問題児達と一緒に虚刀流もやって来るようですよ?   作:徒釘梨

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遅れてしまってすいません!!ゴミカスこと徒釘梨です。

資格試験の逃避で書きました。
誤字脱字の指摘も待っています
それではゆっくりしていってくださいね。



第六話 虚刀流、決着を付ける

ぶしゅうぅぅとした水音以外に水平に廻る太陽と雪原の湖畔に一切の音は無かった。

 

 

七花は自分の手を引き抜き、その手を見て自嘲的な表情を浮かべた。潰れていたのは七花の手刀だった。その事実を認識して、七花は出血多量で意識を失った。

 

 

 

「見事であった。ここまで愉快な闘いは久しぶりだったわ。こやつは私が責任を持って治療する事で良いかのう、黒ウサギ?」

「え、ええそれはいいのですけど………」

 

未だに先程までの激闘の余韻から抜け出せない黒ウサギを他所に話を進める白夜叉。

その表情は、闘った敵に対する賞賛と、これからの成長への期待をごちゃまぜになったものだった。黒ウサギはその表情から白夜叉の渇きを僅かに感じ取った。

白夜叉は魔王であった頃はいざ知らず、階層支配者(フロアマスター)となってからは心踊る闘争など皆無だった。

強者故の孤独。それを白夜叉は強く感じていた。元々好戦的な性格であるため、下層の育成などで誤魔化してはいたものの退屈を募らせていた。

そこに現れたのが、七花だった。

久方ぶりの全うな闘争。始めの内、白夜叉はその形式だけでも味わおうと考えていた。が、七花の初擊に白夜叉は反応出来なかった。後に気付いた事だが、七花の足捌きは自分への認識を外すものであり、驚異的なほど速い訳では無かった。

そうして、七花の一撃を受けた白夜叉は既に自分の甘さを罵った。七花は確かに自分より弱者だ。しかし強者との闘いというのはどのような形であれ、影響力の強いものだ。

事実、七花は次第に白夜叉の攻撃を見切り、躱す事が出来るようになった。最後の神格を用いた認識阻害と貫手は、白夜叉も覚悟を決めるほどのものだった。

しかし、

 

(あの一突きの時、神格が揺らいで最終的に消えてしもうた。今も神格を感じられんし………。何とも、勝った気になれん一戦だったの。まあお陰で生き残っておれたのだがの)

 

そう思わせるだけの鋭さがあの時の七花にはあった。事実、白夜叉の衣服に隠れた胸元には、青く痣になっていって少し抉れていた。

七花のこれからの成長に期待しつつ、問題児達三人に対する試練の準備をする白夜叉だった。

 

 

 

七花が目を覚ました時、和式の見慣れない天井が見えた。

 

(そうか、俺負けたんだった。)

 

白夜叉との闘いの最後の一撃で、七花は貫手を行う事を無意識に躊躇ってしまった。

”虚刀流 蒲公英”は姉の鑢七実を殺した技であった。それを使う事を体が拒んだのかもしれない。最後の自嘲は、自身の錆具合に対するものだった。

 

閑話休題。

七花は負けてしまった事を理解した。しかし、確かに潰れたはずの右手がしっかり治っていることが解せなかった。

そう思案していると、

 

「ようやくお目覚めかの。随分私を待たせてくれたではないか」

 

呵呵と悪戯っぽく笑う白夜叉がいた。

こうして、顔を合わせると嫌でも負けた実感が湧いて来て、七花としては気まずいことこの上無かった。

しかし、白夜叉はそんなことは、完全に無視して話しを続けた。

 

「さて、決闘の結果、私が勝ったのだ。何をしてもらおうかの?」

「おいおい、聞いてないぞ。これ、詐欺じゃないか」

「おや、おんし、互いが命を賭けて闘ったのじゃぞ?お願いの一つや二つ勝者に応えるべきじゃろう?」

「そういうものか?」

「そういうものじゃ」

「そうか。それじゃ、まあ言ってみてくれ。可能な限りのことはするから」

「そう身構えんでも良い。私はおんしの来歴を聞きたいのじゃ」

「来歴ってあれか、過去に何やってきたかーっていう」

「それで合っておるよ。それでは聞かしてもらうぞ」

 

七花は白夜叉に何を言われるか、内心恐々としていたが、拍子抜けする事になった。が、白夜叉の気が変わる前に済ませてしまおうと、白夜叉に確認を取ってから七花は語り始めた。

 

父、鑢六枝のことを。

不承島での生活のことを。

奇策士とがめが入島したことを。

姿形、声、更には骨格すらも変わる忍者と戦ったことを。

その後、伝説の鍛冶士の残した刀を集める旅に出たことを。

因幡で居合抜きの達人と闘ったこと。

出雲で千段ある階段を上り、謀略の限りを尽くしてきた神主と闘ったことを。

巌流島で、島の面積を半分以下にしながら太陽すら斬ると謳われた剣士と闘ったことを。

薩摩で海賊団の頭と女を巡って闘ったことを。

蝦夷で天涯孤独となった怪力で純粋な少女と闘ったことを。

土佐の清涼院御剣寺で化け物過ぎた姉を殺したことを。

江戸の不要湖で人を模した刀と闘ったことを。

出羽で、凛として在る一人の女剣士に師事し、闘ったことを。

陸奥で自身の苦手意識そのものとなる、掴むことすらできない仙人と闘いにならなかったことを。

伊賀で伝説の刀鍛冶と成った、とある忍の頭領と闘ったことを。

尾張目前で、そして、とがめが死んだことを。

それから、変えられた歴史の幕府の巨城に一人で死ぬために闘ったことを。

生き延びて、否定的な女と日本地図を作る旅に出たことを。

 

 

ここまで話しを白夜叉は尋ねたり、相槌を打ったりすることなく静かに聞いていた。

七花は全く絡んでこない白夜叉を怪訝に思いながらも話し続けた。

 

気付けば、空も白み始め、暁が近かった。

ようやく白夜叉が口を開いた。

 

「私を追い詰めた者が如何ような人生だったか尋ねてみたのだがの。いやはや、中々愉快なものではないか。私としてはその仙人にあってみたいものだがのう」

 

そう言って呵呵と笑っていた。

この反応は七花も予想外だったので、思考が停止しかけたが、”ノーネーム”の顔ぶれを思い出し、立ち上がった。何せ七花は黒ウサギ達の制止を無視して決闘を挑んだのだ。謝罪くらいしておく方がいいだろう、と思い、すぐに本拠へ向かおうとして立ち止まった。

 

「俺”ノーネーム”の本拠知らないじゃん……」

「まあ、そう慌てるでない。おんしに渡しておきたい物もあるしの」

「何だ気前がいいな………って板切れじゃねぇか!!」

「それはギフトカードといっての、ギフトのあるものを収納出来る優れものじゃ」

 

七花のギフトカードは

 

メタリックシルバーのギフトカード

鑢 七花 ギフトネーム『虚刀 鑢』『一城落し』

 

といった感じだった。

 

 

「ふーーーーん。まあどうでもいいか」

「結構使えるんじゃが、おんし理解を放棄したのう。”ノーネーム”のことじゃが明日黒ウサギが迎えに来るそうじゃから心配せんでもよい」

「そりゃ安心だ。明日はガルドとかいう虎を狩らないといけないからな」

「うん?……ああ、そうか伝え忘れとったが、その虎なら昨日、”ノーネーム”の女子二人とリーダーで討伐したそうじゃぞ?」

 

 

七花は聞いた言葉をしっかり咀嚼し、

 

 

 

「ゑ?」




お気に入り登録がもう少しで五百となりそうです。
正直、びっくりしています。

皆さんの評価や感想が私を頑張らせてくれます。
これからも本作を読んでくださると幸いです。

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