「それで一体なんで急にアンタみたいな偉い奴が俺なんかに興味持ったんだよ?」
「オイオイ、謙遜は美徳だが過小評価は良くないぜ?」
武御雷は人を食った様な顔で言った。その様子がどこか四季崎記紀に似ていてややげんなりとなったが、相手は気にせず続けた。
「理由は簡単さ。白夜叉と飲んでたらおまえさんを見ちまったんでな、まあ言っちまえばその剣技に魅せられたのさ」
「そいつは光栄な話だがな、今は合宿中なんだ。予定の空いてる日に出直すって考えはなかったのか?」
七花が答えると武御雷は一瞬きょとんとした目になり、その後堪え切れないように大きく笑った。
「くっ………ッハ 、ハーハッハハハハ!こいつは面白いな!!俺から出向いて来いなんて言われたのいつ以来だよ、ええ!?」
「アンタのことなんか俺が知っている訳無いだろ。それでどうするんだよ?帰ってくれるのか?」
「こんなに俺を昂らせてハイサヨナラはないだろ。………そうだな、全く期待なんかしちゃいなかったがこいつら使っておまえさんを鍛えてやるさ」
興奮していた瞳を少し細めてサンドラ達を横目で窺った。サンドラはその視線にびくりと肩を震わせたが何も言わずにただ俯いているだけだった。実際のところ、武御雷はサンドラの持つ可能性に気付いてはいた。だが、それは彼の食指の伸びるものではないと感じ取っていた。
故の無接触だった。そしてそれは七花の癇に障った。気が付けば武御雷の意図していない”挑発”に乗っていた。
「お前の目的は俺じゃなかったのかよ?だったら他の事になんか気を取られてんじゃねーよ」
「こいつは失敬。それもそうだな。お前さんは俺が直々に見定めてやるよ、俺が創るに相応しい素材かどうか」
「それならいいぜ、受けてやるさ。ただしその時あんたが八つ裂きになってなきゃいいがな」
「かはは、まあなんであれやる気になったんならいいさ。じゃなきゃこっちが白けちまう。──それじゃあ試練《ゲーム》を始めようか」
それは試練とは名ばかりの、紛れもない”決闘”だった。
『ギフトゲーム 一騎当千
その武を持って己の覇を示せ
主催者側 武御雷御神
挑戦者側 鑢七花
主催者側勝利条件 挑戦者の敗北又は降伏
挑戦者側勝利条件 主催者の敗北又は降伏
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の元、ギフトゲームを開催します。
”豊穣の御社”印』
ちょうど七花が契約書面を読み終えた時を見計らったかのようなタイミングで武御雷が話しかけてけてきた。
「これなら合宿とやらの邪魔にはならねえだろ。俺はお前を試せるしお前さんは俺と闘える、正に一石二鳥だ」
「ああ今更文句はないぜ。そういう訳だからさちょっと待っててくれよ」
サンドラ達に向かってそう言うと七花は武御雷と共に応接間を出た。
武御雷はだらりと刀をぶら下げて構え、七花は自然体で相対していた。
当然の事ながら七花と武御雷の間には隔絶された絶対的力の差があった。神様と人間なのだ、寧ろ無い方がおかしい。そしてそれを感じ取れないほど七花は鈍くない。むしろかなり的確に把握していたと言ってもいいだろう。
「さてと、いっちょ派手にやろうぜ鑢七花!!どうか早々にち散ってくれるなよ!?」
だが、それは戦いを止める理由にはならない。
「派手にいくのには賛成だ、何せ見物人もいることだしな。俺の斬れ味見せてやるから掛かって来いよ」
剣士は口角を上げ、無刀の剣士は全くの無表情で、申し合わせたかのように二人は剣檄を交わした。
剣を交わすたび、更に武御雷の表情は喜色を帯び、剣圧は竦ませるほど増していった。
「かはははははは!!!!!いいなサイコーだ!!」
「そいつはどうも。だけど俺はあんたがまだ本気じゃ無さそうだから戦々恐々と言ったところだぜ」
「なんだよ気づいてたのか、だがそれはお互い様だろ。お前さんもまだまだ上がんだろ!?もっと来いよ!そんで俺を楽しませろ!!!」
「……………あんたも大概だな。ウチの問題児に似てるぜ」
戦闘狂と言っても差し支えない獰猛な笑みにやってられないとばかりに七花は溜め息をついた。そして聞いた。
あー駄目だ。抑えてられねぇ
─今までの危機感などは生温いと言う程鳴り響く第六感
だからよ。頼むから……
─全神経が尖っていき、感じるまでもなく理解できる泡立っている肌
……コワレテクレルナヨ?
─告げられた言葉の理解など二の次に、取るべき選択は……
刹那の逡巡の後音すら置き去りにして閃光が全てを覆い隠した。
待ってくださっていた方ありがとうございます。更新遅くなってすみませんでした。
本当は一週間後程開ける位だった筈なのに………もう何も言うますまい………(泣)
言い訳はさておいて、感想欄にて批評、質問などは待ってます。
最後に本当に遅れてしまってすいませんでしたァァァ!!<m(__)m>