問題児達と一緒に虚刀流もやって来るようですよ?   作:徒釘梨

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すみません!ちょっと遅くなりました。

急いだ為、変なところとかあるかもしれません。感想で御指摘待ってます!


第二十五話 虚刀流、驕りを捨てる

合宿二日目。

 

早朝から七花は刀を振るっていた。勿論比喩であり、実際は手刀や足刀を繰り出しているに過ぎないが。七花にとっては日課であり、惰性で続けることの無い唯一のものだった。

 

その風景に驚かされているマンドラがいた。

七花のめんどくさがりな性格からは考えられない──という意味ではない。

動きにキレがある、昨日の事を考えればありすぎるのだ。そして昨日は目の前の見蕩れてしまうほどの技を見せてはいなかった。

 

 

マンドラは思わずギリッと奥歯を噛み締めていた。

七花に全力を出させられなかった事を不甲斐なくまた悔しいと感じていた。

 

(こちらは大勢で挑んでおいて、相手はまだ実力の全てを見せないだけの余裕があるだと!?ふざけるな。これでは、先代の頃までの栄華を取り戻すなど夢のまた夢ではないかッ!)

 

マンドラはすぐに踵を返し、同志の元へ帰っていった。

 

 

 

そんな事は露知らず、黙々と鍛錬を続けていた七花の素振りも佳境に差し掛かっていた。

さすがに奥義を繰り出す訳では無かったが、放たれた連続技は武の道の者なら誰もが憧れるようなキレと鋭さがあった。

 

「ふふふ、また腕をあげたのではないか、七花よ」

 

故に箱庭屈指の強者たる白夜叉が惹かれてきたのも無理からぬことだと言えるだろう。

当の本人は表情をげんなりとしていたが。

 

「なんだ、あんたかよ。全くこっちは真面目に鍛錬やってんだぜ?冷やかしなら他所でやってくれ」

「そうぶすっとした顔をするでない。これは本心からのものだぞ、もっと誇らしげにしても良いじゃろうて」

 

是非とももう一度死合たいものじゃ、とチラチラ七花を見てくる白夜叉。

それを七花見て更に渋面を深くした。内心では、コイツある意味彼我木輪廻より面倒な奴だなぁと考えていたからだ。いっそ言ってしまおうかとも考えたが、むしろさらに面倒になりそうな予感がしてやめた七花だった。

 

閑話休題

 

「んで、結局の所あんた何しに来たんだ?再戦のお誘いが目的って訳じゃ無いだろ?」

「私としてはこちらもかなり重要なんじゃがのう。……まあ良い。本題と言えば、朝食ができておるので迎えに来たのじゃよ。」

「わざわざ教えに来てくれたのか。助かるぜ。」

「よいよい。私としても、自慢の料理人達が腕によりをかけたものを是非とも食べて欲しいからの」

 

そう言って白夜叉は誇らしげに胸を張った。

七花は周囲の匂いを嗅いでみたが、確かに食欲をそそる芳ばしい匂いが漂っていた。

七花と白夜叉は自然と食堂に足を進めていた。

 

 

 

 

 

食堂に着くと、七花は空気が変わったのを感じた。悪意や害意は少ないが、闘気や覇気は昨日までとは比べ物にならなかった。肌がひりついて、神経が鋭くなる感覚に七花は身を委ねた。

 

いつの間にか七花は臨戦態勢に入っていた。

 

構えこそとっていないが、七花は既に食堂内の配置や構造を把握し、いつでも迎撃可能な体勢を整えていた。

その状態のまま朝食を受け取って食べていたが、緊迫した空気は続いていた。

 

その空気に見かねてか、ペリアスが七花に近づいて来た。七花はその立ち振る舞いに害意がないのを感じ取り、緊張を緩めた。それを合図に七花はこう切り出した。

 

「一体なんなんだ?俺が来た途端、みんな身構えちまうし。お陰でこっちは針の筵だったぜ」

「それについてはこちらも済まないと思っている。しかし昨日あれだけ完敗したのだ、多少感情的になるのも理解して欲しいのだ」

 

七花は、分かった、と答えてはいたが理解はしていなかった。

何故なら七花は基本的には負けが無く、あったとしても鑢七実《バケモノ》か凍空粉雪《ド素人》という対極的なものぐらいだったため、負けて悔しいという感情は薄かったからだ。

加えて虚刀流の根本であり、主軸たる感情の欠落によって、七花はペリアス達の内心を共感できてはいなかった。

 

これらのことから、七花の返事は非常に薄っぺらいものとなってしまい、そしてそれを合宿メンバーが理解して更に煽ってしまっているのだが七花はそれに気づかない。となりの白夜叉は勿論笑いを全力で堪えていた。

宣戦布告のような態度を取るメンバー達の空気も七花には暖簾に腕押しだった。そのシュールさが白夜叉の腹筋を崩壊に導いていた。

 

 

 

 

 

その事で七花は痛い目を見るのはもうすぐの話だった。

 

 

 

 

 

 

「ったく!!なんだよみんなしつこいぞ!!」

「澄ました顔しやがって!!なめてんじゃねーぞ!!」

「昨日の恨みだ!しっっっかり受けろよオオオ!!」

「いいからさっさとくたばれや!!」

「さらっと恐ろしいこと言ってんじゃねーよ!?」

 

昨日までとは別人じゃないかと七花は苦虫をかみつぶしたような顔をした。

昨日七花が1000人以上の敵を倒せたのにも理由があった。向かってくる敵をほぼ一撃で、多くとも三発決めるまでには気絶に持ち込んでいたからである。前提として七花の鍛え抜かれた技術と体力あってのものだが。

 

敵を攪乱し、防御の薄くなった部分を叩き、敵が集まってきたら離脱してまた攪乱する。

 

この繰り返しで昨日は勝利したのだが、今日は勝手が違った。なにせ、初めから囲まれた状態から訓練を開始したからだ。

 

(おかしいと思ったんだよ。宮殿を背にして始める所とか。…………でもまさか開始と同時に門をぶち破って援軍が来るとか普通考えねーよ)

 

前後左右はもちろんのこと、上にも羽の生えた靴を履いた火龍《・・》がブレスを今か今かと待ち構えている。七花は完全に包囲されていた。

そして何より、戦士たちの意識の高さが七花の予想以上に高かったことが七花の誤算だった。昨日は一発目でのされていた者たちが、今日は三発入れてもまだ倒れない。気迫だけでなんとか戦っている者も少なくない。

迂闊だったと猛省している七花だった。驕りも多少はあったかもしれない。

 

 

(だからこそその誠意にこっちも全力で答えなきゃな)

 

それは唐突だった。

 

 

 

 

ぞくり

 

 

 

包囲して優位に立っているはずの彼等に悪寒が走った。目の前の男は何をしたわけでもない。

しかし、一瞬体がこわばってしまった。

司令官たるペリアスやマンドラにも、不可視のギフトをつけた者たちも一瞬体が固まった。

 

我に返って指示を出そうとするが、もう遅い。

 

前線は轟と嵐が吹き荒れた。

 

まるで笑い噺のようにかなにかのように人が宙に舞っていた。

威圧して硬直させ、一瞬の隙を突き、戦線を瓦解させる。

 

ペリアスは不可視のギフトをつけた者たちに奇襲をするように伝えるが、前線は乱戦状態で、すぐにはたどり着けなかった。

その事が前線の崩壊に繋がった。

 

 

たどり着いた頃には、大方の兵士達は打ちのめされていた。その事実に驚愕したが、すぐさま集中をし直した。

そうして七花と目が合った《・・・・・・》。

皮膚が粟立つのを彼らは止められなかった。

 

 

不可視のギフトだろうと、火龍だろうと、関係なく七花は薙ぎ払った。

 

二日目、午前の部

 

生存者 鑢七花、浮遊のギフトを持った航空部隊23名

 

 

 

 

流石の七花も空の敵までは撃墜できませんでしたとさ。




前回、前書きを愚痴こぼしのように使ってすみませんでした。
不快になった方がいましたらここでお詫びします。


さて、次回も一週間後を目処に更新するつもりです。
では( ̄^ ̄)ゞ

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