2人はゆっくり落下していった。
白井は佐天が気絶したのを確認して、地面にテレポートをした。そこに初春がイタチの肩を組んで駆けつけた。
「大丈夫ですか!!」
「ええ、わたくしは大丈夫ですわ。それより佐天さんのほうを…」
「はい!」
そのあと御坂も電気を使ってゆっくり降下してきた。
「なんとかなったようね…」
イタチはなんとか自力で立ち、初春は佐天に駆け寄った。
「佐天さん…どうしてこんな…」
「俺がむやみに力を与えてしまったからだ…」
「そんなことありません!あなたは佐天さんを助けてあげようとしてたんですから!」
初春が泣きながら言った。
「最近の佐天さん…本当に幸せそうだった…なのに…」
「……うぅ」
「佐天さん!!」
佐天がゆっくり目を開けた。
「ここは…わたし今までなにを…」
「…覚えてませんの?」
「…あれ?なんでこんなボロボロの場所にいるの…?」
初春はすかさずに焦りながら答えた。
「それは…!みんなでここに肝試しをしに来たん…」
「お前がこの一帯を破壊したんだ、涙子」
「え…」
「ちょっと!そんなこと言ったら!」
「彼女はまた強さに憧れ、堕ちていく。ここでしっかり認識させなければならない」
「…そっか。これ全部あたしがやったんだ…」
「そうだ」
「…!!あたしまた助けられちゃったんだ…」
「…なぜ助けられるのをそう拒むんだ?」
「どんなに気持ちが強くても、やっぱりあたしはずっと守られたり頼ったりする自分が悔しかった。だからあたしが力を手に入れて強くなってもっと大事な人を守りたいって…!」
「その不安定な欲がこの事態を招いてしまった」
「……」
「確かに、力を手に入れ強くなれば大切な人を守ることができる。だがな、力を手に入れることだけが強いわけじゃない。それは涙子もわかってるだろ?」
「じゃあなんで、あたしに忍術を教えたんですか!?」
「それは、君になら本当の忍術を使いこなし友達を守れるようになると思ったからだ」
佐天は涙を流していた。
「もし仮に忍術を使いこなせなくても、君には大切な友達がいるじゃないか。それだけじゃ不満なのか?」
「…それは」
「なら頼ればいいさ。お互いに理解しあい、苦しみや悲しみや楽しみや嬉しさを分かち合って共に生きていく。それが本当の友達ってもんさ」
「そうよ佐天さん!!」
「わたくしたちは友達なのですから!」
「わたしもそう思います!」
「……!」
「そして、これを俺に教えてくれたのは君自身だぞ?」
「え?」
「悩み事があるなら相談しろと言ったのは君だろ」
「……」
「君は自分の秘めたる可能性をみつけて大事なものを忘れていたんだ。だからそこはしっかり反省するんだ」
「…はい!!みんな、迷惑かけて本当にごめんなさい!!!」
「いえいえ!こちらこそ、佐天さんの気持ちも考えないで勝手なことしちゃってごめんね!」
「そんな!謝らないでください!」
イタチはその光景を見て心の底から安心した。しかしイタチの身体に異変が起きていた。
「これは…」
「イタチさんが!!薄くなってる!!」
「…どうやら時間のようだな」
突然マダラが目の前に現れた。
「マダラか…」
「今のうちに言いたいことを残しておけ」
佐天が悲しそうな顔でイタチを見ていた。
「時間って…?」
「帰らなくちゃいけない時間らしい」
「え…いやだ…いやだよ…あたし、こんな別れ方いやだよ!!!」
「そういうな、俺は最後に大切なことを教えることができて、そして教えてくれて、嬉しかった」
「そんな…あたしたちまだちゃんとお礼してないよイタチさん!!」
「お礼ならもう何度もしてもらったよ」
「あんた…このまま消えちゃうの…?」
「……ああ」
「…後悔は?」
「…していない」
「そっか…ならわたしは止めないわ」
「そんな!なんでですか!」
「それはイタチさんが決めたことだから…わたし達が口を出すべきじゃない」
「すまない御坂さん。あなたとは1度本気で手合わせをしたかった」
「ふん!ま、わたしの方が強いでしょうけどね」
「そうか、それは是非やってみたいものだ。それと、当麻さんによろしく頼みます」
「任せといて!」
「ありがとうございます」
御坂は後ろに振り返って言った。
「またあんたと会えること楽しみにしてるわ!」
だがその一言は少し鼻声だった。
「白井さんとはもっと話がしたかった」
「うぅぅぅぅぅ!!イタチさま~!!」
「そう泣くな。俺はあなたのような上品な女性に出会えてよかった。御坂さんと仲良くやるんだぞ」
白井は顔に手を当てて号泣していた。
「初春さん、あなたとはもっとファミレスやこの世界の文明のことを教えてもらいたかったな」
「うぇぇぇぇぇん!!そんなこといわないでください!!!」
「こう見えても俺は頭がいい方なんだ。君には負けるかもしれないけどな」
「そんなこともないですよぉ!!」
初春も子どものような無邪気さを出して泣いていた。
「そして…涙子」
「……」
「俺は君に会えて本当によかったと思っている。君に教えてきたものもあるが俺は君から大切なことを数え切れないくらい教えてくれた」
「じゃあもっといろんなこと教えてくださいよ!!わたしももっと教えるから行かないで!!」
イタチは笑みを浮かべて手を前にだして佐天に手招きをした。
そして…
「いっ!」
「許せ涙子、また今度だ」
その一言を最後に、イタチとマダラは完全に消えてしまった。
……………
「ここは…」
「やっと目が覚めましたかイタチさん。急に消えたと思ったら突然現れて、現れたと思ったら気を失っている状態でしてねぇ。心配しましたよ」
「ここは…?」
「はぁ?なにを言ってるんですか?」
イタチは静かに空を見上げていた。
「……」
「おや?どうしたんですか涙なんか流しちゃって」
「…なんでもない」
「それならいいんですが…では木の葉に向かいましょうか」
「…悪いな鬼鮫、少し休ませてくれ」
「そ、そうですか、構いませんが暁の命令通りの時間内に済ませるようにしてくださいね」
「あぁ、すまない」
「おやおや、あなたのような方が謝るとは、よっぽどのことがあったんでしょうね」
「……」
イタチ達は森の奥で休むことにした。
そしてずっと考え事をしていた。
この世界での俺の本当の友は誰なのか
、と。
いや、この世界に友はいない。俺はその友を捨ててでも守りたいものがあったからだ。
「鬼鮫、行くぞ」
イタチと鬼鮫は再び歩み始めた。