ブラック・ブレット 〜Nocturnal Hawk〜 作:神武音ミィタ
色々迷走してますが、なんとか完走できるように頑張ります。
今年もよろしくお願いします。
「あぁ、生物学部だろ? なんか噂になってるってな。」
新博多大学。俺、小鳥遊 真と徳崎 心音は聞き込みをしていた。この周辺の怪しいと思われる団体、生物学部についてだ。生物学部が何やら怪しいものを作っているとの噂を聞くが、何か知らないか、と。
「えぇ、何か知らないかしら?」
「うーん……でも、あいつらそんなこと……怪物作ったりとかしなさそう…てか、出来ないと思うんだよなぁ…。」
「出来ない?」
「あぁ、生物学部って地味なことしかしないもん。今年の学祭も金魚すくいくらいだったし……。」
男子学生が顎に手を当てて答える。
「分かった、ありがとう。」
「すまんね、あまりお役に立てなくて。」
「大丈夫だよ。」
微笑む心音。その横で、俺はその男子学生を見ていた。
「そんじゃ、失礼‼︎」
男子学生はその場から走り去っていった。
「……? どうしたのダーリン。怖い顔して。」
「……心音。あいつ、尾行するぞ。」
俺は走り去った男子学生のあとを追って歩き出した。
「え? どうして?」
疑問に満ちた顔を浮かべる心音。
「………ヤツは、黒だ。」
「……そうですか。そんな事が…。」
私、川野 実緒は長瀬民間警備会社に来ていた。正式な挨拶のために、だ。
先ほど、社長である長瀬 飛鳥さんから、昨日の真さんたちとの話を聞いたところだった。
「誠に申し訳ありませんでした。うちの火乃が戦うと聞かなくて……。」
彼女のイニシエーターの季崎 火乃は頬杖をついて頬を膨らませている。
「むぅ……。」
「いえ、構いません。寧ろ良い訓練になりました。」
シグマが表情を変えずに言う。
「あぁ、昨日いただいたデータ…ガストレア・ヒューマン事件のデータを閲覧いたしましたが……私の予想を遥かに上回っていました。特に、ガストレア・ヒューマン タイタン……。」
「えぇ、真さんの捨て身の一撃でなんとかなりましたが……」
私のその言葉に、火乃ちゃんは驚く。
「あ、あいつが…捨て身⁉︎」
「はい、暴走したタイタンを止めたのは、データによると真様です。彼はその代償に、一時記憶を失っていたとのことです。」
「そう、なんだ………。」
シグマの言葉に火乃ちゃんが俯く。
「………ねぇ、火乃ちゃん。」
私は彼女に話しかける。
「私たちにとって、ガストレア・ヒューマンは最早見過ごせない天敵なの。けど、私たちの力だけじゃどうしようもならない。だから、あなたたちの力が必要なの。ガストレアの力を人工的に人間に宿すなんて……許されていい訳がない。」
「…………っ。」
火乃ちゃんは部屋から出た。
「か、火乃‼︎」
「私が行きます。」
シグマがその後を追った。
「申し訳ありません。あの子…少し不器用なもので。」
「いえ、大丈夫です。火乃ちゃん……大丈夫ですか?」
「あの子、昔からそうなんです。感情を表に出すのが苦手で……。」
「………。」
長瀬邸の庭の柵に腕を置いている火乃。彼女に歩み寄るのは……シグマ。
「大丈夫ですか? 火乃様。」
「あんたか………。」
火乃はシグマの方に視線を遣る。
「………私さ。昨日あんたらに会うまで、自分のこと最強とか思ってたんだ。ガストレアもバンバン倒して、着実に序列も上げて…………私は何でも出来るってさ、思ってたんだ。」
「なるほど……。」
「けど、違った。私は昨日……ま、真に負けた。初めてだったの、負けたの。」
そういう火乃の顔は、少し嬉しそうになった。
「でも、あいつは褒めてくれた。初めてだったんだ。飛鳥以外で私を褒めてくれたの。」
「火乃様は褒められるのが好きなのですね。」
その言葉に火乃は慌てたように言う。
「ちっ、違うわよ‼︎ ホントは褒めて欲しくなんかないけど、し、仕方なく褒めさせてあげてるだけよっ‼︎」
耳と尻尾を振りながら話す火乃。
「……だからさ、あいつが捨て身までしないと倒せないって分かった時さ……私、なんか情けなくなって…見てる世界が小さくてさ……。」
落ち込んでいるのが分かりやすく、荒ぶる尻尾が大人しくなる。
「………そうですか。申し訳ございません火乃様。私、このような時、なんと申せばよいのか……。」
「いいのよ、そんな気使わなくて。」
男子学生を尾行し、辿り着いたのは……生物学部棟。
「ここは……」
「ビンゴだな。」
生物学部棟に入る。そこには……
「あ、真お兄ちゃん。」
リコと知哉がいた。
「おお、真殿に心音殿。」
「よう。なぁ、ここに男が来なかったか?」
「男の人?んー……私たち10分くらい前にここに来たけど、見てないよ?」
リコが答える。ここには…いや。ここから入ってはいないのか……。
俺は生物学部棟の裏側に向かう。
「あ、真ー‼︎」
心音が俺に着いてくる。
「………ふむ。」
裏側には倉庫があるだけだった。
「何もないね……。」
「……心音、あの二人をここに呼んでくれ。」
「え………?」
俺は辺りを見渡す。
「…………嫌な予感がする。」
「うぃーす、お疲れっす。」
真たちから聞き込みをされていた男子学生が、生物学部棟の地下にある、怪しげな研究室に入る。
「遅いぞ、どこで道草をしていた。」
メガネをかけた男がキーボードを叩きながら言う。
「民警が来てやがったんだよ。何とかお茶を濁しといたが、一人感の良さそうな野郎がいたからな……。」
「貴様……嗅ぎつけられたのか?たかだか民警に。」
「んだよ………もしここに来たら、責任はとるよ。」
「やーいやーい、大貴おこられてやんのー。」
女子学生が舌を出す。
「るせぇよバカ。」
そこにいるのは四人の学生。怪しげな彼らは、パソコンに向かっていた。
『烏丸プロジェクト』
そう書かれたデータを見つめて……。
次回から段々と謎を明らかにしていきます。
中々困っていますが、頑張ります。
クロスアンジュのSSを近々書こうかなと考えています。キャラなどは出来ているので、こちらがひと段落ついたら書き始めようかと。