニティを襲おうとした輩だぞ? 当然、相応の処置をとるに決まっているであろう――」

 

『待ってください‼』

 

 

 突如、静止を呼びかける声が響いた。凛さんと呼ばれた男が、不機嫌そうな顔をしながら話を中断する。

 会話に割り込んだのは、黒ウサギだった。

 

 

「……ほう、箱庭の貴族か。珍しいな」

 

『まずは貴方方のコミュニティに対する非礼を謝罪します。申し訳ございませんでした。事前に連絡もせずに押し掛けたことも重ねて謝罪します。――ですが、私たちにも通すべき筋があったのです! どうか、話を聞いていただけないでしょうか!』

 

「……孔、どう思う」

 

「んー別にいいんじゃない? ……ていうかこの子――この倒れてる子、たしかサウザンドアイズのメンバーだよ。前に見たことあるもん。……話くらい聞いとかないと、後が怖いよー」

 

「……そうか、此奴が例の『お気に入り』か。しまったな……、これが奴に知られれば……。――箱庭の貴族よ、話を聞こうではないか。とりあえず館に来るといい、そこで聞こう」

 

 

 そう促すと凛は、背を向けて歩き始めようとする。

 

 

「待てよ」

 

 

 その寸前、十六夜が静止の声をぶつけた。

 数秒間の沈黙、凛は背を向けたまま応えた。

 

 

「なんだ少年、まだなにか用かね? まさかとは思うが、謝罪しろ、などという筋違いな要件ではないだろうな?」

 

「違うな、そのことについてはこっちの方でケリがついてる。――俺が言いたいのは、早く華蓮を起こせ、ってことだけだ」

 

「……ああ、そういえば気絶させたままだったな。これは失礼」

 

 

 そう言った数秒後、まるで夢から覚めるように華蓮は目を開けた。自体が呑み込めないのか、きょろきょろと辺りをうかがって――

 ――凛を認識した瞬間。

 

 

「――ッ! 第三封(サード)――」

 

「ストップ」

 

 

 脳天にチョップをくらい、その場にうずくまった。

 涙目で見上げてくる華蓮だが、十六夜(犯人)はそんなことお構いなしに話をつづけた。

 

 

「落ち着けよ華蓮、その件はすでに終わってるんだよ」

 

「終わってないって! わたっ、私の頭を踏みつけたんだよあの人!」

 

「あぁ、そのことだが……、すまない、あれは完全に俺らの責任だ」

 

「…………は?」

 

 

 そう言っていきなり頭を下げた十六夜。

 言ってる意味が分からず呆然としている華蓮に、もう一人の十六夜が説明した。

 

 

『俺らがあの時、門番の像を壊してしまったから敵と認識されてしまったんだ。……本来なら、もっと平和的に済んだ話なのに。本当にすまない』

 

 

 そして、同じく頭を下げる。

 二人の男に頭を下げられている。こうなってくると、脳のほうも正常な動きを再開して現状を再認識させる。

 華蓮は慌てて手を振り「顔を上げて!」と言うが、二人はそれを聞かず謝罪を続行した。

 

 

(いやー! やめてやめて、伝わったから! 二人の気持ちはしっかり受け取ったから! ……だからそろそろ顔を上げて! じゃないと周りの視線が――って、すでにどんどん冷たくなってるーッ⁉ もう手遅れッ‼)

「ほっ、ほら! もう怒ってないから、ねっ! ――再封印(リブート)‼ ほら!」

 

 

 パニック状態の華蓮は、わたわたとせわしなく動きながら、視線を二人の間で行ったり来たりさせる。

 具体的な解決策のない華蓮を救ったのは、例の二人組の片割れ、孔と呼ばれた……

 

 

「ねぇ、そこのお二人さん。そんなに謝るのが好きなのかな? 君たちの責任はそれほどじゃあないんだぜ?」

 

 

 男の子だった。

 まだ二桁年齢に達していないであろう幼い外見に、歳に比例して低い身長。薄手のT-シャツの上から、ワンサイズ大きいのかだぼっとしたオーバーオール。頭には、これまたサイズの合っていない帽子をかぶって――のせていた。

 ……まぁ、まさに子供らしい子供だった。

 

 

「あれは凛さんなりの優しさなんだからさ。彼女、まだ呼吸も整わないうちに顔を上げようとしたでしょ? あのままだと、二度目をくらって危険だったからさ。――だから珍しく凛さんが自分から動いたってわけ。理解した?」

 

 

 ……口から出てくる言葉は子供ではなかったが。

 それを聞いて、二人は顔を上げる。こころなしか不機嫌そうだ。

 

 

「……おい、だぼショタ」

 

「だぼショタ?」

 

『だぼっとしたもんばっかり着ているから、だぼショタだ。……で、だぼショタ。言いたいことは理解したんだが、タイミングが最悪だぜ』

 

「せっかく、慌てふためく華蓮の姿を見てたのによ。激レアだったんだぜ?」

 

「……おい待てふざけんな、そんなもんのために私は辱められたのか」

 

 

 ふらぁ、と立ち上がった華蓮は、いつか見た例の怒り心頭モードで二人を見据えた。

 だが、二人は微塵もひるまない。スッと目を細めると、落ち着いた声で話し出した。

 

 

『まぁそれが全てじゃないけどな。最近お前、何かと気ぃ張ってたからリラックスさせようかと思ってな』

「まぁ、俺らなりの気づかいだと思ってもらえば――」

 

「絶対他に良い方法あっただろ」

 

 

 シリアスなんてなかった。

 華蓮はバッサリ切りすてると、二人に一発ずつ拳骨を落とした。

 呻いてうずくまる二人。その過剰なリアクションに、やりすぎたかな、と華蓮も心配になった。

 

 

「……えーと、そんなに痛かった? 手加減はしたと思うけど……」

 

「いや、痛いとは違うんだが……」

 

『これを正確に言い表すなら……、痛覚が増している? いや、神経が尖っている――も、何か違う……』

 

「……敏感になっている、とか?」

 

 

 何気ないその一言に二人は、それだ、と同意する。

 ……するとやはり、仕掛けているのはあの男。重い置き土産をもらってしまった……。

 

 となると。

 十六夜はすばやく周りを確認した。

 

 

『……ダメだな。おそらく全員姿を見てる。くそっ、油断したぜ』

 

「仕方ないよ、急なことだったし。……それに、いまさら中止にはできない。行こう、みんな」

 

 

 華蓮はそう言って館へと歩き始めた。他のメンバーと孔も後に続く。

 こうして、ラストバトルの火ぶたが切って落とされた。

 

 


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