M県S市杜王町在宅のとあるスタンド使いの日記 作:BサインからCサイン
・これは康一視点の話です。
・周りからの主人公の評価がみたい。というリクエストに精一杯答えた結果の話なので、他の方のSSと比べると少し物足りないかもしれません。
・オリキャラ、オリスタンドが登場します。御了承ください。
・余裕があれば、他のキャラ視点の話も作ろうと思います。
・リハビリも兼ねていますので少々デキが悪いかもしれません。
以上を踏まえてもよろしい方は本編へどうぞ。よろしくない方もどうぞ。
その日、杜王町の公園に一人の学生がベンチに座り込んでいた。彼は肩をがっくしと落としながら下を向いていた。かれこれ30分も動いていない。
「はあ………」
ぼくの名前は(まー…覚えてもらう必要はないですけど)広瀬 康一 15才。
M県S市の杜王町のぶどうヶ丘高校に通っている高校一年生です。
僕たちは今、友達の仗助くんや承太郎さんと共に殺人犯「吉良 吉影」を追っています。
15年前、飼い犬と共に殺された被害者「杉本 鈴美」さん。
そして幽霊となった彼女とと出会った僕たちは今もこの町で誰も気づくことなく殺人が行われていることを知った。
さらに奴の父親「吉良 吉廣」が”弓”と”矢”を持ったままどこかへと姿を消した。その日からこの町に更なる『スタンド使い』が現れ、僕らの命を狙ってくるのです。
僕もついこの前命を狙われ、敵に捕らわれ人質にまでなってしまった。
治一くんが助け出してくれなかったら今頃僕は死んでいたかもしれない。
ここに来て、僕は自分の力の無さを自覚していた。
「…〈エコーズ ACT1〉」
僕の前で浮遊している〈エコーズ ACT1〉。エイリアンの幼生のようなデザインをしている僕のスタンド。虹村形兆という男に”矢”で貫かれたときに発現した能力だ。
パワーやスピードはほとんどないけれど、”音”を貼り付けて繰り返し響かせる。
由花子さんに無理矢理監禁されたとき(あ、でも今は仲のいい恋人です)進化した〈ACT2〉も、強くなってはいるけど他のみんなに比べるとどうしても見劣りしてしまう。
唯一の長所は射程距離が長くて偵察や探索に向いているところだけど、治一くんみたいに見つけた後にすぐに行動に移れるわけでもない。仗助くんたちみたいなパワーもスピードもない。
治一くんはすごいと思う。境遇は僕とほとんど同じでも全然違う。いつでも冷静で、どんな相手でも物怖じせず立ち向かっていく『勇気』を持っている。
以前、”振り向いてはいけない道”の時も、僕や露伴先生でも恐怖していたのに対し、彼は全く物怖じ一つしなかった。
死と隣り合わせでも乱れない彼の冷静さは、まるで承太郎さんみたいだった。
仗助くんみたいな熱いハートと、承太郎さんみたいな冷静さを持っている彼は、なんてできた人間なんだろう。
正直に言えば、僕は自分の力の無さに悩んでいた。
みんなみたいに自分で立ち向かえる力が欲しい。そんな感情に悩まされていた。
もし、僕一人で吉良吉影なんかと戦うことになったら、僕は敵わないだろう。
他のみんなみたいに、前線に出て堂々といられる自信がない。
「………はあ」
何回目か、ため息を吐いた。もう時刻は六時になろうとしている。
今が夏の時期とはいえもうすぐ夜になるだろう。夕陽も沈もうとしていた。
…もう帰ろう。いつまでも悩んでいても仕方がない。
「…………」
…さっきから誰か付いてきている気がする。
僕の足音じゃない、トッ トッ ――――と靴が地面を蹴るような音が聞こえてくる。
なんども後ろを振り向いて確認した――――――――けど、やっぱりそこには誰もいなかった。
僕の思い違い―――――じゃあないはずだ。僕の靴の音とズレて聞こえてくるし、周りには人数も少ない。まさか、新手のスタンド使い?
「…〈エコーズ ACT2〉」
振り向かないままこっそりスタンドに偵察させる。僕自身は歩いたまま、〈エコーズ〉に近くに誰かいないか探らせる――――――が、やっぱり誰もいない。おかしい、さっきから聞こえる足音まで消えている。僕の思い過ごしだったのか……?
シュゥ―――――――――シュゥ―――――――――ッ
「………?なんだ?」
シュウゥ―――――――――シュウゥ――――――――――ッ
なんだこの音は?何かが擦れてる?それにだんだん音が大きくなってきている。この音はどこから―――――――
「!――――――――上からだってッ!?」
上を見上げると そこにはこっちに落ちてくる人の姿があった。――――――――ってマズイ!このままじゃ衝突しちゃう!例え避けたとしてもこの人が死んじゃうよ!自殺!?いやそれ以前になんとかしないと!
「〈エコーズ ACT2〉ッ!」
『ボヨ~ン』のしっぽ文字を落ちてきた人に張り付けて助けるしかないッ!
しかし、切り離して変形させたしっぽ文字を”その人”は避けた。
いや―――――――”避けた”んじゃあない。しっぽ文字が勝手に避けて行ったという方が正しいだろうか。その人に当たるかという瞬間、急にあられもない方向に曲がって行ったのだ。
その人はそのまま壁に足をついて地面に着地したこと思うと、そのまま僕に向かって突っ込んできた。
〈エコーズ〉のしっぽ文字は不発してしまった。僕自身がかわすしかない。なんとか身をひるがえして避けることができたけど、その人は僕の横を過ぎ、そのまま壁に―――――ぶつかる直前に、急停止した。
「……………」
「――――――チッ 避けんなよなァ。せっかく楽に終わるってのに……ブツブツ…」
その人はぶつぶつと呟きながら僕の方に歩み寄ってきた。
髪の長い男のようだ。身長は170くらいだろうか?黒い服をきていたつばの長い帽子を深く被っている。顔を見られたくないのか?
その男が何を呟いていたかは聞こえなかったけど、さっきの一瞬でこいつが敵だと理解できた。
こいつは僕の〈エコーズ〉が見えていた スタンド使いだ!
「〈エコーズ ACT2〉ッ!」
しっぽ文字を男に向かって投げつけるッ!
「〈ザ・フレーミング・リップス!〉」
男が”名”を叫ぶとスタンドが発言した。やっぱりこの男 スタンド使いだった!
〈ザ・フレーミング・リップス〉と呼ばれた楕円形のガラスのような物が全身に付けられたようなデザインの『スタンド』は男を前へ出る。そして――――――何もしなかった。
「なっ!」
何を考えてるんだ?防御しないのか?普通なら弾くとかして防ごうとするはずなのに…いったいなんなんだこの能力は!
そしてしっぽ文字が敵のスタンドに当たる―――――はずだった。
なんと、またしっぽ文字が勝手に避けて行ったのだ。それも不自然な動きで。しっぽ文字はスタンドの斜め後ろに飛んでいった。
おかしい……敵のスタンドは”何もしていなかった”はず。なのになんで勝手にしっぽ文字が避けていくんだ 当たらないんだ?
「ふうービビったビビった。まあ俺の〈ザ・フレーミング・リップス〉には絶対に当たらないけど
それとお前の能力―――――そのしっぽみたいなのをぶつけるのが
”当たらない”だって?”効かない”じゃあなくて”当たらない”…今そう言ったのか?
男は一歩、また一歩、踏み出して僕に近づいてくる。お菓子を買ってもらえる子供みたいに軽快なステップで近づいてくるのが腹ただしかった。
そして敵との距離が数メートルというところで―――男は急発進してきた。
「うわァァァッ!?」
男の足が地面をついた瞬間、まるで地面を滑るかのように片足で立ったまま僕に向かって直進してきたのだ。その勢いを乗せた蹴りが僕の腹に決められた。
〈エコーズ〉で防御をする暇もなかった。もともと僕のスタンドは速く動くこともできないのだ。
蹴り飛ばされた僕は、そのまま壁に背中を打ち付けた。
「ウグッ!」
「おっ!お前弱いなァ?反応できなかったってことはスピードはあまり速くないってことだ。お前の『スタンド』じゃあ俺には勝てない!わかる!お前の攻撃は意味がない
男は高笑いをしながら僕を見下しながら踏みつけてくる。痛い、口が切れて血が出た、鼻血も止まらない、痣とかたくさんできてるかもしれない。起き上ろうとしてもすぐに踏みつけられて立ち上がれない。
こんなとき、仗助くんたちだったらこんな目には合わなかっただろう。今の僕みたいにボコボコにされることだってないはずだ。けど―――――――――――――
「くっ―――――――うおおおおおおおおォォォォォォッ!!〈エコーズ〉ッ!!」
ACT2のしっぽ文字をこいつにぶつけてやる!今こいつは僕の方をみて築いていない!
パワーのないスタンド?攻撃を避けることもできない?だからどうしたっていうんだ!僕だってやれる!『成長』しているんだ!
「―――――だから意味がねえって言ってんだろう―――がッ!」
男の『スタンド』が再び前へでてきて壁となる。
そしてしっぽ文字は男の『スタンド』を避けるようにして不自然に起動を変え――――――――
「ウッ!」
―――僕の身体に直撃した。
「バカかてめぇ!自分で自分を攻撃しちまったな!マヌケめッ!」
グッ……自分の攻撃が当たるなんて初めてだ。でもやっぱりこいつに攻撃は当たらないんだ……。
「トドメだッ!くらえ―――――――――」
ドッグオオオオォォォォォンン
「ペッパアアアアァァァァァ――ッ!!?」
男は僕を踏みつけた瞬間、後ろに吹き飛んで行き、ぶち当たった壁は崩れていった。
「か…かかったな……」
そう、僕は罠を仕掛けていた。
この男に攻撃が当たらない、当てようとすると『スタンド』が壁となり避けられてしまう。
だから、張り付けたんだ。”自分に”。スタンドに効かないなら、本体を狙えばいいんだ。
僕は蹴られた腹を抑えながら、ゆっくり立ち上がった。
「そしてわかったぞ… お前の能力は『滑る』んだ。
崩れた壁の中からヨロヨロと男が立ち上がってくるのが見える。
どうやら壁が崩れた建物は今はもう使われていない空き家だったみたいだ。こんなときに考えることじゃないけど、そう考えるとホッとした。
「それにお前自身が蹴ってきたってことは…その『スタンド』のパワーはあまり大したことがないってことだ!もうお前なんか怖くないぞ!こうやって文字を貼り付けておけばお前は僕に攻撃できないッ!」
そう、これで立場が逆転したのだ。
あいつのスタンドはあまりパワーはない。たぶん、射程距離も短い…。僕自身に文字を貼り付けておけさえすればあいつが攻撃してきた瞬間にカウンターをくらわせてやれる。
僕自身も〈エコーズ〉も結構ボロボロになっちゃったけど……。
「………だからなんだってんだ。だからなんだって言うんだよオ!一発かましたからってイイ気になってんじゃあねえぜッ!!」
男はそう言うと空き家の中に入っていった。これには僕もびっくりだ。
「なっ!に、逃げるのかッ!?」
「逃げるゥ!?違うねッ!『攻撃』してるんだよォッ!!」
パリリィン
「なんだって!?」
男が叫んだ瞬間、中から家の家具が飛び出してきた。その内のクローゼットが僕に向かって真っ直ぐ地面を滑ってくる。
予めしっぽ文字を貼り付けておいてよかった……。僕に直撃したクローゼットはバキッと音を立てて壊れた。
しかし、攻撃は終わらない。
家の中から木箱やら空き瓶やら板やら電球やらタンスやら――――――様々な物が僕めがけて”滑ってくる”。
「な、なんだこれはッ!まるでボーリングの球みたいに一直線に僕に向かって滑ってくるッ!こんなこともできるのかッ!?」
スタンドで必死に防御するが、大きな家具はさすがに防ぎきれない。簡単に弾かれてしまった。
「ハッハハハハハッ!!俺の〈ザ・フレーミング・リップス〉は好きな物を『滑らせる』ことができるんだッ!家具だって大型トラックだって!お前は俺に勝てるって思ってんだろうがそりゃあ違うねッ!こうして遠くから攻撃すりゃあお前の能力はくらわない!俺の勝ちだッ!!くらえーッ!!!」
ドカンッ
今度は冷蔵庫!?しかも滑って勢いを増している!早い!スタンドで防御しなきゃ!
「〈エコーズ ACT2〉ッ!」
自分のスタンドの名を叫ぶ。が、でてこなかった。
「?どうした!?〈エコーズ ACT2〉!! ? ?」
な…なんだ…!?どこだ―――――――なぜこない?ACT2――どこにもいないぞ…ハッ!!
「あ…ああっ!ACT2がぁーッ!!」
見れば、さっき弾かれたと思われる方に、真っ二つに割れてしまってるACT2の姿があった。
さっき弾かれた時にダメージを受けたのか?スタンドがやられてしまった!もうどうすることもできない!どんどん冷蔵庫は僕に向かって直進してくるッ!
「――――い…いや…待てよ!やられたのなら本体である僕も死んでいるはずだぞ。……そうだ。『思い出した』!前にも〈エコーズ〉が死んだようになったことがあったぞ……そ――――それは!」
見れば、ACT2の背中から煙のようなモノが上がっている。そのさきには、子供のような姿をした人間型のスタンドが宙に浮いていた。
「ま、まさかッ!!〈ACT3〉!!!うわオッ〈エコーズ ACT3〉!!ひょ…ひょっとして―――――成長したんですかァ!?ぼく!?」
『命令シテクダサイ』
そいつ―――――――ACT3は無機質な声でそう言った。僕の方を向いて言っているあたり、どうやら本当に僕の〈エコーズ〉が成長したみたいだ。
「でも、どんな能力なんだろう…?『命令しろ』ったって、全然こいつのことわかんないんだけど…と…とりあえず………」
僕の目の前にまで迫ってきている冷蔵庫に目をやる。どんどん勢いを増しているようだった。時速六十キロは出てるんじゃあないか?
「『ぼくの身を守れッ』!ACT3!」
『……………』
……あれ?反応がない……。
「……あの…守ってください…お願いします。できるんですよね?」
な、なんだか不安になってきたぞ…だいじょうぶなのか?
『ワカリマシタ』
そう言うと、ACT3は僕の前に一瞬で移動し、直進してくる冷蔵庫に向かっていった。あまりにも速い動きにものすごい風圧が発生した。学生服のボタンが取れてしまってる。
す、すごいスピードだ…!ちょっと動いただけで、この風はッ!この『スタンド』はッ!!
ACT1やACT2とは比べ物にならないほどのスピードを持っているぞ!!
『必殺 エコーズ 3 FREEZE!!』
太極拳のような構えをとったACT3が直進してくる冷蔵庫にラッシュを繰り出しているッ!
ものすごい速さで突っ込んでくる冷蔵庫のスピードがどんどん鈍くなっていく、そして――――
ズンッ
そのまま地面にめりこんだ。
な、なんだこれは…まるで”踏みつぶされていくみたいに冷蔵庫がメリメリと音を立てて壊れていく…。これが、〈エコーズ ACT3〉!
『3(スリー)FREEZE(フリーズ)!!「スリー」と「フリー」ガカケテアリマスネ。ダカラ「ドーダコーダ」言ウワケデハナインデスガネ』
「な、なにィィィッ!!ば、ばかなッ!スタンドは一人一体じゃあねえのかよ!な、なんなんだコイツッ!!」
男が驚愕の表情でこっちを見ていた。この空き家が平屋でよかった。簡単に見つけ出すことができた。
「追い詰めたぞ!観念しろッ!!」
「う――うう!!〈ザ・フレーミング・リップス〉ッ!」
男がスタンドで攻撃してくる。だが動きはACT3の方が上だ。
ドカッ
男のスタンドがACT3を殴りつけた。が、やはりダメージはほとんどない。
そしてわかった。今、ACT3を殴ることができたということは、その『手』は滑らないということに。
ACT3にスタンドの『手』を殴らせる。やっぱりだ、他の部位みたいに滑ることはないッ!
「やれッ!〈ACT3〉ッ!!」
『 3 FREEZE!!』
ズンッ
男のスタンドが床にどんどん沈んでいく。
「ギィヤァァァァ!!か、体がっ重いィィッ!!?」
すると逃げようとした男の体もどんどん床に沈んでいった。どうやら僕との距離が近ければ近いほど『重くできる』みたいだ。
「ふう、これで男はもう抵抗できないな。…お、こんなとこに縄がある。使い古されてるけど、とりあえずこれで縛っておこう」
「ま、待って!くるな!なんか知らないがどんどんめりこんでいって…苦しいよオーッ!!」
To Be Continued…→
スタンド〈ザ・フレーミング・リップス〉
【破壊力-C/スピード-D/射程距離-B/持続力-B/精密動作性-D/成長性-C】
全身に楕円形のガラスが幾つもくっ付いた亜人型スタンド。腕や脚が普通の人間よりも短く、アンバランスな外見をしている。透明なガラス以外は濁った白色をしていて『手』『足』『頭』にはガラスがついていない。
能力はスタンド自身、もしくは触れた物を”滑らせる”こと。
相手の攻撃を滑らせて後ろに逸らしたり物体を滑らせてボーリングみたいに相手にぶつけるのも可能。ただスタンド自身人間と破壊力がほとんどかわりない(非力な成人男性程度)のであまり攻撃はしない。
物理的な射程距離(腕や脚)は本体の方が長い。
ガラスが付いていない部位は滑らない。よって手や足などを使って蹴る殴るなどの攻撃はできるが、顔を殴られたり手や足を傷つけられればダメージをくらう。
※炎や電気は滑らせることができない。あくまでも物理的なモノだけである。
スタンド名は某アメリカのロックバンドから。