ブラック・ブレット 〜Nocturnal Hawk〜 作:神武音ミィタ
いろいろと忙しく、更新が長引いてしまいました……
この後はきっちり、運行再開イタシマス!!!
静かな川。水面を滑らかに、軽やかに滑る。
「大分、動きには慣れてきたようでござるな。」
私、水瀬 リコは、パートナーの土条寺 知哉と一緒に、山の麓の川でトレーニングをしていた。
「では……用意はいいでござるか?」
知哉は手裏剣を取り出す。
「うん……‼︎」
私は銃を取り出す。
「では……っ‼︎」
知哉は手裏剣を放つ。
私は水面を滑り、手裏剣を銃弾で弾く。
私はモデル・ストライダー………水蜘蛛の能力のイニシエーターなのだ。水面を滑るように移動、地上でも跳び跳ねるように動く事が出来る。
全ての手裏剣を弾いた。私は銃を降ろす。
「うむ、見事にござる。」
「えへへ〜。」
私たちは毎日、このようなトレーニングをしています。
「ただいま帰りましたー。」
私と知哉はトレーニングを終え、事務所に戻ってきた。
「あ、おかえりリコちゃん、知哉さん。」
実緒お姉ちゃん達は……大掃除中だった。
「あれー?真ー、お姉ちゃんとこへの領収書ってどのファイルにしまってあったけ?」
「確か、緑のファイルじゃなかったかー?うわ、この非常食のパン、賞味期限今日じゃねーか!」
真さんは倉庫の、心音さんは本棚、実緒お姉ちゃんはデスク周辺の資料の整理をしていた。
「大変でござるな……民警も。……ところで、シグマ殿は?」
「あぁ、あいつならさっき買い出しに行ってもらってるよ。水とアイス。」
真さんは非常食を次々と倉庫から出していく。
「おい実緒!!この非常食、一体どうしたんだ!?」
「あぁ、確かそれ信也さんが安いからって一杯買ったやつですね……。」
「今日の昼と夜は、それの処分だね……ま、私の料理お休みデーってことで……あ、もしかしてダーリン悲しい?」
「誰がダーリンだ。」
これは……一日かかるな……。
「あ、実緒ちゃん知哉さん。申し訳ないんだけど、今日のパトロール、2人で行ってきて!片付けは私たちで大丈夫だから!」
「え?そんな、いいんですか?」
「明日にこれが縺れ込むのも面倒だし、だからってガストレアも放っておけねーからな……これ、今日の昼飯な。」
真さんは私に缶パンを2つ投げ渡した。
「承知致した。行こう、リコ殿。」
「う、うん。じゃ、皆さんお気をつけて……」
私たちは事務所を出た。
「うー……暑いなぁ……。」
市街地を回り、公園のベンチに座る。
「夏でござるな。リコ殿、はい。」
知哉が氷のたっぷり入ったオレンジジュースを手渡した。私はそれを足下に置き、真さんから貰った缶パンを開けた。
「はい、知哉。」
中身を手渡す。
「む、ありがたく。………おお、中々美味しいものでござるな。」
「どれどれ………あ、ホントだ、美味しい。」
缶パンって思ってたより美味しいな。私はジュースを飲む。
すると、足下にサッカーボールが転がってきた。
「すいませーん!」
子供が手を振る。私は彼らの方にボールを転がしてやった。
「ありがとうございまーす!」
子供達は駆けていった。
「やはり、微笑ましいでござるな。拙者はこのような美しい者を壊そうとしていたのか……なんと卑劣な。」
拳を固める知哉。私はその手に触れた。
「でも、思いとどめたから、いいんじゃないかな?」
「リコ殿……。」
知哉は微笑む。
「よし、じゃあもうちょっと回ろ!」
「心得た!!」
「蓮太郎!あの雲、ウサギみたいだぞ!!」
「おお、ホントだな。」
河川敷付近を歩いていたのは、里見 蓮太郎さんと、藍原 延珠ちゃんだった。偶然見かけた私は、彼らに駆け寄った。
「延珠ちゃん!」
「おお!リコではないか!」
「お久しぶり!蓮太郎さんも!」
「元気みたいだな。」
知哉がようやく着いた。
「リコ殿……この者達は?」
「天童民間警備会社のペア、里見 蓮太郎さんと、藍原 延珠ちゃんです!」
「そうかおぬしらが……拙者、新しく明崎民間警備会社のプロモーターとなった、土条寺 知哉と申す。以後、お見知り置きを。」
「あんたが彼女のプロモーターか。あんたも元ミュータントだってな。」
蓮太郎さんが知哉に歩み寄る。
「うむ。リコ殿のおかげで、脚を洗う事が出来たがな。」
「なるほどな。それで、今はパトロール中か?」
「うむ、そろそろ戻ろうかとしていた所でござる……」
「キャアアアアアアッ!!」
遠くから悲鳴が。私たちはその方へ駆け出した。角を曲がったそこに……
「キエエエエエエエエ!!」
ガストレアがいた。蜘蛛のタイプか。私は腰のハンドガンを構える。知哉は刀を逆手に持つ。
「はっ!」
私は跳ね、銃を撃ち込む。被弾するも、ガストレアは怯まず、爪をこちらに振るう。
「させん!!」
知哉は刀を振るい、脚を斬り落とした。
さらにそこへ…
「でやああああああっ!!」
延珠ちゃんがガストレアを蹴り上げ、川へと放り込まれる。私は川へジャンプ。水面に立ち、滑るように移動しながら、ガストレアに弾丸を撃ち込む。ガストレアは疲弊し、動かなくなった。
「でやっ!!」
そこへ知哉が一太刀。ガストレアは肉片となった。
「おーい、大丈夫かー?」
蓮太郎さんが岸から声をかける。私は、笑顔でそれに答えた。
その後、蓮太郎さん達と別れ、私たちは事務所に帰ってきた。
「終わっだぁ〜!」
どうやら終わったようだ。辺りは綺麗になっていた。
「お疲れさまでござるな。」
「そっちもな。ガストレアの方、サンキュ。」
「よし、じゃあ、非常食一掃しますか。」
「私がお湯を注いで参ります。」
シグマがお湯を湧かし始める。
「ふふ……」
「?いかがした、リコ殿」
「いや、やっぱり、落ち着くなぁって、さ。」
ここが私の居場所。帰る場所。
これからも、私はここにいたい。
「あ、シグマ、私も手伝う!!」
この幸せを、護りたい。
次回は、モノリス崩壊時の時間軸のお話です。
蓮太郎達がアルデバランたちと戦っているその頃、真達は……といったお話です。