問題児達と一緒に虚刀流もやって来るようですよ?   作:徒釘梨

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な、何とか間に合った………

今回は独自解釈が多々あります。ご注意ください。


第三十五話、虚刀流、殿下との決着

地を砕き、第三宇宙速度で飛び込んでくる殿下に七花は見失わなかった。十六夜の速度を体感し、なおかつ日頃の訓練で十六夜を仮定していた事が功を奏したのだろう。極めて冷静に殿下の突き出す拳を”鏡花水月”でいなし、”飛花落葉”を放った。

 

「──ッ!?」

 

殿下の息を呑む声がした。飛花落葉は全身に衝撃を流し、相手の行動を少しの間封じる技だ。殿下程のレベルであればすぐにでも動けるようになるだろう。しかし戦闘中において一瞬の硬直はそのまま死に直結する事となる。

七花はその一瞬で手刀で殿下に止めをさしにかかった。

 

 

 

だが、それは相手も同じであり、一瞬あればよかったのである。

 

 

 

「グッ!」

 

七花は苦しげな声を押し殺せなかった。

一瞬前まで無かった筈の所に短刀が刺さっていた。

リン所有するギフト、”アキレス・ハイ”は距離の概念に関する空間操作系のギフトである。彼女がギフトを行使すれば、彼女に対しての攻撃は永劫届く事はなく、彼女自身は神出鬼没な動きが取れる。まさに攻守に渡って大変優れた恩恵である。

そんな彼女がしたことは、自分達の旗頭である殿下の敗北が濃厚となった時、ギフトで空間を跳んで、七花を背中から刺したのである。敢えて止めをさしにきたときを狙った理由は、七花を最大限警戒していたからだ。どんな強者であれ、勝利が目前となれば気が緩む。その間隙を突く、そういう策だった。

もちろん殿下はこのことを知らなかった。知られる事無く殿下が勝てば良し、負けても自分が横槍を入れる。そういう手はずだった。

 

 

 

──だが、穴無く最悪の事態を想定して、それに則って最善を尽くした彼女の声は震えていた。

 

「どうして、………どうして心臓を刺されてないのよ!!?」

 

そう、狙ったの背中からの刺突は成功した。しかし、リンの短刀は、狙っていた部位─心臓を貫いてはおらず、七花の肩甲骨に刺さっていた。七花は質問に答える事無く、リンの腕を掴んで、それとは逆の腕で彼女の顎殴って脳を揺らし、気絶させた。

気絶したリンを地面に寝かせた時、拘束が解けたのか殿下はどうにかこうにか立ち上がっていた。だが先程までと違い、その瞳は怒りに燃えていた。

 

「…………リンの攻撃をどうやって躱した?」

「実はさ、俺が一番警戒していたのはあんたじゃなくて、こっちのリンって奴の方だったんだ」

「何?」

 

怒りながらも殿下は、訝しく七花を見た。殿下としては、自身を蔑ろにされた事は勿論だが、リンを警戒していた事に疑問を持った。

 

「最初に会った時、離れたところにあったあんたたちの気配が一瞬で目の前に来た時は本当に驚いたもんだ。だけどそれで俺が気付けない速さで移動出来るって事がわかった」

「…だがそれではリンのギフトに対応することなど不可能であろう」

「嗚呼。だから、その前にそうするようにあらかじめ隙を作って置いた。ギフトで攻撃を仕掛けられる隙をな」

 

何でも無いような様子で七花は殿下に告げるが、言われた方は屈辱的だった。何しろ最初の一手から相手の掌の上だったのだ。コミュニティの頭たる彼には一層堪えるものだった。しかし、腑に落ちない点があった。

 

「だが、それで絞れるのはリンの攻撃の大まかなタイミングだけだ。それに何より、まずリンが仕掛けてくる確証もなかった筈だ!何故、いやまずどうやってリンの攻撃を」

「まあ、話を聞けよ。嗚呼、面倒だ。だからさあんた一つ勘違いしてるぜ」

「勘違い……だと?」

「そう、たとえどれほど恩恵が凄かろうとも、使っているのはただの人間だ。意志を持ち、感情を孕んだ人間だ。嬉しければ笑うし、大切な奴が殺されそうになれば、当然殺意も沸くだろう」

「いい加減にしろ!!さっさと話せ!」

 

怒気を孕んだ殿下の声などどこ吹く風七花は言った。

 

 

「つまり俺がやったのは、恩恵を行使する前の殺意を感じて、行使するよりも早く動いていたってただそれだけのことだよ」

「──言っていることが無茶苦茶だ、意思を生じこちらが行動に移すなどと……。それに戦闘中にそんな違和感感じなかったぞ?」

「虚刀流には違和感無く移動できる方法があるんだよ。それで俺の位置を完璧には把握出来なかったんだろうぜ。……予測より心臓に近かったけどな。」

「お前はその傷をどう治療するつもりだ?仮に俺達を倒したところでお前が死んでは元も子も無いであろう?」

「問題ない。実は俺怪我人でね。白夜叉から応急処置用のギフトカード借りてんだ。それこそ、命に関わる怪我でも大丈夫との触れ込みだ。それじゃあ話は終わりだ、今度こそ止めを刺させてもらうぜ」

 

 

震えそうになる声で、七花に威圧を掛ける殿下だったが、姉の七実のそれと比べて幾分見劣りした物で、効果がなかった。殿下は、優位に在りながらも決して慢心する事が無い七花に観念した。同時にハーメルンの街で感じた自分の予感は本物であったと、何処か他人事のようにすら考えていた。近付いてくる七花に未だ完全に硬直から復帰していない殿下の現実逃避だったのかもしれない。

 

 

こうして七花の手刀に殿下の意識は刈り取られた。

 

 

 

 

 

「嗚呼、そういやこいつらなんか魔王達の事詳しそうだったし、『ノーネーム』」の探している魔王の事してるかも知れないな〜。………面倒だけど生かしとくか」

 

リンに刺された傷を止血してから七花は呟いた。

この後七花は殿下とリンを引きずって『サウザンドアイズ』に連れて行った。




だってこうでもしなきゃ七花さん勝てないと思ったんです………(´;ω;`)

後悔はしている、反省はしてないけど………

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