高いビルに立ってかなりの時間が経った。そして、答えを得られず考えることを諦めることにした。そして見た感じではどうやらこの都市には森林がないらしい。これでは野宿もできない。安全も確保できない環境だった。
イタチは降り立ち、都市をもう少し歩くことにした。
見慣れない景色を前にしてこんな世界があることに再び驚愕してしまっていた。まるで大きな幻術にかけられていると思えるほどに。
しばらく情景に浸りながら歩いているとベンチに見覚えのある青年が疲れた様子で座っていた。
「せっかく買った卵が割れてしまうなんて…はぁ…不幸だぁ…」
その青年はここに来て初めて幻術をかけた青年だった。
「あ、一つだけ無事だった卵があった!不幸中の幸いだぁ!!ってあれ?あなたはさっきの…」
イタチはさきほどのことを隠したかったため何事もなかったかのように話した。
「あ、あぁ。さっき会いましたね」
「俺の記憶が正しければあなたの目を見た後意識が飛んだ気が…まあ、過ぎたことはいいか」
「あの…あなたの名前は?」
「俺ですか?俺は上条当麻です。あなたは?」
「うちはイタチです」
「なんか変わった名前ですね」
「よく、言われます」
イタチは伸び伸びとベンチに座りながら上条の愚痴を聞かされていた。
「そういや家どこ?」
「俺には…家がない」
「…どういうこと?」
「ちょっと色々な理由があってな」
「え、そんな歳でまさかの家出ですかぁ?」
「家出ではないんだ…」
「いや、そこ真面目に返されてもな…」
「ならどう返せばよかった?」
「もういいや、じゃあ俺の家来る?住むだけなら別にいいよ」
「いいのか?」
「あぁ。飯までは出してやれないがいいぜ別に」
「すまない」
2人の会話は何故か酔っ払っているようだった。
さっそく向かうことになった上条とイタチ。
道中色々な不慮の事故で遠回りをしたこともあったがなんとか着くことができた。
「ただいま~…」
「帰って来るの遅いんだよっ!お腹すきすぎたし待ちくたびれてスフィンクスと家出しようか考えてたんだよ!」
そこに白い服を来た女の子が玄関に迎えに来てくれた。
「お前家出したらどうやって生きて行くんだよ…」
「それは…なんとかして生きるんだよ」
「はぁ、また無茶いって。今からご飯作るからちょっと待ってろ」
「この人だれ?」
「あぁ。住まいがないらしいから今日ここで寝ることになったんだ。お前ら仲良くしろよ」
「…どうも」
「…なんか臭いんだよ」
「え?」
「こらぁインデックス!!初対面の人に向かっていきなり臭いはないだろ!」
「だって臭いものは臭いんだよ!」
「悪いな。もう3年間くらい風呂に入ってなかったからな」
「えっ…」
その瞬間、空気が一気に凍りついた。
そしてすぐ様気をとし直して上条はイタチにこう言った。
「じゃあ今から早く風呂に入ってください!!風呂場貸しますから!」
「いいのか?」
「もう是非!」
「じゃあありがたく入れさせてもらいます」
イタチは渋々と上条宅の風呂場に3年ぶりに入ることができた。
そして湯船につかって久しぶりの気持ちよさにウトウトしていた。
そのウトウトの中でずっとサスケが今頃どうしているかを考えていた。
「あいつ、今頃なにをしてるのか…元気でやってるかな…」