はじめにすみませんでした。m(__)m
自分でもここまで長く空けることになるとは思っていませんでした。
大学の時間外講座やら、自動車学校やら、帰省&法事の連続で予定より大きく時間がなくなってしまいました。
久しぶりの投稿でおかしな所があるかもしれないので、その時は感想にお願いします。
第二十四話 虚刀流、火龍、英雄………あと白ロリで合宿開始
ペルセウスの所有するゲーム盤の一つ、白亜の宮殿。
普段なら静かに星を眺めるのには絶好の場所だが、今日は違った。鋭く響く剣戟と地響きを思わせる幾多の足音。中には炎が立ち昇る始末。
その中で山のように屍を築く和服の男──七花がいた。もちろん屍と言っても気絶しているだけなのだが。その中には人間と火蜥蜴のものが入り乱れていた。
「隊列を組め!!後方から回り込んでブレスを仕掛けろ!!!」
「重装歩兵部隊は包囲網を固め、奴を討ち取れ!!」
サラマンドラ、ペルセウスの両軍の指示が飛ぶ。兵士達は指示に沿って忠実に動き、七花を追い詰めんとする。
七花はその対応の速さに内心舌を巻いていた。
が、負ける気など微塵も無かった。瞬時に層の薄い部分に斬り込み、十数人気絶させ、再び距離をとった。
彼等は崩れた隊列を即座に補修しつつ七花に迫ってくる。統率の取れた動きであったが人数が減った分本来の効果を発してはいなかった。
七花はその隙を見逃さずに、その戦士達に駆け出した。
事はペストを破ってから数日後にまで遡る。
七花が特に理由も無く街をぶらぶらと歩いていると、
「あ、あのっ!!」
「ん?俺に何か用か?」
「じ……自分を弟子にしてください!!」
後ろから突然知りもしない火蜥蜴から声をかけられ、しかも弟子入り希望宣言に七花は硬直した。火蜥蜴の男が七花の体捌きの凄まじさに感動した、自分の未熟を知り弟子入りを決意した、など聞きもしないのに喋っている間に七花は自身と目の前の相手との接点を思い浮かべた。
(この街での知り合いなんて数えるくらいしかいないし、誰なんだこいつ?”サラマンドラ”って言ったらそれこそリーダーと副リーダーと後は……………ってもしかして)
「俺に飯とか会議の時間を教えてくれてた……」
「はいドグリです!」
「んじゃドグリ。はっきり言っとくぞ、断る。理由はいくつかあるが一番は俺の虚刀流を誰かに伝えるつもりがないからだ」
「どうしてですか!?あれだけ凄い武術なら箱庭でも名を上げられると思うんですけど」
七花はグイグイくる目の前の人物に嫌そうな顔を一瞬したがすぐに溜息と共に吐き出した。
衆人環視の中であまり目立ちたく無かったが、一刻も早くこの会話を終わらせたかったという思いもあった。
「…………虚刀流はな人体をあらゆる武器として想定して作られた剣術だ。その為の認識を作るのに大人になってからじゃ違和感が拭えねーんだよ」
半分は本当だ。
しかし重要なのはそこではなく、虚刀流の基本的な理念として『ただ斬れる刀であれ』と言う言葉にある。これは虚刀流の継承者は『考えるな、感じるな』という事であり、要は心を持つなという事である。
からくり人形のような人間など七花は育てたくもなかったし、そうでなくとも自分にまともに教える事が出来るとは思ってもいなかった。天童の女剣士に教えを受けた時に自分には無理と
感じていた事でもあった。
七花のきっぱりとした言葉に説得の余地が無いことを悟ってか、火蜥蜴の男も俯いてしまった。それを見て七花は僅かではあるが顔をしかめた。以前いた世界ではこのように弟子入り希望など無く、むしろ怯えさせることが常だった。そのためだろうか、次のような一言を言ってしまったのは。
「………まあ、折角だ。虚刀流は無理でも訓練ぐらいなら付き合ってやるよ」
ドグリはばっと顔を上げて七花に迫った。
嘘じゃないですよね!?聞きましたから、言質は取りましたよ!!など先程までの鬱々とした雰囲気を吹き飛ばし、矢継ぎ早に喋りかけた。七花は日取りはいつならいいかなどと聞かれていたが全て適当に返して、現実逃避を進めていた。
あまりの変化に七花は、面倒だと溜息と共に絞り出した。口角を僅かにだが緩ませて。
翌日。
「…………なんじゃこりゃ」
七花が早くも後悔し始めているのも無理なかった。目の前には火龍や亜龍がひしめき合っていたからだ。その数およそ二百と言ったところだろう。
尾張城で数百数千を相手にしたとはいえ、この状況は七花も予想外だった。しかも集まった者の大半はサラマンドラの武芸者だった。あまりの騒々しさに身内であるサラマンドラから警備隊が出される程だった。マンドラを中心として集団を鎮圧し、解散させようとしていたが効果は薄かった。
集まった彼らの目的はやはり七花である。彼らが見たのは一部分であるとはいえ、七花の実力が並でない事は理解できていた。その為同じ高みを目指す一人の武道家として大半の者のがこの場所に来ていた。また黒死斑の魔王によって同士が殺されてじっとしてられないとの思いも拍車を掛けたのだろう。
しかしそのことを分かっていても、マンドラ達にも立場と守るべき秩序がある。このままでは暴徒化してしまう恐れを感じてか、マンドラは七花に一つの提案をした。
「鑢七花、また日を改めてはくれないか?ここではほかの住民達に迷惑をかける」
「………まあいいけどよ。それよりもここにいる連中が暴れだすような事はやめてくれよ」
そう言って七花は集団の中に向かって行った。
聞けば昨日話を持ちかけたドグリが吹聴して回ったのが原因のようで、純粋に憧れを持つ者とノーネームの者の名が上がる事を面白く思わない者達が集まった結果がこの状況だそうだ。
マンドラの指示で広場にいた者達は散っていったが、その顔は沈んだ者が多かった。マンドラも気付いていたのだろう。七花に正式な依頼として頼むように約束してこの場を別れた。
このやり取りを陰で聞いていた者がいた。
ペルセウスの副リーダーことペリアスである。
ルイオスのだらけきった生活のせいで部下の士気までダダ下がりになっていてきていた。
そんな周りの空気から逃れるため、ジャック・オー・ランタンに挨拶をしに行くという理由《いいわけ》で本拠を後にしていた。そんな中耳にしたのが『鑢七花とサラマンドラの合同訓練』と言う噂だった。
常識的に考えれば一笑に付していただろうが、部下の話からペリアスは七花の強さを知っていた。金髪の少年のようなギフトでの強さではなく鍛錬の末の強さに、憧憬や嫉妬する者もいた。
(あのギフトゲーム以降のコミュニティ内の鬱々とした雰囲気を解消するにはいい手かもしれないな…………そうと決まれば善は急げだッ!!)
行動を始めたペリアスはまずマンドラの下を訪ねて、自分達も一枚噛ませて欲しい旨を伝え、白夜叉に七花《エサ》を使って交渉した。
その結果、場所を"ペルセウス"が、費用(食費)をについて白夜叉が負担する形で話がついた。リーダー(笑)の代わりにコミュニティを支えていた副リーダーは伊達ではないのだ。
こうして、鑢七花、サラマンドラ、ペルセウス、白夜叉による合同訓練が執り行なわれることとなった。
そして話は冒頭に至る。
白亜の宮殿には闘争の跡だけがあり騒々しさは欠片も残っていなかった。
参加者1127名全員が七花によって気絶させられていた。休み無く七花を攻撃し続けたのにも関わらず、七花は的確に意識を刈り取り、七花が倒れるよりも"ペルセウス"と"サラマンドラ"の合同チームの全滅が早かった。
七花は久しぶりの戦闘に満足げな表情だった。
しかし、このあと戦士達の山を築いた七花を目覚めた参加者達から尊敬を通り越して崇拝をされていたのだがそのことに本人は気付きもしなかった。
訓練一日目、終了。
生存者
鑢七花
ちなみに白夜叉はこの光景を見て鳥肌を立てながら、舌なめずりしていたそうです☆
次回は一週間後の9月18日に更新する予定です。
こうでもしとかないと時間を作りそうにないんで…………
では感想、批評などあったら書き込んじゃって下さいませ((*゚Д゚)ゞ