問題児達と一緒に虚刀流もやって来るようですよ?   作:徒釘梨

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まず初めに、更新が遅くなってしまってすいませんでした!
理由は色々ありますが、割愛します。
これからもこういう事があるかもしれませんが、読んで下さったら嬉しいです。

ではゆっくりしていってください


第十二話 虚刀流、出会う

七花は走っていた。黒ウサギの殺気?にあてられて緊張感が高まって、感覚が鋭くなっていた。その為、普段は聞き逃すでろうとある出店の声も聞き取れた。

 

「へいらっしゃい。まさかこんな所で会えるとはな、鑢七花」

 

決して大きな声では無かった。しかし男の独特の雰囲気が七花の足を止めさせた。

声そのものに聞き覚えは無かったが、同じ言いぶりをとある忍びの里で聞いたことがあった。

 

「お前……四季崎記紀か!?」

「ご名答。流石は俺の残した刀だ」

 

七花は信じられない目で記紀を見た。記紀がここにいる事ではない、その格好にだ。

 

「あんた何やってんだよ……………」

「最初に聞くのそこかよ。見てわかんないか?はっぴに捻りハチマキ、極めつけの鉄板。どう見ても屋台のお兄さんだろう?」

「なんで鉄板焼きなんてやってんだ!あんた鍛冶士だろ!?」

「この世界に来てから色々と転々としててな、ぶっちゃけ路銀が足りねえんだよ。だから買っていかねーか?昔のよしみでよお」

「あんたとは敵同士だった筈なんだが、まあいい。おすすめをくれ」

「おお??買ってくれんのか?毎度あり。代わりと言ってはなんだが、いい事を教えてやるよ」

 

記紀の今までふざけた雰囲気だった表情が、真剣さを含んだものになっていたことには七花も気付いていた。

記紀は一呼吸おいて、心底面白そうに言った。

 

「なんでもな、此処に魔王が来るんだが、そいつら俺達の世界の住人を連れてくるようだぜ」

「おいおい、錆とか来られたらマジでやばいぞ。洒落にならねーじゃねか、それ。なんでそこまで分かってて公表しないんだよ?」

「そりゃあ、その方が面白いからだよ。当たり前だろ」

 

記紀は悪い笑顔でそう言った。

七花は呆れて溜息を一つついた。元々そんな所だろうと予想はしていた。むしろ魔王と他に来客が来ると分かっただけでも上等だろう。

どう考えていたら、注文していたオススメことたい焼きを記紀は渡してきた。すると思い出したように言った。

 

「そういや鑢七花、お前元の世界で面白いことなってんな」

「はあ?なんのことだよ??」

「その様子だと知らねーのか、いやお前が箱庭に来たからこそのあの歴史か…………。願ったものじゃあなかったが、これもこれで一興だな」

 

そう言うと記紀はくくく、と笑っていた。

話についていけない七花は不機嫌そうに表情を曇らせ、記紀は話を続けた。

「ああ悪い悪い………くくくっ。そー怖い顔するなよ、俺には戦闘力そんなに無いんだからよ」

「さっさと話せよ、どうでもいいんなら帰るぞ」

「そう急くなよ。………お前元の世界で神様もどきみたいな感じで信仰されるぞ、それも日本全土で」

「俺が神様?なんだそりゃ」

 

七花は首をひねった。

確かにとがめとの旅で名前が知られたが、悪名や日本一の称号なんかであって、神様なんてことは無かったはずだ。

記紀はそんな七花の戸惑いを楽しむようにして話を続けた。

 

「お前旅の途中で御剣寺燃やしてただろ。その時本殿の刀大仏も多少焦げちまったんだが、充分修復出来る程度の損傷だった。だが、仮にも闘将としての刀大仏がすすだらけだったら不味いと幕府は考えた」

「それで、この話にどう俺が関係あるんだ?今まで全く繋がりが見えないんだが?」

「そこで参拝者が減るのを恐れた御剣寺の奴に一つの提案をしたのがいた」

「提案??」

「そう、提案だ。闘将の仏とはまた別に一人の伝説の男のことを祀ってはどうかとな」

「おい……それって……」

「流石にお前でも分かったか?そう新しく祀ろうってのはお前さんのことさ、当時日本最強こと鑢七花サマ」

 

ニヤリと笑って記紀は告げた。最も、屋台の格好だったので決まってはいなかったが。

ともかく、七花はなぜそんな突飛な事が受け入れられたのかを考え、思い当たったことがあった。

 

「………まさか、その時了解した奴ってあの生き残りの坊主か!?」

「鋭いねぇ、ご明察。全く持ってその通りさ。どうやらお前さんたちに恩義を感じていたようだぜ、そいつ。同じ頃お前さんの行方が完全に消失した事も手伝ってか、聞き入れた坊主は寺の救世主兼守り神としてお前さんを祀ったそうだ」

「そんなことがあったのか………」

 

記紀の言ったことは確証は無かったが、言っている間に嘘をついていないことはなんとなく分かった為すんなり信じられた。

七花としては、姉を倒した結果おまけのような形で御剣寺を救ったことに悪名以外も広まっていたんだな〜と暢気に考えていた。

しかし次の一言でそんなものは消し飛んだ。

 

「これを提案したのは、俺の身内の否定姫って奴なんだから笑えるぜ」

「はあ!?あいつなんでそんなことしてるんだよ?俺確かお尋ね者だったはずだろ、そんなことしたら目立って逃げるなんて出来ないじゃないか」

「詳しくは興味なくてあんまり視てないが、どうやらお前さんを捨てたつもりは無かったようだぜ。そんで勝手に消えたから目立たせてみつけようとした、ってとこだろうな。」

「あの手紙は本当に別れの挨拶ぐらいにしか感じなかったぞ…………」

 

今日一番の大きな溜息をついた七花だった。

勝手にいなくなって観光名所の寺にあやかられるとは誰が思うだろうか。まあ否定姫の場合、嫌がらせの意味合いが大きそうなのだが。

 

「いつになっても目撃情報が出ないから、これじゃあ足りないと考えたのか歌舞伎や能なんかにお前を主役にしたものまで作っちまったからな。流石は俺の子孫だ」

「どんだけ嫌がらせに力入れてんだよ!?」

 

記紀はカッカッカと言って笑っていたが、七花は頭痛を堪えていた。

いくらなんでもやりすぎだろ、と七花は考えていたが、否定姫からすれば、城を一人で落とした奴に言われたくないだろう。

 

七花が悶々としていると、街の大きな時計塔がガラガラと崩れていった。

 

「……嗚呼これうちのコミュニティの奴がやったな。それじゃあ行くよ、それと美味かった。ごちそうさん」

「おおそりゃあ結構。しかしお前がコミュニティに属すなんてな。わからんこともあるもんだ」

「あんたが言うと胡散臭いとしか感じねぇよ。じゃあな」

 

そう言って七花は時計塔へと向かった。

案外こういうのも悪くないと思いながら。





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