問題児達と一緒に虚刀流もやって来るようですよ?   作:徒釘梨

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暇つぶし変わりにでもしてください。
あと、できれば感想下さい。待ってます。


第一巻 虚刀流、見捨てられて箱庭へ
第一話 虚刀流、異世界入り


「嗚呼、面倒だ」

 

 茶屋でそう呟く男は、左頬に十字傷、腰よりも伸びた髪、真紅に染まった着物と奇妙な格好であったが、男の独特の雰囲気が違和感を感じさせなかった。

 

 そんな彼ーー鑢 七花(やすり しちか)は先程旅の道連れから、

「あ、七花君。日本地図も作り終わったし、私就職先決まったからぁ。じゃあね♪」

 と、別れを告げられ目的を失ってしまってしまった。

 

「あいつ、いつの間に手を回していたんだ?まぁ、別にいいか。取り敢えずこれからどーするかな…………。この2年で日本も見るだけ見たしな」

 

 奇策士 とがめが死に、七花が家鳴幕府将軍 家鳴 匡綱(やなり まさつな)を暗殺してから一年間、七花は否定的な女性と共に日本地図を作る旅をしていたが、それも終わってしまった。道中で七花にゆかりのあった土地には訪ねていたので本格的にこれからの指針を決めることができなかった。

 

「一旦不承島にでも戻ろうかな………って、うん?」

 

 その時、空から手形が降ってきた。しかしそれは、この時代には滅多に見られない西洋式のものであったことが、七花に興味を沸かせた。しかもそれが自分宛のものであったら尚更だ。

 

「差出人は無しか…。錆の時みたいに、開けてみりゃ分かるか。」

 

 そう言って開けた手形には

『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。

 その才能《ギフト》を試すことを望むのならば、

 己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨て、

 我らの"箱庭"に来られたし』

 と、あった。読み終わると七花は一言呟いた。

 

「俺、少年って言えるような年じゃないと思うんだけどなぁ……。」

 

 この一言を最後に鑢 七花はこの世界から完全に消えた。

 

 

 

 次の瞬間、七花は空にいた。

 

 さすがにこれは死んだかもな、と考えていた七花だったのだが、落下地点に用意されていた緩衝材のお陰で大したダメージは受けなかった。湖に落ちて、ずぶ濡れとなることにはなったが。

 

「し、信じられないわ!まさか問答無用で引き摺りこんだ挙げ句、空に放り出すなんて!」

 

「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜコレ。石の中に呼び出された方がまだ親切だ。」

 

「………。いえ、石の中に呼び出されては動けないでしょう?」

 

「俺は問題ない。」

 

「そう。身勝手ね。」

 

 そう言って、育ちの良さそうな少女と、金髪で鋭い目付きの少年は岸へと上がった。続いて岸へ上がろうとする、猫を抱えた少女を見て、七花もそろそろ上がるか、と岸へと向かった。

 

「此処………どこだろう?」

「さあな。まあ、世界の果てっぽいものが見えたし、どこぞの大亀の背中じゃねぇか?」

 

 三毛猫を抱えた少女の呟きに少年は答えた。

 服をあらかた絞った金髪の少年は、濡れた髪を掻き上げて、尋ねた。

 

「まず間違いないだろうけど、一応確認しておくぞ。お前らにもあの変な手紙が?」

「その通りだけど、そのお前っての訂正して。──私は久遠飛鳥よ。以後は気を付けて。それで、そこの猫を抱きかかえている貴女は?」

「………春日部耀。以下同文。」

「そう。よろしく春日部さん。次に野蛮で凶暴そうなそこの貴方は?」

「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子揃ったダメ人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様」

「そう。取扱説明書をくれたら考えてあげるわ、十六夜君」

「ハハ、マジかよ。今度作っとくから、覚悟しとけ、お嬢様」

「最後に、そこの着物を着た貴方は?」

「俺は、鑢七花だ。よろしくな。」

「あら、貴方は十六夜君とは違ってちゃんと挨拶出来るようね。こちらこそよろしく。」

 

 十六夜はケタケタと笑い、飛鳥は顔をそむける。耀は依然として我関せずを貫いている。七花は面倒だ、と考え、空を仰いでいる。

 

 そんな彼らを茂みから見ていた黒ウサギは、

(うわぁ………なんか問題児ばっかりみたですねぇ………)

 彼らの非協力的な態度がありありと想像でき、黒ウサギは心の中で溜息をついた。

 

「で、呼び出されたはいいけどなんで誰もいねえんだよ。この状況だと、招待状に書かれていた箱庭とかいうものの説明をする人間が現れるもんじゃねえのか?」

「そうね。なんの説明もないままでは動きようがないもの」

「……。この状況に対して落ち着き過ぎているのもどうかと思うけど」

「……………暇だ。」

 

 呼び出した黒ウサギとしては、場がもっと混乱しているつもりであったため、出ていくタイミングを失ってしまったのだ。

 

 そんな時、ふと十六夜が呟いた。

 

「──仕方がねえな。こうなったそこにいる奴にでも話を聞くか?」

「あら、貴方も気づいていたの?」

「当然。かくれんぼなら負け無しだぜ?そっちの2人も気づいていたんだろ」

「風上に立たれたら嫌でもわかる。」

「俺は落下中から気づいてたんだけど、襲ったりして来ないから放っておいたんだけどな」

「………へえ?面白いなお前ら」

 

 黒ウサギは驚いて、茂みを揺らしてしまった。これ以上の不満が出てくる前に、と茂みから出た。

 

「や、やだなあ皆様。そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ?ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に御話を聞いていただけたら嬉しいでございますヨ?」

「断る」

「却下」

「お断りします」

「島にいた時にはよく食ってたなぁ〜。食ってもいいか?」

「あっは、取り付く島もない……って最後の方、黒ウサギは食べ物じゃないデスヨ!!?」

 

 両手を上げ、降参のポーズをとりながら黒ウサギは、四人を値踏みしていた。そしてこれからの接し方を思案して───

 

「えい」

「フギャ!」

 

 耀に後ろからウサ耳を引っ張られていた。

 

「ちょ、ちょっとお待ちを!触るまでなら黙って受け入れますが、まさか初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵耳を引き抜きに掛かるとは、どういう了見ですか!?」

「好奇心の為せる業」

「自由にも程があります!」

「へえ?このウサ耳って本物なのか?」

「………。じゃあ私も」

 

 十六夜と飛鳥も加わってさらに混沌となる場に七花は、

 お

「………嗚呼、面倒だ」

 

 そう言って、溜息をついた。




説明臭くなってしまいました。
感想待ってます。

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