どうやら気づかれずに逃げ切れたらしい。イタチはこれからどうするかを考えながらビルを渡っていた。
そして、ここにいる以上妙な真似はしないほうがいいかもしれないという結果にも至った。この地域に溶け込むほうが効率良く情報収集が出来るかもしれなかったからだった。
「まずは服をどうにかしないとな。俺たちの世界の服とは少し違うようだし」
イタチはみんなに見られて恥づかしがりながらも服屋に向かった。
「いらっしゃいませ!」
成人くらいの女性店員が出迎えてくれた。
「すみません、俺に合うような服ってありますか?」
「そうですね~。この季節だとこのような服とかがオススメですかね~。お客様の場合イケメンなんで大体なんでも合うと思いますよ~」
イタチにも人情がある。少し嬉しかったようだった。
「ではこの服を購入します」
「では会計おねがいしま~す」
イタチは黙って財布を取り出し、
「5980円です」
財布から金を出した。が、
「お客様、これはどこの国のお金でしょうか…?」
「…これではないのですか?」
「すみませんがこのお金ではお売りすることはできません」
「わかりました…失礼します」
イタチはトボトボと服屋から出るとまた周りの人たちの痛い目を浴びたので、焦って近くにあった路地裏に入った。
なりより思うように行動が出来ない状態で非常に困っていた。
すると路地裏の奥のほうから声が聞こえた。
「きゃあっ!」
1人の女の子が3人の集団に襲われていた。
「おいおい、お前の肩が俺の腕に当たったせいで腕の骨折れたじゃねぇかよぉ!」
「当たっただけで…折れないと…思うんですけど…」
「あぁ?」
「いえ…なにも…すいません…」
「すいませんじゃあすまねぇよなぁ普通よぉ!」
女の子は鋭い目で腕を折ったと言う男に睨みつけた。
「お?このLevel3の俺様に逆らうってのかぁ?良い度胸じゃねぇかぁ」
「Level3…能力の割り当てか何かか…?」
「さぁ、覚悟しろガキ!」
「見てられないな…」
イタチは物陰からそっと出てきた。
「どうやらゴミみたいな人間はどの世界にもいるらしいな」
「なんだてめぇ」
「その子を放してやれ」
3人の男は爆笑した。
「なんだその格好は!!自分に酔った中二病のヒーローさんよぉ!!」
「お前がさしずめリーダーってとこか」
「だったらなんだぁ?やんのかぁ!!」
……………
「助けてくれてありがとうございます
!!…あの…お名前はなんと言うんでしょうか…」
「…うちはイタチ」
「イタチさん…かぁ。変わった名前ですね!それに服装も少し変わってますし…」
「…やっぱり変ですか?」
「え?ま、まあ」
少しガッカリした。年頃の女の子に変と言われれば誰でもガッカリするだろう。
「あ、私の名前は佐天涙子です!」
イタチたちのいる世界の風習とは違う、変わった名前であることに再確認した。
「あ、あの~。ちゃんとお礼をしたいのでファミレスに行きませんか?」
「ファミ…レス…?」
イタチには全く意味不明な言語だった。忍の世界にファミレスなどというものはなかったからだ。
そしてイタチは恐る恐る佐天の後について行くことになった。