「…どうだ?こんなこと信じてくれるか…?」
「そんな事が本当にあるなんて…」
「あぁ…」
「…別の世界から来たってことはこの世界には家も金もないってことだよな?」
「そういうことになるな…」
「俺よりも不幸な話を初めて聞いた…」
イタチは上条の姿を見て驚いていた。その事を信じて真剣に悩んでくれているようだった。
「だから身寄りがねぇのか…なるほどねぇ」
「…どうすればいいかわかるか?」
「わからない」
上条はキッパリと言い切った。
「…そうか」
「わからない以上、俺の家で飯も食べていいですよ」
「…いいのか!?」
「あぁ!不幸者同士、仲良くしようじゃないか!」
「ありがとう!」
イタチは上条が何も怪しまず、本気で信じてくれたことに対して本当に嬉しそうだった。
「それと御坂が明日の夕方に教えてあげるってさ」
「そうか…この世界に来て皆にお世話になりっぱなしだな俺は」
「俺は明日朝から夕方まで学校があるから…まぁなんとか頑張ってくれ」
「…わかった」
そこでイタチはこの世界に争いはないのか聞いてみた。
「ん?戦争なら絶え間なく外国でドンパチやってますよ」
上条は少々呆れ気味に答えた。
「やはりこの世界でも戦争はあるのか…」
「イタチさんの世界も戦争してるんですか?」
「あぁ。互い憎しみ合い、終わりのない戦争を続けている…」
「そうですか…」
「俺はずっと目の前で戦争を見てきた…しかしそれはあまりにも惨いものだった」
「…って、イタチさん戦争してたご本人だったんですか!?」
「…そうだ。俺は愚かだった」
イタチは弟以外の一族を皆殺ししたことを言いそうになったが、なんとかしてこらえた。
「国同士で起こった戦争を俺1人でなんとかしようと思ったが何も出来なかった…」
「…それはそうですよ。戦争なんて1人でなんとかなるものじゃないですから」
「だが俺には弟がいてな。俺は弟だけを本当に大事にしていた。弟は俺に対する憎しみを抱えているだろうがな…」
「その弟さんはイタチさんの事が嫌いなんですか?」
「あぁ。おそらく殺したいくらいまでにな」
「そんな実の兄弟で…!一体何があったんですか!?」
「まぁ、いろいろと…」
イタチは突然の睡魔に襲われた。
「…すまない。少し疲れたから寝てもいいか?」
「…そうだな。もう23時だし、寝ますか…」
2人は洗面台に行って寝る準備をするために歯磨きをしていた。
「これからが大変ですね」
「困ったものだ…」
歯磨きを終え、上条は黙って電気を消して2人は寝床に入った。
「今日は久しぶりにゆっくり休めそうだ…」
イタチはゆっくり目を閉じた。