世界情勢あかんようになってきたけど書いてて大丈夫か?とか思いましたが、もう知らん書いてまえ。
とりあえず再開します。
《でね、ディヴ。やっぱりおかーさん、一度家族で話し合うべきだって思うのよ。タイラントのタイラーさんにいわれたんだけど、家族みんなで話し合って理解しあうのが一番大事だって気づいたのよ》
前を進む『メタルギアミニ改』の折りたたみ式の画面には生みの母であるエヴァの顔が映されている。
「……今、ミッション中だ。そっち(ザンジバーランド軍作戦司令室)の回線経由で連絡して来ないでくれ」
彼は今、シーナ島のコンピュータールームへ侵入するために換気ダクトの中を匍匐前進している真っ最中である。
当然、そんな家庭の事情的な会話などつき合っている暇などない。ロー・クロールな匍匐でダクトを進みつつソリッドスネークは、
……誰がおかーさんだ。
などと思いつつうんざりした。
彼、ソリッドスネークの家族関係は非常にややこしい。
例えばエヴァは産みの母であるがソリッドスネークとは血の繋がりは無い。彼女は代理母であり、たしかにそのお腹でソリッドスネークとリキッドスネークを育て産んだ。
つまり遺伝子上の続柄は無い。だが、後にビッグボスの第二夫人の座に収まってしまったために、義母的な感じになってしまったのだ。
しかし、彼からすればクローン人間に親なんているのか?とかオリジナルであるビッグボスは父親では無い……というか、ビッグボス本人も彼ら双子を息子などとは認めていなかったこともある……と子供の頃から思っており、またエヴァにアメリカの孤児院から連れ出される前から『自分には親などいない』と思って過ごしていた事からかなりその辺はドライであったのだ。
というか。
エヴァの子供をスポイルするような甘やかしにはだいたい彼ら双子はそもそもウンザリしていた節がある。
また、ビッグボスに対しても子供心から不信感を抱いていたし、そもそも双子の兄弟のリキッドとは犬猿の仲であり、故に彼、ソリッドスネークことディヴィッドは16歳になった時にMSFを離れ、ロイ・キャンベル大佐の伝手を頼りにアメリカの全寮制の軍学校に入り、そのまま軍人としてロイ・キャンベル大佐が司令を務める『次世代ハイテク部隊・フォックスハウンド』に入隊したわけだが……。
入隊したフォックスハウンドの教官や隊員の先輩にMSFの連中が居たりしてウンザリさせられた。というかミラーやらオセロットやらパイソン、しかも先輩枠にグレイフォックス。
……どないせぇっちゅーんじゃ。
まぁ、幸い彼らは特にソリッドスネークに、MSFに戻って来いなどと言わなかったし訓練やミッションなど以外では放っておいてくれていたので特にウザくは無く、適度な距離で接してはいた。
だが、それも全てはソリッドを連れ帰るためにMSFの連中はそれを悟らせないように行動していたというのが後に起こった『ザンジバーランド潜入作戦』によって判明する。
【ザンジバーランド潜入作戦】とは、中央アジアに突如として建国された軍事国家『ザンジバーランド』の要塞に侵入し、その要塞で建造されている『核搭載型二足歩行戦車・メタルギア』の破壊を最終目標とした作戦である。……というのは表向きの話。
国連加盟国認定秒読み段階のザンジバーランドに息子のディヴィッドを連れ戻そうとしたエヴァに賛同したミラー達が企んだ壮大なドッキリ企画だった!!(ロイ・キャンベルもグルだった)
ということだったのである。
結果としてソリッドスネークはザンジバーランドに投降するしか無い状況に追い込まれた。
ロイ・キャンベル大佐の無線による指示によって誘導された場所はソリッドスネークを捕らえるための罠が張り巡らされた所であり……というかパーティー会場であり、『お帰りなさいディヴィッド!』という垂れ幕があり、アメリカに居たはずのミラーやオセロットや子供のころに世話になった連中やらビッグボス、エヴァ、パスおばさんがクラッカーを鳴らして出てきたのである。
ロイ・キャンベル大佐も何故か会場におり、ネタバラしをしに出てきたりして、命懸けで任務遂行せんと全力で頑張って潜入したソリッドスネークはもう誰を信じていいのかわからなくなり、心を折ってしまったのだった。
その後。
オセロットはザンジバーランド連合に加盟した国国の有力者のお年頃の娘さんとの見合いをセッティングしてきたり、ミラーはザンジバーランドの風俗店に連れて行こうとしたり、ビッグボスはなんかコミュニケーションを取ろうとしてきたり(なんか気持ち悪かった)、エヴァによるママ攻撃にさらされたりした。
みんな、やたらとアメリカ国籍からザンジバーランドに帰化させたいようだったが、帰化するつもりなどそもそもソリッドには無い。むしろ奴らとは無縁になりたいくらいだ。
唯一、パスだけは普通に接してくれたが、パスと話をしているだけでリキッドが喧嘩を売ってくるので辟易とさせられた。
リキッドは昔からエヴァよりもパスに懐いていたので、ソリッドが話をしていたのが気にくわなかったのだろう。というかガキの頃のそういう部分が抜けていなかったようでソリッドはイライラさせられた。
『パスは私の母親になってくれるかも知れない女性だ!』
とか抜かしやがったが
『うるせぇ!お前の代理母はエヴァだ!』
と言ってやったらリキッドは精神的ダメージを食らい、なんかぐったりしやがったが、
『お前の代理母もだろ、ソリッド……ぐふっ……』
と返されて両刃の剣で自分も自爆して精神的に嫌なダメージを食らう羽目になった。
なおパスは複雑な表情をして、
『えっと……、ある意味私、一応は……義母なんだけどね?』
と言っていたが、それはリキッドにとっては救いなのだろうが、ソリッドにとってはあまり救いでもなんでも無いことである。
まあ、それはさておき。
……何が悲しくてわざわざ家族とやらから離れたのに戻らなければならんのだ。
そう思った彼は、故にザンジバーランドから単身脱出し、かなり苦労してアメリカに帰国、そして軍を辞めてアラスカで孤独に生きていく事にしたのである。
極寒の大地は厳しいが犬そりを引き、狩猟しながら暮らす生活は何より彼の心を癒した。
家族とかそんな悩みはアラスカの白い大地に消えて行った。
……そう思っていたのに。
『スネークジュニアぁぁっ!元気かぁぁぁぁっ!!』
自分の住む小屋に、顔見知りの頭に釘を大量に刺した一見変態にしか見えないオッサンがいきなり襲撃してきたことから彼の一人気ままなアラスカライフは終了してしまった。
世界は狭いものである。
なんと、パイソンの住んでいる土地はソリッドスネークの住んでいる小屋の隣の土地だったのである。
パイソンはビッグボスの戦友にして古参の『蛇』を冠したコードネームを持つ男であり、まだ若き『スネーク』も流石にまだ敵わなかった。
あれよあれよと言ううちに簀巻きにされてアメリカ国籍の潜水艦にかつぎ込まれ、そしてロイ・キャンベル大佐の指揮の元、『ニューロAI破壊作戦』に駆り出され、そして辞めたはずのフォックスハウンドでまた、再び様々な作戦に駆り出されているのである。
「……俺は、あんたらの元には帰らない。俺に家族はいない。任務中だ。以後の通信はしないでくれ」
そう言って無理矢理着信を切り、そして着信拒否設定にした。
彼はすっかり頑なになってしまった訳であるが、致し方なさすぎである。生い立ちが、生い立ちだったからだ。
〔はぁ、スネーク。君の家庭の事情も大変だね……〕
メタルギア・ミニ改から、唯一の友人であり相棒である『オタコン』ことハル・エメリッヒから通信が入る。
このハル・エメリッヒとは『ニューロAI破壊作戦』にて知り合った、言わば戦友である。
『ニューロAI破壊作戦』は、アメリカにてかつてゼロ少佐が進めていた、コンピューターAIによる人類の支配と統制を行うという計画によって作られた試作型人工知能搭載型コンピューター『パトリオットシステム(仮)』を物理的かつプログラム的に破壊するという作戦だった。
このニューロAIは試作型ではあったが、非常に厄介なものであり、ネット技術が進化しつつある1990年代後半、それまで活動をしていなかったそれがコンピューターネットワークを得て活動をし始め、ウィルスによって暗殺されたゼロ少佐がかつて計画していた全ての計画をまるで代理人のように行い、金融や多くの科学的研究、そして戦争までをもコントロールしようとしたのだ。
そのAIの基礎理論を構築したストレンジラヴ博士、ハードの設計をしたシギントの二人はそのAIがまだ生きていた事を知り、その破壊計画を立案した。
で、作戦に投入されたのが彼らソリッドスネークとハルの二人だった。
二人は『パトリオットシステム』の試作型の破壊を成功させたが、しかし、この『パトリオットシステム』の完成型が製造されていた事、そしてそのデッドコピー、いや劣化パクリ版とも言えるものをアンブレラが製造していたことを知る。
ソリッドスネークとハルは完成型と劣化パクリ版の二つのニューロAIの行方を追うこととなったわけだが……。
〔でもエヴァ夫人は数少ない、見返り無しに必要な装備を用意してくれる相手だよ。そんなに邪険にしなくても……〕
「じゃあお前はストレンジラヴ博士の支援を受けたいか?」
〔……無理だね。何を言い出されるかわかったもんじゃない。それに……君も知ってるだろ?僕は親父に瓜二つなんだ〕
オタコンの立場はある意味微妙である。
特にMSFの古参達にはオタコンはあまりよく思われていない。
なにしろ、MSFを裏切ったエメリッヒ博士の息子で、そしてその体型や顔もそっくりな為、特にカリブの旧マザーベースにいた者達はあからさまに彼を嫌っているのだ。
特にミラーからのヘイトがものすごいものがあり、ソリッドスネークとオタコンが組むことに最後まで反対したくらいであり、そのくらいエメリッヒ博士の残したトラウマはかなりのものだったとも言えるが、ビッグボスの、
『子供は別人だ。それにあの子も被害者だろう』
の一言でなんとか収まった。
この被害者、というのはオタコンがエメリッヒ博士のメタルギアの実験に付き合わされ、虐待じみた事をされていた事やそれに抗議した彼の母親であるストレンジラヴ博士を殺されかけた事などを言うが、それを言われればミラーも黙るしかない。
しかし、父親に似ているために苦労してきた二人である。シンパシーはパないレベルでわかりみがすごかったのである。メタルギアに祟られているというよりもオヤジのせいで苦労する、いや、現在進行形でいろいろ巻き込まれているのである。
「……お互い、この話は止めよう」
〔うん、そうだね。気分が塞いでくるよ〕
二人は溜め息を深く吐き、そしてそのまま無言になった。
ざしゅ、ざしゅ、とダクトの中を匍匐前進で進む音だけがシュールだったが、間もなく目的地点のコンピュータールームである。
「早く仕事を終わらせよう。早く帰りたい」
〔そうだね。コンピュータールームはそこからすぐ右のダクトから入れるよ〕
だが二人はまだ知らない。
帰れるどころか、まだまだ隣のロックフォード島やら南極のシャドーモセスやらに行かされてとんでもないミッションに巻き込まれる事を。
名コンビに幸あれかし、と祈りつつ、ここはヒキッ!
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【Side 平凡さん】
「と、言う訳なのよぉ!お腹を痛めて産んだ可愛い可愛い息子が、冷たいのぉぉ!!」
いや、知らんがな。
俺は通信で愚痴ってくる大統領の第二夫人にやや辟易としながら、ヘヴン・ディヴァイドの格納庫で待機していた。
ハンター君=グレイフォックスによれば、どうもこの第二夫人とその息子二人、そしてその父親であるビッグボスの関係はかなりこじれており、それは二人の息子達の出生に起因するということらしい。
ビッグボスの息子達はバイオテクノロジーによって作られたビッグボスのクローンであるらしく、ビッグボスをイコンに担ぎ上げそこなった、とある組織のリーダーがその代わりとして作り出した……らしい。
「そりゃあ、子供達もグレるわなぁ」
それが、ハンター君やエヴァ夫人の話を聞いた俺の率直な感想である。
だが、ウチの息子もバイオテクノロジーによって造られたBOWであり、息子との接し方を間違えたなら、シアーズさんとこのように一家離散しかねない。
ぬぅ、愛する我が息子、凡太郎=ネメシスもそうなったらどうしよう、と内心思うも凡太郎はスメルセンスを持っている。俺が息子に誠実である限りは大丈夫だろう……とは思う。
問題は、これから救いに行く娘の方であるが、そっちの方はぶっちゃけ、知能があるのか、とか、人間の姿をしているのか、とか、様々な面で未知数で、MSFからの情報待ちである。
そちらの方は今考えても仕方ないので置いておこう。
……しかしエヴァ夫人のケースではもう彼女の息子達は成人した男性で、ある意味己達の人生を歩もうとしている年頃でもある。こじれてしまった関係のまま大人になったら、取り返しは難しいだろう。
「……愛は押しつけてはいけない。見守る勇気も時には必要かと。彼らももう大人なのですし、自分の人生というものを考え、歩いていく時なのですよ」
と、諭して、
「私もミッションを控えております。自分の娘を救ってやらねばならないのです。無事に帰れたなら、その後でまたお話しましょう。親の悩みは様々ありますが、親である以上は誰もそれを避けられず不安になるもの。そのお気持ちは重々理解できますからね」
と、通信を切ったが正直面倒臭い人だよなぁ、あの人。なんか親しくなったらやたら家庭問題の相談を言ってくるもんなぁ。
「……大変ですね、社長」
ハンター君が自分の腰の刀を抜いたり戻したりしながら他人事のように言う。
いや、他人事なのだがなんかそれがむかつき、俺は、
「刀で遊ぶな。ツキが落ちるぞ」
と言ってやる。
「点検ですよ。それに新型のプロテクトギアの人工筋肉は新品故にまだ動作がこなれてませんから」
ハンター君が、ほら、と手を動かすとギシ、ギシ、となんか軋んだような音が腕から聞こえる。
「馴染んでないのか。つーかその格好、なんかニンジャみたいだな。いや、さしずめサイボーグニンジャか?」
MSFからハンター君に支給されたプロテクトギアはヘイヴントルーパーの物よりもシンプルかつより身体にフィットするようなもので、その上からタクティカルベストなどをつけると現代のニンジャっぽい感じだ。
……ヘルメットはやたらツルンとして坊主のような感じだが。
「社長とお揃いですね」
俺の視線から察したのか、ハンター君はしれっとさらりとニヤリ笑ってそういう。
「……シバいたろかお前。人が悩んどるのを弄るな」
なお、まだ俺の頭には産毛は生えてきたが髪の毛はまだ生えてはいない。
「そのマスクですよ。大きさはともかく中身は同じですので」
俺に支給されたのは、やはりツルンとしたマスク一体型のヘルメット(なんか髑髏の絵が書いてある)と、コイツとは真逆にゴテゴテしたデザインの人工筋肉なんぞ全く付いていない鎧、そしてデカい金棒と俺の手に合わせた作業用ナイフである。
金棒はミラー外相から渡されたものだが、材質は工事現場で使われる大バールを何本か溶接して鍛造したものであり、
『通常の武器よりもあんたにはそういう武器の方が向いている。それなら壊れても大して懐も痛まないだろうから存分に使ってくれ』
と言うことらしい。
ナイフに至っては高周波振動装置も何も仕込まれていないもので、材質はジェットエンジンのタービンシャフトの廃材だ。俺の手に合わせた大きさで、なんか短刀のようなカクカクした形をしている。
まぁ、くれるだけ有り難いと思っておこう。
「でも、消防斧は持って行くんですね」
「安い、どこでも拾える、壊れても懐が痛まない。最高じゃないか」
というか、なんでお前は消防斧を見て溜め息を吐くんだよ。
「いえ、スニーキングミッションならまだしも、こちらから乗り込んで行くならもうちょっと何か良い装備を持っても良いんじゃないかと思うんですよ」
「戦いの基本は格闘だ~、武器や装備に頼ってはいけない~、とかベクターに言ってたのお前だろ。それにどうせ俺が使えば大抵は壊れるし、何を使っても威力はさして変わらん。変わるのはぶった切れるか、ミンチになって潰れるかの違いくらいだ」
俺のパワーだと、そんなもんだ。
「それに、G-生物とかそういう打撃もなんも通用せんような奴が相手なら、この……」
腰のポーチをポンと叩き、
「対T+Gコロース薬剤封入炸裂弾、コイツの出番だからな」
と言ってやる。理論上、TーウィルスとG-ウィルス、それらの派生系ウィルスを殺し尽くす必殺の薬剤である。
これは対ウィルス薬剤のディライトなどの組成をより高精度にし、そして高分子にして浸透力を高めたものに、対Gーウィルス剤の性質をも加えた現段階での究極の対ウィルス兵器である。
並みのタイラントだと、約10ミリリットル程度でウィルスに侵された細胞を破壊され、ミイラどころか無害な砂の山になってしまうくらいに強力である。
なのに、普通の人間には無害である。まぁウィルス感染初期の人間だと、ちょっとお腹壊してピーピーになってトイレに籠もらねばならない程度の副作用は出るが、ゾンビとかクリーチャーになるのを防げるのだ、そんなもん些細な副作用で、とりあえずスポドリ飲ませりゃ万事オーケーだ(乱暴)。
「それに、俺がなんか複雑な武器持ったところで扱いきれるわけねぇ。素人なんだぜ?」
「……素人(最強生物兵器)」ボソッ。
なんか含みありそげな感じに言うが、まぁ、コイツはコイツで俺の事を考えてくれているのは匂いでわかっている。しかし自分を過信しているわけではないが、銃よりも石を拾って投げた方が威力が高いのに、わざわざ銃を持つ必要もないし、鋭い刃物より切れない斧の方がBOWをぶち殺すのに適している。なんならミラー外相がくれた金棒なんてさらに適しているのだ。
「ま、俺は大丈夫だ。なんとかなるさ」
俺はハンター君の肩をポン、と叩いてそう言った。
ソリッドスネークとオタコンはやはりベストコンビだと思う。
平さんの参謀役はグレイフォックスかな、と。
では、また次回。