夕映に憑依したダレカの物語   作:ポコ

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息抜きのつもりで書いたのに、昨日夜勤明けで確認したら日刊ランキングに乗ってて驚き。
まさか3話で評価と感想がこんなに付くとは。お気に入りも400いきそうだし、もう感謝感激であります。更新は2~3日に1度くらいのペースでいけたらと思ってるので、どうぞよしなに。

※この作品の主人公は“逆行夕映”ではなく“夕映”の口調をした“ダレカ”です。こんなん夕映じゃねえという感想は勘弁してくださいです。と、予防線を張っておく。


第3話 第1原作クラスメート発見

 師匠(マスター)に弟子入りを認めてもらってから、一ヶ月が経ちました。お爺様に心配をかけないよう、隠れ蓑として【図書館探検部】に入部したです。のどか達との出会いフラグが心配ですが、仕方ないです。そもそも私が初等部から麻帆良に来てる時点で今更ですね。流石に6歳児はあまり遅くまでは残らせてもらえず、図書館島に居れるのは10時~17時くらいです。

 師匠(マスター)が図書館島から動ければ時間を気にせずに済むのですが、麻帆良中を自由に転移出来るのは世界樹が発光しているときだけらしいです。こればかりは仕方ないですね。ダイオラマ魔法球を使う事も考えましたが、成長期の今の年齢で使用すると怪しまれる可能性があると師匠(マスター)に熱弁されたです。楓さんや千鶴さんみたいな中学生がいるから心配無いと進言したですが、頑なに聞き入れて貰えなかったです……自分の趣味が見え隠れするのは気のせいと思いたいです。師匠(マスター)のいう事も一理はあるので、仕方ないと諦めたですが。

 

 肝心の魔法は使えるようになったかですか? ええ。変態師匠の特訓のおかげ(せい)で、何とか【火よ灯れ】(アールデスカット)【光よ】(ルークス)の2つは習得出来たです。習得したと言っても【火よ灯れ】は数秒しか持続せず、【光よ】はランプの灯り程度ですが。要するに魔力の流れが少しだけ分かるようになった、というところですね。【風よ】(ウェンテ)が習得できなかったのが気がかりですが。

 原作の夕映が【火を灯れ】を習得したのって、どれくらいかかってましたっけ。確かネギ先生がエヴァンジェリンさんの弟子になってから練習し始めて、学園祭のネギ先生とのデート(?)の時にはなんとか使えるようになってたですね。えっと、だから……多分1ヶ月と少しくらいですね。うん。原作夕映並の才能はちゃんと有るようで一安心です。

 師匠(マスター)曰く、私の魔力は学園の魔法先生と同程度にはあるそうです。けど、学園の魔法先生ってあんまり強いイメージ無いんですよね。あ、でもあの麻帆良祭で楓さんと刹那さんが戦ったグラサン先生は強そうでした。良いですよねあの人。こう、仕事人だけど情には熱いみたいな印象があるです。勝手なイメージですけど……別に私はオヤジ趣味じゃないですよ。 

 

 私の修行状況は置いといて。現在、1995年4月半ば。私こと夕映が原作キャラが蔓延る麻帆良学園初等部に入学してしまってから半月です。麻帆良に来た事が間違いとは思わないですが、原作キャラに過度な影響を与えないようにするのは気を遣うです。別にそこまで気にするほどの事ではないかもしれないですが、止むを得ない事体にならない限りは、出来るだけ避けるつもりです。慎重に動くに越したことはないと、師匠との一件で思いしりましたから。特に明日菜さんには気を付けないとです……同じクラスになりませんように!

 

 ――――――――そう思っていた頃が、私にもあったです。

 

「…………」

「…………」

 

 何で同じクラスどころか隣の席になってるですか!? しかも何故かこっちを凄い見てるです! どうしてこんな状況に……いいんちょさーん! さっきまで明日菜さんと喧嘩してたいいんちょさーん! 席を替わって下さ――――いッ!!

 

「それ……」

「はい?」

「それ、美味しいの?」

「それと言うと、私が飲んでる“これ”ですか?」

「ん」

 

 真顔で頷かれたです。何で見られてるのかと思ったら、私の飲んでる“これ”のせいでしたか。もしかしたら私が魔法を拙いながらも使えるようになったのがバレたかと思ったです。

 私が何を飲んでるかですか? ふふふ……それは勿論、原作でも夕映が好んで飲んでいた謎ジュースの類です。その名も“微炭酸ラストエリクサー”です!! 図書館島の自販機で売っているのを見た時は衝撃でした。まさか本当にあるとはと。普通なら見向きもしないのでしょうが、生憎私は“夕映”なのです。謎ジュースを飲まずして誰が夕映か!! 謎の使命感に押されて購入したのですが、何と言うかこう……堪らない味です。美味しい不味いではなく、堪らない味なのです。こう、謎ジュース! 飲まずにはいられない! と言った感じに。これは原作夕映が中毒になるのも納得です! 思わず少ないお小遣いをはたいて、買えるだけ買ってしまったです。3本で打ち止めだったので、全財産を使う事にはならなかったですが。

 

「…………」

「……はっ!」

 

 謎ジュースの素晴らしさに心を奪われて、つい明日菜さんの事を忘れてたです。どうやら私がトリップしている間も私の手元を見つめ続けていたようで。というか近いです! どれだけ興味があるですか! 原作で明日菜さんが謎ジュースに興味があるような描写は無かったと思うですが。いえ、明日菜さんだけでなく、誰も興味を持ってなかったですが。もしかして書かれてないとこで飲んでたりしたのでしょうか? ……引き下がる気は無いみたいですし、仕方ないですね。

 

「……もう2本あるですが、飲みますか?」

「……! 飲む!」

 

 おおう。物凄い勢いで首を縦に振ったですよこの子。もう記憶封印の影響が出始めてるのかもです。そうでないといいんちょさんに喧嘩売ったりはしないでしょうし……あの原作過去編の感情の起伏が薄いアスナさんはどこに行ったのやらです。

 まぁ今はそんな事は後回しです。折角の謎ジュース好きの同士が出来る機会なので、早速飲んでもらうです! ストローを刺して渡すと、明日菜さんは何故かパックをあちこちから確認してから、意を決したように口を付けました……何故そこまで警戒しながら飲むのでしょう。

 

「…………」

「どうです?」

「………………」

 

 ……何で1口吸ってから固まってるですか。

 聞いても微動だにしませんし……もう一度聞いてみるです。

 

「…………味の方はどうです?」

 

「……………………ひ ど い」

 

「は?」

「ひどい味。人間の飲むものじゃない」

「な……なななな…………ッ!」

「これならタカミチの入れた苦いコーヒーの方がマシ」

 

 ひどい? 私が愛する謎ジュースが? 貴重な1つを差し上げたというのにこの反応ですか。折角同好の士が出来るかもと思ったのにこの仕打ち…………ふ、ふふふ……!!

 

「なんて事を言いやがるですかこのガキ――――――ッッ!!」

「……ッ! ガキはそっちも! こんな変なジュース飲むなんて、絶対に変!!」

「まだ言うですか!! 人の好きな物をそこまで言うなんて、貴女には肉体言語で常識と言うものを叩き込んで差し上げるですッ!!」

「常識が無いのはそっち!! 口だけじゃなくて他もおかしいんじゃないの!?」

「うが――――――ッ!!」

「ちょっと貴女達! 神聖な学び舎で騒がしいですわよ!」

「「金髪は黙って(るです)!!」」

「な……っ! き、金髪で何が悪いんですの――――!!」

 

 途中でいいんちょさんまで乱入してきて酷い事になりましたが、最後は先生からの制裁で喧嘩両成敗になったです。おのれ神楽坂明日菜……! いいでしょう。貴女を私の不倶戴天の敵として認めてやるです! …………あれ? 何か当初の目的を忘れてるような…………あ。

 

 

――――――――

 

 

「というわけで師匠(マスター)。遺憾ながら明日菜さんと宿敵になってしまったです」

 

 放課後、いつものように図書館島へ修行に来ました。あの後明日菜さんとは放課後まで事あるごとに睨み合ってたです。大人気ないとか言わないで下さい。謎ジュースを侮辱した罪はそれほど重いのです!! ……ええ。現実逃避です。クウネルさんに続いてまたやっちゃったです。

 

「それはそれは。中々に楽しい学園生活を送ってらっしゃるようで」

「楽しくないです!! あぁ……明日菜さんとエヴァンジェリンさんにだけは原作開始まで近づくまいと思っていたのに、どうしてこうなったですか……」

「夕映さんが大人げなく喧嘩を買ったからでしょう。前世の知識とやらはどこへ行ったのやら」

「したり顔で言わないで下さいです。よくある“肉体年齢に精神年齢が引っ張られてる状態”とでも思っておいてください」

「ふふふ。夕映さんは色々とアンバランスですねぇ。ですが、それも貴女の魅力の1つですよ♪」

「うるさいです。修行の時は初等部の制服で来るように強制する変態に褒められても、嬉しくないです」

「他意はありませんよ。部活動の名目でここへ来ているのですから、部活中は制服を着るのは当然でしょう?」

「その通りですが、師匠(マスター)が言うと信用ならないです。他意は無いのなら、別に体操服でも構いませんよね?」

「却下です」

「やっぱり趣味じゃないですか――――!」

 

 この変態師匠(マスター)め! 今からでもエヴァンジェリンさんの方に鞍替えしてやりたい気分ですが、こんなのでも教え方はとても上手いので離れるに離れられないのです……魔力を操作する感覚を体感する為とか言って私の手の上から杖を握られたときには、貞操の危機かと思ったですが。いえ、あの特訓をしてからなんとなく魔力操作の感覚を掴めたのは事実ですけど。感謝しづらいというか。

 

「それでは夕映さん。貴女も初歩の初歩とはいえ、魔力を扱えるようになりましたし。今日は貴女に合った属性を調べたいと思います」

「私に合う属性? それって調べられるのですか?」

「ええ。これを使えば」

 

 そう言って師匠が取り出したのは、サッカーボール大の大きさの水晶球でした。なんだか中身の無いダイオラマ魔法球みたいですけど、なんですかこれ?

 

「これは魔力の質を調べる魔法具(マジック・アイテム)です。結構なレア物なのですが、偶然持っていたので使ってみようかと」

「偶然……?」

「ええ、偶然ですよ。近右衛門に無理やり貸して貰ったりはしてませんから」

「無理やり借りたのですね」

「ええ♪」

 

 全く発言を取り繕う気がないですね……うちの変態がすいませんです学園長。

 

「あれ? もしかして師匠(マスター)。学園長に私が弟子入りした事を教えたのですか?」

「ええ。夕映さんが魔法を使えると知られた時、近右衛門まで貴女の存在を知らなければ、下手をすれば侵入者として捕まってしまいますから」

「あぁ。そう言えば魔法先生への対策を忘れてたです。ありがとうございます師匠(マスター)。学園長にはなんと説明を?」

 

 まさか前世の知識や原作知識がある事までは言ってないと思うのですが。

 

「心配なさらずとも、最低限の事しか言ってませんよ。私に愛弟子が出来ましたが、公にはしないで欲しいとだけ」

「それ逆に警戒されないですか?」

「近右衛門なら大丈夫ですよ。そもそも私が公に出来る存在ではないので」

「そう言えばそうですね。師匠は非実在青年でした」

 

 エヴァンジェリンさんや高畑先生も麻帆良祭まで知らなかったくらいですからね。学園長が手を回してくれれば、魔法先生から必要以上に狙われたりする事はないでしょう。

 

「それで師匠(マスター)。この水晶球はどうやって使うのですか?」

「簡単ですよ。その水晶球に両手で触れて魔力を流し込めば、水晶内で属性に合った現象が起きます。光が得意なら光り、闇が得意なら暗くなると言った感じですね」

 

 どこの水見式ですかそれ。

 得意属性を調べると言っても、私は夕映ですから原作通りに“風”と“雷”だと思うのですが……まぁ、やるだけやってみるです。もしかしたら他にも得意属性があるかもしれませんし。

 

「これで良いですか?」

「ええ。そのまま魔法を使おうとしてみて下さい。そうすれば自然に魔力が流れますから」

「分かったです」

 

 魔法を使う感覚で……あ、何か水晶内に水が溜まってきました。私は水も得意なんですね。

 

「……あれ?」

 

 今度は溜まってた水が、少しずつ凍り始めました。氷も使えるのですか。

 

「……んん?」

 

 と思ったら、今度は出来た氷が火で溶けてしまったです……。火も使える、と。

 

「…………」

 

 それからはいくら魔力を流しても、水晶球は他の反応を示しませんでした。

 あれ? 風と雷はどこに行ったですか?

 

「おや。夕映さんは“水“ “氷” “火”の3属性に適正があるのですね。素晴らしい素質です」

「あの、師匠(マスター)?」

「はい?」

「原作の“夕映”の得意属性は“風”と“雷”だったのですが」

「ほう……ですが夕映さんにはその2つの適正は無いみたいですよ」

「どういう事ですか?」

「そうですねぇ……きっと原作の“夕映”さんとは“魂”が違うせいではないでしょうか」

「むぅ」

 

 こんなところでもイレギュラーが出ましたか。別に“雷”と“風”に拘りは無いですし、むしろ3属性に適正のある今の方が恵まれていると言えばそうなのですが。まぁ、なるようにしかならないですね。まずは目指せ【魔法の矢】(サギタ・マギカ)です!




初っ端から危険人物第2位に出会ってしまった夕映。勿論1位はエヴァンジェリン。
この夕映は基本的にバカです。あれこれ考えてはいても、結局は勢い任せ。
あれこれ考えてしまうクセがあるのは夕映の影響。勢い任せのバカなのは前世の影響。
こうして見事に“頭の良いバカ”が出来上がったわけであります。あれ、それってネギの理想形?

得意属性を変えた事には特に意味は無いです。ただ、中身が違うのだから得意属性くらいは変わるんじゃないかと思ったので。

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