元魔王ククルさん大復活!   作:香りひろがるお茶

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 注意※ 本作品では魔王ククルククルに関して性格面など多分のオリジナル設定を含みます。一度各個人が考えるククルククルについては置いてから本作品を読んで下さると幸いです。


プロローグ   なんかしらんけど、わし復活

 

 あるところにルドラサウムという創造主が創りだした世界があった。そこは剣と魔法と暴力が支配する世界。ルドラサウムをただ楽しませるためだけに存在する人々やモンスター達。彼らはお互いの平和を作り出すために戦争を繰り返し、影にいるルドラサウムに気づかず彼を楽しませていた。

 

 ルドラサウムは長きに渡り世界を眺め、メインプレイヤーと呼称する観察対象を、彼が創りだした超神*の一人ローベン・パーンに何度も創らせていた。

※ ルドラサウムが世界を想像する際、最初に創りだした三神

 

 

 

 最初のメインプレイヤーは丸い物、魂の形をそのままに肉体を与えた丸くて目がついた不思議な生命体であった。戦争をするには余りにも知能が未熟であったため、ルドラサウムに4000年程で飽きられてしまった。

 

 前回の反省を活かし、今度は異様に知能が高く、肉体的にも優れているドラゴンが生み出された。これで大規模な戦争が見れると思ったのもつかの間、なんとドラゴンは戦争を終結。すぐにルドラサウムは完璧すぎてもダメだな、と己の考えを改めさせられた。

 

 そして現在。三代目のメインプレイヤーは人間である。程よい知能と肉体、なにより潜在的な暴力性がルドラサウムの趣味にぴったりハマった。作成から3500年ほど経ったが、彼らは未だに戦争と暴力を愛している。それには彼らがそのなるよう想定して創られたというのもあるが、とある存在が戦争と暴力の継続に一役買っていた。

 

 

 

 この世界には魔王が実在する。魔王は世界の創造主ルドラサウムをより楽しませるためだけに、世界の敵役として作られた存在である。魔王はメインプレイヤーと必ず敵対するように仕組まれ、魔王を倒す手段は基本的にメインプレイヤー側には殆ど存在しなく、次代の魔王に力が継承されるまでは延々と戦いが続くのである。

 

 その現在まで七代続く魔王制度の中で、最も長い任期を全うした歴代最強と呼ばれたものがいた。

 

 

 

 初代魔王ククルククル。歴史から消えつつあるその名前にある時、光明が差す。その灯りが差した場所は、ルドラサウム大陸自由都市群が一つ、カスタムの街近くの草原であった。

 

 

 

 「がはは、グットだー!」

 

 

 

 男は女を強引に地面に押し付け、それはそれは楽しそうに腰を降っていた。街近くの草原で一組の男女が情事を行っているのである。女は息も絶え絶え、嗚咽を漏らしひたすらその行為を耐えていた。誰がどうみても同意なしの犯罪行為である。この一般的見解からしてみれば、最低最悪な鬼畜男こそが後に世界を創造主ルドラサウムの支配から救い出す大英雄ランスであった。しかしながらこの物語の主人公は彼ではない。

 

 

 「それそれ、いくぞ! とーっ!」

 

 

 ランスが景気良く声を揚げ、その行為は終わった。女は完全に脱力し、気絶してしまったようだ。ランスは満足したようでいそいそと身支度を済ませると、女を残してその場を去ってしまった。鬼畜である。敢えてランスを庇うとすれば、この女は一見だらしなく隙だらけなランスの金銭をくすねようとしたのだった。勿論失敗したためにこうなってしまったのだが。

 

 と、ここで奇妙な運命のいたずらが起きる。ランスが吐き出した皇帝液が草原の土に染みこんでいくと、地面から白い塊がもももっと膨らみ溢れてきたのだ。白い塊はどんどんとその大きさを増し、更には小さな人間のような形にぶくぶくと変形しだした。ものの数分で白い塊は髪から目玉さえも、全身真っ白の女の姿になったのだ。

 

 パチリ、と彼女の目がついに開く。体をゆっくりと持ち上げると、まずは己の体をじぃっと見つめ、次に周囲をぐるりと見回し、すぅと大きく深呼吸してから、最後にぐっと両手を空に掲げた。

 

 

 

 「なんかしらんけど! わし生き返ったー!!」

 

 

 

 この少女こそがこの物語の主人公。初代魔王にして丸い者の王、ククルククルである。


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