問題児達と一緒に虚刀流もやって来るようですよ?   作:徒釘梨

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なんとか間に合いました。皆さんから体調に気をつけるように言われたのにも関わらず、インフルエンザにかかりました。

皆さんもお気をつけて


第四十五話 虚刀流、龍の一端に触れる

「それじゃはじめるか」

「………よろしくお願いします」

 

瓦礫となった地下街の一角で七花と耀は向かい合っていた。先程話していた訓練を始めようとしている所であった。しかし耀の表情は訓練なんて生易しいものではなくどこか決死の戦場に赴くかのような悲愴が浮かんでいた。その表情に七花は一つめんどくさそうに溜息を付くと、耀に向かって駆け出した。

そして、耀はそれに過剰に反応してしまう。

 

「──ッ!」

「距離を取りすぎだし、何より緊張しすぎだ。そんなんじゃ普段の動きなんてできやしないぜ?」

 

それじゃあまずは一本、そう呟くと七花はバックステップで七花から離れようとしていた耀に肉迫していた。耀が空中へ逃げようと考える間もなく、接近した時の勢いをそのまま乗せて掌底で耀を押し飛ばした。衝撃を逃がすように体を捻ったり、ガードしようと腕を組まずにそのまま受けてしまったためゴロゴロと転がって七花と離れていく耀。それに構うことなく七花は耀に告げる。

 

「さあ次だ。まさかさっきのが全力だったなんて言わないよな?だとしたら拍子抜けもいいトコなんだが」

「………まさか。それに七花だって手を抜いてたんだから分かるでしょ」

「まあ全力でやってたら危ないし」

 

七花は耀に掌底を繰り出したとき、腕を伸ばして撃ったのではなく、曲げていた腕を撃って伸ばしたのだ。このことで耀の体にはほとんど打撃のダメージが入ることなくただ飛ばされただけだった。その手加減を耀は理解していたが、だからといって納得がいくという訳ではない。

 

「その自信、打ち砕いてやる!」

「おお、いい感じになったじゃねえか。だがな、………お前の目の前にいるのは一時とはいえ日本最強を冠した男だぞ?慢心が過ぎるんじゃないか?」

 

不敵に笑って七花は耀を挑発していた。

 

 

 

 

 

実際のところ七花は余裕があった。

何せ相手がそこそこ出来る相手で、かつ見切れる速度で攻撃されていたからだ。サラマンドラの時のように数で押されるというなら積極的に戦局を動かしていかなくてはならないが、一対一であるなら相手に集中して戦える。無理に打って出ずとも闘いになるし、何より面倒にならない。

 

だからこそ、

 

「はあああああ!!」

「よっと」

「ちょこまかとォ……!この!」

「お、今の蹴りはいい感じだったな」

「ならしっかり喰らってくれないか、なッ!」

「そりゃあ無理な相談だ。何せこの風切り音じゃあ、おっと。ふう……喰らったら一発ケーオーってやつだからな」

「いいじゃん。どうせ当たらないんだしィ!」

「ほいさ。だったら尚更当たる訳にはいかないだろ?」

「ねえレティシア?春日部さんはギフトを使っているのよね?」

「ああ、だからこそ信じられないな。どうして、七花は完璧に三十分も躱し続けているんだ?」

 

こんな状況になっていた。

 

二本目開始から、既に三十分過ぎようとしていた。二本目開始から耀は攻め続け、七花はいなし、躱し、守り続けた。耀はギフトで身体能力を増強していたが、七花に当たる気配は一向にない。

確かに彼女の攻撃は鋭く、速く、強い。だが、七花の置いてきた時代の猛者に比べれば、思いの質量が段違いだった。迷いの篭った拳で砕ける程、七花という壁は脆くはなかった。それにそうでなくとも生娘相手にくれてやる程、

 

「日本一は安かねーよ」

「はあッ…はあッ………これだけやってもかすりもしないなんて、……はあ、信じられない」

 

膝に手を当て、肩で息をしている耀に七花は言うと、耀は驚いたように目を見開いた。目の前の七花はそれだけ強大な印象だった。

誰もいなかったからか、七花も少しだけ口を滑らせた。

 

「俺は姉ちゃん相手に一時間攻めても当たらなかったけどな」

「………お姉さん、人間?」

「………真っ当な人外だったよ」

 

あの力を持ちすぎたが故に世界から隔された強すぎて弱かった姉は、自分自身思うままに生きれたのだろうか。ふとそんなことを思った。そして、ここ《箱庭》ならそれが出来たのではとも。

そんな事を考えていると”アンダーウッド”に琴線を弾く音色がした。

 

”目覚めよ、林檎の如き黄金の囁きよ

目覚めよ、四つの角ある調和の枠よ

竪琴よりも夏も冬も聞こえ来たる

笛の音色より疾く目覚めよ、黄金の竪琴よ────!”

 

そして数刻遅れて、龍と巨人が現れた。

 

暗く染まった星空を割り、天を震わせ、稲妻を孕んで龍は姿を現した。その姿に七花は震え、───歓喜した。

 

 

 

 

 

一方、とある時、とある場所にて。

歴戦屈指の魔王の一団が召喚された人間を取り囲んでいた。人間の女性は儚く、まるでそこにいないかのような、それでも目を離せないそんな現実離れで浮世離れした美しさがあった。あまりの美しさに幾人かの魔王も呑まれていた。しかしそれはごく少数で、大半は危機感を強めていた。

そんなことはどうでもいいと、彼女はまるでこれから散歩でも行くかのような気軽さでこう言った。

 

「事情は大体わかりましたので、それでは始めましょうか。有象無象の魔王狩り《クサムシリ》」

 

誰も知らない闘いが始まった。




まあそれでバイト休めたんで、プラマイでいえばプラスかなぁ

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