「やれやれ…」
イタチは腰を下ろして倒れこんだ御坂に触れて幻術を解いた。
「…あれ…イタチさん?私気絶してたの…?」
「急に倒れこんだんです」
「…そうですか。疲れてるのかな私…」
「なにかあったんですか?」
御坂はすこしためらいを見せたが何も言わなかった。
「…大丈夫ですか御坂さん」
「あ、大丈夫です」
御坂は笑いで誤魔化していたがイタチには悩んでいることがお見通しだった。
目が覚めてから1度も眼を合わせない。写輪眼の存在が彼女にばれたかもしれなかった。
そこで御坂が立ち上がり、空を見上げながら言った。
「今日は帰ります…」
「…なら俺が送りましょうか?」
「いえ!真っ直ぐ帰らないので今日は結構です!」
「…そうですか」
「…では失礼しま~す」
御坂は早歩きでその場を離れた。
イタチは御坂の様子に気をかけていたので尾行することにした。
御坂を尾行している内にいつの間にか彼女は走っていた。何やら誰かを探している様子だ。
しばらく尾行を続けていると、御坂が誰かを見つけたかのように、落ち着いて女の子の方に駆けよった。
「…なるほどな」
イタチはビルの上から彼女たちの会話を密かに聞いていた。
「あんたこんなとこでなにしてんのよ…?」
「いい忘れていましたが、ミサカはこれから実験に向かうので施設へは戻りません」
「…は?」
「お姉様が後をつけるのは自由ですがミサカの製造者には会えません」
「なっ…何で今頃…」
「聞かれませんでしたので」
その一言を聞いた御坂はすこし怒りながら何かを考えていたようだった。
そこで何かひらめいたようにポケットから何かを出そうとすると、缶バッチがコロッと落ちた。
その缶バッチをすぐに拾って御坂妹の腰につけた。
「こうして見ると結構アリって気も…」
「いやいやね~だろ、とミサカはミサカの素体のお子様センスに愕然とします」
「な!何よ!!」
そのあと御坂はゆっくり御坂妹についている缶バッチを取ろうとしたところ、御坂妹は御坂の手を弾いた。
「……」
彼女たちはまるで千手観音の手のように見えるほどの激しい缶バッチの攻防戦をしている。
「何すんのよっ!!」
「ミサカにつけた時点でこのバッチの所有権はミサカに移ったと主張します。それにこれは、お姉様から頂いた初めてのプレゼントですから」
それを聞いた御坂は穏やかな雰囲気に変わったような感じがした。
「でももうちょっとマシなものはなかったのかよ、とミサカは本音を胸にしまって嘆息します」
「やっぱ返せっ!!」
その光景を見たイタチは和んでいた。
「あの様子だと大丈夫そうだな」
イタチは安心して上条宅に戻ることにした。