今回は若干キャラが崩壊しちゃってます。指摘などもあると思いますが(打っている途中でどうも寝ていたので(¯―¯٥))感想欄でお待ちしています。
七花のギフトカードを受け取ったレティシアとジンが店を後にすると、横手の襖から包帯を巻いた七花が出てきた。
「やっとあいつら帰ったか。悪いな白夜叉。嘘つくような事させて」
「全くじゃ。……じゃが、詫びのついでにと言ってしまった私の自己責任とも言えるじゃろう。それにしても七花、おんしあれで良かったのか?言うほど体の調子が悪いわけでもあるまい?」
白夜叉は一つ引っかかっていた。
七花の負傷は重症ではあったが、合宿の参加者と下手人の武御雷の尽力で殆ど完治と言っても良かった。それなのになぜ、アンダーウッドの収穫祭に参加しようとは思わなかったのか。
対して七花はあっけらかんとした態度で応えた。
「あ〜それな。多分深く考え過ぎだと思うぞ」
「何じゃと?」
「十六夜達に伝えてもらった事は本心だし、それにあいつらならなんかあっても何とかするだろ?だから俺は刀としての斬れ味を少しでも戻して置くんだよ。俺が必要になった時のためにな」
ほう、と感心したように七花を見直す白夜叉。
手を差し伸べるだけではなく、傍観に立つ事で問題児達の成長を促していると即座に理解できたのだ。否、それは理解ではなく、誤解だった。なにせ当の本人はというと、
(またやいのやいの言われるのは面倒だからな……)
といつも通り面倒がっていたのだから。
閑話休題。
七花は白夜叉に勧められて、ノーネームのささやかながらのパーティーに如何にも重症そうに工作して──包帯に加えて松葉杖にギプスで足を固定して、現れた。七花が帰ってきた頃には、宴はピークを過ぎていて静けさと僅かな熱だけが残っていた。
そんな中で芝に腰掛け三毛猫と共にいる耀の姿が見えた。どうやら黄昏ていたかった風だったが、対して気にせず七花は彼女に声をかけようとした。
「──三毛猫、私はね。あの畑は十六夜が水を引いて、飛鳥が土地を耕して、私が苗木を用意して”三人で作ったんだ!”って誇れる物にしたかったんだ。だから1日でも長く参加できるように今回は頑張ったんだ。だけど、だけどッ………!」
そんなちっぽけなプライドを抱えた少女の言葉を聞いて、七花は──
「とういことはあれか?俺をのけ者にしようて話だったのか?」
聞こえていた上でなお普段通り話を進めた。
話しかけられた方は驚愕なんてものではなかった。ビクゥ!!と効果音が付きそうなほど反応して、油の切れた人形が如く、ギシギシと音を鳴らして振り向いた。この時の緊張は今までのギフトゲームでのそれと比べ物にならなかった。
「ナンデシチカサンハココニイルンデスカ……?」
「そりゃあ、白夜叉達の回復系の恩恵セットのおかげで歩いて帰ってくるくらいには回復したからさ」
「…ソ、ソウ。ソレジャサッキノハナシ一体どこまで聞いてたの!?」
「最後の辺りだけだぞだぞ、『三毛猫、私はね』って辺りか
「殆ど最初から聞いてたんじゃん!!!??大事なことはバッチリ聞こえていたわけじゃん!!?」
「まあそうだな」
「だからってそんなに堂々としてられるのッッッ!!!???」
珍しく声を荒らげて七花の体を包む包帯に手をかけた耀。軽く息切れを起こしていて普段からは想像もつかない様子だった。
「まあ何悩んでたかは聞こえてたけどさ、」
「……もうちょっと、配慮があっても、いいと思う」
息を整える間にいつもの調子を取り戻した耀に七花は言い放つ。
「お前ら──っていうか俺たちはコミュニティの再興が目的であって、その貢献度は実際二の次だろ」
言われてみれば至極真っ当で、耀が焦りの中で見失ってしまったものだった。単純であるがそれ故に否定ができず、耀は返答にどもってしまった。
「だ、だけど私はもっと強くならないとッ……!そうじゃなきゃ友達としての関係を維持できない!!」
「そういうのは考えないのが、お前のいう”友達”じゃないのか?」
「それは………」
「それにお前や飛鳥の力っていうのは十六夜のとは違って、どっちかって言えば大器晩成型なんだろ?今結果を求めてどうするよ」
七花の言葉は間違いなく正論で、それは耀にも分かった。だが、だからといって感情は別であって、理性は冷えていくのに反比例して思いはますます熱くなっていった。
「私は今、欲しいの!!せっかく出来た友達を失いたくない!!!」
それが偽らざる春日部耀の本音だった。
いくら周りに動物の友達がいたからといって、どうあっても、どこまで行っても彼女とは種族も価値観も住む世界もまるっきり違っていた。そしてようやく得た人間の友達。それを失ってしまうと焦燥してしまうのも無理からぬということだった。
「そんな耀に朗報だ。明日の収穫祭に前夜祭も含めて全日程に参加できる権利をやる」
「………………………………え?」
「なんでも白夜叉が手に入れたものらしくてな、お前に渡しておくから後はよろしく頼んだぜ」
「……ど、どうして私に!?」
「そりゃ、耀が一番幻獣とか合ってるだろ。南側は幻獣が多いらしいし、俺はこんなんだし」
そういって七花は手足を広げて見せた。
ここまで担ぎ上げられてしまっては今更降りるという選択は、耀にはなかった。
「分かった。この機会最大限活用してくるから。楽しみにしてて」
そう高らかに告げ、耀は前を向いて走り出した。