感想待ってます。
「ジン坊ちゃーん！新しい方を連れてきましたよー！」
その声にはっと顔を上げたのは、『ノーネーム』リーダー、ジン=ラッセルという少年だった。ジン達のコミュニティが崖っぷちにあるのは、ジンがリーダーを名乗っていることからもわかる。
そして今日は、コミュニティの現状を打破し得る人材の確保を黒ウサギに頼んでいた。黒ウサギの後ろには女性二人が歩いていた。
「お帰り、黒ウサギ。そちらの女性二人が？」
「はいな、こちらの四名様が─────え、あれ？あと二人いませんでしたっけ？ちょっと目つきが悪くて、かなり口が悪くて、全身から”俺問題児”ってオーラを放っている殿方と、やる事なす事全部めんどくさそうな着物の殿方が」
「ああ、十六夜君なら”ちょっと世界の果てを見てくるぜ！”と言って駆け出して行ったわ。あっちの方に」
飛鳥の指した先には断崖絶壁がそびえ立っていた。黒ウサギはウサ耳を逆立てて、
「な、なんで止めてくれなかったんですか！」
「”止めてくれるなよ”と言われたもの」
「ならどうして黒ウサギに教えてくださらなっかったのですか！？」
「”黒ウサギには言うなよ”と言われたから」
「嘘です、絶対嘘です！実は面倒だっただけでしょう、お二人さん！」
「「うん」」
「そ、それではあの何でもかんでもめんどくさそうにしている方は！？」
「………そう言えばいつからいなかったかしら？十六夜君が駆けていった時にはまだいたはずだけど」
「………気付かなかった？私が？」
二人揃って七花がいなくなったことに気付いていなかった。
地面に手を付き、崩れ落ちた黒ウサギとは対照に、ジンは顔色を変える。
「た、大変です！”世界の果て”にはギフトゲームのために野放しにされている幻獣が」
「幻獣？」
「は、はい。ギフトを持った獣を指す言葉で、特に”世界の果て”付近には強力なギフトを持ったものがいます。出くわせば最後、とても人間では太刀打ち出来ません。」
「あら、それは残念。もう彼はゲームオーバー？」
「ゲーム参加前にゲームオーバー？……_斬新？」
「はあ………ジン坊ちゃん。申し訳ありませんが、御二人様の御案内をお願いしてもよろしいですか。」
「黒ウサギはどうする？」
「問題児二名を捕まえて参ります。──”箱庭の貴族”と謳われる黒ウサギを馬鹿にしたことを、骨の髄まで後悔させてやります」
そう言うと、黒ウサギの髪が紅く染まり、
「一刻程で戻ります。皆さんはゆっくりと箱庭ライフを御堪能ございませ！」
弾丸の様に跳び去っていった。
「………。箱庭の兎は随分速く跳ねられるのね。素直に感心するわ。」
「ウサギ達は箱庭の創始者の眷属。様々なギフトの他に特殊な権限を持ち合わせた貴種です。彼女なら余程の幻獣に出くわさない限り大丈夫だと思いますが………」
その時、近くの茂みから双頭の獅子が現れた。
あまり突然であり、ジンは圧倒され、飛鳥は抵抗を試み、春日部は自身の嗅覚が利かなかったことにパニック仕掛けた。そんな緊張感の高まった場を、
「よっこいしょ、と。どうしたそんな抜けた顔して？」
七花がぶっ壊した。七花は抱えていた獅子を地面に下ろした。
「し、七花さんがこの獣を倒したのかしら？」
「お、オルトロス！？そんな馬鹿な！？」
「………私の鼻でも気付かなかった。説明して欲しい」
「面倒だな、後にしようぜ。腹減ったんだ、なんか食いたい。」
「”話なさい”！！」
「飯の時に話すからそれでいいだろ……」
「え？」
久遠飛鳥は霊格の自分より低い者を支配することが自然だった。しかし、今目の前の七花はごく自然にその支配から逃れた。
このことは飛鳥を驚嘆させた。
「なあ、お前が仕切っている奴なんだろ？さっさと飯をくれ。こっちはいきなり呼び出されて吃驚してんだ。」
ったく、いきなり湖落ちるわ、獣に襲われるわ。散々だ、と若干イライラした七花の声にジンは、
「そ、それでは昼食をとりましょうか。あ、オルトロスは持って来ていただけませんか、確か害獣と指定されていた筈ですから……」
「まあ、いいけどよ」
こうして、四人は箱庭の門をくぐった。
それを見ている影に誰も気付かなかった。七花を除いて。
四人と一匹は身近にあった”六本傷”の旗を掲げるカフェテラスに入ると、猫耳の少女が出て来た。
「いらしゃいませー。御注文はどうしますか？」
「紅茶二つと緑茶を二つあと軽食にコレとコレと」ニャー
「はいはーい。ティセット四つに猫まんまですね」
猫まんまなんて頼んでないと七花は思ったが、店員はどうやら猫の言葉が分かるようだ。
どうやら、耀のギフトとやらは貴重なものらしい、という所まで七花が理解していると、
「おんやぁ〜誰かと思えば東区画の最底辺コミュの”名無しの権兵衛”のリーダー、ジン君じゃないですか。今日はオモリ役の黒ウサギは一緒じゃないんですか？」
2ｍを超えるさんどばっぐ（いくら殴っても構わない、イライラを紛らわすもの、と否定姫から聞いた）があるなぁ、と七花は思った。
どうやらこの変態はジンの知り合いだったらしく、気軽にしかし蔑みながら近寄って来た。そして、ジン達のコミュニティが如何に崖っぷちで、環境が悪いかを述べていた。
終いには、三人に勧誘を始め出した。
どうやら、この獣人は七花達の勧誘が目的だったらしいが、
「結構よ。だってジン君のコミュニティで私は間に合っているもの」
飛鳥の一言に切り伏せられた。彼女は何事も無かったかの様に耀と話し始めた。
「春日部さんは今のどう思う？」
「別に、どっちでも。私は箱庭に友達を作りに来ただけだもの」
「あら意外。じゃあ私が友達一号に立候補していいかしら？私達って正反対だけど、意外と仲良くやっていけそうな気がするの」
「………うん。飛鳥は私の知っている女の子とはちょっと違うから違うから大丈夫かも」
さんどばっぐ、ことガルドは相手にされていないことを取り繕う様に咳払いした。
「失礼ですが、理由を聞かせてもらっても？」
「私、久遠飛鳥は裕福だった家も、約束された将来も、おおよそ人が望みうる人生の全てを支払って、この箱庭に来た。それを、慇懃無礼に上からものを言われて魅力を感じると思ったのかしら。だとしたら、身の丈を知った上で出直して来て欲しいものね、このエセ虎紳士」
「まあ、コミュニティってやつが悪い状態なのは分かってたしな。じゃなきゃ、俺たちを呼んだりしないだろ。ついでに言うと、俺は後ろをコソコソつけてくる奴なんか所有者に選ばねぇーよ」
ガルドは怒りに体を震わせていたが、恐る恐る言い出した。
「お………お言葉ですがレデ「黙りなさい」！？……！？？」
「私の話はまだ終わってないわ。貴方からは聞きださなければならないことがあるもの。貴方はそこに座って、私の質問に答え続けなさい」
ガルドは勢いよく椅子に座り込んだ。
そこからはガルドの悪行が詳らかにされた。ガルドは飛鳥の質問に、滝のように汗を流しながら従順に答えた。
”コミュニティを賭けたギフトゲームを行うために各コミュニティから子供を攫い、彼らを食い殺している”ことを。
そうして、飛鳥が指を鳴らすと、ガルドの体の自由が戻った。そして、飛鳥に襲いかかろうとした所を耀に押さえ付けられた。
そうして、飛鳥は悪戯っぽい笑顔で提案した。
「私達と『ギフトゲーム』をしましょう。貴方の”フォレス・ガロ”存続と”ノーネーム”の誇りと魂を賭けて、ね」
いい加減なんとかしたい。
予定では、白夜叉様の所までいくつもりだったのに
テンポ悪くてすいません、直したいんですが……(T ^ T)