相変わらず捏造設定の盛り合わせです。
胃もたれにご注意ください。
南国を思わせる透き通った海原。そこに浮かぶ小島と、隣に聳え立つ大きな白い塔。その塔の最上階で、私は二つの人影に襲われていた。
一つはノースリーブの黒いセーラー服に赤いネクタイ、黒のオーバーニーソックスを履いた金髪美少女。私を投げ飛ばした後、宙に浮きながらこちらを見下ろし、微笑を浮かべながら呪文詠唱を続けているです。
もう一つはノースリーブの黒いセーラーワンピースに白いネクタイ、ホワイトブリムを被り蝙蝠の羽を付けた薄緑色の髪をした身長70cm位の美幼女。ただしこちらは間接部分が球体であり、瞳がガラス細工の様に輝いている。実際にガラスですが。大振りのハンティングナイフを左右に一本ずつ持ち、高速移動しながらこちらに突っ込んで来るです。
「【
体勢を整え長剣と杖に雷属性をつけて強化し、なんとかギリギリで受け流す事に成功する。しかし、瞬時に方向転換し繰り出された蹴りを背中に受け、金髪美少女の方へ蹴り飛ばされてしまう。
「そらっ!コイツはどうだ!? 【
以前エミリィが使っていたモノと同じ魔法とは思えないほど洗練された氷槍の群れがこちらに向けて射出される。避ける余裕は無い、と判断した私は迎撃行動を行います。
「【
氷槍の群れとぶつかり合う雷を内包した竜巻。力比べはこちらが勝ったものの、ぶつかり合いで発生した濃い水蒸気が視界を遮ってしまう。
「ソーラヨット」
「しまっ!?」
足払いを食らい尻餅を付いてしまう私。その首に高密度の魔力の剣が突き付けられました。
「…ハァ…ハァ………参ったです…」
「ふん、視界が遮られて一瞬動きを止めたな? まぁ私達二人を相手に一人で30分もつだけマシか」
「ツマンネーナ、モウ終ワリカ?」
「30分の休憩が終わったら今度は2対2の実践訓練1時間だ。のどかにも伝えて来い」
「シャーネーナァ」
二人の会話を聞きつつアーティファクトを仕舞った後、そのまま呼吸を整えつつ仰向けに寝転びます。朝から訓練を始め、途中休憩を挟んで計6時間(自主トレ1・基礎訓練2・昼食&休憩1・個別訓練2)。流石に疲れますね。のどかは現在、下の海辺で長弓の習熟訓練をしています。訓練中もドッカンドッカン音がここまで聞こえてたです。
話が終わったのか金髪美少女が腕を組みながら呆れ顔で近付いて着ました。………あ、黒。
「この程度の訓練でヘバるなど情けないぞ、夕映。あと、どこを見ている」フミッ
「あぅ」
靴を脱いだ足でオデコ踏まれたです。見られるのが嫌なら寝転んでいる人の頭の傍に立たないで欲しい。
彼女の名前は『エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル』
元・600万ドルの賞金首、現・麻帆良学園中等部3年(四周目)
『吸血鬼の真祖(ハイ・デイライトウォーカー)』にして歴戦の最強魔法使い。
『闇の福音(ダーク・エヴァンジェル)』
『不死の魔法使い(マガ・ノスフェラトゥ)』
『人形使い(ドール・マスター)』
『悪しき
『
『童姿の闇の魔王』
などのさまざまな呼び名があり、恐れられている。
具体的には、子供を寝かしつけるために、彼女の名前を出して脅かす風習があるほど。
ネギ先生の成長に必要不可欠な要素その2。
そして私達の契約者兼協力者になった人。
もう一人の方は『チャチャゼロ』
エヴァさんの初代従者。
多種の刃物の使い手で、身長の倍近い長さの刀を振り回すほどの怪力。
可愛い見た目に反し、乱暴な口調とアレな性格が特徴的な『殺戮人形(キリングドール)』
明日菜さん転校から早5年。
時は2000年、季節は秋。
小学6年生&悪の魔法使いと手を組んだ、12歳の私達です。
* * * *
委員長さんと明日菜さんの一悶着があったあの日の放課後。学校から帰ってくるとおじい様から私達に来客が来ていると言われたです。はて? 誰でしょう? 学園長ならそう言うでしょうし。応接間に居るとの事なので急いで着替えて向かいます。
そこに居たのは……………足を組んで優雅に紅茶を楽しんでいるエヴァさんでした。
あれ? なんでエヴァさんが?
「ん……帰ったか。泰造、そいつ等がそうか?」
「ああ、紹介しようエヴァ。髪が長い方が私の孫の綾瀬夕映、もう一人が夕映のパートナーの宮崎のどか君だ」
おじい様!? なんでちょっと親しそうなんですか!? またですか!? またドッキリですか!?
にっこり笑ってサムズアップするおじい様。
なんでも呪いで魔力を封じられたままだと、エヴァさんでも夜間警備の仕事時に危なかった事が何度かあったらしく、おじい様達が引っ越してきた時に学園長が紹介したそうです。以来自分で作るより強力な魔法薬が手に入るという事で、ちょくちょく調合依頼しにうちに来ていたんだとか。
私と出会わないようおじい様が色々手を回して。
ああぁぁぁもう! この人は!
頭を抱える私。苦笑しつつ宥めるのどか。キョトンとしているエヴァさん。
「? まぁいい。私はエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルだ。今日はお前達に聞きたい事があって邪魔させてもらった」
「あ、はい。はじめまして、綾瀬 夕映です」
「はじめまして、パートナーの宮崎 のどかです」
「…………………………」
エヴァさんがじーっとこちらを見ています。少しプレッシャーを感じますが、私なにかしたですかね? のどかの方をチラリと見ますが、彼女も心当たりは無いらしく小首傾げていたです。
「………噂には聞いていたが……。おい泰造、こいつ等本当に6歳か? 手加減しているとはいえ、私の威圧を受けて平然としているぞ? 麻帆良の魔法使い達でも、ジジイやタカミチ以外は腰が引ける位の威圧なんだが」
「はっはっは、二人とも私には勿体無い位に優秀でね」
どうやら試されていた様です。以前未来でちょっと本気のエヴァさんと『24時間耐久鬼ごっこ~ジャングルファイトもあるよ!~』で追い駆け回された事があるです。それに比べれば、ねぇ?
というか噂?
「あの、エヴァンジェリンさん? 噂と言うのは一体?」
「ん? なんだ、お前達知らないのか。『哲学する魔法薬学士の後継者』と『極東第二位の魔力保持者』の名は、そこそこ有名だと思っていたが」
「二人とも、他の魔法使い達とは交流が無いからね。交流があるのは近右衛門ぐらいなものだ」
聞けば、私はおじい様の英知を受け継ぐ未来の『立派な魔法使い(マギステル・マギ)』、のどかはそんな私のパートナーにする為に引き取られた『魔法使いの従者(ミニストラ・マギ)』候補、と言うのが麻帆良の魔法使い達の間で噂されている内容らしいです。(ちなみに男性だとミニステル・マギになるです)
正直なんだかなー、と思うです。昔ならいざ知らず、今の私は『立派な魔法使い』に然程興味は無いんですよね。魔法探偵時代の話なんですが、メガロメセンブリア政府が認定している『偉大なる魔法使い(マギステル・マギ)』資格の試験合格者の中に、『絶対正義』を掲げる過激派集団が結構な数いたです。
「優れた魔法使いや能力者は、選ばれし者である我々の元へ集い、その力を役立てるのが天命である」
「選ばれし者である我々に従わない者は正義に反する者、すなわち悪である」
こんな主張を本気で信じており、私を含めた『ネギの教え子(ミニストラ・ネギ)』と呼ばれていた元3-Aの皆、他にもアーニャさんや高音さん達に接触し、かなり強引な勧誘活動をしてきた事があったです。何人かから相談されたりもしました。断り続ける私達に業を煮やして拉致紛いな事をしてきた時に『白き翼』&『紅き翼』+aで壊滅させたですが。
もちろんそんな奴等ばかりではなく、木乃香や刹那さん達の様に真面目に活動している人達がいるのも分かってはいるんですが……………。仕事柄、肩書きや権力などを笠に着る輩と出会ったり、ソレ等と同類と見られたりする事があって嫌になったりしたんです。
「話が逸れたな。今日聞きに来たのは他でもない。ジジイが依頼した私にかけられた呪いの詳細についてだ」
あー、その話ですか。ていうかその依頼、表向きおじい様が受けた事になってるはずなんですが。
「何で自分達に? と言った顔だな。ジジイと泰造の二人から聞いた。実際に結果を出したのはお前達だとな」
何バラしてるですかね、おじい様達。無言の抗議をおじい様に向けますが、当の本人はお茶を飲みながら知らん顔。………ハァ。
「私にかけられた呪い【登校地獄】は解けるが、最短でも10年以上かかるそうだな? それは何故だ?」
「んーと、とりあえずこれを見てもらえますか?」
私は呪い解除の儀式魔法陣の縮小版を空中に展開し、エヴァさんに見せる。
「これは………呪い解除の魔法陣か…………………? おい、この術式は」
「はい。見て頂いた通り、その儀式を行うにはナギ・スプリングフィールド本人か、彼の血脈に協力して貰う事が大前提になっているです」
「だが、奴は死んだはずだ。これでは儀式が行えんぞ」
「ですから、彼の息子がこの術式を扱えるレベルにまで成長するのを待つ必要があるです」
「最低でも単独で【千の雷】を撃てる位の魔力制御力と術式制御力は必須ですね」
「最低でも対軍勢用魔法が扱えないとダメなのか………………………………………………………チョットマテ」
私とのどかの説明にカタコトで待ったをかけるエヴァさん。はて?
「はい、何でしょう?」
「イマナントイッタ?」
「【千の雷】を撃てる位の魔力制御力と術式制御力は必須?」
「アヤセユエノホウダ」
「成長するのを待つ必要がある?」
「ソノマエ」
「彼の息子?」
「………………………………………………………む、息子だとおおおぉぉぉぉぉ!!?」
エヴァさんが吠えた。あれ? もしかしてこの頃のエヴァさん、ネギ先生の事知らないですか?
「ど、どどどどどういう事だ!? 奴に息子!?」
「おぉおぉおぉうっ!?」
「エヴァンジェリンさん、落ち着いて――!?」
私の首をガックンガックン揺らすエヴァさん。慌てて落ち着かせるのどか。笑うおじい様。まさに大騒ぎです。ていうかおじい様!? 笑ってないで止めて下さい!
なんとか落ち着いてもらえました…………疲れたです……。
「…………すまん、取り乱した…………」
「いえ…………」
なんとも気まずい雰囲気が漂っています。しばらく考え込んでいたエヴァさんが口を開きました。
「………何歳だ?」
「え?」
「奴の息子だ。今何歳になる」
「………今年で2歳になるです」
「…………つまりあれか。奴は私の呪いを解きに来ないどころか、行方不明になるまでどこぞの女とよろしくヤッていたという訳だ………。
ははっ、なんだ…。初めから相手にもされていなかった訳か………」
そう呟き俯いてしまうエヴァさん。
私とのどかは視線を合わせ頷き合う。おじい様は「お茶を入れ直して来よう」と応接室を退室しました。
私とのどかはソファに座っているエヴァさんの両側に膝立ちし、二人で挟む様に抱き締めたです。
「………………………………何をしている?」
「何となくです」
「同じく、何となくです」
「……フンッ………………………………好きに……しろ…」
「「はい」」
私は絹糸の様な金髪を指で梳く様に撫で、のどかは労わる様に背中をゆっくりと撫でています。
声を押し殺した嗚咽も、閉じた瞼から溢れ出る涙も、全て覆い隠せる様に、強く強く抱き締めました。
「…………………………………………………もういいぞ」
それなりに時間が経った後、私達の背中を軽く叩き、離れるよう催促されたです。抱き締めるのはやめましたが、エヴァさんの左右の手をそれぞれ繋ぎ両隣に座り続けます。
「………………おい」
「「まあまあ」」
「こら」
「「良いではないか」」
「………………………ハァ、何だかお前達といると調子が狂うな」
どうやら諦めたようです。
「さて、何度も話の腰を折ってすまんな。だが、そのぼーやが麻帆良に来る保障はあるのか?」
「彼の息子、名前をネギ君と言うですが、実は彼の魔法学校卒業後の修行の地は、既に麻帆良に決定しているです。
考えてもみて下さい、エヴァンジェリンさん。MM元老院が『英雄の卵』を手放すと思いますか?」
「ネギって、嫌がらせか? あの馬鹿。しかし、そういう話か。だが、それなら修行の地をメガロメセンブリアにしたらいい話じゃないか?」
「そこまで露骨な事は出来なかったようです。元老院も腐ってグズグズに癒着しているとはいえ、一枚岩ではありませんから。現体制への反対派などもいますし」
「十分露骨だと思うのは私だけか? しかし、大人しそうに見えて結構言うなぁ、宮崎 のどか。というか随分詳しいな? お前達」
「「学園長情報です」」
「あのジジイ………情報漏洩で捕まっても知らんぞ…」
呆れ顔のエヴァさん。学園長も友人のメルディアナ魔法学校の校長の孫の話だと言う事で、結構協力的に情報集めをしてくれているです。タカミチ先生とかこき使って。
「とりあえず、ぼーやがいずれここへ来る事は分かった。だが、例え来たとしても儀式に協力するか?」
「それなんですが、ネギ君の魔法使いとしての修行内容に組み込んでしまおうかと思っているです」
「まだ詳細は決まっていませんが、今回の依頼の報酬の一部として、ネギ君の模擬戦の相手をして貰いたいなぁ、なんて考えています」
「エヴァンジェリンさんが模擬戦に勝った時の条件として、儀式への協力をセルフギアススクロールを使って約束させるです」
「ふむ……」
思案するエヴァさん。悪い話ではないと思うです。なにせ勝ちがほぼ決まっているのですから。
「ん、話は分かった。確かに10年以上かかると言うのも仕方が無い。だが…………」
少し疑わしげに見詰められてます、私達。
「随分とこの依頼に肩入れしてくれるじゃないか? 私の悪名や悪行はジジイ達から聞いているはずだ。なのに何故この依頼に、私に肩入れする?」
どうしたものか、とのどかに視線を向ける。彼女は私の方を向き微笑みながら言いました。
「私はゆえに任せるよ。ゆえの思う通りにして」
のどかもああ言ってくれているですし、丁度良い機会かもしれないですね。
やってみるですか。
エヴァさんをしっかり見ながらお話です。
「エヴァンジェリンさん、私達には叶えたい望み、エゴがあります。
しかしソレを叶えるには、沢山の人の力を使わなければ達成できません。
今回の依頼は私達が主導で行う為、報酬も私達で好きにして良いとおじい様から許可を貰っているです。
そういった思惑があり、私達はこの依頼に肩入れしているです」
「ほう…」
少し楽しそうに笑うエヴァさん。興味が出てきたようです。
「つまりお前達は自分達の望みを叶える為に、私の力を報酬という形で使いたい訳か」
「怒ったですか?」
「いいや、むしろ分かり易くていい。変に綺麗事で飾り立てる輩よりよほどいいぞ? 綾瀬夕映」
「恐縮です」
「しかしそうなると、お前達の望みとやらが気になってくるな。聞いてもいいか?」
「はい、私達の叶えたい望みは『平穏な生活を得る事』です」
「―――――――――――」
ぬ? 突然停止したです。口、ポッカーンと開けて。
「フ……」
「あの」
「ククッ…」
「エヴァンジェリンさん?」
なんか小刻みに震え出したですよ?
「フハハハノヽノヽノヽノ \ノ \ / \ / \!!」
おおぅ!?
「いや、いやいやいや。まさか私の力を使ってまで叶えたい望みがソレとはな」
「むぅ。良いじゃないですか、別に。それに、平穏を得る難しさはエヴァンジェリンさんも分かる筈です」
「ああ、確かにな。だがそうなると、今この時はお前達にとって平穏ではないのか?」
「いいえ。確かに今は平穏ですが、コレが何時までも続いてくれる訳ではないです。ですから今の内に出来るだけ準備しておきたいんです。
それに私達が求めているソレは、世間一般のソレとは違いますから」
「なるほど、なるほど。クククッ」
なにやら満足そうに頷いてらっしゃる。とりあえず、ここまでは良い流れではないでしょうか。
「それで? 報酬の残り分は何に使うつもりだ? 内容によっては前払いしてやらん事も無いぞ?」
「その言葉、本当ですね?」
「ああ」
よしっ! 言質取ったです!
「では…………………………エヴァンジェリンさん、私達に魔法を教えて下さい」
「…………………は?」
また、ポカンとしてますね。まぁ、無理も無いですが。無茶言ってる自覚ありますし。
「私達に魔法をおs」
「いや、聞こえなかったわけじゃない。……それは私の弟子になりたい、という事か?」
そう思いますよね、普通。でも違うです。
「いいえ。魔法を教えて欲しいんです」
「…………また、無茶を言い出したなぁ」
そう言われても仕方ないです。なにせ正式な弟子にもならずに、文字通り600年間命懸けで集めた知識と経験の集大成を教えて欲しい、と言っているですから。
「大体、お前達は泰造の奴に師事しているだろうが。仮に私が了承しようにも残り分では採算が合わんぞ?」
「おじい様には予め許可を貰ってあるです。それに、足りない分を補填する対価も用意しているです」
おじい様の魔法使いとしての腕は、ラカン式強さ表でどれだけ高く見積もっても220のB+。戦車一台分の少し上位です。知識面は良いとしても実戦的なモノとなると、私達が目指す場所に辿り着くには、悪い言い方をするなら力不足になってしまうです。
故に、おじい様式魔法薬学の勉強を免許皆伝になるまで続ける事を条件に、より実戦的なモノを学べる人物に師事出来る様ならしても構わない、と許可を貰ったです。
それらをエヴァさんに伝え、次は補填する対価について説明するです。
提示した対価がこちら。
1.呪いが解除されるまでの期間、綾瀬 夕映・宮崎 のどかの両名は、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルに対し積極的協力関係を結ぶ。
2.通常より魔力含有量が多い若い処女の生き血を、提供者(綾瀬 夕映・宮崎 のどか)の健康を損ねない範疇でなら、何時でも吸血出来る権利。
「10年以上の協力関係と魔力含有量の多い血液の提供か…………」
「…………どう……ですか?」
ドキドキするです。コレで納得して貰えないと、正直お手上げなので。
しばらく目を瞑り熟考していたエヴァさんが、口を開きました。
「良いだろう。その契約、受けよう」
「――! ありがとうございます!」
やったです! これでまた一歩、前に進めるです!
「私からも、ありがとうございます。エヴァンジェリンさん」
「私にとって有益だと判断したから受けただけだ、宮崎 のどか。あと二人とも、私の事はエヴァで良い」
「はい。私も夕映と呼んで欲しいです」
「私の事ものどかと呼んでください」
エヴァさんの両隣から立ち上がって彼女の前に並び、二人揃って頭を下げます。
「「これから、よろしくお願いします。エヴァさん」」
「こちらこそ、よろしく頼むぞ。夕映、のどか」
こうして私達は世界最強の悪の魔法使いと、手を組む事に成功ました。
* * * *
「うっ……………」
私のオデコを楽しそうに足でむにむにしていたエヴァさんが、突然ふらつき出したです。
「ちっ………少し張り切り過ぎたか。夕映、魔力の補充をするぞ」
「エヴァさん、さっき訓練前にのどかの血を飲んだばかりじゃ……」
私達、と言うか私の血を割りと頻繁に飲みたがるです。魔力含有量的にはのどかの方が断然良いが、味的には好みから若干外れており、私の方が好みなんだとか。まぁ、どちらも十二分に美味いから気分の問題だそうです。
「調子に乗って使い過ぎた。良いから動くな」
そう言って、寝転がっている私の腰の上に跨るエヴァさん。
私が着ているブラウスのボタンを、首元から一つ一つ丁寧に外していく。
全てのボタンを外したあと、裾口から両手を入れ、十本の指が触れるか触れないかという絶妙な触り方をしながら、上の方へとゆっくり両手を動かしていく。
「……………んっ…………ふぅ…」
お腹・わき腹・胸・鎖骨・肩へと順に指を這わせながら、手の甲を使ってブラウスを押し広げていく。
小さい頃から運動していた影響か、以前より身長以外の発育が良くなり、必要になって付け始めた白のハーフトップブラが丸見えです。
うぅ~~。いつもの事とはいえ、やっぱり恥ずかしいです。
「あの………エヴァさん? いつも思うですが、別に上を脱がす必要ないのでは?」
「趣味だ」
「えぇー………」
言い切ったですよ、この吸血鬼。
「チュッ……………ぺロ…」
「んっ……………はぁ………」
私の顔を右へ向かせた後、首筋にキスをし舌を這わせ、訓練で出た汗を舐め取っていくエヴァさん。
首筋に吐息がかかり舌が動く度に、背筋にゾクゾクしたモノが何度も走っていく。
「………カプッ……チュル……………コクッ」
「………あっ………ぁあ……………っんん」
コクリ、コクリと喉の鳴る音が聞こえるです。
痛みは無く、ナニカが抜けていく気持ち良さに身体が支配されていく。
感じるのは、温かさと柔らかさ、金髪から香る鼻をくすぐる良い香り。
私は本能のままに、彼女の背中に腕を回し抱き締める。
それに気付いたエヴァさんは首筋に吸い付くのをやめ、愛でる様な笑顔でこちらを見詰めてきたです。
「フフッ、お前は可愛いなぁ。夕映」
「エヴァさん………」
エヴァさんの顔が近付いてくる。
私に逆らう気力は既に無く、瞼を閉じる。
「………………………………?」
予想していた感触が来ない事を不思議に思い瞼を開けると、ニヤニヤしながらどこかを見ているエヴァさん。
彼女の視線を追ってみるです。
「む―――」
チャチャゼロさんを頭に乗せたのどかがジト目で頬を膨らませていた。
………………気まずい。
なんでしょう、この妻に愛人との浮気現場を見られた夫みたいなシチュエーション。
「どうした、のどか。そんなに頬を膨らませて。……………………嫉妬か? んん~?」
「!? む――っ! む――っ!」
「ソウ言ウ御主人ハ、盛ッテンノカ」
「黙れ、チャチャゼロ」
ブンブン腕を振り回しながら追い駆けるまわすのどか。
HA☆HA☆HA☆と笑いながら逃げるエヴァさん。
ヤレヤレダゼ、と肩を竦めるチャチャゼロさん。
エヴァさんと手を組んでから割と良く見られる光景です。
どうしたものか、と考えている私の耳にのどかから放たれた一言が届きました。
「…………………ゆえの浮気者…………」ボソッ
「のどか!?」
慌ててのどかを追い駆ける私。
待って下さい違うんです
つーん
あれは契約上仕方なくてですね
………プイッ スタスタスタ
ああっ!? 待って下さいのどかぁぁぁぁ!?
この後行われた実践訓練で、のどかの【砲撃】とエヴァさんの【闇の吹雪】による撃ち合いが始まるのも、割と日常茶飯事です。
いつから夕映の相手がのどかだけだと思っていた?
まぁ、予想してた人いると思いますけどね。
ちょっと言ってみたかっただけでごわす。