イタチはついに研究室の前にたどりついた。そこには木原幻生がイタチを待っているかのように立っていた。
「君がうちはイタチ君だね?」
「彼女はどこだ」
「この奥の部屋でおとなしく座ってるよ」
「彼女を返してもらおうか」
「それは困るね、せっかくの実験体をみすみす逃すわけにはいかないからね」
「なら力づくで通らせてもらう」
「そんなことしても彼女が嫌がると思うが?」
「…なぜだ」
「彼女自身がこの道を選んだからだよ。システムスキャンをしたところ君と同様異常な数値をたたき出したからこのワシがもう少し強くしてあげようかと聞いたら素直に、はいと言ったんじゃ」
「……」
「ほっほっ。なにも言えまい」
「…そこをどけ」
「さっきも言ったがそれは…」
「月読ッ!!」
イタチはこれ以上の会話は無意味と判断して強行手段をとった。
「あぁぁぁぁぁあ!!!!!!」
木原は大声で叫び、突然膝まづいて倒れこんだ。
「月読がかかってしまったお前はもう立ち直れないだろうな…うっ…」
月読も多大なチャクラを消費してしまうため疲労がかかってしまった。
イタチは奥の研究室に入っていった。
そこには佐天が地面を見つめながら立っていた。
「涙子無事か!」
「あ、イタチさ~ん!」
「なにかされたのか!」
「今すごく気分がいいんですよ~なんかこの世がちっぽけに思えるくらいに~」
「くそっ…遅かったか…」
「なにが遅かったんですか?」
イタチは佐天の顔や雰囲気について異変を感じた。
佐天の顔色はものすごく真っ青で今にも倒れてしまいそうな色であって目つきが凄く悪かった。
そして雰囲気はまるでなにか悪いモノに取り憑かれたような様子だった。
「あの目…この俺より目つきが悪いな」
「そうだイタチさん!私つよくなったらしいんでちょっと組手してもらってもいいですか!?」
「なに…?」
佐天は躊躇なく印を結んだ。
「な、その印はっ!!」
「多重影分身の術!!」
なんと上忍Levelの術をいきなり出してきた。
「あんな高等忍術どこで学んだ!いや、違う!あれはあの子自身のセンスから生まれた術、なんて子だ!」
さらになんと佐天の影分身達が一斉に印を結び始めた。
「風遁、風切りの術!」
研究施設が一瞬にして吹っ飛んだ。
無論それをかわしたがイタチはすごく困っていた。
「くそっ!あの子相手じゃ本気を出せない!ならば!」
「さぁ早くイタチさんの本気みせてよ!!」
「写輪眼!!」
佐天は写輪眼の瞳術をくらった。
「これでひとまず動きは…」
「どうしたのイタチさん!私の師匠だったんだからもっと強いはずでしょ!!」
「写輪眼が効いていない…!自分で解いたというのか!」
「なんかわからないけど今のイタチさんの得意技みたいですね!がっかりです…」
「…くっ」
「…この世界にはがっかりなのよ!!」
佐天の態度が急に変貌した。
「こんな世界、有利な人だけが幸せに過ごせる世界じゃない!この私が弱いばっかりに周りに舐められて守られるのが当然で…そんなのもう嫌なのよ!!」
「落ち着け涙子!」
「こんな世界消えちゃえ……飛空翔の術!!」
佐天はゆっくり空に上がっていった。
そこに御坂、白井、初春が到着した。
「イタチさん!!」
「君たちか!!ここは危険だ!!早く逃げろ!!」
「なにがどうなってるんですか!?」
「詳しいことは後だ!」
佐天の動きは空の真ん中で止まった。
「…このチャクラ量…なんてことだ…」
イタチは初めて恐怖を感じたかもしれなかった。その恐怖の対象は自分の命が消えることではなく、この周りにいる大切な友達の命が消えることだった。
「こんなところ破壊してやるんだから…」
佐天はゆっくり印をむすんだ。
「大螺旋輪具の術…」
佐天の手のひらに黒く乱回転をしたチャクラの周りに風のリングがまとっていた。
佐天はその玉をゆっくり手のひらから落とした。