夕映に憑依したダレカの物語   作:ポコ

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 4か月ぶりです。待って下さってる方がいれば、お待たせしました。
 色々と気力が萎えていたのですが、そろそろ復活しないと創作活動からエタると思ったので、気合入れて執筆。活動報告でアンケートを取った時は、11月中には投稿する気だったんだけどなぁ。何故こうなったし。アンケートの締切は本編突入までとか書いてたのにね。笑うしかない。
 アンケートについての詳細は後書きにて。前回は何の告知も無しにいきなりアンケート始めたからなぁ……それでも数名の方が気付いて下さり、感謝の極みです。


第6話 修行と新たな出会い

「遠野に行ってきてください」

「……はい?」

 

 師匠(マスター)から原作知識を気にするなと諭されて早3年と少しが経った7月。気付けば私も小学4年生になり、原作開始まで後5年を切ってしまいました。

 師匠の進言通り、あれから明日菜さん……いえ、明日菜を呼び捨てにしてみたところ、数秒間固まったと思ったら無言で背中を何度も平手で叩かれたです。何事かと思いましたが、耳まで真っ赤にしていたので、多分照れ隠しだったのでしょう。

 それからは桜子と合わせて3人で過ごす事が増えたです。明らかに原作では縁のなかった組み合わせなので最初は戸惑いましたが、半年もする頃には普通の友人……いえ、親友付き合いが出来るようになったです。所詮私のネジが数本抜けている頭で深く考えてもどうにもならないという事にようやく納得……というか、痛感したので。

 いえ、最初の頃は極力距離を開けようと思ったのです。師匠にはああ言われましたが、やはり原作を変えるのは何というか……罪悪感? のようなものがあったので。ですが、桜子には持前の幸運でどこに逃げても発見されてしまい。明日菜に至っては避け始めて1週間も経った頃でしょうか。登校と同時に涙目で問い詰められまして……周囲の視線の痛いのなんの。もう諦める以外の選択肢は残されて無かったのです。

 

 まぁ幸いというか、この数年では明日菜と桜子以外の3-Aクラスメートとは親しくなってないです。いいんちょさんは親しい知人レベルですかね。明日菜ともあまり深くは関わってないようです。弟さんがどうなったのかが気になるのですが……私が見る限りでは、特に落ち込んでいた時期もありませんでしたし、まだなのでしょうか? 原作での明日菜がいいんちょさんを励ますシーンでは、初等部1~2年くらいの頃と予想していたのですが。まぁ、深く考えても仕方ないです。私が“夕映”になった事によるバタフライ効果かもしれないですし、平行世界故の誤差なのかもしれないです。弟さんがまだ産まれてないのか、そもそもいいんちょさんのお母様が妊娠さえしなかったのか……どちらにせよ、いいんちょさんのショタコン属性が無くなってしまうかもしれないのが不安要素ですが、どうしようもないです。

 

 次に二次創作でよく救済されている千雨さんなのですが、遭遇すらしてないです。麻帆良にはいると思うのですが、麻帆良は初等部だけで5つはありますからね。よその初等部の生徒名簿なんて確認出来る訳もないですし、この広い麻帆良でたった一人と偶然出会う確率なんて、それこそ小数点以下の確立でしょう……その確率で明日菜なんていう核爆弾を引き当てた私は何なんでしょうと思わなくもないですが。まぁ中等部で出会う事は確定してますし、出会ったら出会った時と気楽に考えとくです。下手の考え休むに似たり。まさに私の為にあるような言葉です! ……自分で言って悲しくなってきました。

 

 

 さて、肝心の原作への対処なのですが。何か原作で変えた方が良い事は無いかを考えていたのですが、1つだけ現時点で私……正確には師匠が出来そうな事を思いついたのです。

 それはズバリ、【ネギ先生に常識を教える事】です!

 思えば原作のネギ先生は最初は酷いものです。修学旅行から少しずつ成長していき、魔法世界編でフェイトと会合する頃には立派な主人公になっていましたが、それを抜いても……いえ、そう言えば魔法世界から麻帆良に帰ってからも武装解除が暴走してましたね。日常生活では最初から最後まで何一つ成長していないです。

 ネギ先生がそんな頭の良い馬鹿になってしまった原因は、間違いなく幼少時の育て方が悪かったせいです。何せ魔法学校に入学してからのネギ先生は禁書庫には平気で入るわ、恐らく授業は真面目に受けてないだろうわの問題児だったでしょうから。そんな問題行動を黙認されていたのは、ひとえにその血筋と才能のせいでしょう。未来の英雄なんだから仕方がない、と。ようするに周りの大人がこぞって甘やかしていたわけですね。アーニャさんもなんやかんやでネギ先生のする事を黙認してたようですし……まともな大人って、スタンさんくらいしかいなかったのでしょうかね。

 

 で、そのネギ先生をダメにした筆頭が明日菜の保護者でもある【高畑・T・タカミチ】ですよ。考えれば考えるほど、彼の行動は問題だらけです。ちょっと箇条書きにして、分かりやすくしてみましょうか。

 

・5歳くらいのネギ先生に、ドヤ顔で実力を見せつける(子供相手に何をやってるんですか)

・ナギさんの良い所ばかりを教え込む(そんな事をするから、ネギ先生が過剰に父親に憧れて間違った英雄像を持つんです)

・ガトウさんに託されたにも関わらず、ある程度育てば明日菜を全力で放置(悠久の風の活動は、高畑先生がいないと出来ない事ばかりではないはずです。師匠の遺言なんかどうでもいいってことでしょうか)

・ネギ先生のフォローが皆無(あの人、最終決戦まで何一つ役に立ってませんよね。ヘルマンが侵入してきたのなんか、明らかに高畑先生の責任でしょう。修学旅行でアーウェルンクスに明日菜の存在がバレたのは明白だったのに)

 

 …………どうしようもなくないですか、あの人。結局は自分のしたい事しかやってないですねあのマダオ!

 ……ごほん。というわけで、私は師匠に学園長に伝言を頼んだのです。【ネギ・スプリングフィールドに常識を叩き込め】と。快楽主義の師匠も流石にネギ先生の行動には思うところがあったのか、苦笑いで学園長への伝言を約束してくれました。これで師匠から学園長。学園長から高畑先生へと伝わったはずです。後は高畑先生がどれだけネギ先生の危うさを理解してくれるかですが……無理でしょうかね。まぁ、もしネギ先生が原作通り常識に欠けるようでしたら、私が全力で常識を教え込むだけです。公衆の面前で脱がされるのは御免ですから。高畑先生本人についてはもう放置です。師匠が直接会いでもしなければ、どうしようもないでしょうから。

 

 さて。長々とこれまでの事を語ってしまったですが、最後は私の修行についてです。

 ある程度吹っ切れたのが良かったのか、火、水、氷共に下の上くらいの魔法は使えるようになったです。具体的に言えば『紅き焔』や『氷爆』程度の呪文ですね。威力の方も、原作のメイさんが使ったものと同程度はあると思うです。ようやく魔法使いと名乗っても良くなったといったところでしょうか。まぁ、一番相性が良い属性は“水”なのですが。サポートには適した属性なのですが、いかんせん攻撃手段に乏しいのが難点です。色々と漫画とかを参考にネタは考えているのですが、今の私の実力では再現するのは難しく……まぁ、今後の課題です。

 で、ようやく基礎が出来た私を見て師匠が提案したのが、冒頭の発言というわけなのです。長くなって申し訳ないです。

 

「遠野?」

「はい」

「私一人でですか?」

「ええ。私はここから離れられませんから」

「……理由は?」

「修行です」

「……何のですか?」

「体術……ですかね?」

「何で疑問形ですか」

あれ(・・)を体術と言うべきかどうか悩みまして」

「…………誰が教えてくれるのですか?」

「私の古い知人です」

「…………古い(・・)?」

「ええ」

「「………………」」

 

 成程成程。師匠の古い知人。エヴァさんよりも長生きであろう魔導書の古い(・・)知人ですかそうですか――――――――……って。

 

「どう考えても人外じゃないですか!!?」

「ええ。烏天狗です」

「まさかの妖怪ですか!?」

「昔、遮那王……いえ、牛若丸でしたか。まぁ、人間の子供を超一流の武芸者に育て上げた事もあると言ってましたし、指導には問題ない筈ですよ」

「うしわかっ!?」

 

 それってかの有名な鞍馬天狗じゃないですか!?

 最低でも齢千年を超える大妖怪相手に愛弟子を一人送り出すなんて、何を考えてるですかこの鬼畜!!

 

「ふふふ。心配なさらずとも、彼は意外と面倒見の良い方ですよ。風の噂では数十年前に半妖の弟子をとったとの事なので、恐らくはその彼が夕映さんの修行相手になるかと」

「どっちにしろ人外です!」

 

 人外の方に偏見や奇異感があるわけではないですが、私の何倍も身体が丈夫な方用の体術を習ってこいとか、私を殺す気ですか!?

 

「心配なさらずとも明日から夏休みですし、御爺様の方には連絡しておきました。長距離転移魔法の使用許可も近右衛門から取りましたし、明日菜さんや桜子さんには御爺様から説明して下さるそうですよ」

「用意周到すぎるです!? いえ、私が心配しているのはそこではなく、貧弱な人間の身体で習得出来る体術なのかと――――」

「よい旅を♪」

「話を聞くです――――!!」

 

 私の必死の抗議も虚しく、師匠の展開した長距離転移の魔法陣によって、憐れ私は人外蔓延る遠野へと飛ばされてしまいました……帰ってきたら覚えてるがいいです!

 

 

 ――――――――――――――

 

 

 師匠に人外魔境へ送り出されて早1ヶ月。

 転送された先は、いかにも高位の妖怪が住んでますと言わんばかりの立派な日本家屋の前でした。

 一目見てマズイと感じ、早急に離脱しようとしたのですが……振り向いたら目の前に立派なスーツを着た老紳士と、くたびれたスーツを着て煙草を咥えた胡散臭い男性が立っていました。見た目は2人とも人間にしか見えませんでしたが、何と言うか……威圧感? のようなものが半端ではなく、危うく気絶するところでした。

 ですが、いざ話してみると2人ともとても親切な方でして。老紳士の方は人間に名を教えてはいけない掟だということで【鴉天狗】としか名乗ってくれず――――仕方ないので鴉さんと呼んでます――――男性の方は弟子の【加藤虎太郎】さんだそうです。

 

 どうも師匠が予め手紙を送ってくれていたそうで、ちゃんと人間用の訓練を考えていてくれました。鴉さんは監督役で、虎太郎さんは組手役――――勿論、全力で手加減してもらってるです。虎太郎さんは人間と【石妖】という妖怪とのハーフだそうで、何でも全身の好きな箇所を石のように硬く出来るんだとか。込める魔力――――妖力? 次第では、金剛石より硬く出来るとか。まぁ、ダイヤモンドも石と言えば石ですが……恐ろしいの一言です。

 御二人が習得している体術は【八咫雷天流】という妖怪が創った体術で、兎にも角にも【はやさ】を極めた武術だそうです。思考の早さ、移動の速さ、攻撃の疾さ――――とにかく【はやさ】が基本にして奥義だと。もう、聞いただけで人間が使える技じゃないと思いました。雷天モードのネギ先生なら使えるかもしれませんが、あれはもう人外の域ですから。

 まぁ、人間用の修行構成とは言え、そんなお二人の指導なので。とにかくはやく(・・・)動けるよう、徹底的に扱かれました。正直何度か死ぬかと思いましたが、そのかいあって一介の武術家クラスにはなれたと思うです。流石にくーふぇさんとかと比べると話にならないでしょうが。まぁ、鴉さん達の定めた合格ラインには達したらしく、明日には麻帆良へ帰る事になったです。長期休みには必ず来ることを義務付けられましたが……いえ、強くなるのは歓迎ですし、鴉さんも虎太郎さんも良い人なのですが……このもやもや感は、麻帆良に帰ったら師匠にぶつける事にするです。どうせ適当にあしらわれるでしょうが、やらないよりはマシです。

 

 というわけで、明朝には帰るので、実質最終日の今日は山を探索する事にしたです。あ、伝え忘れてましたが、ここは山奥も山奥。山頂から周囲を見渡しても、人里どころか家の一件も見当たらないくらいの山奥です。

 まぁそんな自然に満ちたというか、自然しか無いような場所に折角来たので、何か面白いものでも無いかと探索する事にしたのです。見つかるのは山の幸ばかりで、特に面白いものは見つかりそうにないですが。何かいかにも何かが封じられてますみたいな祠とかを期待したのですが……まぁ普通に考えれば、そんな危険なものがあったら鴉さんが行かせてくれてないですね。残念です。

 

「ううぅぅぅ…………」

「ん?」

 

 山の幸の取りすぎで籠も一杯になった事だし、そろそろ屋敷へ帰ろうかと踵を返そうとしたところで、何やら茂みの方から苦しそうな唸り声が聞こえてきました。この声は犬か何かでしょうか? 随分弱ってるような声ですが……気になりますし、行ってみるです。

 

「うぅぅ……もうアカン……」

「……うわぁ」

 

 茂みを抜けた先にいたのは、確かに犬でした。いえ、一部犬というか……。

 

「……人狼ですか?」

 

 犬の耳と尻尾を生やした、5歳くらいの少年でした。

 

「ん? なんや姉ちゃん……こっちは腹減って、姉ちゃんに構っとう暇は……ん!?」

 

 胡乱気な瞳で私を見ていた少年ですが、私の背負っている籠を見た途端、勢いよく起き上がり、キラキラとした目で見つめてきました。いえ、見つめてるのは私ではなく籠の方ですが。

 

「な、なあなあ姉ちゃん! その籠に入っとるのって食いモンか!?」

「え、ええ。まぁ……生では食べれませんが」

「ほな、どないしたら食えるんや!?」

「火を通せばすぐにでも「うぉぉぉぉりゃぁぁぁぁーーーーーっ!!」って、はやっ!?」

 

 火が必要だと言った瞬間、少年は驚くべき速さで落ち葉を集め、木の棒をこれまた恐ろしい程の早さで擦り合せ、あっという間にたき火を起こしたです。どれだけ空腹なのですか……。

 

「ほれ姉ちゃん! 火ぃ起こしたで! 早う食いモン――――!!」

「分かったです! 分かったですから、少し落ち着くです!」

 

 籠に顔を突っ込まんばかりの勢いで迫ってきた少年を落ち着かせ、私は取ってきた薩摩芋をアルミホイルに包み、火の中に放り投げました。え、何故アルミホイルなんか持っているのかですか? 鴉さんが持たせてくれたんです。この山の薩摩芋は、少し力を入れただけで収穫出来るから、取れたてを食べなさいと。鴉さんは御爺様に負けず劣らずのナイスミドルです。

 

「なあなあなあ! まだか!? まだなんか姉ちゃん!」

「ああもう、落ち着くです! まだ10分はかかりますから、これでも食べてるです!」

「おー! 姉ちゃんええヤツやなあ!」

 

 なけなしのお菓子を渡すと、物凄い勢いで食べ始めました。

 ……しかし、この少年。この関西弁と言い、この黒い耳と尻尾と言い……いえ、まさかですね。()がいるのは京都の筈ですから、こんな遠野の山奥にいるわけがないです。

 と、そうこうしてる内に焼けたみたいです。火を消して芋を取り出し、少年に渡すと、熱い熱いと言いながらも嬉しそうに芋を頬張り始めました。

 

「あふっ! あふいわっ! いやーこんな旨いもん、久々に食べたで! ありがとうな姉ちゃん!」

「喜んでもらえたのは良いですが、私には【綾瀬 夕映】という名前があるです」

「ん? おう! なら夕映姉ちゃんやな!」

「……まあ良いです。それで、貴方はなんというのですか?」

「俺か? 俺の名前は――――」

 

 

 なんというか、あれですね。フラグっていうのは――――――。

 

 

「――――【犬上 小太郎】や!」

 

 

 ――――避けれないからフラグっていうのですね。




麻帆良の初等部が5つというのは適当です。あれだけ広いのだから、少なくても5つはあるだろうと思ったんで。下手すれば10はあるかもですが、当作品は5つで。

夕映に修行をつけた2人は【あやかしびと】というPSPゲームの登場人物です。作者が大好きな作品なので、ゲスト出演してもらいました。これからもモブとしては出番がありますが、本編に関わる事は無いのでご安心を。

そして出てきた新たな原作キャラ。ぶっちゃけ、彼を出したいがために一気に時間が飛びました。

アンケートの方ですが、締切を次話投稿までにしときます。アンケートを始めたのが10月半ばなので、日付に違和感があるかもですが、宜しくお願いします。

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