魔王に侵攻されてるらしいね   作:ぜろぜろん

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勇者の学業

朝、まあまあ家から遠いので教室に入るときは大体疲れている。それにいざ教室に入っても教室内の喧騒でまたもや疲れ机に突っ伏す。

高校の授業内容は勇者学校で全部習った。しかし、先生の(体を張った)脅しで学校に来なければならないことになったのである。休めるところは談話室くらいしかない。

教室では基本一人だ。別にぼっちな訳ではない。こうして一人でいるのが好きなのだ。しかし、現状は一人でいると寂しい奴と思われたりする。好きでしてんだからほっとけ……

教室をなんとなく見渡す。すると後ろの方で談笑する女子グループに目がいった。真中がいたからだ。別に好きとかではなく、一応知り合いがどんな人かを見ているだけだ。いかん、どこかツンデレっぽい。

「ねぇ、昨日のテレビ見たー?」

 

「あれでしょ? 博士が飛んだやつだろ?」

 

「それそれ! そこで助手がほくそ笑んだのが受けるよね!」

内容は何のこっちゃ分からんが、とにかく内容がめちゃくちゃ気になった。

真中がいるあのグループは女子の中でも一際目を引くグループだ。全員顔はいいし派手な見た目だし。まあ、俺には苦手な部類だが。

そうして一人でボーっとしていたらドアが開いた。

「はーい、席についてください」

この人が例のエロい先生だ。授業と前のエロい時とのギャップが激しい。もしかして俺にしかエロい姿を見せないのではないか? と考えると結構ドキドキしたりする。あれを猫かぶってるというのかな?

なんとなく前を見ていると先生と目が合う。そして先生は色っぽく微笑んできた。だからなんだそのギャップは……

「えーっとですね、四限は生物の加藤先生がお休みなので……」

先生が全員が席に着いたのを見て話し始める。いや、根はいい先生だと思うんだよ。教え方うまいし、真面目だし、じゃあ前の、そして今の色っぽいのは何なのよ……

いかん、ついつち変なものを想像してしまう。まあ、ナース姿であんなに迫られると思春期の男子高校生はそう思うだろう。

いや、立場上思春期真っ盛りの勇者か、そんな勇者いなくなれ。

「……君、船上君!」

 

「は、はいぃ!」

先生に突然大きな声で呼ばれたので情けない声が出た。にしても、前は晴也君とよんでくれたが流石に生徒の前では呼べないか……べ、別に落ち込んでなんかいないからね!

「先生の話、聞いてましたか?」

 

「はい、勿論」

キリッとして答える。自分でもよくキリッとして嘘をつけるものだ。

「じゃあ、四限は加藤先生が休みだから何になると言いましたか?」

しまった! 話を聞いてない生徒にこんな質問をしてくることがあったな……忘れてた。

「え、えーと学活ですか……?」

 

「自習です。罰として船上君は先生と二人で別教室でお勉強です」

ヒィィィィ!! ムラッ! 間違えた!怖っ!

先生と二人っきりの勉強と聞いて少し興奮した自分が嫌だった。

 

 

四限目

まあ、先生はあんなこと言ってたけどまあ、そんなことはないだろう。そう思っていた。その刹那、

『一年七組船上君、一年七組船上君、選択教室Dに今すぐ来てください』

アナウンスが鳴る。それも思いっきり先生の声だった。周りを見渡すとなんか悲しい目線が自分に注がれていた。

逝って参ります……

そう思いながら筆箱を持ち教室を出た。

 

 

選択教室D、談話室途同じく旧校舎にある教室である。今じゃ滅多に使われてないみたいだが……

「お邪魔しまーす……」

イソイソと教室に入る。すると目の前には異様な光景が広がっていた。

「あらぁ、いらっしゃい……」

先生が水着姿で立っていた。

俺はまたもあの時のようにすぐに後ろを向く。

「何やってんすか! 外もそろそろ冷えてきましたよ!」

自分で自分にそういう問題かなぁ? とツッコミを入れる。

やはり、この人は変態だ! と言うか前ので気づくべきだっただろうか。

「ねぇ、二人で勉強しよ……?」

俺の耳元で小さく囁かれる。息が耳にかかり少しやばい状態になっていた。

べ、勉強ってまさか……ゴクリ……

もう、この人でいいや、めっちゃ美人だし、胸でかいし。

「は、はい! よろしくお願いします!」

俺は出来るだけ威勢よく返事をして先生の方を向く。

すると先生は自習用のプリントを持って立っていた。水着姿ではあるが、

「じゃ、四限終了までに終わらせてください」

と言って俺の横に座った。

なんだろう、すごい脱力感、まさか俺、本気で期待していたのか……?

先生は相変わらず色っぽい笑みでこっちを見ている。せっかくだし聞いてみようか。

「あの、先生は前の時といいコスプレと言うか……趣味なんですか……?」

すると先生は表情を変えずに答える。

「いえ、先生がこうなったのは君のせいなんですよ?」

 

「は?」

え? 俺のせい?

「どうしたら君を学校に来させることができるか考えてたんですよ。」

やっぱり根はいい先生だった。俺の事を考えてくれてたなんて……俺が迷惑だと思えどありがたい、ありがた迷惑ってやつだ。

「そこで考えたのが色じかけです」

 

「ちょっと待ってください。」

いや、他にもあったでしょう。まあ、俺的には嬉しかったけど……

「いや、昔から色じかけはしてましたけどコスプレであんな大胆にしたのは君が初めてです。」

 

「昔からしてたんですか!?」

マジか……恐ろしい人だな……

「はい、できたカップルを潰すのが楽しくて楽しくて!」

怖っ! マジの方で怖っ! それって彼女がいる男をたぶらかす的な? 昼ドラか!

「だから晴也君は気をつけてね♪」

先生はそういいながら腕に抱きついてくる。せ、先生の胸がっ……!

「ちょ、ちょっと……!」

俺が言い返そうとしたら、

「なんだ、騒がしいな……」

教頭先生が入ってきた。さっきまで騒がしかった空間が一気に静かになる。

「あ、あのーこれは……」

 

「きゃ、きゃー! 船上君のエッチ!」

 

「え、えぇ!?」

こ、このやろう裏切ったな!

「船上君? ちょっと職員室に来ようか……」

後ろから冷たい声が聞こえる。

「だからこれは……」

俺は助けを求めるべく先生に目線を送る。なんだかんだ言ってもあんたはいい先生だ! この窮地を……

しかし、先生はウインクを返してきた。

教頭先生にがっちり腕を掴まれる。

「さ、行こうか」

 

「ち、違う! 誤解なんです! 先生! せんせーーー!」

この後、何とか先生方の誤解は解いたがどういう訳か生徒までその噂は間違った形で広まっていた。

俺は『先生に際どい格好をさせた上、抱きつかせ興奮していた変態』のレッテルを貼られた。

これが、勇者の学業である。いや、すいません、勇者関係ないです。

正しくは『俺の学業』だ。


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