M県S市杜王町在宅のとあるスタンド使いの日記   作:BサインからCサイン

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Take 4

ο月O日

 

 

あのあと、形兆は東方のスタンドの能力で傷を治してもらったらしい。

だけど東方のスタンドで治せるのは"傷などの負傷"だけで親父さんを元の姿に治すことは無理らしい。

残念だけど、俺はお前が死ななくてよかったよ。ホント。

また一人になるのかと思った……ありがとう、俺のスタンド。

今日は形兆の家に行った。

形兆と俺、あと形兆の弟…億泰の三人で晩飯を共にした。

作ったのは意外にも億泰だ。どうやら虹村家では形兆と億泰が代わりで料理をしていたらしい、これが旨かったのなんの。

まさかビーフステーキが家庭で食えるとは思ってもみなかった。ごちそうさんです。

食卓には弟のことを無能だとかマヌケとか言っていた冷酷な形兆はなく、"普通の兄弟"としての二人の姿がそこにあった。どうやらこの前の一件で仲を取り戻したようだ。よかったよかった。

そのきっかけは形兆が億泰をあの『スタンド』から庇ったことらしいけど……からかったら殴られた。

食事の後、形兆が俺を見送ってくれたとき礼を言われた。なに言ってるんだよ、俺たち友達だろ?

そう言うと形兆はフッと鼻を鳴らして「そうだな」って言ってくれた。

心の中で違うとか言われたらどうしよう、と言った後に焦っていたことは秘密だ。

 

 

 

о月T日

 

 

今日、形兆が突然姿を消してしまった。

億泰に聞くと、SPW財団という人達に連れていかれたらしい。

……思考が停止した。億泰の言っていることが信じられなかった。

俺は形兆の家を飛び出した。後ろで億泰が呼び止めていたけど振り返らずに走った。

なんでだよ。

せっかく友達になれたのに、なんで消えちまうんだよ形兆!?

 

 

 

о月X日

 

 

朝、ボーッとしながら通学路を歩いていると、突然億泰に呼び止められた。

話を聞いてくれーって息を荒くしながら大声で叫ぶ億泰に周りの視線は集まり、断れない雰囲気になってしまった。

だけど俺は振り返らずにそのままスタスタと歩いていった。……はずだったんだけど。

気づいたら俺と億泰の距離が近づいていた。え?と驚いて見れば億泰の後ろにスタンド〈ザ・ハンド〉がいた。

スタンド使うとか……反則だろ。

とうとう億泰に捕まってしまった俺は観念して話を聞くことにした。そのまま虹村家に行くことに。

 

そして話を聞き終わったあと、俺は自分がとんでもない勘違いをしていたことに気付き、ひどく赤面した。

 

どうやら億泰はSPW財団に"連れていかれた"のではなく、"保護"されたらしい。

SPW財団っていうのは東方と何か関係があるらしく、形兆がまたあの『電気のスタンド』に襲われる危険があるかもしれないので、その本体がはっきりするまで"保護"してあるとのことだった。

…よく考えたら、形兆に『電気のスタンド』のことを聞けばいいんじゃあないのか?

そう思って承太郎さんに聞いてみたけど、その『電気のスタンド』は電線などを通して侵入できるらしく、長時間通話をするのは危険だとのこと。

ましてや、杜王グランドホテルの電話機はマークされているだろうから承太郎さんからSPWに連絡することはあまりないらしい。

それでも頼み込んで、なんとか形兆に連絡をとらせてもらった。

電話で確認したけど、形兆は普通に元気そうだった。

よかったよおー!本当によかったよ形兆ォー!!

こうして、俺は形兆から"弓"と"矢"を奪ったスタンド使いを探すことになった。

形兆が早くこの町に帰ってこれるようにするために。

 

 

 

о月U日

 

 

今日からまた前と同じ生活が始まった。

形兆は無事だったものの、何者かに奪われた"弓"と"矢"は依然行方不明。

この町には何人ものスタンド使いがいる。

不安を含みながらも、俺たちの日常はまた、動き出した……。

億泰は俺や東方、広瀬と同じ学校に通いはじめた。

5~6年は生活していくだけのたくわえはあるらしく、あの家で親父さんの世話をしつつ、形兆の帰りを待つとのこと。

たぶん、この事を形兆が聞いたら

 

「5~6年なんて曖昧な言葉を使うなッ!5年と六ヶ月二十日だッ!」

 

とか言いそうだなあ。あいつ、すっごい几帳面だし。

 

 

 

о月P日

 

 

今日は、億泰を通して東方と広瀬とも親しくなった。

休み時間に億泰が俺に話しかけていたのを見て、東方が「なあ億泰、誰なんだそいつはよぉー」って話に入ってきたのがきっかけだ。

あのあと広瀬がフォローに入ってくれなかったら、俺は名前も覚えてもらえなかったショックから立ち直れなかったと思う。

東方たちに反応する億泰を遮って俺は自己紹介をした。

 

「一之瀬治一。東方、形兆のこと、ありがとう」

 

「あん?形兆だとぉー?…ってことは、まさかオメー……」

 

二人はあのときのスタンド使いが俺だとわかるとすごくびっくりしていた。

今思えば、あのときの東方たちの驚きようは少しおもしろかったな

その放課後、四人で駅前の「カフェドゥ・マゴ」で少し話をした。

東方に形兆のことでもう一度礼を言って、あいつらのスタンド使い、"弓"と"矢"探しに俺も加わらせてもらった。

形兆の仇は、俺が絶対にうつ!形兆死んでないけどな。

明日は四人で登校することになってる、楽しみだ。

 

 

 

 




主人公の名前は一之瀬治一(いちのせ はるかず)です。
スタンドの名前の登場は……もう少し先ですかね。読者のみなさんで、予想してみてください。
批判、感想、ここはこうしたほうがいいなどの意見がありましたら遠慮なく言ってください。

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