夕映物語   作:野良犬

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2巻突入です。

とりあえず前編が書けたので投稿しました。

ホントは図書館島編を全部書き終えてからにしようと思ったんですけどね。

後編が思うように進まず、前回から二ヶ月が過ぎたので。

では、いつもの様に生暖かい目で読んでやってください。


対象Nに対して第一試験を開始してください by夕映 前編

 英子さん達とドッジボール対決をしてから約半月が過ぎた3月某日。

 私は学園長室にいました。

 

「最終課題は上手くいったようですね」

「うむ、これで麻帆良がネギ君の修行の地として確定されたのう。肩の荷が一つ降りたわい」

 

 応接用のソファに学園長と向かい合って座りながらお茶を啜るです。

 

 いやはや、ようやく一段落ですか。

 

 つい先日行われた期末試験。その試験を対象としたネギ先生への最終課題が執り行われました。課題内容は『2ーAを最下位から脱出させる』というモノ。一見、至極簡単そうに見えますが、タカミチ先生が約2年間達成できなかった事を思えば容易ではないのは明らかです。彼の場合、出張が多過ぎたのも原因なんですが。

 

 課題内容を知ったネギ先生は早速対策を考え、大勉強会なるモノを行う事にしました。本来なら突然そんな事を言われてもやる気など出る筈もなく、ただの惰性で大勉強会に参加し、いつも通りの最下位になっていたことでしょう。ですが、話を聞いた皆さん(一部例外を除く)、特にネギ先生の事を気に入っている人達は今までにない程に気合いが入っていました。まあ、それもそのはずです。彼女達は「今回のテストで最下位のままだと、ネギ先生が実家に帰らなければならなくなるかもしれない」という噂を耳にしていたのですから。

 

 噂の発信源はもちろん私。

 

 外から仕入れてきた噂として和美さんを通してクラスの話題に上げました。嘘は言ってません。ちゃんと(学園長)から仕入れた話ですし、あくまで“かも”としか言ってませんから。ちなみに、もし最下位から脱出できなかったとしてもネギ先生は教育実習生のままA組に残ったんですけどね。

 

 噂の効果は覿面でした。「ガキは嫌い」を公言している明日菜さんですら、しょうがなさげに大勉強会へと参加していたぐらいです。話し合いの結果、成績優秀者達がバカルテットに集中的に教え、それ以外は各自グループを作って自主勉強。日本の歴史以外なら万能なネギ先生が全体の指導及びフォロー。それぞれがテスト対策に明け暮れたです。

 

 そうして挑んだ期末試験。惜しくも1位にはなれませんでしたが、最下位から3位に浮上。しかも1位~3位までの点数差は僅差であり、1位との差が9点差。2位との差が4点差という、まさに接戦を繰り広げたです。

 

 そんな訳で最終課題を無事クリアしたネギ先生は、これからも教師としてやっていけると判断され、4月から正式な2ーAの担任として就任する事になったのでした。

 

「では、引き続きネギ先生には最初の試験を受けてもらうとしましょう」

「うむ、指示書の類いはあとでしずな先生から渡してもらうとするかの」

 

 さてさて、お手並み拝見といきましょうか。

 ここからが本番ですよ、ネギ先生?

 

 

 

 

 

* * * *

 

 

 

 

 

 キツかった。

 本気でキツかった。

 今回のテスト勉強、今までで一番頑張ったかもしんない。

 

 ある日、耳に入って来た噂。今度の期末試験でまた私達が最下位だったらネギが実家に帰されるって内容のモノ。これを聞いた委員長やネギに好意的なクラスの大半が一致団結した。私も……まあ、これでネギが帰らされたりしたら後味悪いし、ちょっとは頑張ってもいいかなーって思ってやってみる事にしたワケよ。

 

 クラス全員集まっての大勉強会。私を含めたバカルテットって呼ばれてる四人組への集中的な強化学習を実施する事になった。入れ替わり立ち替わり教師役が変わっての猛勉強は試験前日まで繰り広げられた。

 

 おかげで脳が毎日オーバーフロー。

 知恵熱で湯気出たわよ。

 まあ、成果は確かにあったけどさー。

 驚愕の平均点71点。

 自分の事ながら信じられなかったわ。

 嬉しくもあったし、ネギも帰らずにすんだのは良かったんだけどね?

 

 シバラク ノンビリ シタイ デス。

 

 ていうかバカルテットって何よ! バカルテットって!

 失礼にもほどがあるでしょ!?

 アレよ、イカンのイをヒョーメーするってやつよ!

 ………………使い方、合ってるわよ…ね?

 

 そんなキツかった期末試験も終わり、休みの日は遊ぶぞー!って思ってたらネギに相談したい事があるって言われた。魔法関係の事らしく、木乃香や刹那さんに聞かれないように人が滅多に来ない場所に移動する。

 

 そこで聞かされた話は、ある意味予想通りな厄介事だった。

 

「は? 試験?」

「はい」

「イヤなんでよ? この間の期末試験で私達を最下位から脱出させるのがアンタの試験だったんじゃないの?」

 

 そういう話だったはずよね?

 ネギ本人にも噂の内容がホントか確認したし。

 

「いえ、それが………」

 

 話によると、期末試験でのアレはネギがこれからも教師としてやっていけるかを確認する為の試験であり、今度受けるのは魔法使いとしての試験であってアレとはまったくの別物らしい。何でそんなややこしい事を?と思って聞いてみたら次の答えが返ってきた。

 

 魔法使いは基本的に自分の正体を秘匿して活動するものである。その為、周囲から怪しまれないように表の顔を用意するものなんだとか。所謂、身分の証明ができる物のこと。ネギの場合は教師。ネギの幼馴染はロンドンで占い師をやってるらしい。表の顔と裏の顔。この両方を両立できて、初めて一人前の見習い魔法使いを名乗れるそうだ。

 

 ……見習いなのに一人前ってのもおかしな話だけど。

 

「で、試験の内容って?」

「えっと、これを見てください」

 

 ネギが懐から取り出したのは折り畳まれた厚手の紙。受け取って開いてみると、観光案内のパンフレットを開いたくらいの大きさだった。

 

「………地図?」

 

 紙に書かれていたのは、中心に塔っぽい物が建ってる大きな建物を横から見た図と、その下に広がる迷路みたいな何か。かろうじて解るのは、これがどこかの地下の地図っぽいって事ぐらい。

 

「図書館島の地下ダンジョンだそうです」

「ダンジョン!? そんなのあるのあそこ!?」

 

 言われてみれば、図書館島の地上部分を横から見てみれば、地図の上部に書かれてるような感じになると思う。夕映から「図書館探検部は図書館島の地下の階層で活動してる」って聞いたことはあった。だけど、さすがにダンジョンがあるなんていうのは予想外。よくバレないなと思う。

 

「ほらここ。印が付いてるでしょう?」

「あ、ホントだ」

「ここに辿り着くのが今回の試験なんだそうです」

 

 ネギが指差した所に書いてある赤い丸印。地図の右下に書かれたソレは左上に書かれた『スタート』の文字とは迷路っぽい物を挟んだ対角線上の先に位置する場所にあった。

 

「これ結構遠くない?」

「順調にいけば片道4時間くらいだそうですから。明後日の朝から行こうと思ってます」

 

 明日から2連休。1日目を準備と休養にあてて、2日目からチャレンジする事にしたらしい。

 準備不足で失敗とか笑えないもんね。

 

「そっか。ま、頑張んなさいよ」

「はい! それで、ですね……」

 

 言い難そうにモジモジしだすネギ。

 

「じれったいわね。何なのよ」

「あの…えと……明日菜さんにも一緒に来てほしいんです!」

「はあ? 何で私が?」

「これ……」

 

 そう言って差し出してきたのは、さっきのとは別の紙。二つ折りにされたソレを広げて書いてある文字を読んでみた。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 ネギ・スプリングフィールド殿

 

 図書館島の地下ダンジョン11階層にある『双像の間』に到達し、試練を達成せよ。

 

 注:協力者1名を同行させること。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「なにコレ」

「試験の指示書です。誰かについて来てもらわないとダメみたいで……僕、明日菜さん以外に魔法の事知ってる人っていないし……」

「他にいないの? 高畑先生は?」

「タカミチは2連休中、短期出張で外に行くらしくて」

「あー……」

 

 高畑先生の出張の多さは相変わらずらしい。

 

「はぁ……」

 

 まあ、しょうがないか。

 休みが1日潰れるけど、私以外いないなんて言われちゃったらねー。

 

 私は不安そうにこっちを見てるネギに了承の意思を伝えた。

 

「……分かった。行くわよ、行きゃいいんでしょ」

「ホントですか!? ありがとうございます!」

「ただし! やるからには一発合格する気でいくわよ!」

「はいっ!」

 

 元気に気合を入れてるネギ。そのはしゃぎっぷりを見ながら、私は魔法使いの試験に対して不安と好奇心を抱きつつ、少し楽しみにしている自分がいるのを自覚した。

 

 

 

 

 

* * * *

 

 

 

 

 

―――試験当日―――

 

 私達は図書館島の街を通過して島の裏側に来ていた。2人とも動きやすい服装に丈夫な靴を身に着け、昨日用意した物が入ってるリュックを背負ってる。所謂ハイキングスタイルってヤツだ。

 

「ねえ、ホントにここで合ってるの?」

「地図にはそう書いてあります」

 

 目の前にある古いレンガ造りの入り口。鉄製の分厚い扉で閉じられているソレは、いかにも関係者以外立ち入り禁止っぽい雰囲気をヒシヒシと感じさせてくるため、ホントに入っていいのか不安になった。

 

 ネギが扉に触れると扉の飾りが一瞬淡く光り、重く軋みをあげながら自動的に開いた。なんかこういう感じ、スゴくファンタジーっぽい。私はさっきの不安なんてすっかり忘れて、少しわくわくしながらネギの後をついて行った。

 

 扉を通り過ぎた先にあったのは、人が2人通るのがやっとな横幅しかない石造りの螺旋階段。中に入ると扉が背後で勝手に閉まる。私は少し慌てたけどネギは別段気にした様子もない。曰く、魔法的なオートロック付き自動ドアのような物だから気にしなくていいらしい。そう聞くと動力が魔法なだけで普段使ってる物と変わらないのかも。

 

「うわ~~っ」

「本がいっぱいだ! メルディアナの書庫よりスゴイ!」

 

 螺旋階段を下りた先に広がっていたのは、果てが見えないほどの広大な室内。明らかに人の手が届かないくらい高い本棚が無数に乱立しており、あとから本棚に合わせて足場を増築したように見える。ていうか本棚の下の方、底が見えないんだけど。そこ等中に結構大きめな樹木が植えられてるし。

 

「しっかし広いわねー。こんなに本あってどーすんのよ」

「あれ? 明日菜さん、ここに来たの初めてなんですか?」

「ま、ね。本読むって柄でもないし」

 

 宿題で調べ物があった時も、ぶっちゃけ校舎の図書室だけで十分なのよね。

 ここに来るのは根っからの本好きか専門的な知識を求めてる人ぐらいだと思う。

 

 そんな事を話していたらネギが地図を取り出して周囲を見渡し始めた。

 

「何してんの?」

「あ、はい。現在位置の確認を。中に入ったら最初にやるようにって教えてもらって」

「教えてもらった? 誰に?」

「夕映さんですよ。昨日、荷物の準備中に足りない物を買いに行ったじゃないですか。その時に偶然会って」

「ああ、それで帰ってくるのがやたら遅かったのね」

「はい。他にも地下階層に行く際の注意事項とか教えてもらいました。例えば―――」

 

 そう言って近くの本棚から一冊の本を抜き取るネギ。瞬間、ネギの背後にあった本棚からナニカが音も無く飛んできた。飛んできたナニカはネギに当たる10cmくらい手前の空中で静止。黒板消しトラップの時と同じだ。

 

「ちょ、何事!?」

「こんな感じで、地下には稀少本や貴重書目当ての盗掘者に対するトラップがたくさん仕掛けられてるんだとか」

 

 止まったソレをよく見てみたら『矢』だった。プラスチックのオモチャや鏃が吸盤になってるヤツとかじゃない金属製の鏃がついてる本物。全体が黒く塗られていて、薄暗い室内じゃ非常に見えにくい。唯一違うのは鏃の刃の部分だけで、そこだけが鈍い鉄色の光を反射していた。

 

「だからあまり不用意に周りの物に触ってはいけない、だそうです」

「でしょうねっ!! てかそーゆー事はここに入る前に言いなさいよっ!? 心底ビックリしたわっ!! それに、んな危なっかしいモノ勝手に動かすんじゃないわよっ!! つーかこんなん普通に死ぬわああああ!!!」

「じ、実際に見てから説明した方が分かり易いと思ってえぇええぇぇえ!?!?」

 

 ネギの襟元を掴んでガックンガックン前後に揺らす。目をぐるぐる回してるけど手加減なしで制裁。

 

 このチビガキ!

 なんてトコに連れて来てくれてんのよ!?

 

「罠に掛かってお陀仏とか冗談じゃないわよ!?」

「だ、大丈夫ですから! 僕の近くにいてもらえれば障壁で防御できますから!」

「……障壁ってさっきのアレ? 空中で止まるヤツ」

「はい。正確には【魔法障壁】って名前で、魔法使いなら誰でも使える基本魔法の1つなんです」

「アレってアンタが初めてウチのクラスに来た時にも使ってたわよね? 黒板消しトラップの時」

「あ、あはは……やっぱり明日菜さんには見えてたんですね。すぐ消したんですけど……」

 

 ネギ曰く、【魔法障壁】は使用者の任意でON/OFFを切り替えるタイプの魔法で、ONの時は一定範囲内に接近してくる物を自動で防御するらしい。ただし無差別で。だからダメージの無い黒板消しトラップにも反応しちゃったんだとか。そのあとで私が撃った消しゴムが当たってたのは障壁をOFFにしてたから。

 

「……なんか、ちょっと使い勝手悪くない?」

 

 正体隠して活動してるなら、意図しない発動で怪しまれるんじゃないの?

 私が気付いた時みたいに。

 

「あー……その辺は使用者の状況判断能力に依存せざるを得ないんですよね……。でもでも! 【魔法の射手(サギタ・マギカ)】5発くらいだったら咄嗟でも防げるんですよ!」

「サギタ・マギカ? 何それ?」

「1番基本的な攻撃魔法の1つで、1番弱いヤツで非致死性仕様の小型拳銃並みの威力があります!」

「……マジで?」

「はい!」

 

 いや、確かにそれは【魔法障壁】も【魔法の射手】も凄いけどさ。

 判断基準が銃とか、魔法使いって結構物騒なのかしら?

 まあ、この試験中はずっと障壁をONにしておくからネギの近くにいれば大丈夫らしいし、とりあえずはいっか。

 

「じゃ、しっかり私の事守ってよ? ネ・ギ・せ・ん・せ?」

「はいっ! 任せてくださいっ!」

 

 頼られたのが嬉しかったのか、元気にやる気を溢れさせるネギ。そんなネギの様子に苦笑しつつ、私達は目的地に向かって移動を開始したのだった。

 

 

 

 

 

* * * *

 

 

 

 

 

「出だしは順調……なんですかね?」

「ケケッ、締マラネェ出ダシダゼ」

「今までの様子からはあまり期待できんのだが」

「まあまあエヴァさん。評価は全部終わってからにしましょう、ね?」

「皆さん、紅茶が入りました」

 

 テーブルの上に置かれた水晶球から空中に映し出されている大画面映像。そこには地図を確認しながら歩くネギ先生と彼の後を周囲を警戒しながらついて行く明日菜さんの姿が映っているです。

 

 大きめのソファの真ん中に私が座り、膝の上にはチャチャゼロさん。右隣にはのどかが座り、左隣にはエヴァさんが座っているです。2人ともこちらに凭れ掛かってきているので、彼女達の温もりや柔らかさが伝わってきます。ちょっと窮屈ですが全力で寛ぎながら観賞中です。

 

 私達が今いるのはログハウスのリビング。現在、学園長が行っているネギ先生の第一試験を見学しています。私達もこの試験中に使われる仕掛けを用意した手前、結果だけでなく過程も気になっています。彼等がどうクリアしていくのか見物です。

 

 まあ、試験などと銘打っていますが実質的には能力調査みたいなモノですけど。

 

 

 

 

 

* * * *

 

 

 

 

 

 私達が入り口から入って最初に出た場所が地下三階の端っこにある通路。で、そこから移動して今いるのが地下六階にある第178閲覧室。私達はここで一旦休憩にしてお昼ご飯を食べる事にした。木乃香達に試験の事がバレたらマズイからお弁当作ってもらう訳にもいかないし、私はあんまり料理得意じゃないし、ネギもしたことないって話だから、前日に出来合いのサンドイッチやらオニギリやらオカズやらを買っておいた。ソレ等を食べつつ、ここまでの道のりについて話す。

 

「今のところ、なんとか順調ですね」

「……ねえ」

「はい?」

「魔法使いの試験てみんな“こう”なの?」

「いえ、僕も正直ここまでとは……魔法学校で受けたことのある試験とは全然違います」

「罠も随分アレだったし」

「障壁がないと厳しい物が多かったですからね……」

「普通の人が掛かったら死人出るんじゃないのアレ」

「僕達が通ったルートには人避けの結界が何箇所も張ってありましたから、一般の方が不用意に近づく事はないと思います……多分」

 

 そう、ここに来るまでに引っ掛かった罠が割りと洒落にならなかった。矢が飛んでくるなんて序の口もいいトコ。

 

 火の玉が飛んでくる。

 帯電した鉄針が降る。

 丸ノコの刃が高速回転しながら飛んでくる。

 毒霧が壁・床・天井から噴出する。

 鉄球型爆弾が無数に転がってくる。

 落とし穴が突然足下で開く。

 壁・床から無数の槍が突き出てくる。

 大型ベアトラップが挟もうとしてくる。

 本棚が倒れて本の雪崩が起きる。

 地雷原に迷い混む。

 落石に追いかけられる。

 金だらいが降る。

 花瓶(油入り)が降って割れる。

 壁・天井が動いてプレスしようとしてくる。

 

 他にもまだまだあるけど大体こんな感じ。しかも質の悪い事に罠がコンボする事があった。

 

 大型ベアトラップ → 花瓶(油入り) → 火の玉

 壁プレス → 鉄球型爆弾 → 丸ノコ

 

 みたいな感じで。

 

 死 ぬ わ

 

 普 通 に 死 ぬ わ

 

 見習い未満の段階でこんな試験を受けなきゃならない魔法使いって頭オカシイと思う。

 

 

 

 

 

* * * *

 

 

 

 

 

「本日は新鮮な地鶏、黒毛和牛、金華豚をご用意致しました」

「………」

「………」

「………」

「…オ?」

 

 沈黙の空気が重いです。4人ともが用意された食材に困惑を感じざるを得ません。

 いえ、1名だけ嬉しそうな殺戮人形が1体いるですが。

 

「コケーっ! コココ」

「モオォーー」

「ブヒッ、フゴフゴ」

 

 活力溢れる活きの良い鳴き声を出す食材“達”。

 そんな状況の中、沈黙を破ったのはエヴァさんでした。

 

「……おい」

「何かご不満な点でも?」

「ご不満もなにも生きたままだろうがっ!」

「新鮮さを追求してみました」

「新鮮過ぎるにも程があるわっ!?」

 

 エヴァさんの言う通り、若干誇らしげな茶々丸さんが用意した食材と称された家畜・家禽が「これが真の産地直送である!」とでも主張するかの如く地面に突き立てられた杭に生きたまま繋がれていました。

 

 ネギ先生と明日菜さんが昼食がてら休憩し始めたので、私達もお昼を頂く事にしたです。「本日の昼食は焼肉です」と言う茶々丸さんに案内されて外に出てみたらご覧の有り様ですよ。

 

 捌けとおっしゃるですか。

 いえ、別に精肉作業が嫌なわけではないんですよ?

 騎士団所属時代には野外演習の際に、食料の現地調達をした事もありますし。

 血が嫌だとかグロいの嫌だとか、そんな柔な事を言う気もありません。

 女やってれば血なんて幾らでも見ますし。

 ただ、何が彼女をそこまで鮮度にこだわらせたのでしょうか?

 茶々丸さんの突飛な行動は今に始まった事ではありませんが。

 

 とりあえず手伝いますか。

 お腹空きましたし。

 

「では姉さん、お願いします」

「オレハ包丁代ワリカヨ。シャーネェナー」

「私も手伝いますよ、2人とも」

「よろしいのですか?」

「はい、2人に任せっきりというのもなんですし。のどか達はどうしますか?」

「私はちょっと遠慮したいかなー」

「メンドい」

 

 2人は不参加っと。

 まあ、それが普通でしょう。

 

「ジャ、オレガ牛。妹ガ鶏。夕映ハ豚ダナ」

 

 誰が豚か。

 

「言い回しに若干悪意を感じるのですが?」

「ケケッ、気ノセイジャネ?」

「解体道具は裏手に用意してありますので」

「では、行きましょうか」

「肉ガ肉ガ斬レルゾ~♪ 肉ガ斬レルゾ~♪」

「何ですか、その物騒な歌」

「『肉ガ斬レルゾ音頭』ダ。作詞ハオレ」

 

 年がら年中お肉(意味深)を斬ってばかりじゃないですかヤダー。

 どこのストーカー目 - ゴスロリ科 - 辻斬り属 - ハレンチ種の眼鏡っ娘ですか。

 

「3人とも頑張ってねー」

「さっさと済ませろよ」

 

 のどか達にそう声をかけられながら、私は2人と一緒に食材達を連れてログハウスの裏手へと向かいました。そこに用意されていたのは多種多様な包丁の数々。よくもまあこれだけの数を揃えられたものですね。

 

 ソレ等を手に取り各自作業開始です。

 

 チャチャゼロさんは通常では有り得ない150cmはある巨大な牛刀包丁をブンブン振り回しています。

 茶々丸さんは血抜きを行う為に鶏を木に吊って大人しくなるのを待っています。

 私もそろそろ始めましょうか。

 

 これから美味しく頂かれる運命にあるブタ君に対し、私はネタ的な意味を込めてこの言葉を送りましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「 豚 の 様 な 悲 鳴 を 上 げ ろ で す 」

「ぷぎいいいいぃぃぃぃっっ!?!?」




期末テストと図書館島探検を完全に切り離してみた。

ネギや学園長にSEKKYOUをして図書館島探検を潰したり、一緒について行くオリ主は何度も読んだ事がありましたが、学園長サイドで関わる話は見た事なかったので自分で書いてみました。

後編は………来月までに書けるかなぁ………。

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