M県S市杜王町在宅のとあるスタンド使いの日記   作:BサインからCサイン

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Take 6

□月H日

 

 

学校で仗助、康一、億泰の三人にどうやってスタンドの名前をつけたのか聞いてみた。

仗助たちは承太郎さんに、億泰は形兆につけてもらったらしい。

……真剣に自分で考えてた俺がバカみたいじゃあないか。

でも形兆は今杜王町にはいないし承太郎さんに頼むのも気がひけるんだよなあ…。

うん、もうちょっと頑張って考えてみよう。

とりあえず、なんか丁度いい名前がないか探してみることにしよう。

 

 

□月F日

 

 

今日、仗助と億泰と一緒に下校していたら、康一が「CAFEれんが亭」でソワソワしながらジュースを飲んでいた。

何をしているんだろうか、もしかして誰かと待ち合わせでもしているのか?

そんなことを考えていたら、康一のもとに綺麗な女子が現れた。

ま、マジかよ…まあ、康一は気のいいやつだし女子に誘われるのもあると思うけど……。

そして億泰に物陰まで引っ張られた俺と仗助は三人でその様子を偵察することになった。

億泰によれば彼女の名前は山岸由花子、億泰と同じクラスの女子らしい。

物陰から移動して二人の側の木の陰に隠れる。ああ、そういえば周りからの目が痛かったなあ…はたからみれば、カップルをのぞき見する不良に見えてたんだろうなあ。

そして案の定康一は山岸由花子に告白された。

さらに億泰が号泣、お前…そこまで泣くことかよ……いや気持ちはわかるけど。

なんでも山岸由花子は康一の”ひきしまった顔”と”勇気と信念を持った顔”に惹かれたという。

うん、億泰。お前の顔もひきしまってるけど今は静かにしてくれ。

そのあと山岸由花子が照れている康一に

 

「あたしのこと、嫌いですか?」

 

っていきなり言ったんだ。

びっくりしたね、まさかの急展開、昼ドラでも始まるのかと思っちゃったよ。

だけど好きか嫌いか急に言われて困りはてる康一。しかしそんな康一に山岸由花子が突然ぷっつん。

机を勢いよく叩きつけ、コーヒーがこぼれた。そしてそれを康一のせいにしてキレる。そのあと急に大人しくなって泣いてしまったんだけど……うん、怖いわ。

スタンドも月までぶっとぶこの衝撃。

見ていた俺たちの熱も完全に冷めてしまった。

号泣していたはずの億泰でさえ驚愕の表情だった。

とりあえず、俺達三人はこのことは康一の前で今日の話をしないことを誓った。

 

 

 

□月I日

 

 

仗助が”山岸由花子はスタンド使いなんじゃ?”と言っていた。

間田先輩の”スタンド使いは引かれ合う”という言葉を思い出したんだと思う。

と、いうわけで今日は康一の様子を一日監視することになった。

そして昼休み、康一が掃除当番で実験室を掃除しているところを俺は監視していた。

いや、正確には俺のスタンドが監視していたわけなんだけど。

これにはきっちりとしたわけがある。

二時間目のあと、三人で康一を監視していたところを先生に見つかったせいで不用意に動けなくなってしまったんだ。

だからスタンド使い以外には決して見ることのできないスタンドを使って監視することに。

でも仗助や億泰のスタンドは射程距離が短いから、監視させることはできない。

なので射程距離の長い俺のスタンドを使って監視させるしかなかったんだ。

話は戻って昼休みの実験室、一人で掃除をしている康一に予想通り山岸由花子が近づいてきた。

そして昨日の件を謝罪し、これからも普通の友達でいてくれますか?と仲直り。

これだけならよかった。実は、この話には恐ろしい続きがある。

そのあと、山岸由花子は”おわびの印”に”朝までかかって編んだセーター"をプレゼントした。

さらに”すてきな「愛」が見つかりますように”と自作のお守り。

そして最後に正月のおせちとも間違えそうなくらい豪華な”手作りの弁当”を康一に食べさせようとした。

……もう、この状況でわかっちゃったんだ。

山岸由花子(こいつ)は危ないやつだって。この瞬間ほど俺のスタンドが意志を共有できることを恨んだことはないと思う。

そんなに時間が経ったわけでもないけど。

そのときは、学級委員の人が来てくれたおかげでことなきをえたんだけど……。

そのあと、山岸由花子はその学級委員を襲った。

山岸由花子は勘違いして学級委員の女子に宣戦布告、さらに自分の黒髪______いや、『スタンド』を女子の頭に植え付けた。

黒髪は焼却炉に繋がっていて女子の髪と一緒に引火してしまった。

億泰の〈ザ・ハンド〉がいてくれなかったらどうなっていたか……。

でもね億泰、もうちょっと加減を考えてもよかったんじゃあないか?

女子の髪がはげちゃったんだけど……。

 

 

 

 

□月Q日

 

 

今日の昼休み、康一を含め俺たち四人はまだ使われていないプールで作戦会議?をしていた。

誰も周りにいないことを確認してからこっそり入ったから先生にも由花子にも見られてはいなかったはずだ。

会議の内容は『どうやって山岸由花子を康一から離れさせるか』だ。

ただあの思い込みの激しさと気の強さだ……仮にはっきりと「僕に構わないでください!」って言ったとしても、離れていかないと思う。

なんせ”一晩で手編みのセーター”だもんね、火に油を注ぐようなもんだよ。

みんなぞおーっとしてたね。その気持ちわかるよ、あの現場を見ていた俺だってすっごい怖かったから。

そして話し合った結果、『山岸由花子に康一を幻滅させる』という案に決まった。

俺と仗助、億泰の三人で山岸由花子の前で康一の”あることないこと(主にないこと)”を言いふらすことに。

正直勘弁してほしいけど、友達のためだ。

ちなみに考えたのは仗助だ、俺じゃあない。

この作戦の欠点は”山岸由花子が言いふらしたことを信じるかどうか”だけど……あいつのことだからきっと信じるだろう。康一に問いただしたときに康一が肯定すればいいだけだし。

それに康一のテスト(16点)もあるし、たぶん大丈夫だろう。

それにしても、16点か……あっちなみに俺は78点だった。

 

 

 

□月R日

 

 

今日は大変だった。

朝心配して康一の家に行ってみたら康一がいなかった。

同級生に聞いて山岸由花子の家にも行ってみたけど誰もいなかった。

これどっかに監禁でもされてるんじゃないか?ヤバくね?

というわけで三人で康一を探すことに。学校?今日はサボった。

康一の〈エコーズ〉の射程距離は50m、近くにいるならそいつを使って俺たちに助けを求めるはず、なのにそれがこないってことは50m以上離れたどこかにいるっていうことだ。

それから家にある地図とかを持ってきて仗助の家で康一の居場所を特定することに、だけど数が結構あってわかりづらい。調査は迷宮入りに思えた。

しかしそのとき、康一から一本の電話がかかった。

電話越しに波の音が聞こえた、つまり「海岸の別荘地帯」にいるということ。

俺達はタクシーですぐに康一のもとに向かった。

別荘地帯に着いた俺たち、康一を探すこと数分、俺達が見たのは”黒い何かがグルグル巻きになっている別荘”だった。

そして康一を助け出すことに成功、めでたしめでたし。

変わったことと言えば、康一の髪が変なところでばっさり切られていた。

山岸由花子が白髪になってこっちを見て笑っていたのは怖かった……。

 

 

 

□月B日

 

 

今日も英語のテストがあった。

俺の点数は75点、前より少し下がってしまったんだけど……

なんと康一が100点をとっていた。

本人は複雑そうな顔をしていたけど……このことについてはあまり触れないようにしよう。

あと、康一の髪型が形兆みたいになっていた。

形兆……今どうしてるんだろうなあ。

にしてもあの『電気のスタンド』……何か一つ、軽く事件でも起こしてくれれば手がかりを掴めるのに……。

いや別に事件が起きていいわけじゃないけどね。

 

 

 

 




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