「……」
道中ずっとイタチは黙っていた。というより、これからどうしようかとずっと考えていた。
佐天はその様子に対してやはりイタチにはなにか悩み事がありそうだということを思い、一度聞いてみることにした。
「あの、どうかしたんですか?」
「ん?いや特になにも…」
「悩み事とかあるんじゃないですか?」
「……」
「私でよければ、話聞きますよ」
イタチは彼女に相談するか悩んでいた。相談するのはいい。しかしこのイタチに起きた事を本当に信じてくれるのか、それがとても心配だった。
「…私も、能力者になりたいって思ってたんです」
佐天は突然話の流れを変えるように語り始めた。
「前に自分の能力を開花させることの出来るアイテムがこの学園都市に広がったんです。あたしは手をつけました。ですけどやっぱりただじゃなかったんです…」
佐天はまるで自分の触れられたくないようなことを自分でえぐるように語っていた。
「そのせいであたしは御坂さんや白井さん、そして初春にすごく迷惑をかけちゃいました。それでも、私の大切な友達が能力なんて関係ない、大事なのは思う気持ちだって教えてくれたんです」
「……」
「あたしはそのことを教えてくれて本当に嬉しかった…」
佐天が立ち止まってこういった。
「私たちはもう友達です!だから、悩みがあるなら私たちに相談してください!」
彼女の目は本気でイタチの心に話しかけていた。
そう言われたイタチは心に響くものがあった。うちは一族、友、悩み、そういう一つ一つのワードが心になにかが突き刺さったような感じにさせた。
そのまま黙ってまた歩き始めた。
歩き始めてどれくらいたったかわからなくなっていた。
すると、どうやら佐天の家についたらしい。
「じゃあ、私の家はここなんで…」
「……」
「なんか勝手な事ばっか言っちゃってごめんなさい。でも私と同じような思いをして欲しくなかったから…」
「佐天さん…」
「はい!」
「俺は大事な事を忘れていたのかもしれない。佐天さんのおかげでそれに気づくことができました。ありがとうございます」
さっきほどまで心配そうにしていた佐天の顔は一気に明るくなって嬉しそうだった。
「そうですか!役に立ててよかったです!では、私も帰りますね!」
そう言って佐天は家に帰っていった。
イタチはその後、もう少しこの世界のことが知りたかったので学園都市を散策することにした。
この世界はやはりイタチの思ったとおり、まったく無知な世界だった。そしてイタチは高いビルの上に立ち、ずっと考えることにした。