ブラック・ブレット 〜Nocturnal Hawk〜 作:神武音ミィタ
信也の所属している組織については、次回詳しく書く予定です。
第26話〜悲鳴と捕獲〜
実緒が事務所に戻った後、私は社長の会社のパソコンを開いた。だが、データはいつの間にか消えていた。
「ダメか……」
「信也さん……どうして…?」
落ち込んでいる様子だ。私は実緒に歩み寄り、その肩に手を置く。
「大丈夫よ。何かあるのよきっと。」
そう。いつか帰ってくる………。
そう思っていた私は、まだ知らなかった。
本当のことを……残酷な現実を。
「さぁてと……なぁ、このマンホールにいんのか?」
幼い見た目の青年が、マンホールの蓋を見下ろしながら言う。
「えぇ、ここに出入りする少女を見たわよ。」
その隣にいるのは、ロングヘアの大人びた雰囲気を醸し出している女。
「っし、手始めにやるか。」
青年がマンホールの蓋を開ける。そして、そこに放り込んだのは……爆弾。
二人はそのマンホールから距離を置く。
そして、10数秒後……
………ドオオオオン‼︎
爆発音が鳴り響く。マンホールの蓋が宙に浮いた。
「ヒャハハハハ‼︎木っ端微塵だぜぇ‼︎」
狂ったように笑う青年。
すると、他のマンホールから、爆発を逃れたであろう少女達が出てきた。
「逃がさない‼︎」
女はマシンガンを乱射し、逃げる少女達を蜂の巣にする。
その数、8人ほど。
一人、息がある少女がいた。
青年がその少女に歩み寄り、踏みつける。
「っ………っ……っ……。」
恐怖で震えながら、涙を流す。
「いいねぇ、その表情‼︎サイコーだぜ⁉︎」
青年は剣を持つ。そして、少女の右腕に突き刺す。
「っ⁉︎ あああああっ‼︎」
「ヒャハハハハ‼︎ほら、もっと泣けよ‼︎泣けっ、泣けぇえっ‼︎」
青年は少女の四肢を斬り落としたあと、胴体を細切れにした。
「きったねぇなぁ……悲鳴は嫌いじゃなかったがな。」
女は通信機を取り出した。
「こちら、『ラムダ』と『イプシロン』。エリアB7の呪われた子供を殲滅。」
『了解。引き続き任務を続行せよ。イニシエーターが襲撃してきた場合は捕獲をせよ。』
「了解よ。」
イプシロンと呼ばれた女は、ラムダと呼ばれる青年に言う。
「ここに用はないわ。次に行くわよ。」
「はっははーい。」
二人はその場を後にした……。
市街地。
イニシエーターとプロモーターが、黒服の男と戦っていた。
「ほらほらぁ?どうしたんだよ、民警さん?」
「くっ、はあああっ‼︎」
剣を持つイニシエーターが、その男に斬りかかる。剣は躱され、蹴りで弾かれる。
「きゃっ‼︎」
「このっ‼︎」
プロモーターが銃弾を放つ。銃弾は躱された。男はイニシエーターの片腕を掴む。
「くっ‼︎離してっ‼︎」
「‼︎ ユノ‼︎」
「はい、バーン。」
男はプロモーターの右足に弾丸を撃ち込んだ。
「ぐあっ‼︎」
「ま、マスター‼︎」
「ほら、静かにっ。」
男はイニシエーターの首元に手刀を入れ、気絶させた。そして彼女を担ぎ上げ、その場を去った。
「ユノ……ユノーっ‼︎」
発砲の音が近くで聞こえたため、私と実緒は外に出る。歩道の端で、足を引きずっている男がいた。私たちは駆け寄る。
「大丈夫⁉︎何があったの⁉︎」
「ユノが……俺の、イニシエーターが……連れ去られた……‼︎」
「え⁉︎」
イニシエーターが……連れ去られた⁉︎
「黒服の男が……いきなり襲ってきて………戦ったが強過ぎで……歯が立たなかった……‼︎」
「分かったわ……とりあえず、病院に……」
……ガシャアアァァァァアアン‼︎
「⁉︎」
事務所の窓が割れた⁉︎ そこから出てきたのは…
「うわあああああっ‼︎」
真が飛び出してきた。
「⁉︎ 真‼︎」
私は真をキャッチした。
「どうしたの⁉︎」
「黒服の男と、女が……‼︎」
その時、窓から2人の黒服が飛び降り、私たちの前に着地した。私は真を下ろし、少し後ろに下がった。
「⁉︎ リコちゃん‼︎」
女の方はリコちゃんを担ぎ上げている。
「お‼︎ そこのツインテールのお嬢ちゃんもイニシエーターかい?」
「⁉︎ だったら何よ‼︎」
「悪いが……俺らのとこに来てもらえないかね?」
男は刀を構えた。
「任せたぞ、『カイ』。」
女の方は、足早に去って行った。
「‼︎ 待て‼︎」
私はそれを追いかけようとするが、カイと呼ばれた男は刀を振りかざす。
「行かせねぇっての‼︎」
私は即座に片脚を上げ、刀を受け止めた。アンクレットを装備していて良かったな。
「実緒‼︎武器を取ってきて‼︎まずはこいつを片付けないと‼︎」
「は、はい‼︎」
実緒は駆け出した。
「てやぁっ‼︎」
私は刀を踏み台に跳び、回し蹴りを放つ。男は少し後ずさる。
「おっと……ははっ、やるじゃんかよ…‼︎」
再び刀を構えなおす男。私は真を横目に見た。心配そうな表情。私は安心させるための笑顔を見せた。
「そらよぉっ‼︎」
駆け出し、刀を振りかざしてくる。私は躱す。
「心音さん‼︎」
実緒が窓から銃と刀を投げた。私は飛び上がりキャッチ。着地と同時に銃弾を放つ。
「うおわっと‼︎」
男は尻もちをついた。が、すぐに立ち上がった。
「あっぶねー……なぁ‼︎」
再び斬りかかる男。私は刀で受け止めた。
そこへ。
「せやぁああっ‼︎」
実緒がランスを男に突き出す。男は距離を置いて躱した。
「ははっ‼︎ じゃ、こういうのはどうかな⁉︎」
男は銃を手に取った。
私と実緒は構える。
男の銃口は……
「ニヤニヤ…‼︎」
「‼︎」
真を向いていた。
「っ‼︎」
私は駆け出した。銃弾が放たれる。私は真をかばい、肩に被弾した。
「くあっ‼︎」
私は膝まづいた。
「こっ、心音さん‼︎」
「このっ‼︎」
実緒が男にランスを振るう。
「心音さん…血が……‼︎」
怯えたような表情。私は無理に笑った。
「大丈夫……っ。」
「きゃあっ‼︎」
実緒が蹴り飛ばされ、地面に叩きつけられる。
「実緒……‼︎」
「………っ‼︎」
真は駆け出し、事務所のビルに入っていった。
「ま、真⁉︎」
「おやおや……怖くなって逃げ出したぁ?ま、いいけどさ。用があるのはそこのイニシエーターの娘だし?」
男は実緒にゆっくり近寄る。
「実緒……っ‼︎」
私は銃弾を放つ。が、男は刀で弾く。
「もぉ……邪魔すんなよ〜……」
男はこちらに歩み寄る。
「く……っ‼︎」
ダメだ、力が入らない……‼︎
「真……っ‼︎」
大ピンチ‼︎ リコちゃんがさらわれてしまった‼︎
次回、遂に……‼︎