夕映物語   作:野良犬

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これ書くのに一ヶ月もかかった。もっとスラスラ書ける様になりたいのぅ。


始まりと再会

「はぁ………」

 

 暖かな光が差し込む書斎の中で、読んでいた分厚い本を閉じながら、ため息を吐く。

 

「……どうかしたかい?」

 

 同じ部屋で、座椅子に座りながら本を読んでいた作務衣を着た男性が、少し心配そうに声をかけてきた。

 

「いえ…。少し疲れただけですから」

「ふむ。あまり無理はしない様に」

「はいです」

 

 視線を本に戻して読書を再開するその横顔は、かつて私が中学へ入学する少し前に亡くなったはずの顔。

 彼の名前は『綾瀬 泰造』

 大好きで尊敬している私の祖父。そして哲学者であり魔法使い(・・・・)

 

 私の名前は『綾瀬 夕映』

 魔法使い見習いの4歳児です。

 

 

 * * * *

 

 

 おじい様の横顔をぼんやり眺めながら、今までの事について考えてみるです。

 

 今の私(・・・)の意識がはっきりしたのが2年前。今と同じように、おじい様と一緒に読書をしていた時です。

 さっきまで居た場所とは違う所に居るわ、亡くなったはずのおじい様が目の前に居るわ、何か小さくなってるわで、混乱し取り乱した私。

 大人しく読書していると思ったら、突然取り乱した孫を慌てる事無く落ち着かせるおじい様。

 もう会えないと思っていた人に、優しく

 

「一体どうしたんだい?私でよければ話してみなさい」

 

 などと言われ、精神が緩んでいた私は盛大にぶちまけたです。

 未来の経験とも言える20年以上の人生を。

 今思えばあの時の私は、突然変化した精神と幼い肉体がバランスを崩し、情緒不安定になっていたのでしょう。そういう事にしておくです。

 

 うぅ…。あのような醜態をよりにもよっておじい様の前で晒すとは…。猛省せねば……。

 

 私の話を聞き終わり、しばらく考え込んでいたおじい様が口にした言葉が

 

「ふむ。そうか…。なかなか大変な人生を送ったようだね?夕映」

 

 だった時は、あまりのいつもの調子ぶりに、思わずツッコミを入れた私は悪くないと思うのですよ?まあ、その後

 

「今の夕映が、未来の出来事を予知夢のように体験したのか、または未来の夕映が何らかの要因で過去へ戻ったのか、あるいはまったく予想のつかない事が原因なのか、それは私には解らない。

だが、夕映が私の孫娘である綾瀬夕映であるという事は何も変わらない。

なら、私は君を受け入れよう」

 

 と言ってもらえたおかげか、わりとすんなり落ち着く事が出来たですが。ですがおじい様?少し懐大き過ぎやしませんか?私はありがたいですが……。

 

 その後おじい様と話し合い、超さん・エヴァさん・明日菜さんという世界を超えた前例がある以上、ここが私の体験した過去の世界ではなく並行世界である事を前提に、未来の記憶に関しては参考資料程度として、おじい様に魔法を教わりながら好きに生きる事にしたです。

 

 なぜ並行世界である事を前提にしたのかですが、いくつか理由があるです。

 

 一つ目の理由は、この世界のおじい様や両親が魔法使いである事です。以前のおじい様達が魔法の秘匿をしていただけなのか、それとも本当に魔法使いではなかったのかは、もう解りませんが少なくとも過去の私は知りませんでした。

 

 二つ目の理由は、両親がすでに亡くなっており、おじい様と二人暮らしである事です。MMのエージェントとしての活動中に事故にあったそうです。どこかで聞いた事がある様な話です。以前の未来では、私がISSDA(国際太陽系開発機構)に就職した後も仲睦まじく健在でした。

 

 三つ目の理由は、現在私達が住んでいる場所が麻帆良学園都市の近郊にある事です。以前の過去では、実家は学園都市内ではなかった筈です。おじい様がツテを使って私に魔法を教えやすい環境を用意したんだとか。学園長とは50年来の親友だそうです。

 両親は最初、私に魔法を教えるつもりは無かったそうです。理由は詠春さんと同じ。私に普通の生活をして欲しかったから。ですが、「魔法使いの家系であり、一般的な魔法使いより魔力が多い夕映が魔法を知らないのは危なさ過ぎる」という、おじい様の考えから『第一回綾瀬夕映魔法教育方針会議(魔法戦による討論あり)』が勃発。四度目の会議にて、魔法を教える方針で決着がついたそうです。

てか、何やってるですかおじい様達。

 

 これらの事から以前とは違う世界なのだと判断した方がいいのでは?と思ったのです。

 

 また、魔法を教わろうと思ったのにも理由があるです。

 

 一つ目の理由は、単純明快ここが麻帆良だからです。今のこの身体、両親が魔法使いであるお陰か、以前のものより魔法使いとしての才能がある様で、魔力も大量の魔法薬の補助無しでは決して撃てなかった【千の雷】を2~3発なら撃てそうなくらいあるです。そんな私が、秘匿されているとはいえ魔法使いの住む街で平穏無事に暮らせるでしょうか?

 答えは否。

 明日菜さんや木乃香ほどではなくとも、絶対何らかの魔法関連の出来事に関わる事になるです。特にネギ先生が麻帆良に来れば加速度的に魔法関連の出来事は増えていくです。エヴァさんとか、超さんとか、フェイトとか。ならば早い内から魔法の修行を始めて対応力を身に付けようと思ったです。10年以上の研鑽があるとはいえ、それは大人の身体で使う事が前提ですから、今の身体に適応させないといけませんし。そういう意味では、先程の私の魔法教育の話は渡りに船でした。

 

 二つ目の理由は、一つ目と少し被りますがいずれ起こる関西呪術協会襲撃事件(別名・近衛 木乃香誘拐事件)・爵位級悪魔侵入事件・魔法世界消失未遂事件などが起きた時、以前の時よりも力になれないだろうか?と思ったからです。前2つでは本当に足手纏いにしかならなかったので特にそう思うです。

 それに、魔法世界が無くなるのは非常によろしくありません。この世界の別人とはいえコレットやエミリィ達がリライトされるのは嫌ですし、なにより旧世界ではもう手に入らない、大変貴重な魔法薬の素材や図書館島にも無い希少な魔法書があるのですよ?自称知識の探求者として認める訳にはいきません。

 ソレヲケスナドトンデモナイ。

 打倒完全なる世界(コズモエンテレケイア)Death。

 

 三つ目の理由は、魔法が私にとってもはや自分の一部になっているという事。魔法という存在を知って10年以上。切っ掛けは、魔法という未知への知的好奇心と、のどかの恋の応援の為(当時は自分の想いを無意識に誤魔化していたです)、そしてネギ先生の事がもっと知りたいという無自覚な気持ちからでしたが、今では在って当たり前の物になっているです。それこそ余程の事でもない限り魔法を捨てたり出来ない程に。

 

 そんな訳で今後の方針が決まって一息つけたわけですが、そうなると他の事が気になりだして来るです。おじい様が使う魔法の事とか、この事態の原因であろうアレ(・・)の事とか、その関係上おそらく高確率でこの世界に来ているだろう彼女(・・)の事とか。現状では気にしても仕方ないのは分かるですが。

 

 

 * * * *

 

 

 そんな事を考えつつ、そろそろ読書(魔法薬精製指南書・中級編[著・綾瀬泰造])に戻ろうかとした時です。ピンポーンとチャイムが鳴り来客を知らせてきました。おじい様は本に集中していますし、私が対応するですかね。

 

 玄関に向かい扉越しに声をかけます。

 

「はい。どなたです?」

「おお、夕映ちゃん。儂じゃ。近右衛門じゃ」

「学園長?」

 

 ふむ、事前に連絡せずに来たという事は何か驚かせる様な事をしようとしてるですね?こちらでもあちらと同じ様に、悪戯好きな所は変わりませんね。

 扉を開けるとそこには予想通り、どこか悪戯小僧の様に楽しげな表情をした頭の長い御老人が。

 

 彼の名前は『近衛 近右衛門』

 麻帆良学園理事長であり学園最強の魔法使い。

 関東魔法協会の理事も務めており、おじい様の親友であり私の事情を知っている人(・・・・・・・・・・・)

 おじい様との話し合いの結果、信用できる外部協力者が一人は居た方が良いという結論になり相談しました。

 とはいえ、おじい様の様に全てを話した訳ではありませんが。未来の記憶らしき物がある事と、私と同じ状態かもしれない彼女(・・)の事だけです。

 未来でも、アリアドネーへの留学や魔法探偵事務所を構える時にもお世話になったです。

 

「こんにちはです、学園長。今日はどうしたです?」

「こんにちは、夕映ちゃん。実は二人に会わせたい娘がいてな。特に夕映ちゃんにの。泰造のヤツはいるかのぅ?」

「はい、おじい様なら書斎で読書中ですが。…会わせたい娘?」

「うむ、この娘じゃ」

 

 そう言って学園長が横に動くと、陰になって見えなかった所に一人の女の子がいました。

 目が隠れる位に伸びた前髪をしており、非常に見覚えのある面影を持った、今の私と同い年位の幼い少女。

 

「……もしかして、のd「ゆえーーーー!!」げふっ!?」

 

 逸る気持ちを抑えつつ声をかけたら、思いっ切り押し倒されたです。お腹と背中が痛い。

 押し倒した私の胸に顔をスリスリと擦り付ける様にしながら「ゆえ~、ゆえ~」と甘えてくるこの仕草。

 ええ、間違いないです。

 

 彼女の名前は『宮崎 のどか』

 私の()親友でかつての恋のライバルの一人。

 そして、とある出来事から親友以上の関係になってしまった大切な恋人(・・)

 

 私は、のどかの頭や背中を撫でつつ、やっぱり彼女もこちらに来ていた事と無事に出会えた事に安堵し、仕方が無かったとはいえもっと早くに見つけられなかった自分の無力さに歯痒さを感じました。

 とりあえず、そこのぬらりひょん。「フォッフォッフォ」じゃありません。微笑ましそうな笑顔で見るなです。

 

 

 * * * *

 

 

 落ち着いたのどかと学園長を応接間へ通し、おじい様と一緒に話を聞きました。

 のどかの場合、2年前から徐々に未来の記憶を取り戻しはっきりと認識できたのが一週間前。それまでは、曖昧で穴だらけな記憶の所為か夢でも見ている様な感覚だったらしい。しかもこの世界では、のどかは天涯孤独であり、武蔵麻帆良の養護施設でも誰にも相談する事無く抱え込んでいたそうです。

 記憶を取り戻したのどかは、思い出の場所をふらふらと見て回りつつ、何処かに私が居ないか捜していたんだとか。そして一昨日、逃走中の麻帆良に侵入した魔法犯罪者に出くわし人質にされ、木乃香の様に大量召喚の依り代にされたらしい。学園長曰く、木乃香の少し下ぐらいの魔力量がある為目を付けられたんだとか。

 で、調子に乗った魔法犯罪者と召喚された大量の使い魔は、高畑先生率いる魔法教師・魔法生徒集団と怒り心頭のエヴァさんにサクッと殲滅され捕縛されたそうな。なんでエヴァさんが怒っていたのか聞くと、「今日が販売期間終了日で、売り切れ寸前の最後の一つだった期間限定ロイヤルストロベリーショートケーキ(1ホール)を大量召喚時の衝撃波で台無しにされたんだ」と涙目で語ったんだとか。簀巻きにされて倒れている魔法犯罪者を足蹴にしつつ、そりゃあもう凄まじいキレっぷりで、男性陣は苦笑、女性陣は不憫そうに慰めていたそうです。

 学園長秘蔵の、東京・下町の老舗『和菓子うらしま』の栗羊羹を献上する事でなんとか機嫌を直してもらったらしいです。気持ちは解るですが何やってるですか、エヴァさん…。

 その後、保護されたのどかの身元確認をした所、私が話していた娘だと学園長が気づき、依り代にされた影響で身体に異常が無いか昨日一日様子を見た後、今日連れて来たという訳ですか。

 

 私は自分でも分かる位イイ笑顔をしながら学園長に質問しました。

 

「とりあえず学園長? その魔法犯罪者、今何処です? ちょっとOHANASHIがあるのですが。」

「…彼奴なら厳重に魔力封印して取調べをした後、タカミチ君が本国へ連行して行ったぞい。……だから、その荒ぶった魔力を鎮めてくれんかのぅ」

「そですか…。もう連行済みですか……………………ッチ」

「フォッ!?」

 

 残念です。アイツ(・・・)と同じにしてやろうかと思ったですが。実に忌々しいですね。しかし、随分と対応が早い。取調べってもっとじっくり時間を掛けて行うものだとばかり……ふむ、怪しい。

 

 ジーーと学園長を見る私と、冷や汗を掻きながら目を背ける学園長。

 

(実は嫌な予感がして、元々本国に行く予定じゃったタカミチ君に無理言って連れてって貰ったんじゃが……正解だったかの。……あ、夕映ちゃんこっちジト目で見とる。バレた?)

 

 さっさと吐けです、儂しらんもん、冗談は後頭部だけにしやがれです、フォッフォッフォ、と無言の応酬をしているとおじい様からストップが掛かりました。

 

「二人ともその辺で。それで、彼女を連れてきたという事は、例の件は問題無いという事で良いのかい?近右衛門」

「うむ。養護施設の責任者とも話は済んでおるし、何より彼女自身が大変乗り気じゃからの。今日からでも問題無いぞい」

 

 はて? 何の話でしょう?

 

「という訳で、夕映。今日から宮崎君も一緒に住む事になった。しばらくは客間を使ってもらいなさい」

「……………はい?」

 

 え~っと?一緒に住む?誰が?のどかが?…………………………はい!?

 

 驚いて混乱している私の耳に、のどかとおじい様の会話が聞こえてきます。

 

「あっ、すみません。できれば、ゆえと一緒の部屋にして欲しいんですが…………」

「ふむ、夕映に支障がないなら構わないが」

「ありがとうございます。…………ゆえ、ダメかな?」

「…………え? あ、はい。一緒の部屋は嬉しいですし構わないというか、むしろこちらからお願いしますというか…………」

 

 私の服の袖をちょこんと摘みながら少し不安そうに上目遣いで擦り寄りながら聞いてくるのどかカワイイ…………………………って、違うです!? 初耳ですよおじい様!?

 

「今まで内緒にしていたからね」

「夕映ちゃんにバレん様、二人でこっそりの」

 

 どうやら以前学園長に私の事情を話した後、この世界の私の両親と同じ事がのどかの両親に起きていないとも限らない、と推測したおじい様が保険としてのどかをいつでも引き取れる様に、学園長に下準備してもらっていたそうです。私に内緒で。

 イェーイ、とハイタッチしている老人連合。

 それぞれの片手には『ドッキリ成功!!』『祝・同棲生活!!』と無駄に達筆な字で書かれたプラカード。

 私の腕を抱き寄せ、恋人繋ぎをしながらピッタリくっついて、嬉しそうに微笑みながら肩に頭を預けるのどか。

 

 …………………………いや、うん。……嬉しいですよ? 嬉しいですけど……。何か、こう……釈然としないというか…………………ハァ。

 

 

 * * * *

 

 

 調子に乗っていた老人連合に制裁を加えた後、学園長は笑いながら退散。おじい様も笑いながら書斎に戻り、私はのどかを自室へ案内し持ってきた荷物の整理を手伝いました。といっても荷物は少なかったのですぐ終わったですが。

 その後、ベッドに凭れ掛かり寄り添って座りながらこの二年間の事をお互いに話しました。私が決めた今後の方針についても話した所、のどかも一緒にやると言い出したです。

 

「いいのですか? のどか。あれらの事件に関わろうとするのは、ぶっちゃけ私の我侭ですよ? それに今ののどかの魔力量的にも、以前の時より敵対勢力に狙われやすくなるかもしれないのですよ?」

 

 そう、以前ののどかは魔法世界でも珍しい強力な読心術士であり、また魔法の才能があまり無かった事もあり、『いどのえにっき』を悪用しようとのどかを捕まえに麻帆良に侵入してくる者が多数いたのです。

 

「うん。何もしなければ平穏でいられるだなんて、そんな夢物語がある訳ないのは夕映も知ってるでしょ? 平穏が欲しいなら、いろんなモノと戦って勝ち取らないといけない。勝ち取る努力を続けなくちゃいけない。そうでしょ? ゆえ」

 

 強い意志が宿った瞳に見詰められながら、私はのどかに危険な事はせず安全な所で待っていて欲しい、と身勝手な想いを抱いてしまう。ですがそれは、一緒に戦う覚悟を決めた彼女に対する侮辱にしかならない、と判断し口には出さず飲み込む。のどかの事が心配なら私が彼女を守れば良い、そう新たな目標を定めて。

 

「それに……」

「それに?」

 

 何かを言い淀み俯くのどかに聞き直すと、先程とは違った妙に熱の篭った瞳を向けられました。

 

「この二年間、ずっと不安だった…。

 いつも一緒に居たはずの誰かが居ないのに、それが誰だか解らなくて。

 誰だか解らない事が苦しくて。

 傍に居ない事が悲しくて。

 思い出せない自分が嫌で。

 中途半端で曖昧な記憶にイライラして。

 ……独りは寂しくて。

 

 ゆえの事、思い出したときは本当に嬉しかった。

 見つからないって分かってても捜さずにはいられなかった。

 

 ゆえの傍に居たい。

 ゆえから離れたくない。

 ゆえの事を見ていたい。

 ゆえとお話したい。

 ゆえに触りたい。

 私に触って欲しい。

 ゆえと一緒に色んな事をしてみたい。

 

 だから、ゆえ…。

 私を置いて行かないで……。

 ……独りは………もう…………嫌だよ……」

 

 縋る様に私に抱き付くのどかを抱き締めながら、こんなにも寂しい想いをさせていたのか、と自分の不甲斐無さに腹が立つです。

 右手で俯いているのどかの顔をこちらに向けさせ、真っ直ぐ見詰めながら宣言します。

 

「約束します。

 傍に居たいならずっと一緒です。

 離れたくないなら嫌と言われても離しません。

 見ていたいならどうぞいくらでも。

 お話したいなら、楽しい事、嬉しい事、一杯話しましょう。

 触りたいなら遠慮せず触ってください。

 私ものどかに一杯触ります。

 二人で一緒に色んな事をしてみましょう。

 

 だから、のどか…。

 もう、悲しい顔をしないでください。

 私がのどかを、独りになんてさせませんから」

 

「ゆえ……」

「のどか……」

 

 見詰め合う私達。唯でさえ近かったお互いの顔が徐々に近づいていくです。

 

 

 10cm

 

 

 5cm

 

 

 3cm

 

 

 1cm

 

 

 そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、取り込み中だったか」

 

 

 ビックウゥゥゥゥゥ!!!

 

 

 完全に固まっている私達を、興味深そうに見ているおじい様。

 てか、いつから居たですか? おじい様。

 

「夕食の支度が出来たから呼びに来たんだが………ノックもしたし声も掛けたのだけどね、どうやら聞こえていなかった様だ。

 まあ、久々の再会だ。二人の世界に入り込んでしまうのも無理は無い。

 いやいや、仲睦まじいのは良い事だとも。

 しかしそうか………夕映も愛を知る年頃か………」

 

 どうやら、あれから随分時間が経っていたようです。やけに感慨深そうに去っていくおじい様。顔が熱い。いや、顔どころか全身が熱いです。おそらく今の私は全身茹蛸状態なのでしょう。

 チラリとのどかの方を窺うと、顔・耳・首筋だけでなく手足まで真っ赤になった彼女が、頭から煙を上げながらアワアワしていました。………ちょっと和むです。

 私の視線に気付きこちらに顔を向けるのどか。再度見詰め合う二人。お互いに頬を染めつつ苦笑し合い、私は彼女に手を差し出します。

 

「行きましょうか、のどか」

「………うん!」

 

 決して離れない様に手を繋ぎながらおじい様の後を追う私達。

 これから先、以前よりも苦労する事が在るかも知れませんが、周りがどれだけ変わろうとも、私達は変わらず一緒に居続けましょう。今までも、これからも。

 

「ねぇ? ゆえ」

「なんです? のどか」

「……さっきの続き、後でしようね♪」

「なうっ!?」

 

 少し訂正。この世界に来て、のどかが以前よりアグレッシブになりました。

 

 

 

 

 

 

 

 その後、おじい様に盛大にからかわれ、祝福されました。あぁ、恥ずかしい…………。




ちょっと強引に持って行った気がしなくもない。

でも、ここが限界デス………………げふっ(吐血)

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