M県S市杜王町在宅のとあるスタンド使いの日記 作：ＢサインからＣサイン
○月Q日
朝、通学路を歩く広瀬に声をかけようとした瞬間に横から来た不良とぶつかってしまい、挙句の果てに絡まれてしまった。
冗談じゃないよ。こっちは勇気を出してやっと声をかけようとしていたのに、俺がいったい何をしたっていうんだ。
不良たちはちょっと面かせやと言って俺を裏路地に連れ込んでいった。人数は三人、そのうち一人は鼻がそこだけすっごく不自然でまるで豚のようになっていた。鼻の頭を上に抑えたような感じ、しかもそれが素の顔で……
いかん、思い出すと笑えてきた（笑）
友達ができるかもしれなかったところを邪魔された俺は若干イラついていて、いつものように謝って許してもらうという手段が頭になかった。
持っていたカバンの中から定規を取り出し、その先の部分で不良の目を叩いた。横向きにして叩いたからモロに入ったと思う。
目を殴った奴は呻き声をあげてうずくまった。
目を攻撃されたらどんな人間だって普通痛がる。このときの俺はかなりエグイことをやったと思う。
次に豚鼻の不良の鼻を殴ってやった。鼻を殴られた奴はヒイーッと言って鼻を抑えてびびっていた。
予測だけど、たぶん、この豚鼻の奴は鼻に何かすっごいトラウマがあったんだと思う。じゃなかったら俺のパンチでここまでびびるわけがないからね。
そして最後の奴の股間を蹴っとばして逃走。案外なんとかなるもんだね、急所は鍛えようがないから人間共通の弱点なんだよ。逃げるためには仕方がなかったんだ、股間蹴ってごめん。
そのとき、俺はこの出来事を誰かに見られていたということに気づいていなかった。
○月R日
その日の放課後、一人で下校していると急に後ろから矢で腹をぶち抜かれた。
この町の治安はいったいどうなっているんだと改めて思う。誰もこいつを見て通報しなかったのか？
銃刀法違犯にパッと見矢が書いてないからって使わないでほしい。人に向けて射つなよ、すっごく痛いわ。……あれ？生きてる、どゆこと？
俺を腹を矢で貫いた奴は虹村形兆っていう学制服を来た男だった。年はよくわからなかったけど多分年上だと思う。老け顔というやつだ。
しかもその虹村、謝りもせずに何が「生きていたな、おめでとう」だよ。
生きててよかったよホント、いやだからっていきなり人に矢を射つなよ。あと俺の体からなんか人型のエイリアンみたいな奴が出てきたんだけど。
それから虹村は「お前には素質が～」「スタンドは精神の才能～」とか語って俺の矢をひっこぬいてどこかに行ってしまった。
まあ"なぜか"腹の貫かれた跡も消えてたからそのあとはすぐに家に帰ったんだけど……
にしても、あのとき見えた人型のエイリアンみたいな奴は一体なんなんだろうか？虹村は『スタンド』って言ってたな……。
まあ特に害があるわけでもないし、今日はもう寝よう。
○月B日
今日は学校が終わってからすぐに家に帰った。俺の『スタンド』って奴を調べるためだ。
人型のエイリアンみたいな姿をした俺のスタンド。俺は部屋の鍵をかけカーテンを閉めてから『スタンド』を呼び出した。
虹村は「自分の身を守ろうとする」か「相手を殺そうとする本能」がどーたらって言っていた気がする。
そこで俺は部屋のど真ん中にハチミツをた～っぷりと付けたパンを皿に乗せてそれを部屋の隅から見ていた。
そして数分後、予想通りでてきた。あの"黒い悪魔"と呼ばれる害虫が。
俺の家にはこいつが何匹か住んでいる。そして俺はこのとき、こいつを殺してやろうという気持ちでいっぱいだった。
だってこいつは俺のメロンパンをかじりやがったから。
そして、俺は動かずに「こいつをぶっ殺してやる！」という思いを叫んだ。少し友達がいないことの怨念を込めたことはこの日記だけの秘密だ。
俺の週一の楽しみを奪ったてめえは絶対にぶっ殺す！覚悟しろゴキ○リ！！
ハイ出てきた。
俺の体から前と同じように、人型のエイリアンみたいなスタンドが出てきてさらにあっさりと"黒い悪魔"を踏み潰した。結構速いなお前。あいつを仕留めるとかすごいな、俺なんてエアガン使っても仕留めれなかったのに。
とりあえず、こいつは明日から家事の手伝いをさせることにしよう。そしてもっと何かに使えないか探してみよう。
○月J日
今日は久しぶりに雨が降った。傘を忘れた俺は行き帰りずぶ濡れになってしまった。
友達と同じ傘に入れてもらっていた奴らが羨ましい。不幸中の幸いか、雨に濡れたおかげで涙はバレなかったと思う。友達がいれば＿＿＿
(字が汚くて読めない)
家に帰った俺は玄関でスタンドを出して、風呂場からタオルとドライヤーと洗濯カゴを取ってこさせた。スタンドって便利だね、廊下を濡らさなくてすむ。
外見はエイリアンだけどグロイわけでもないから安心だ。だけど食材を運ばせるのだけは勘弁な。
そういえば形兆が気が向いたら家に来いって言っていた気がする。
……もしやこれは神が俺にくれたチャンスなのかもしれない。
知り合いの家に招かれる。これは相手の好意の示し方の一つと俺は考えている。
あいつは”矢”に貫かれて生きていた奴を家に招くという趣味でも持っているのだろうか？だとしたら形兆を通して友達がたくさんできたり……楽しみだなぁ。
形兆もたぶん学生だと思うし、放課後にでもあいつの家に行ってみようか。確かここ三、四年空き家になってる屋敷に住んでいるんだっけな。
……騙されたりしてないよな、俺？
○月L日
……なんか通学路の芝生に変な岩ができていた。なんか人の手とか顔があるように見えるけど気のせいだろう。まさか本物の人間でできているわけじゃないだろう。呻き声が聞こえた気がしたのは気のせいだと思う。
そう思いたい。
今日は放課後に形兆の家にやってきた。ものすごい荒れようだ、本当にあいつが住んでいるんだろうか？騙されていないか不安でしょうがない……。
おじゃましまーす、立ち入り禁止の看板があったり南京錠が下りてたりしてるけど気にしないで入った。
あ、形兆。言われた通りやってきたぜ。……え？なにしに来たんだって？
…あれ？俺って何しに来たんだっけ？昨日形兆の家に行くことばかり考えていた俺は、このとき本当は何も考えていなかったんだけど。
『スタンド』について詳しく教えてくれないか？
と誤魔化した。言える訳がない、何しに行くのか考えていなかったなんて……。
形兆は俺に『スタンド』とは何か教えてくれた。
俺の記憶力がいいとはいえ、日記に書くのはさすがに辛いから簡単にまとめとこう。もし忘れたときもこれを見れば思い出せるだろうし。
・スタンドとは”パワーを持った像”であり、守護霊のような存在である。
・スタンドを使える奴のことを”スタンド使い”と呼ぶ。また、スタンドに主軸をおいて”本体”と呼ぶこともあるらしい。
・スタンドは一人につき一体。
・スタンドはスタンド使いにしか見ることはできない。スタンドに触ることが出来るのはスタンドだけ、ただしスタンドの方から物体に触る場合はOK。
・スタンドが傷つけば本体も傷つく。
……結構奥が深いな、スタンドって。あのエイリアンが俺を守ってくれる力を持っているとは思えないけどなあ…俺と背が一緒くらいだったし。
それにスタンドが傷ついたら俺も傷つくのか…家事をやらせるときは気をつけることにしよう。
ん？どうしたんだ形兆、俺のスタンドを見せてみろって？別にいいけど。
どうやら一回目からは呼び出すのは結構簡単みたいだ。こう…ふっ！とやると出る。
そして俺の身体から人型のエイリアンみたいなスタンドが姿を現した。
それだけ見ると形兆は舌打ちをした。えっ俺なんかした？
不安げに聞いてみると、どうやら弟が帰って来たらしい。お前弟がいたんだな……愚弟？そんなこというなよ。近くにいてくれる人がいるってことがどんなにいいことか知らないのか？
また明日来いと言われて家の裏口から帰らされた。
あいつは弟にこの話を聞かせたくないんだろうか？
まあ、なんにせよ明日また形兆の家に行くことになった。とうとう俺の時代が来たみたいだ。神様ありがとう。
今日は気分がいい、いい夢を見られそうだ。
○月M日
今日も放課後に形兆の家にやってきた。
同じ学生なのに俺より先に家に着いているとはこれいかに。
今日は形兆のスタンドを見せてもらった。
G・Iジョー人形みたいなスタンドだった。にしても数が多い……スタンドは一人につき一体じゃなかったのだろうか？うん、俺の中では”一人につき一種類”ということにしておこう。
形兆のスタンドは歩兵が60名、戦車7台、AH-64 アパッチ4機で構成された軍隊のようだ。
名前は〈
……え？名前付けるの？形兆……マジで？
……どうやら、『スタンド』というのは精神の力 名前をつけることでより強い意思を持つことができるらしい。だったら俺のスタンドにも名前をつけなきゃいけないのか……。
よし、今度考えておこう。
家に帰った後、俺は紙とペンを用意して浮かんだ名前を取りあえず書きまくった。
うーん…。〈グレイ〉、〈UAM・ヒュー〉、〈グリーンスペース〉……俺のネーミングセンスって一体……小さなガキが考えるようなモノばっかじゃん、それ以前にパクリばっか……形兆のネーミングセンスを分けてほしい。
スタンドの名前は明日また考えることにしよう。テストもあるし、お休みー。
批判、感想、ここはこうした方がいい。などの意見がありましたら遠慮なく教えてもらえると嬉しいです。