更新が不安定で申し訳ないです。今後もこんな感じになりそうですが、それでもと読んで頂けたらこれ以上のことはありません。
後今回オリキャラが出てくるので、苦手な方はごめんなさい。
それではどうぞ
時は少々さかのぼって、合宿一日目。
白夜叉はとある人物と会っていた。
その人物とは日本神群の1柱、武御雷(タケミカヅチ)神だった。彼は白夜叉の飲み友達であり 、古くからの付き合いだった。
「しかし暇をしていたとはいえ、まさかおんしが来るとは予想出来んかったぞ」
「まあ、最近は下層《ココ》に来ることもめっきり無かったからなぁ。あの嬢ちゃんのコミュニティが潰されてからは下層もかなり味気なくなったのもあるな」
「今の”ノーネーム”はなかなかに面白い人材がおるし、再建もそう遠いことでは無かろう」
「あーそれなら俺も小耳に挟んだぜ。元五桁とやり合ったり、ルーキー魔王を倒したりしたんだろ?」
「ほう?おんし存外詳しいのう?」
思いの外、武御雷が事情通だったため白夜叉は理由を言うように促した。武御雷も酒の肴にとばかりに話を進めた。
「最近ウチに面白い鍛冶士が来てな、来ただけでコミュニティには入らんかったが。そんでそいつからちょいちょい聞いてたんだよ。人間としちゃあ、というか人類種以外が相手でも中々のモンを打てるだろうぜ。全くあいつも一端の実力があるんだから鍛冶一本に搾りゃあいいもんを……」
「職人気質のおんしがそこまで言うとはにわかに信じられんのう……。一体何者なんじゃ?」
「さぁな。詳しいことは聞かなかったしな。恩恵やら加護やらを与えようかとも考えたが要らねえって言われたしな。一つ言えるとすりゃ、そいつは今どこのコミュニティにも属してねえってことぐらいだな。じゃなきゃ俺の耳にも入るだろうしな。」
「オイオイ、まさかおんし職人としての恩恵を与えるつもりじゃったのか!?しかも今は無所属とな、儂そやつに超興味あるんじゃけど!!?」
白夜叉は大層興奮していたのにも理由がある。
武御雷は箱庭でもよく知られたまさに職人の中の職人とでも言われる人物だったのだ。つまりは余程認められない限り、気難しい男というのが箱庭での共通認識だった。
そんな男を認めさせた、それも人の身で。白夜叉がそんな人物に興味を持たない訳が無い。武御雷は「そういう訳でノーネームの事は知ってるってこった」と締めた。
二人は酒を酌み交わしつつ、旧型のブラウン管テレビのようなものを立ち上げ、合宿の様子を見た。
そこに映っていたのは一人の人間に大勢の人間と火龍が飛びかかって行く光景だった。
「オイオイ、白夜叉よう…………これは一体どういうこった?合宿って言ったよな。俺にはあの坊主へのシゴキにしか見えねーんだが?」
「七花には問題なかろうよ、あの程度であればな」
「へえ?随分高く買ってるんだな、なんだよあいつに負けたりとかしたのかよ?」
「仏門に霊格を奉納しておるとはいえ辛くも勝利、と言ったところかのう」
「おおっマジか!?白夜叉にいいとこまでいったってこたぁ楽しめそうな奴だな…………オイ」
武御雷は冗談で聞いたことが事実を掠めていた事を知り、期待を更に大きくして画面に視線を移した。
その途端の事だった。
和やかだった空気を武御雷の一言が一瞬で霧散させた。武御雷の目はこの一瞬で工房にいる時の眼差しへと移っていた。白夜叉は武御雷の変化に首をかしげていたが、彼の気にも止まらなかった。彼の意識は唯一点、和装の男に向けられていた。
(素材は最高、土台も申し分ない。磨きあられるだけの伸び代も充分、か…………いいじゃねえか!コイツは刀だ。人間だとかそういう括りじゃなくてもっと根本的なところ《・・・・・・・・・・》でだ。ハハ、鍛え甲斐のある良い刀だ!!)
武御雷がそう思っていた頃には白夜叉に話を始めていた。久しく見なかった逸品に彼もまた白夜叉とは違うベクトルでだが、心高鳴っていたのだ。
場所を合宿のある白亜の宮殿に立ち返る。
合宿三日目。
昨日のサンドラとの闘いで新たに得た自分の力を確かめるために、七花は恒例の鍛錬を早めにはじめた。
一つ息をつき、目を閉じる。
イメージするのは薄い不可視の刃。
空間切り裂く刃を己の肉体を操るように掌握するッ!
振るった腕に沿って三メートル程度離れた位置にあった気を一文字に斬った。その結果に満足したように少し笑って緊張を解いた。
「虚刀流、橘。離れた所の敵を斬る刀っていうのはあんまりにも安直だったかなぁ」
一人つぶやく七花だったが、気を取り直して鍛錬を続けようと
「七花さーーーん、お客さんだそうですよーーー!!」
「…………………一体なんだってこのタイミングで。……折角良い感じだったのによ」
七花がどんよりとしたオーラを纏って振り返ると、汗を掻きながら駆け寄って来る火蜥蜴ことドグリがいた。そんな彼の必死な様子にとりあえず険を収めた。とりあえず客と言われて思い浮かべるのは白夜叉ぐらいだったが、あの駄神ではここまで慌てはしないだろう。
「(それじゃあ俺が全く知らない奴なのか?)おう、今すぐ行くからお前はゆっくりしてろよ」
こうしてやたらと緊張した合宿メンバーを尻目に、七花は応接間に通された。中には、ペルセウス副リーダーのペリアスとサラマンドラのサンドラ、マンドラと見知らぬ男がいた。
部屋に入る前から空気が重かったが、中は段違いだった。三人は顔を俯かせており、謎の男はソファに胡座をかき、目を閉じ腕を組んでコミュニケーションを一切とろうとはしていなかった。七花を驚かせたのは、立場が上の者に対しも場合によっては食ってかかるマンドラが脂汗を流して俯くどころか膝に頭をこすりつけ、謝罪しているかのように見えたことだった。精神の強度は中々のものであったので七花も感心していたのだが、ここに来るまでに何があったのか聞きたいような聞きたくないような気分にさせられた。
そんな、かつての旅でも体験したことの無いような状況に七花は誰にも聞こえない程度の大きさでため息と共に吐き出した。
「──面倒だ」
その声に反応してこの空気を作った犯人が自分のしでかしたことになんて無関心に顔を上げてニカリと笑った。
「よう、待ったぜ。そんじゃ行こうか」
「何勝手に決めてんだよ……。アンタの所為だろ、こんな雰囲気になってるの。とりあえず説明してくれ、あとアンタ誰だよ?」
「そーいや自己紹介がまだだったな。俺は”葦原中国”連合がコミュニティ”豊穣の御社”が長武御雷だ。よろしくな」
「”ノーネーム”所属、虚刀流七代目当主鑢七花だ。」
それが、人であるようで刀である男と、刀匠であり武神でもある職人との初めての邂逅だった。
「それじゃ自己紹介も終わったところで行くか、七花!」
「ちょっと待て、話をしようぜ話を」
武御雷の第一印象はさておき、鑢七花の武御雷に対する第一印象は”人の話を聞かない奴”というものだった。
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